「Wイェックス:妊娠」 Wyex: The Pregnancy by icedragonmo3

僕はカウチに座り、嫌々ながらも、もう一度だけ求人情報を調べた。解雇されてから何か月も経っているが、いまだに新しい職を得る幸運に恵まれていない。あの工場勤務が気に入っていたのだが。

ウェブ上でまだ応募していなかった職は、僕が資格に満たない仕事か、長すぎる期間をお妻と離れて暮らさなければならない仕事か、僕がもう二度と御免だと決めた仕事だけになっていた。

妻のカレンがそろそろ帰ってくる時間になったので、僕はようやくノートパソコンを閉じ、夕食の準備に取り掛かることにした。今夜は新しいモノを試すつもりで、彼女が気に入ってくれればいいと思った。魚の代わりにステーキを巻いた寿司だ。僕はおいしそうと思うが、彼女がどう思うかは分からない。

冷蔵庫を開けると、ご飯がちょうど寿司に良さそうな状態になっていた。適度に冷やされ、粘り気が強くなっている。

僕はいまだ無職でいることのむなしさを何分間かは忘れることができるだろうと、料理に没頭した。ステーキとご飯を、刻んだ少量の野菜と味付けのためのスパイスと一緒に円筒状に巻く。それを一口サイズに切っていくのだが、それは予想したより難しかった。とは言え、2個ほどぐちゃぐちゃにしてしまったものの、その後はコツを会得したので上手くできた。

ほぼ完成に近づいた時、玄関ドアが開き、僕の最愛の妻が部屋に入ってきた。

彼女の姿を堪能するためだけに、一瞬ちらりと彼女に目を向けた。12時間勤務のシフトの後にもかかわらず、カレンは本当に美しく、思わず息をのんでしまう。

髪は褐色で、肩までの長さ。ゆったりとカールしている。褐色の大きな瞳が僕を捕らえ、その瞬間きらりと輝いた。帰宅して喜んでいるのがその目を見ただけでわかる。

大きな胸はメディカルスクラブ(参考)の中、はち切れそうだし、同じ布地に包まれた細いウエストも最高だ。ヒップにかけての豪華な曲線は、彼女の体つきの中でも僕の最も好きな部分で、仕事服を着てても、そこの特徴はほとんど隠しきれていない。

僕と彼女が一緒の写真を見たら、多分、ストリッパーをしていたのは僕ではなく、彼女の方だと思うことだろう。

カレンはカウンターにハンドバッグを置き、両腕を広げて僕を抱きしめた。僕の方もほとんど待ち焦がれていたといった感じで彼女を抱き返した。ほぼ一日中、職探しをしていたので、こういうふうな人との接触が嬉しかった。

「いい匂いね、タイ。今夜は何?」

僕は彼女のおでこにキスをした。彼女が仕事から帰ってくると病院の匂いも連れてくるが、それにはずいぶん前から慣れていた。「ステーキの寿司だよ。気に入ってくれるといいけど。テーブルについててくれ。僕が用意するから」

カレンは僕の頬にキスをし、キッチンテーブルの椅子に座った。脚を伸ばしている。一日中、立ちっぱなしで痛くなっているのだろうと思った。

僕は素早くやりかけだった切り分けの作業を終え、2枚の皿に盛りつけた。カレンの分の皿を彼女の前に置き、冷蔵庫からダイエットコーラを取り出した。

「グラスと氷は、いる?」

「いいえ」と、口に頬張った寿司を急いで飲み込んで返事した。「缶のままで。これ、すごく美味しいわよ! 自分がこんなにお腹がすいていたことも忘れていたけど」

僕は、彼女のコーラと、僕のダイエット・マウンテン・デューと寿司の皿をテーブルに運び、彼女の向かい側に座った。

僕も一口食べてみた。寿司は、本当にとても美味しくて、自分でも驚いた。彼女が貪る様子をちらりと見て、僕は数個、自分の皿から彼女の皿へ移してあげた。実際、僕は、今日はあまりカロリーを消費していなかったのは事実だから。

「仕事はどうだった?」

カレンの一日がどうだったか、純粋に話しを聞きたかったから訊いたのだが、実質、彼女が僕に訊きたがっている不可避の質問を先延ばしするためにしたような質問だった。

「今日ね、あたし赤ちゃんを取り上げたのよ!」と妻は興奮した様子で言ったが、少し気まずかったのか、すぐに落ち着気を取り戻した。「それが今日のハイライトだったわ。その他は? 大半はいつもの仕事。排泄の処理とか、分かるでしょ? 1件、仕事場での怪我の治療があった。普通の怪我だったわ」

僕は微笑んだ。彼女が医療関係の仕事についたのは、出産を手伝うことをしたいという最終目標があったからだと僕は知っていた。そして、なぜ彼女がそれをしたいのかも知っていた。

「そう。じゃあ、良い一日だったんだね?」

カレンも微笑んだ。「ええ、良い一日……今日は仕事探しはどうだった?」

僕が避けていた質問がこれだった。僕は急に食欲がなくなり、溜息をついた。「何もなかった。第2種運転免許を取るつもりになれば別なんだけど。またダンスの仕事に戻ろうかとさえ思ったよ」

妻は顔を曇らせ、ほとんど食べ物がなくなった皿に残ってるご飯つぶを指先で拾い始めた。僕は自分の皿から残っていた寿司を彼女の皿に移してあげた。

「トラックの運転手はしてほしくないわ。そうなったら、あなたはいつも留守になってしまう。それよりもっと嫌なのは、ストリップの仕事に戻ること。あの当時、あなたがお相手しなくちゃいけなかった女たち……あのアザの数々、今でも忘れないわ」

僕も忘れていない。しょっちゅう、強くつねられ、後にアザが残った。その痛みを隠しつつ、つねってきた女性に愛想よく笑顔を見せなければならないのだった。「ああ、あちこちアザだらけになったなあ。でも、少なくとも、帰宅するときは給料を持ってこれたんだけどね」

カレンは寿司の残りをきれいに平らげた後、立ち上がって僕の手を握り引き寄せた。僕も立たせようとする。「カウチに一緒に座ろう。足を上げたいの。でも、この件についてあなたと話しもしたいから」

妻はカウチの端に座り、僕は真ん中に座って膝を叩いて見せた。

「足をここに乗せて」

カレンはこの家におカネを運んでくるただ一人の人だ。一日中働いてきた彼女の足を擦ってあげることくらいしか僕にはできない。

靴を脱がし、両足の土踏まずを揉み始めた。「じゃあ、お話したいんだね?」

僕の両手で足が癒され、彼女は唸り声をあげた。「ちょっとね。もしかすると……あなたは働かなくてもいいかもと思ってるの。今はあたしがかなり稼いでいるし、あなたはダブルワークをして、あたしを医療学校に通わせてくれた。あなたは、しばらく、仕事をしないでいてもよい資格があるわ」

僕は顔をしかめながら、彼女のふくらはぎへと手を移動した。「一日中、家にいられないよ。何をしたらいいんだろう?」

「もう、今していることは? 家に帰るときれいに掃除されてて、夕食もできてる。これがあたしにとってどんなに嬉しいことか、いくら言っても言い切れないわ。今夜のステーキ寿司もすごく、すごく美味しかった」

「でも、君が主夫なんかいらないと思ったらどうなるのかな? 職場にいる野心的な医師とかの方が君の好みになるんじゃ?」 

僕にとって一番大きな不安は、彼女が僕を負け犬と思い、誰かもっと……少なくとも誰か仕事をしている人と一緒になるため、離婚を決意するということだった。

カレンはゲラゲラ笑いだした。「冗談でしょ。本当にそんなことで悩んでいるの?」

僕は居心地が悪い感じで肩をすくめた。「まあ、そうだね。何て言うか理屈としてはの話しとしてね。でも、女性には食べ物を提供してくれる人を求める衝動があるのは本当だと思う。君のDNAに書き込まれているんだよ。僕が家の中で単なる『小さな男』でいたら、君の尊敬とか愛情をいつまで失わずにいられるだろう?」

彼女は頭を左右に振った。それに合わせて茶色の巻き毛が揺れた。

「その考えの丸々全部がどれだけ間違っているかってところから話すつもりはないわ。あたしがあなたを夫に持ってることで、あたしの友だちがどれだけ羨ましがられているか知ってるでしょう? あたしを学校に通わせるために粉骨砕身働いてくれた男性。そして、今はあたしが面倒な家事をすべて忘れて仕事ができるようにと、気遣ってくれる男性。 っていうか、あなたは確かにストリッパーをしていた。でもね、たとえあなたが一日中家の中でごろごろしていても、あたしの友だちなら、すぐにでも誰かがあなたをもらいたいって取引を持ち掛けてくるんじゃないかしら」

