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「隔離への順応」(2)

「で、でも……これってボクたちが同意したことじゃないよ!」

「ほんと? 初耳だわ。あたしがオンライン会議をしていた間、あなたが後ろをうろうろするのは防ぎようないもの。ちなみに、会議に出てた男性はみんなあなたのパンティ、可愛いって言ってたわ」

「み、みんな……見てたの?」

「もちろん。あなた、カメラの真ん前で前かがみになってたもの。正直言って、あなたがカメラが動作してたのを知らなかったなんて信じられないわ」

「部屋には誰もいなかったけど……」

「これ、すでに話し合ったことだわ。あたしはトイレに行くために部屋から出たの。あなたが注意してなかったとしても、あたしにはどうしようもできないこと。もっと言えば、あなたの自己責任だわよ」

「自己責任? ボクの? ネットに上げたのはあの人たちの方なんだよ! ボクの友だちにも見られてしまったし、キミの友だちにも見られてしまったと思う。ソーシャルメディアじゅうにばら撒かれてしまってるんだよ。だけど、最悪なことは何かって分かる?」

「あたしが答えなくても、どうせ自分で言うんでしょ?」

「最悪なのは、ボクがそれを楽しんでるように見えることだよ!」

「まあ、だって、あなたニコニコして鼻歌うたってたもの。それに踊ってもいた。すごく意味深なカラダの動きで」

「ボクは……キミがあんなだったから……これは……これはボクのせいじゃない! こんなこともうやりたくない!」

「いいわよ。で、いつ家を出ていくの?」

「な、何て?」

「いつ出ていくのって訊いたの。いい? あなたが失業したこと。それには理解を示してる。ひどいことだわ。で、あなたはそのことを盛んにこのパンデミックのせいにしたがっているようだけど、あなたがクビになったのは、今回のことが起きるずっと前のこと。半年前から無職になっていたじゃないの」

「でもそれはボクのせいでは……」

「あなたのせいだったことは何もない。でもね、そんなこと関係ないの。重要なことは、あたしは、この家の家計を支える唯一の人間になるのは絶対にイヤという点。分かってるでしょ? この家のおカネはあたしが払ったし、あたしのモノ。あたしは、他の人にたかられ続けて平気でいる人間じゃないわ。あなたのことは愛している。でも、こういう種類の関係は続けられない。だから、あなたがそれ相応の負担を抱えるつもりがないのなら、あなたにはここにいてほしくないわけ」

「でも、どうなのかな……ダメなのかなあ……普通の服装に戻れないのかなあ? もう1ヶ月になるし……」

「ダメ。フランチェスカはこの家にいてもいいけど、フランクはダメ。仕事を得るまではダメ。で? どうするの? フランク? それともフランチェスカ?」

「ふ、フランチェスカで」

「よろしい。この件についてあたしたちが合意できて嬉しいわ。じゃ、お風呂の準備をしてちょうだい。それに笑顔を忘れずに。動画に映ってたように笑顔になって。……そう、その顔。いい娘ね」

つづく




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