僕は少し気が休まった気がしたけど、それでも、くだらないことなのだろうけど、追い出されるんじゃないかという不安が残っていた。

「……それに、ちょっと考えていたの。もうそろそろ、あのことを考えてもいい頃じゃないかって」 彼女は注意深く切り出した。

僕はすでに脚を揉む段階から、優しくほぐす段階になっていたけど、その言葉を聞いて無意識的に手に力が入ってしまった。「あっ、え、何のこと?」

「そろそろ子供を考えてもいい頃じゃないかしら?」

息をのんだ。僕はずっと前から子供を持つことを望んでいたけど、カレンは子を産めない体だったから。

「君は養子は嫌だと思っていたけど……」

「まあね……その通りだわ。でも、もうひとつ方法があるの。Wイェックスって聞いたことない?」

僕は顔をしかめた。「それって、一時的に性別を変えるモノだよね? 週末だけ女性になるとかそういう目的でセックス・ショップで売ってるモノだよね?」

「確かに最初はそうだった……だけど、その後に、それが医療関係に大きく応用できると分かったの」

「どうやら、君はそれについてずいぶん考え抜いたようだね。僕よりいろんなことをずっと知ってると思う。僕に教えてくれないか、カレン」

「いいわ。Wイェックスの持続期間はいろいろあるようになったの。効果が短期間のものがある。1日とか2日とか1週間とか。男性は女性に、または女性は男性に変わることができるの。これだと、脳の構造がバイセクシュアルに変わる。そして性的欲求が増進するの。そういう形でいろいろ楽しむこともできるというわけ。いい?」

「ここまでの話しだと、それでもって君が何をしようとしてるのか分からないんだが」

「もう少し話しを聞いてて。医学的に強化したものだと1年は持続するけど、性的欲求の増進はない。で、Wイェックスは、体の細胞の構成を入れ替えて新しい体形に変えるのよ。病院では重度の病気の治療に使っている。治療不可能な癌? だったら1年に1回、Wイェックスを服用すれば、生き延びられる。もちろん、男性は女性に、女性は男性になるわけだけど、他の道で生きるよりはましじゃない? 例えば、手足の切断とか、麻痺とか、重度の火傷、さらには最悪のトラウマを抱えているとか。そのすべてがWイェックスの注入によって回避できるの」

「オーケー、奇跡の薬ってわけだね。分かった。でも、僕は別にそういう症状にはなっていない」

「うん、その通り。もうひとつ、Wイェックスを使う分野があって、それは産科。女性が子供を産めない場合……あたしのようにね、あるいは、男性が繁殖力がないとか機能不全であるとか、その他なんであれ、そのために子供に恵まれないとき、カップルの片方か両方が1年間、性を入れ替え、そして赤ちゃんを作るわけ」

自然に僕の両手が彼女の足から離れた。大変なショックを受けて僕は呆然と彼女を見つめるだけだった。「ぼ、僕に赤ちゃんを産んでほしいと……」

「そう。いい? セックス玩具としてのWイェックスはいろいろあるけど、そのひとつは主要な性器だけを変えるの。まさかと思うだろうけど。それはWイェックス・ライトっていう名前。あたしのアイデアはというと、それをあたし自身に使うということ。あたしが仕事を続けられるように、あなたが妊娠するまで週に1回、服用する。職場ではカレンのままでいなくちゃいけないでしょ? あなたの方は体全体を変える強化版を1年間、服用し続けなくちゃいけないわ。すぐに妊娠しなかったら、もっと長くなるかもしれない。妊娠から出産まで9ヶ月半から10ヶ月はかかるし、加えて授乳もあるから」

これは大ごとだった。単に長い期間自分に影響を及ぼすだけのことなどではなく、少なくとも1年間は僕の生活を変えることになることだった。子供をひとり以上求めるならもっと長い期間になる。

「ちょっと考えなくなければ。って言うか、そうなっている間、僕たちの性生活はどうなるのかな? どのくらいの期間が必要か分からないけど、その間、単に君の妊娠した同居人だけになるというのは嫌なんだけど」

その期間、僕たちがそもそも夫婦とすら言えなくなるような感じになるかもしれない。その状況をどう言葉にして説明したらよいか分からなかった。

カレンはカウチの上、僕のところにすり寄ってきて両腕で僕を包んだ。「あなた、そういうふうには全然ならないわよ。あたし……言いづらくて一度も言ってなかったんだけど……あのね……あたし、少し女の人にも惹かれるの。男性に惹かれる時ほどじゃないけど。もちろんあなたは別格」 妻は素早く僕を安心させた。「でも、ちょっとだけよ。こう言うだけじゃ足りなかったら、あたしもあなたに合わせて毎週服薬するわ。そうすればあなたはあたしを離すわけにはいかなくなるでしょう? さっきも言ったけど、短期版のWイェックスだと性欲が増進するし、完全にバイになった気持ちになるわけ……」

そこまで話してカレンは突然笑い出した。

「いずれにせよ、あたしはするかも。まる1年間生理を気にせずにいられるのよ? それっていい話に思うもの」

理論上は、健全なアイデアだと思った。僕は子供が欲しいのか? とてもとても欲しい。 僕はカレンの子供が欲しいのか? 何よりもそれを望む。彼女は子供を産めるのか? いや、産めない。時間はどんどん進んでいる。僕たちは年老いていくのは確かだ。

「その費用は僕たちに賄えるの?」 僕はチェックを入れた。

カレンはさらに強く僕を抱きしめた。「ええ、大丈夫。それって、その気になっているということ?」 と彼女は期待している顔になった。

「そちらの方向に傾いているところ」と僕は白状した。「でも、一晩考えさせてくれる?」

「もちろん! でも、今夜はあなたと寝室に入って、あなたがへとへとになるまでエッチするつもり。だって、そうじゃない? それが、しばらくの間は、あなたのおちんちんを入れてもらえる最後のチャンスになるのかもしれないんだから」

僕は元気を取り戻した。僕もそうしたい気持ちだったから。立ち上がって、洗い物が残ってるキッチンに目をやった……「ちょっとその前にキッチンをきれいにしてからね」

カレンは顔を左右に振って僕の手を掴み、ぐいぐい寝室へと歩き出した。「後からでもいいんじゃない? 今は、あたし、あたしの愛するオトコに抱かれたくて溜まらない気持ちなの」

カレンは熱情の化身そのものになった。それが、とうとう子供が持てるという思いによるのか、僕に何度も劣等感を感じなくてもいいと宥めようとしてのことなのかは分からない。でも、どんな理由であれ、その夜の彼女はこれまでにないほど積極的だった。

ベッドに座る僕に挑みかかるように彼女は唇を寄せ、舌で淫らに僕の口の中を探りまわり、その後、僕の胸に両手を当て、そして僕を押し倒した。ベッドの上、僕は膝から上の部分、仰向けになっていた。

カレンは自分が服を着ていることなど気にせず、素早く僕のズボンと下着を引きずり降ろした。最後まで脱がすのももどかしかったのか、僕の左右の足首は途中まで脱がされたズボンや下着が丸まって、縛り付けられているような形になっていた。そんな姿の僕の勃起を、彼女はパクリと咥えこんだ。

たいていの男たちはどうなのだろう? たいていはフェラチオが好きなのだろう。でも、僕は、10代のころだったと思うけれど、繰り返しセックスできる相手を得るには、愛し合う場面において、与えられる側ではなく、与える側になるのことだと考えるようになっていた。その考え方は僕の本質部分に染み込み、いつしか僕の人間性の一部になっていた。だから、僕は、いかに気持ち良いことでも、単に快楽を与えられるだけでは、居心地が悪く感じる。どうしても、そのお返しをせずにはいられなくなる。

カレンは僕のそんなところも良く知っている。

僕はなんとかしてシャツを脱いだ。「き、君も……うわっ! 君も服を脱いだら?」

カレンは、僕の固くなったペニスから口を離し、僕の目を見てにんまりした。床に正座する格好で僕の脚の間にいて、片手でしごき続けながら、こっちを見ている。

「まだダメ。今はあたしにあなたを気持ちよくさせてて。今夜は、最後まであなたを主人公にするつもりなんだから。あたしにとってあなたがどれだけ大切な人か、どれだけ愛しているか、示したいと思うの」

彼女が卓越したフェラチオを再開するのを受けて、僕はもたげていた首から力を抜いて、頭をマットレスに倒した。彼女が特に求めた場合を除いて、僕は両手を彼女の頭に添えることはしない。だけど、セックスの場面では、僕はとてもこまめに手を動かすタイプだ。触れたり、擦ったり、愛撫するのが好きなのだ。だから、この時は、決して触るまいと、精いっぱいの意志の力を使って、両手を体の両脇に保ち続けた。

普通は、僕も同時に彼女のアソコを舐めるので、妻は気が散り、能力を十分に発揮できないのだけれども、実際、彼女は口唇愛撫について言えば、大変なスキルの持ち主だ。どう吸って、どこを舐めるかをちゃんと知っている。短時間で僕をイカせたいと思ったら、数分で僕をそこに至らせることができる。でも、今夜の妻は、そこに至る時間を長引かせようとしていた。

彼女はとても長い時間、ねっとりと愛してくれた。ゆっくりと吸い込んでは出していく動き。時々休んでは、唇で挟み込むようにしてペニスの底辺部を上下に擦ったり、睾丸を優しく吸ったり舐めたりした。

献身的な愛撫を受けながら、ふと、思った。カレンは意図的に今夜のこの経験を堪能しているのではないか、と。僕の分身が消えた時のために、思い出作りをしているのではないか、と。僕はまだWイェックスを服用すると明言はしていなかったが、彼女には分かったのだろう。もう結論はとっくに出ていると。いったん彼女が何かについて決心をした後は、僕がそれに異を唱えることは滅多にない。実際、彼女の方が僕よりはるかに賢いし、僕は、ずいぶん前から、彼女が十分検討した場合は、どんなことでも、たいてい彼女の方が正しいという事実を受け入れていた。加えて、僕は本当に子どもが欲しかったし、Wイェックスしか僕たちにはそのチャンスがないと思われた。

しかし、妻が僕の射精をさらに先延ばしさせるには、長い時間、頑張りすぎていて、その瞬間は差し迫っていた。

「カレン、もう、いきそうだよ!」

彼女は、僕の勃起の先端部分3センチくらいだけを口に咥え、頭を上下に振り始めた。小さく「んー、んー」とハミングし、僕を見つめながら。その表情は淫らな性欲の顔ではなかった。そうではなく溢れ出る愛情の顔だった。こんな格好で、こんな行為をしているのに、その顔の表情は、それにふさわしい顔つきじゃないと言ってもおかしくなかった。

僕は声を立てず、射精した。10代のころから、自慰をしても声を出さないでいたせいか、セックスの時も僕はほとんど声を出さなくなっていた。これがカレンには理解できなかったようで、分かってもらうまでずいぶん時間がかかった。単に、たわごとや下品な言葉を言ったり叫んだりしなかったからと言って、楽しんでなかったということにはならないのだと。

僕は彼女に出せるものはすべて出し、彼女もそのすべてを受け止め、飲み込んだ。そして唇と舌を使って、過剰なほど敏感になっていた僕のペニスをすっかりきれいにしてくれた。

少し休んだ後、僕は足からズボンを蹴り飛ばした後、ベッドの上、普通に横たわる姿勢になるべく、ベッドヘッドへとずり上がった。その間、彼女は服を脱いでいた。妻の着ているメディカル・スクラブは、彼女の目を見張るボディを覆って隠してしまう点で、人類に対する犯罪と言ってよい。

物欲しげな目をしていたと思うけれど、僕は目の前で次第に裸体を見せていく妻の姿をにんまりしながら堪能していた。豊かな乳房が張りを保って胸に盛り上がっている様子、平らな腹部と細いウエスト、少し大きめのヒップと涎れが出そうになるお尻。ポルノスターでも彼女の体を羨ましく思うことだろう。

「今度は君の番だよ」と僕は自分の顔面を指さした。「君の可愛い子猫ちゃんをここに連れてきてはどうかな?」

でも、彼女はイヤラシイ笑みを浮かべながら首を左右に振った。「いいえ、いけません、ご主人様! 今夜はあなただけのもの。ただ、くつろいでいて。一度だけでいいから、あなたに思う存分、ご奉仕させて」

僕は自分の萎えたペニスに目をやった。こいつはしばらくの間、言うことを聞いてくれない状態だ。「うーん、その思いは感謝してるんだけど、本当に……でも、僕はもう18歳じゃないし。次の出番が来るまで、ちょっと時間がかかるよ」

「大丈夫。あたしもいろいろすることがあるから。だから気を揉まないで。今は、ただ、くつろいでいて」

そう言って彼女は僕の足から官能的にマッサージし始めた。足から徐々に上へと移動してくる。

「いずれ、今の僕の姿が見れなくて寂しくなる時が来ると思う?」と僕は小さな声で訊いてみた。彼女は申し訳なさそうな顔を見せた。

「あたし、そんなに顔に出てしまってる?」

「いや。ただ、僕は君のことをよく知ってるから。君が今の僕のすべてを記憶にとどめようとしてるのが見えるんだ。……いずれ、それがすっかり変わってしまうだろうから」

彼女はエロティックなマッサージの手を止めなかった。「ということは、もう決心したということ?」

「君は間違っているなんて、いつ言ったかな? 君がこれがベストだと思ったなら……僕は、君の思う通り、これがベストだと思うよ」

妻の目に涙があふれてくるのが見えた。「あたしは……あなたに無理強いされてると思ってほしくないの。あなたが普段からあたしの思うとおりにさせてくれているのは分かってる。でも、あなたがみじめに感じると思うなら、その場合は……やらないと言ってもいいのよ? ノーと言ってくれていいのよ?」

「僕は君を信頼している。君があらゆる角度から考え抜いたことだと信じているんだ。君の方がはるかに賢いから、僕は君を信頼するほかないじゃないか。そもそも、僕は何かしようとするといつも失敗してるわけだし。カレン、僕は子供が欲しいんだ。君の子供が欲しいんだよ」

今や彼女は僕の上にまたがった姿勢になっていた。両手の爪を僕の胸肉に立てるようにしながら、僕の瞳を見つめていた。30センチも離れていない。「分かったわ。病院に予約を入れるわね」

不安はあった。それは間違いない。でも、子供が持てるという魅力は、そんな不安に打ち勝つだけの力があった。「だから、僕を捨てたりしないと約束してくれ」

彼女は僕の唇に唇を押し付けてきた。彼女の涙が僕の顔に滴り落ちてきた。「約束する。あなたを愛してるの。とても……今度はうつ伏せになって。背中もしてあげるから」

あまりにリラックスしすぎたのか、背中のマッサージをされてる間に僕は眠ってしまった。翌朝、目が覚めると、ベッドに彼女の姿はなく、伝言だけがあった。僕を愛してるというメッセージだった。

そして、キッチンにはたくさんの洗い物が僕を待っていた。

******

病院のガウンは着心地が悪い。僕は診察台の上に座って、辛抱強く待っていた。お尻が出てるのを気にしないよう努めていた。

ストリッパーとして何年も裸を他人目にさらしてきたんだ。これくらい何てことない。

診察室のドアが開き、妻が入ってきて、ドアを閉めた。「ジョンソンさん、おはよう」と彼女はあいさつした。

「おはようございます、ジョンソン先生」と僕も挨拶を返した。だが、笑いを完全に押し込めることはできなかった。

とはいえ、職場にいる妻を見るのは、この時が初めてだった。たいていは、メディカルスクラブの姿で家に帰ってくる妻しか見ていない。いま、白衣をまとい、首に聴音機をかけ、手に僕のカルテを持ってる妻の姿を見て、僕はちょっと畏敬の念に打たれていた。彼女がどうして僕の担当になったのか分からないけれど、多分、彼女はそのお願いを何度かしなくちゃいけなかったのだろうと思う。

「準備はいい、タイ?」と妻は心配そうに訊いた。

僕は肩をすくめた。「どうかなあ。でも、結局はこれに慣れなくちゃいけないとは思うけど?」

彼女は優しそうに微笑み、コンピュータ制御の装置に重たそうな金属製のシリンダを設置した。「それでは、今から、インフォームドコンセント関係の質問をします。いいですか?」

「もちろん。どうぞ」

「あなたは、今回のWイェックス注入により、あなたのジェンダーを完全に女性に変えること、及び、期間はほぼ1年間で、誤差により8日の前後があることを理解しています?」

「分かっています」

「よろしい。あなたは、これが魔法のように思えようとも、そうではないことも理解している。あなたは84キロの男性であり、84キロの女性になるということを理解している」

「分かっています。君が太った可愛い子ちゃんが好きだといいけど」

カレンは刺すような目で睨み付けた。だが、その目つきの裏で笑ってるのも見て取れた。「あなたは、最終的な体形や特徴を決めるのは、あなた自身のX染色体に隠れている遺伝情報であることも理解している」

僕は目をぱちくりさせた。これは聞いてなかった。「分かりました」

「ジョンソンさん、大変よろしい。あなたは、変身剤の注入に同意されますか?」

「同意します」

これで決まりだ……女性側への旅立ちの時間だ!

カレンはシリンダを取り、底部を回してふたを開け、中の物を抜き出した。実際の注入器は透明の保護ケースに入っていた。注入器をらせん状にチューブが巻き付いていて、そのチューブの中にはピンク色の液体が満たされていた。

「この注入器には底辺部に7本針がついています。7本同時にあなたの肌を刺します。ですが、ほぼ瞬時に刺された跡は消えます。刺された痛みが続くのは数秒間だけですので、動かないようお願いします。注入する場所は、あなたの恥骨の上の部分ですので、今からローブを脱いでいただく必要があります。私がいることが気になるようでしたら、代わりの男性医師を呼びますが、どうしましょうか?」

僕はジョンソン先生は好きじゃなくなっていた。あまりに医療関係者的すぎる。妻に戻ってほしい。

「先生、僕の妻がいてくれると気が落ち着くんですが」

そう言って僕はガウンの前をはだけ、診察台の上、股間をさらした。

「いいわ、あなた。じゃあ、深呼吸して」

深呼吸して、そこで息を止めた。カレンは冷たいシリンダーを僕のお腹に押し付けた。ペニスとおへその間の中間地点あたりの場所に。

そこで妻はシリンダーの上部を外した。同時にチクリと痛みが走り、細い針が僕の中に入ってくるのを感じた。チクリとした痛みは1秒もしないうちに消えた。目の前で、シリンダー内のピンクの液体がチューブを進み、僕の体内に入ってくるのが見える。

「どのくらいかかるのかなあ。僕が女性に……」

途中まで言いかけてやめた。体毛がみるみる肌の中に吸い込まれていくのを見たし、感じたから。注射したへその下の地点を中点として、緩やかな波となって同心円状に広がっていく。1分くらいした後、頭に変な感じがした。髪の毛が伸び始めている。

「血清が体毛をむしゃむしゃ食べてるの。その代わりに頭部の髪の毛を伸ばしてくれる。すべて順調に進んでいるわ」

カレンに説得されてストリッパーの仕事を辞めてから、僕は体の毛を剃っていなかった。8年位前だ。体毛の量がこんなにあったとは知らなかった。みるみる髪の毛が伸びて、濃いブロンドの毛の塊が顔に覆いかぶさり、視界をふさぎはじめた。手で払いのけないと、前が見えない。

「次は柔らかい組織の形成が始まるわ。これはちょっと気持ち悪いかも」

胸が徐々に膨らみ、ウエストが細くなっていくのが見えた。体の筋肉がしぼんでいく。その分、乳房の形成に供給されているのだろう。股間がぐいぐいせり上がってきた。お尻や太ももが膨らんできたせいだろう。

「女性は男性より体内脂肪の割合が高いの。あなたの筋肉細胞の大半が『あなたたち、本当は脂肪細胞なのよ』と言われて説得されているところね。まだ、すべて順調よ」

起きていることをカレンに説明してもらって、ありがたかった。彼女はWイェックスの注入を受ける患者たちに同じことを言ってるのだろうけど。でも、まるで自分が特別に賢い妻に見守ってもらっているようなふりをすることができて、ありがたかった。変化が股間部分と顔に移り始めるのを感じ、僕は固く目を閉じた。

「もうすぐ終わりよ。最後は骨。これはすごく気持ち悪いかも。大丈夫?」

確かに。体の中、骨格が変化していくのを感じる。肋骨と肩がすぼまっていくのを感じた。同時に腰の周辺が広がっていくのも感じる。それに、背が縮んでるのも感じた。診察台に乗ってるおかげか、自分がじわじわと縮んでいくのが分かる。

変化がゆっくりとなり、やがて止まったように感じたが、僕は目を閉じたままでいた。乳房がずしりと胸を圧迫しているのを感じるし、臀部が膨らんだせいと思うけれど、尻の下に新しくクッションを入れたような感じがする。

「終わったようね、タイ。新しい自分の姿を見たい?」

不安感を払しょくしようと、深く息を吸ってゆっくりと吐き出した。体を起こしたけれど、大変な苦労だった。僕はダンスのために勤勉に運動を行っていたが、こんなに体に力が出ない状態は記憶にない。

ようやく目を開け、下を見た。乳房があった。驚くほど大きい!

ぎこちない動きだったが、やっと立ち上がって直立した。その時に初めて、妻と目を合わせようと顔を上げた。顔にかかる髪を払って、彼女はどう思ってるのか、妻の目を探った。結婚指輪が指から抜けそうになるのを感じた。指がはるかに細くなっている。落ちないようにこぶしを握らなければならなかった。

カレンは笑顔で僕を見ていた。壁の鏡を見てみてはと合図を送っている。僕は体をこわばらせながら、壁の方に移動し、鏡に映る姿を見た。

正確には太っているとは言えないけれど、重量感があるのは確かだ。どこを見ても……ずっしりしてる。乳房はカレンのよりも大きかったし、ヒップも大きかった。太ももも太くなっていたが、腕はどちらかと言うと細くなっている。顔は女性的だったが、化粧してないからか、可愛い顔なのかどうか判断は難しい。髪は長く、肩にとどきそうだった。

「どう思う?」と妻が訊いた。

「わ、分からないよ」 口ごもった。新しい声は甲高く、自分の声に驚いた。手を胸に上げ、片方の乳房を持ち上げてみた。「何と言うか……分からないけど。子だくさんのカラダ?」 巨大な乳房と安産型の腰。これを表す、より適切な言葉が思い当たらなかった。

「うふふ。あたしたちの赤ちゃんが十分おっぱいを吸えそうなのは確かね。ちょっと触ってもいい?」 と彼女は僕のバストを指さした。

「あ……ああ、いいよ」

妻は両手で僕の乳房に触れ、持ち上げるようにしてみた後、ぶるんぶるん振り始めた。そうしながら、ずっと12歳くらいの女の子のようにくすくす笑い続けた。

「これってすごいわ。仕事が終わるのが待ちきれない!」

胸をぶるんぶるん振り回される。こんな感覚は初めてだった。僕は彼女に胸をいじられ、遊ばれるままにさせていたが、その後、彼女は僕の後ろに手を回し、彼女のよりずっと大きなお尻の肉を揉み始めた。

「ああ、大丈夫。あなた、あたしがあなたに魅力を感じなくなるんじゃないかって心配していたけど、その心配は不要よ、タイ。ほんとに。女性としての名前については、考えてみた?」

考えていたけど、鏡の中の姿を見ると、「ティナ」とか「テレサ」は似合わないと思っていた。

「似合う名前は何も……。何か考えてた?」

カレンは頭を傾げ、僕の顔を見つめた。手を伸ばして、僕のブロンド髪の毛の房を優しく束ねた。「ちょっとアンバー(琥珀)を思わせるわね。アンバーっていう名は、どんな感じ?」

僕は、もう一度鏡を見るため、彼女の手を優しく払いのけた。カレンはずっと僕を触っていたいらしく、彼女の手から逃れるのが難しくなっていた。ああ、確かにアンバーはいいかもしれない。

「確かに。いい感じ」

カレンは後ろから僕に抱き着き、ぎゅっとしてきた。「ビキニは持ってきた? それとスウェットとサンダルも?」

「ああ。でも、どうしてそれがいるのか分かってないんだけど……」

彼女は部屋に持ち込んでいたバックパックを漁り始め、彼女が前夜に買った白いストリング・ビキニ(参考)を取り出した。サイズを調節可能な下着っていうと、ストリング・ビキニが一番近いのよ。変身してからじゃないとどのサイズになるか分からなかったから」

ビキニを身に着け、彼女に手伝ってもらって紐を結んだ。もっと大きなサイズのを持ってくるべきだった。というのも、ビキニのトップの方、三角布の部分が僕の拡大した乳輪を完全には隠せていないのだ。どう見てもポルノっぽい姿だ。

ビキニの上に、病院に来る時に着ていたTシャツを着た。胸のところがキツクて居心地が悪い。それに、裾は腰の先まで行ってるけれど、お尻までは隠しきれていなくて、極端にミニのドレスを着たような感じだった。カレンからスウェットパンツを借りて履いたが、お尻が合わない。仕方なく、自分が履いてきたスウェットを履いて、足裾をまくり上げた。それでも、お尻や太もものところがかなりキツく、その他の部分は、逆にダブダブになってる感じだった。サンダルはちょっと大きかったが、とりあえず、履くのに問題はなかった。

「それで……これからどうすれば?」

「まずは衣類が必要ね。たいていのお店ではあなたに合うブラは売ってないので、プラスサイズのお店でインナーを買うこと。アウターはその後で買うといいわ。あまり買いすぎないように。後で、ショッピングであなたを手伝おうと計画しているから。ヘアとお化粧のために美容室に11時で予約を入れておいたわ。その後で、ちょっと遠出して免許局に行くこと。そして代わりの免許証を取得するといいと思う」

かなり忙しいことになりそうだと思った。「でもどうやって……というか、自分の服のサイズすら分からないんだよ!」 と僕は不平を漏らした。

妻は優しそうな笑顔で僕を見た。「売り子さんたちが助けてくれると思う。大丈夫。で、あたしは帰宅が少し遅れると思うの。仕事が終わったらすぐに、あたし自身もWイェックスの注入を受けるから。夕食にはピザか何かを注文しましょう」

僕は新しい肉体に慣れていなくてふらふらしていた。「分かった。……オーケイ。できると思う」

妻に言うというより自分に言い聞かせる感じだった。

カレンは手短に僕の唇にキスをした。そのキスを受けるために、顔を上向きにしたが、ちょっと変な感じだった。

「すぐに看護師が来て、免許更新のために必要な書類を渡してくれるはず。じゃあ、今夜、お家でね。愛してる」

「僕も愛してるよ」

******

僕は家にいて、腰を下ろし、新しい免許証を何度もひっくり返して見比べていた。一方の面には昔の自分が出ている。タイラー・レジナルド・ジョンソン。29歳。178センチ。84キロ。ブロンド髪。瞳は青。もう一方の面には、新しい自分。アンバー・メアリ・ジョンソン。29歳。178センチ。84キロ。ブロンド髪。瞳は青。いまだ、現実とは思えない。

再び、胸の位置を整えた。どう見てもトリプルD(参考)よりも大きいのだけど、いま身に着けているブラはそのサイズだ。購入したサマードレス(参考)はローカット(参考)で、胸の谷間がかなり見える。そして、僕は、胸の肌をこんなに露出させることにいまだ慣れきっていない状態だった。

ただ、露出したデザインの方が涼しいのは確かだった。これまで一度も考えたことがなかったのだけど、乳房の皮膚部分を寄せ付けていると、かなりの熱が発せられるのだった。実際に乳房を持つまで、知らなかった。

ほんの些細なことでも、あらゆることが慣れるのに時間がかかった。化粧をした時の顔面の皮膚感覚から、乳房の重さによりブラのストラップが肩に食い込む感覚、さらに、スカートが腰とお尻を包み込む感じである一方、何と言われてるのか知らないけど、スカートの中、脚の部分は裸でいるような奇妙な感覚に至るまで、いろんなことに慣れる必要があった。

いちばん慣れにくいと感じたのは、体が揺れることだ。自慢してるように思われたくないけれども、男としての僕は剛直な肉体をしていた。週に6日は運動をしていたし、食事にも気を付けていた。だが、今は、体のすべての部分が揺れている。特に乳房とお尻がぶるんぶるんと動く。どんなときにも。

玄関が開いて、カレンが帰ってきた。不透明の黒いプラスチックのバッグを片手に持っている。彼女は僕の姿を見ると、特に僕の露わな胸を見つめて、にんまり笑った。

「あたしの美しい妻がここにいる!」と大げさに言う。

僕は顔が赤くなるのを感じ、うつむいて自分の胸を見た。「おかえりなさい」

彼女に妻と呼ばれて、どう感じたか、自分でもよく分からない。でも……今の自分は確かに彼女の「妻」の存在なのだろうとは思った。

カレンは立ち止まることもせず、まっすぐに僕のところに進んできて、片手を僕のあごにあて、顔を上げさせ、舌を僕の口に入れてきた。両腕で僕の体を包み込むようにして、僕を抱きしめ、ふたりのカラダを密着させた。彼女のお腹のあたり、固いものが膨らんでくるような気がした。

名残惜しくて嫌々だったけれど、僕からキスを解いた。乳首がほとんど痛みを感じるほど固くなっているし、パンティが湿ってくるのを感じた。女の身で性的に興奮するのは、男の身で興奮するのとは大きく違う。それほどの刺激的なキスだったということか?

「カレン?」 僕ははにかみながら、お腹を彼女の股間辺りに擦りつけるように動かした。「何か僕に教えたいことがあるんじゃ?」

カレンはイタズラそうにニヤリとした。「待てなかったの。ポルノショップの駐車場で自分で注入しちゃったわ。今のあたしはものすごくムラムラしてるのよ。こんなになったの初めてだと思う」

「Wイェックスでバイセクシュアルになる」という話しには、どこか真実の部分があるのだろうと思った。と言うのも、彼女の勃起が押し付けられるのを感じ、僕自身、興奮してきていたから……これまで思ったこともない種類のイヤラシい考えが頭に浮かんでくるから。僕は、大胆にも、ズボンの上から彼女の長い勃起を握った。それを受けて彼女はハッと息をのんだ。

自分の乳房やお尻がこんなに大きく感じたり、彼女の新しいペニスがありえないほど太くて長く感じる理由は、一部には、自分の手も体も以前に比べてはるかに小さくなったからだというのは、確実だ。小さくなったので、相対的に大きく感じるのだろう。でも、それにしても、カレンのペニスの太さは恐ろしいほどだった。僕は下唇を噛みながら、優しくそれを撫で続けた。

「ああ、もう我慢できない……」 そう妻はうめき声をあげ、僕の乳房を痛いほど強く揉み始めた。「アンバー、どうしてもあなたをヤラせて。今すぐ、ヤらせて!」

僕は自分の初体験の時のことを思い出した。あっという間に果ててしまった思い出。あの時の優しいあの娘は、素早く「いいのよ」と言って僕をなだめてくれたけれど、あれはとても恥ずかし出来事だった。あのような気持ちをカレンに味わわせたくない。本番の前に、別のことをして彼女の切羽詰まった欲望を鎮めてあげられるかもしれない。というか、正直言って、妻のペニスにフェラをするという状況を想像したら、自分も、居ても立っても居られない気持ちになっていた。僕は、いつまでも僕の乳房を揉み続ける彼女の手を払うようにして、その手を握り、寝室へと彼女を引き連れた。

僕が妻を引き連れる形で寝室に入ったものの、彼女は僕が振り返ることを許さなかった。僕に前を向かせたまま、後ろに体を押し付けたままでいた。彼女の両手が伸びてきて、再び、胸を掴まれた。お尻に彼女の勃起が当たるのを感じる。カレンは、僕に後ろから覆いかぶさるような格好になって、首筋にキスを始めた。僕の背中に自分の乳房を押し付けてくる。

「うんーん、あなた……もし……ああ、楽しみたくない? だったら、あたしたち、服を脱がなくちゃ!」

胸もお尻も首筋も。こんなふうに同時にいろんな部分を攻められると、頭の中、理性的であり続けるのがとても難しくなる。

後ろ向きになろうとしたが、カレンはそれを許さなかった。僕は以前とは異なり、もはや、彼女の押さえ込みを振りほどけるほどの筋力がないのだった。

「こんなに、体が小さく、力も弱くなるなんて。あまり嬉しい気持じゃないよ」と僕は不平を漏らした。

カレンは腰を動かし始めた。ペニスを僕のお尻に擦りつけている。「ごめんね……でも、これまであなたの方がずっと大きくて強かったでしょう? 今はあたしの方が強くなってる。それが、ちょっと楽しんでいたい気持ちなの。ねえ、このままさせて? ちょっとだけでいいから?」

僕はため息をついた。抵抗しても無駄だと観念してのため息ではあったけど、快感からのため息でもあった。服の生地の上からとは言え、妻の切羽詰まった手つきで乳房を荒々しく揉まれながら、ペニスでお尻を突かれる感覚は、思いがけず気持ちいい。

「うーん……いいよ。でも、僕が女性の手管を習得した途端、君は困ることになると思うよ」

僕は首を傾け、もっと首筋にキスをしやすいようにしてあげた。同時に胸を揉む彼女の両手に、僕も両手を重ねた。彼女に体をゆだねる格好になる。

カレンは僕の胸から片方の手を離し、腰の後ろ、僕のドレスのウエスト部分を引き締めている結び目へと移動した。そして紐を引っ張って結び目を解く。ドレスが緩くなると、手繰るようにしてめくりあげ、最後には、僕の頭から引っ張り剥がし、脱がされた。

カレンは僕の両肩を掴んで、前を向かせた。いきなりキスをし、淫らに口の中に舌を入れてきた。僕も彼女の尻頬に両手を伸ばし、ぎゅっと握った。同時に彼女の体を自分に引き寄せ、いっそう、ふたりの体を密着させた。

彼女は巧みに僕のブラのホックを外し、ふたりの脇に放り投げた。せっかく彼女が気に入ってくれるかもしれないと思って選んだ黒いレースのブラ。だけれど、彼女はほとんど気に留めなかった! カレンは僕の胸を露わにした後、いったん引きさがって僕の姿を見た。興奮した様子で一瞬、僕に微笑んだ。すると、いきなり僕の前にひざまずき、片方の乳首に吸いついたのだった。

僕は男だった時は、乳首をいじられるのを喜んだことは一度もなかった。でも、今はすべてが違っていた。ものすごく感じる。あまりに気持ちいいので、知らぬうちに、メロンサイズの乳房を丸々彼女の飢えた口に押し込むとせんばかりに、彼女の後頭部を両手で押さえつけていた。

彼女は、僕の胸を吸いながら、片手を僕のパンティの中に滑り込ませた。そして僕は、クリトリスを擦られるとどんなふうになるのか、生まれて初めて感じることができたのだった。両ひざががくがく震えていた。

僕が立っていられなくなったのに気づいたのか、妻は嫌々ながらも仕方なく僕の胸から口を離した。でも、股間のあのボタンへのゆっくりと円を描くような指の動きは止めてくれなかった。

「すごく濡れてるみたいね、アンバー」

僕は息が乱れていた。「君もすごく固くなってるよ! 僕がそれを何とかしてあげなくちゃいけないと思うんだ。緊張感を解いておかないとね。さもないと、君は、本番になってもあっという間に終わってしまうと思う」

カレンはちょっと考えた後、頷いた。「それもそうね。ちょっと休ませて」

彼女は僕の脚の間から手を引っ込めた。ヌルヌルになった指。それを自分の口に持っていき、ちょっと舐めて、ぬめりを取った後、引きちぎるようにして自分の服を脱ぎ始めた。切羽詰まってるように、あわてて脱いでいる。完璧な状況なら、僕たちはもっとロマンティックに互いの服を脱がしあったと思うけれど、カレンの体内にある短期版のWイェックスに含まれているものが何であれ、それによって彼女は極度な性的興奮状態にあるのだった。ゆっくり行いたいといった気持ちは彼女の中には存在していない。

僕も、濡れたパンティを脱いでベッドに座った。いわば最前列の席に座って、妻の新しい持ち物を鑑賞する構えだ。

とうとう、それが姿を現した。巨大だった。自分自身の体が小さくなっているので、長さを推定する能力はあてにならなくなっていたけれども、それは少なくとも17センチ、いや20センチ近くあったし、相応の太さで、彼女のつるつるの恥丘から突っ立っていた。しかも、亀頭が驚くほど丸々と太っていて、カリも高い。先端部からプレカムが1滴、今にも落ちそうに糸を引いて垂れていた。

まさに美形と言って良かった。気づいたら、僕はそれを見つめながら、口の中を涎れでいっぱいにしていた。そのまま視線を上に向け、妻の目を見た。彼女は両手を腰にあてて、自慢げに微笑みながら僕を見下ろしていた。あそこの筋肉を収縮させたのだろう。ペニスがピクン、ピクンと跳ねた。

手が勝手に出て、彼女のペニスの根元を握っていた。小さくなった僕の手では全部を握りきることができなかった。優しく引っ張り、彼女を、僕の開いた太ももの間に立つところまで近づけた。顔をかしげ、あの先端に垂れていたプレカムのしずくを舐めた。すこし粘っこく、甘い味がした。

カレンはすぐに片手を僕の後頭部に添えた。「ああ、すごい。すごく感じる! どうして、あなたはあたしに一度もこれをさせなかったの?」

僕は彼女のペニスの底辺部を舐めてから返事した。「同時に君も感じてくれないなら、一方的に奉仕されても僕は気持ちよくなれないからだよ。僕はそういう人間なんだ」

そう言ってから、彼女の王冠の部分だけを唇で包んだ。そしてゆっくりと吸いながら、顔を引き、ぷるんと唇からはじき出してみた。

「もう! あたしにはムリ……あなたはいつも今あたしにしてくれてるように献身的だった。あたしにはできないの。ごめんなさい。でも、これって、気持ちよすぎる」

僕は微笑みながら、彼女を見上げた。セクシーなふたつの乳房の谷間。その谷間の向こう、僕を見下ろす彼女の顔が見えた。

「好きなだけわがままに振る舞っていい許可をあげるよ。君がペースを仕切って。そして僕には何をすべきかを命令して。いいね?」

どのみち、僕にはどう進めてよいか分からなかった。カレンが気持ちよくなるようにする。それを一番に据えるのが、僕の前からのディフォルトの立場だった。だから、この時も、それでやっていくことにした。

妻はにんまりとした。「ほんとにあなたはあたしにとって嬉しい人。じゃあ、両膝をついて、床にひざまずいて」

僕はベッドから滑り降り、膝立ちになった。彼女の脈打つペニスが僕の胸と同じ高さになった。特に何も意識せずに、両脇から乳房を押さえ、彼女の勃起を挟み、やんわりと包んで揉み始めていた。滑らかにこれをするには潤滑が足りなかったので、唾液を絞り出して、彼女の亀頭に垂らした。かなり唾液を出したけれど、それでも口の中に唾が溢れてくる。出しても出しても、口の中に溜めておかなくてはならなかった。

「うわあ、すごい! これも気持ちいい!」と妻は僕を褒めてくれた。同時に腰を使って、僕の乳房が作る肉肌の筒に出し入れを始めた。

妻のつるつるのペニスが僕の胸に滑らかに出入りする感覚。これは思っていたよりずっと気持ちよい感覚で、僕はその感覚にうっとりとなっていた。それに加えて、彼女のひとつ目の怪物が僕の柔肌に埋もれて消えては、ぬーっと顔を出す光景。これにも催眠術に掛けられたように僕はうっとりとなっていた。

ぼーっとなりつつも、その感覚を楽しんでいたが、突然、カレンがぐっと腰を突き出し、僕の頭を押し下げ、ペニスに近づけた。何を求めているのか、僕にはよく分かる。僕は妻の膨張した亀頭を口に含み、吸い、同時に乳房を左右からぎゅっと押して、彼女の肉茎を強く挟み込んだ。

「あ、ああーんっ!」

カレンは、弱々しく泣き声を上げたと思ったら、その直後に僕の口の中に爆発的に射精を始めた。彼女がオーガズムに達したのが分かる。待ち構える僕の口の中にどっどっと撃ち込んでくる。射精のたびに彼女の肉茎がビクンビクンと痙攣するのも感じる。射精のたびに、その直前に彼女のシャフトの底辺部が太く膨れ上がるのを感じたが、それがとてもエロティックに感じられた。敏感な乳房の肌を通して、彼女の肉茎の動きがびんびんとこっちにも伝わってくる。

何発か撃ち出された後、やがて小さな滴り程度に変わり、ようやく妻の射精が終わった。彼女は僕から離れ、よろけるようにベッドに座った。僕とふたり並んで座る格好。僕は妻が出した精液を口の中で少しくちゅくちゅした後、飲み込んだ。美味しいモノではなかったが、嫌なモノというわけでもなかった。彼女が喜ぶなら、これくらい何でもないと思ったし、別に嫌なことでもないと思った。

妻はベッドに倒れ込むように仰向けになった。片腕で顔を覆い、目を隠している。そして、突然、独り言のように語り始めた。

「……10代のころ、友だちとよく『みこすり半』(参考)のことをバカにして冗談を言い合っていたの。でも、この期に及んでそれがどういうことか自分で体験するなんて……ちょっと屈辱的な気持ちになってる」

僕もベッドに這い上がって、彼女のすぐ隣に横たわった。でも、すぐに体を起こし、いったん乳房を体の下から出して、再び横になった。胸が体の下に入ってしまい痛かったから。これも未経験のことだった。

「それを考えて、落ち着いてもらおうとしたんだよ。さっき、言ったよね? 緊張感を解くって。で、どんな感じだった?」

妻はようやく目を覆っていた腕を降ろした。泣いていたのか、鼻をすすっている。

「すごく良かったわ。良すぎた。あたし、Wイェックスを飲む前から、あなたの胸を見てワクワクしていたの。なのに……」と彼女は頭を左右に振った。「パイズリを1分もしてなかったのに、終わってしまった」

僕はよく分からず、混乱していた。「どうして、そんなに落ち込んでるのか分からないよ。緊張を解いてあげようって僕が言った時、何を考えていたの?」

「分からない。多分、持続力をちょっと増やすこととか?」

僕は彼女の平らなお腹を撫でて、なだめてあげた。「初体験の時は、そんなものだよ、カレン。それが普通なんだよ。いい?」

「うん」と彼女は顔を上げ、目を細めて自分の股間を睨み付けた。そして、新しくできた付属物に向かってつぶやいた。「あたしをがっかりさせて、このバカ!」

僕は笑ってしまった。彼女の言い方が可笑しくて、どうしても笑わずにはいられなかった。僕の手は、彷徨うように下の方へと動いていた。お腹の平地を進み、倒れた塔へと向かう。そして優しくそれを握った。

「包皮がないのには驚いた」

妻は別に嫌がることもなく、僕にそれをいじるらせるままにしてくれた。

「多分、美的な理由だと思う」

「どういうこと?」

「皮かぶりのディルドなんてないでしょう? 多分、意図的に包皮ができないようにできてると思う」

なるほど、理屈が通ると思った。僕はベッドの上、少し体を起こそうと動いたが、その時、重い乳房が揺れて、間違って彼女の顔を叩いてしまった。思ったよりちょっと強く当たってしまったと思う。

「あ、ごめん。……さっき、僕の胸を見てワクワクしてたって言ったよね?」

「胸? ふーん。あなたはこれを胸って呼ぶの?」と彼女は両手で僕の乳房を揉み、その柔肌に顔を擦りつけ始めた。感触がいいのだろうけど、僕の方としても、そうされるととても気持いい。

「胸と呼ぶのは嫌い? おっぱいがいい?」と訊いてみた、「それとも、ちぶさ? にゅうぼう? お乳? パイパイ? ミルク袋? お楽しみバッグ? エアバッグ? 緊急時浮力獲得装置?」と調子に乗って畳みかけた。

カレンは僕の胸に顔を埋めた。笑いをこらえようとしてのことだけど、それはうまくいかないようだった。少なくとも、彼女はもう落ち込んではいない。「あなたがおっぱいって言うときの発音が好きよ」

「本当に?」

「う、うん……。なんとなく子供っぽいけど同時にセクシーな感じがして」

「いいよ。で……お願いがあるんだけど、君が2回戦目の準備ができるまでの間、僕の体とかおっぱいとかをいじってくれる?」

正直、僕自身も何か刺激を与えてもらえないと、何かが体の中に溜まり続けてしまい爆発しそうな気がしていた。

僕の求めに応じて、妻はすぐに僕の体を押して、仰向けにさせた。そして這うようにして、淫らな笑みを浮かべながら僕の脚の間へと体を割り込ませてきた。そして顔を僕の胸に当てると、顔面や頭を僕の乳房に擦りつけ、その後、激しく顔を動かしてモーターボート(参考)のような音を出し始めた。

妻が僕の胸の谷間で頭を振り、ボート音を立てるのを受け、僕はショックと、子供っぽい遊び心の入り混じった気持ちで、身動きできずにいた。やがて彼女は息が切れて顔を上げたが、顔を真っ赤にしつつも嬉しそうな表情で、大きく深呼吸をした後、声に出して笑っていた。

僕は困った顔をしながら訊いた。「今の、気持ちよかった?」

カレンはうんうんと何度も頭を縦に振った。「あなたのおっぱい、大好き!」

僕は「うーん……」と唸り声をあげ、恥丘の部分を押し上げた。彼女が僕の上、体重を乗せているお腹の部分に、僕のつるつるの濡れた陰部を擦りつけた。

「そう、なら良かった。でも、僕は……ココの部分が飢え切ってて、今にも死にそうになってるよ。僕の中から女の子が出てくるのを手伝ってくれない?」

女性になったことを受け入れる。やろうと思えば、できるかもしれない。いや、そうしなければいけないのだ。まだまだ、先は長いのだから。

カレンは唇を噛んで、意を決した顔になり、僕の体の上をゆっくりと下方に移動し始めた。柔らかい腹部の肌を舐めたり、キスをしたりしつつ、ゆっくりと下がっていく。そうされながら、これから本気でダイエットとエクササイズを始めなくてはいけないと思った。体重が重いのは、細胞の脂肪のせいではなくて、筋肉のせいだとしたら、そもそも体重を減らすことが可能なのかも分からなかったけれど、是非とも、もっとスリムな体になりたいと思った。

そして、とうとう、妻は僕の割れ目へとたどり着いた。舌で、そこの唇を左右に分けられる感覚……非常に変な感じであると同時に、とても気持ちがいい。クリトリスを舌で円を描くようにこねられ、チューっと吸われた。「ああっん!」と思わず大きな声を出してしまった。

妻はびっくりして顔を上げ、僕を見た。僕は、目をぱちくりさせて彼女を見た。「え、何? どうしてやめるの?」

妻は面白いものを見るような顔で僕を見た。「いま、あなたが喘ぎ声を出したから」

顔が赤くなるのを感じた。「ああ、それ……き、気持ち良かったから。……で……もっとしてくれる?」

カレンは、口や顎の周りをテカテカにしたままニヤリと笑って、また顔を埋めた。彼女はとても上手だったけれど、それは驚くに値しないことだろう。彼女は女性として、体のアソコの部分について良く知っているのだ。いわば、外も中も何もかも知っている。

妻の巧みな口唇攻撃に、僕は何度も喘ぎ、時には泣き声に近い声を上げ、体をくねらせ悶えた。そして、彼女によって、僕は、生まれて初めての女性としてのオーガズムへと導かれたのだった。

僕は、男性としてオーガズムに達した時は、爆発的な感じだった。強烈な快感が、運が良ければ10秒くらい続くオーガズム。でも、今回のは、それとは違い、より穏やかな快感で、それが波のように襲ってくる感じ。ただし、持続時間は男性の時よりはるかに長い。初めての快感に気もそぞろだったのか、僕は何も考えずに妻の頭を両手でつかみ、自分の中心部分へと強く引き寄せていた。そして、快感が薄れていくまでずっと、彼女の顔面に股間を擦りつけていた。

かつては、一度オーガズムを味わった後は、一定の休憩時間を持っていたのだけど、この時は、いった後も、すぐに次の段階に進むことができていて、もっと続けたい気持ちでいた。だが、そこを何とか我慢し、カレンの頭から手を離し、謝り始めた。

「ごめん。自分でも何が何だか分からなくなっていた」

彼女は気にせず笑い、両手で顔の湿り気をぬぐいながら言った。

「気持ちよかったんじゃない?」

「うん。ほんとに。だけど、それでも、もっとしてほしい気持ち。カレン・ジュニアの方はどう? まだ準備ができてない?」

妻はベッドの上、膝立ちになって、極太の一物を握り、擦り始めた。その擦り方が妙にエロティックに見える。準備が整っている様子だった。固く勃起して、大きくなっている。大きすぎて、とても迎え入れられないと思えるほど。

「うーん……。さっきのことをしてたら、すごく興奮してきたわ。ほら、見て、この電車! すごく長くなってるでしょう? 発車オーライ、出発進行よ!」

僕は慌てて両膝を閉じた。彼女のあんなに巨大な「電車」、とても僕のトンネルに入りそうもない!

カレンは、ペニスを握って僕の閉じた脚の前にひざまずいていたけど、唖然とした顔をした。まるで、僕に突然平手打ちされたみたいに、呆けた顔をしてる。「えーっと、タイロン? いや、アンバー?」

僕は強調して言った。「それ、とてもじゃないがフィットしそうもないよ」

カレンはうつむいて、自分のペニスに目を落とした。しっかり握った手から、はち切れんばかりにそそり立っている。そして、何か考えているのか、セクシーに下唇を噛んでいた。

「いいわ、言いたいことは分かった。でも、それって、ちょっと、馬鹿げてると思わない?」

「僕なら、馬鹿げてるじゃなくて、恐ろしいという言葉を使うけど」

妻はようやく自分のペニスから顔を上げ、僕を見た。

「優しくするって約束する。大丈夫、うまくいくから。大変かもしれないけど、なんだかんだ言ったって、あなたの体は、あそこを赤ちゃんが通って出てこれるようにできてるの」

確かにそうだった。それにカレンは医学の学位を持っているのだ。僕はためらいがちに脚を広げた。

「でも、もし、それをこじ入れて、僕に傷つけたら、カレンにはカウチに寝てもらうからね。今の僕は、君の妻なんだから」

妻が膝立ちのまま、僕の脚の間、こっちににじり寄ってきた。そして十分近くなると、両手をついて、体を支えながら上半身を傾けてきた。ふたりが顔を近づけた形になる。彼女はペニスを握って、王冠部分で僕の割れ目を上下に擦り、亀頭を僕の分泌液で濡らし始めた。割と荒々しく擦ってる。その間、僕は目を大きく見開いて彼女の視線を見つめていた。

そして、とうとう入ってきた。1、2センチくらいか、僕の体をほんの少し割ってくる。男性であった頃の経験から、この時の突っ込みたいという衝動がとても強力なのは知っていたので、いきなり根元まで挿入してくるかもしれないと思い、僕は防御の意味で彼女の腰を両手で押さえた。でも、妻はそんな予想をしていた僕を驚かせた。というのも、彼女はゆっくりと小さな出し入れの動きを交えつつ、ほんの少しずつしか侵入してこなかったから。

彼女の優しい挿入によって僕の恐怖心を打ち消されると、僕は下腹部から生じる感覚に集中することができた。優しくではあるけれども、太いモノによってメリメリと体を内部から押し広げられていく感覚。これには驚いた。こんな感覚は初めてだった。

カレンは顔をゆがめていた。自分自身を押さえつけようと頑張っているのか、苦しそうに、口を大きく開け、歯を見せた顔をしている。

「すごくキツイわ、あなた」 と彼女は小声で言った。

「処女ですもの」と僕はわざと自慢げに言った。「……ちょっと待って、まさか、知らないわけないよね? 僕にはアレが……分かるよね?」

妻がくすくす笑った。そのせいで彼女のペニスがピクピク動いた。「いいえ、大丈夫。Wイェックスでは処女膜は形成されないから。じゃあ、もう少し奥まで入れるけど、いい?」

僕は頷いた。妻はゆっくりとさらに奥へと進んできた。妻のペニスは、僕の体の中、胃袋あたりを突き上げようとしてるような気がした。もちろん、僕は、今のような体の構造になったことがないわけで、ひとつひとつの感覚について、参考にすべき経験が全くのゼロだった。「ああ……」と僕は首を鎌首のように持ち上げ、訊いた。「全部、入った?」

「あ、いやまだ。まだ半分は残ってる。どうする?」 彼女は心配そうに問い返した。でも、小さな出し入れの動きは続けたままだった。

僕は持ち上げた首をがっくりと枕に落とした。まだ半分だけ? 「入れてきていいよ。でも、一度に少しずつで」

カレンは言うとおりにしてくれた。そして、じきに根元まで貫通した。大きな睾丸が僕のお尻に触れていた。いっぱい、いっぱいに詰め込まれた感覚だったけれど、悪い感じでは決してなかった。

「ああ、あなた? この感じ、すごい」と妻は言い、僕に顔を寄せてキスをした。彼女の唇に僕自身の体液の味がした。自分の愛液なのに、かなり美味しい。正直、驚いた。

妻は、できるだけ急かさないよう、辛抱強く堪えていたのだろうけど、そろそろ限界かもしれない。彼女は、根元まで入れたペニスを半分ほどまで抜いた後、ぐいっと押し込んできた。そのインパクトで、僕の体は突き上げられ、ベッドの上、揺さぶられたが、それと同時に電撃的にショックが体中を駆け巡った。両脚が無意識的にぶるぶる震えた。

その僕の姿を見て妻はにやりと笑って、もう一度、同じことをした。僕の口から、「くうーっ」と、自分の声とは思えない甲高い甘え声が漏れた。その声、僕自身もセクシーな声に感じた。彼女は、両手の位置を変え、ゆっくりと、本格的な動きを始めた。

カレンは体をさらに下げてきた。その結果、それまでふたりの乳房は、それぞれが奔放に揺れていたのだが、それが密着する姿勢になり、揺れは鈍くなっていた。彼女は僕にキスをしようとしたけれど、呼吸が乱れているため、なかなか上手くいかないようだった。それを察した僕は、自分から両腕を伸ばして、彼女を抱き寄せた。僕の体の上にうつ伏せに横たわってもらう形になった。そうすれば、妻はさらに動きやすくなるはず。

力強く出し入れをする妻。彼女のペニスで僕のクリトリスが擦られるたびに、僕は悩ましい声を出し続けていた。そんな声を出してることが恥ずかしくてたまらないのだけど、どうしても声が出てしまう。片手で彼女の頭の後ろを押さえ、もう片手で背中を抱き、両脚は、できるだけ彼女の腰に巻き付けるようにして、体全体でしがみついていた。何か本能的なものが働き、僕は、どうしても彼女と一体化し、ひとりの人間へと融合したい気持ちになっていた。自然と言葉が出ていた。

「ああ、カレン……もっと、もっとやって!」

明らかに、女性にとっての「良いセックス」とは、現実の本当のオーガズムを別にして、10分の1のオーガズムが、ずーっと続くことのようだ。妻がペースを上げてからしばらくすると、僕はオーガズムに達し、その後は、連続化し、強烈な体の痙攣と快感で、咆哮しっぱなしで止められなくなっていた。

「やめないで! もっとやって! その大きなおちんちんで突きまくって!」

あまりの快感に理性がどこかに飛んでいくのを感じた。

でも、良いことはすべてやがて終わりが来るものだ。カレンは最後の一突きを僕に叩き込み、次の瞬間、収縮した僕の膣壁を通して、彼女自身オーガズムに達し、射精を始めたのを感じた。

熱い精液が僕の飢えた子宮へと撃ちこまれる。それを感じ、またも、新たなオーガズムが始まり、体をくねらせ、のたうち回った。妻は僕の中に注ぎ込みながら、射精のたびにセクシーな唸り声を僕の耳に吹きかけていた。

それが終わり、ふたり、激しく呼吸を続けながらも、しっかりと抱き合い、体を休ませた。やがて、カレンが僕の中から抜け出ようとした。僕は依然として絡めていた両脚に力を入れ、彼女の動きを止めた。

「もう少し中にいて。君が柔らかくなるまででいいから。いい?」

妻は両肘をつく姿勢で体を起こし、愛情たっぷりに僕にキスをした。「で、どうだった?」

「うーん……」と僕は嬉しく唸った。「君は僕を、君のちんぽなしでは生きていけない、とんでもない淫乱女にしてしまったと思うよ」

カレンはそれを聞いて声に出して笑った。笑いながらも、僕の敏感になっている膣肉の中、彼女のペニスがピクピク動いて、変な感じがしたし、エロティックだとも思った。

「ええ、あたし自身、ちょっとヤミツキになりそう。本当に気持ち良かった?」

「最高だよ。もし、君が僕からあの快感を得ていたのだったら、君が毎日4回は僕の上にのしかかってこなかったのが不思議なほど」

「分かるわ。あたしも、男の人がどうして自分のペニス中心にいろんなことを考えるのか、分かってきたような気がしてるの。正直、突然思ったんだけど、あたしがその気になっていないとき、あなたは、よく、あんなに自分をコントロールできていたなあって、すごく感心してるのよ」

カレンのペニスは次第に柔らかくなり、とうとう、ひとりでに抜け出てしまった。コルク栓が抜けるのに合わせて、多量の体液が洪水のように僕のぱっくり開いた穴から流れ出てきた。

「うわあ、気持ち悪い」と、僕は不平を漏らした。こういうものなのだろうけど、気持ち悪いのは事実だった。

それにもカレンは笑い、僕はようやく彼女を解放した。カレンはベッドから降り、僕に言った。「一緒にシャワーを浴びよう、アンバー。体の洗い方を教えてあげるから」

妻は、体液の残りが床に垂れないようにと、片手でペニスの下に手を添えながらも、跳ねるようにしてバスルームへ向かった。そして何分かの後、シャワーが流れる音が聞こえてきた。

僕も、垂れないようにと注意深く股間を押さえながら、バスルームに向かった。バスルームに近づくと、妻がくすくす笑っているのが聞こえた。だが、次の瞬間、「えっ、あっ! ダメ、ダメ、ダメ!」と叫ぶ声が聞こえた。

急いで中に入ると、妻がトイレの前に立っていて、小便を便器に入れようと、妙な角度で体を傾けていた。

そしてトイレの周辺やら、後ろの壁まで、あっちこっちおしっこだらけになっている。うわっ、これじゃあ、明日はベッドシーツの洗濯に加えて、バスルームの掃除もしなくちゃいけない。もうちょっと近づいて、よく調べ、悟った。明日じゃ遅い、今夜にも掃除しなくちゃ。

でも、僕自身、股間の指からドロドロが漏れ出してたので、急いでシャワーに入った。「そっちは大丈夫、カレン?」と声をかけた。

「全然、ダメ! あなた、これ、本当にごめんね。立っておしっこするのって面白そうと思っていたけど、でも、トイレ以外のあっちこっちに出ちゃうの! ずっと前から、男っておしっこするとき全然注意しないものなんだなって思っていたけど、本当は、命中させるのが難しいということなのね?」

僕は笑った。声に出して笑っていた。「おしっこするとき、ちゃんとつかんでた?」 僕は片足をシャワー台の上に乗せて、ドロドロがあそこの穴から出やすくさせた。

「もちろん!」

そう言いながらカレンもシャワールームに入ってきた。後ろから手を伸ばして、僕のおっぱいを軽く揉みながら、シャワーの水しぶきの中に入ってきた。

「本当はどういうふうにすべきなの?」

体の中のドロドロは、出し方を教えてもらうか、手助けしてもらわないとできないと分かり、僕は諦め、体を洗おうと、僕のボディウォッシュを取った。妻はそれを僕から奪い、代わりに彼女の女性用ウォッシュをくれた。ああ、そういうことか。

「君のやり方でいいんだよ。出し始めは、狙うのがちょっと難しいけど、その後は大丈夫。さっきの問題は、セックスした直後におしっこをしようとしたせいだよ。あれの後だと、いつも変な方向に出ちゃうものなんだ」

「ちょっと待って。それって、あの『ふたりの男とひとりの女』(参考)って映画のシーンにあったこと?」

「アハハ。そうだよ。セックスした後は、座っておしっこをすること。次の日の朝でも同じ。じゃあ、今度は僕にあそこの洗い方を教えてくれる?」

******

その日の朝、僕はゆっくりと目が覚めた。温かく、ぬくぬくと気持ちいい目覚めだった。妻は、自分の方が背が高いし、ふたりの関係でペニスを持っているのは自分だけなのだからと、スプーン重ね(参考)の姿勢で眠るときは、彼女の方が大きいスプーンになると言い張った。

僕の腰には彼女の腕がだらりと巻き付いている。それに僕のお尻の頬の間には、非常に固く勃起した彼女のペニス。彼女はまだ目が覚めていないのだけど、少し荒い息遣いをしてて、わずかに腰を前後に動かしていた。僕は僕で少し濡れてきている。

ベッドサイド・テーブルの時計を見た。目覚ましのベルが鳴るまで、もう20分はある。彼女を起こさないようにと、僕はゆっくり掛け布を剥ぎ、彼女の抱擁からすり抜けた。

僕は唇を噛んでぐっと我慢した。前の僕ならこういうふうにして起こされるのを喜んだだろうけど、彼女は僕ではない。でも、どうでもいいさ、何と言っても、僕をエッチな気持ちにして目覚めさせたのは、他ならぬ妻の方なんだから。

僕は、できるだけ優しく、妻の体を仰向けにさせて、掛け布を下まで全部めくった。

何て美しい姿だろう。髪は原始時代の女性ふう(参考)にワイルドに乱れ、胸の大きなふたつの乳房は、呼吸に合わせて上下に隆起を繰り返す。そして、彼女の巨大なペニス。それが今は固く勃起し、顔の方を指し、平らなお腹にくっつきそうになっている。

僕は昨夜のセックスでちょっとあそこがヒリヒリしていた。だけど、ちきしょう、もっとヤリたくなってる。彼女を揺らさないよう、ゆっくりと動いて、注意深く妻の腰をまたいだ。脚の間に手を伸ばし、彼女の勃起を握って、まっすぐに立たせ、僕のあそこの口へとあてがった。そして、ゆっくりと腰を沈め、中に入れていく。亀頭部が入ったのを感じ、僕は小さくヨガリ声を漏らした。

カレンは眉をしかめて、口を開いたけれど、眠ったまま。僕はゆっくり上下に動き始め、妻の太い一物を徐々に飲み込んでいく。そして、とうとう、最後まで飲みこみ、僕は妻の下腹部の上に座る姿勢になっていた。

少しだけ腰を揺らしてみた。とても気持ちいい。今度はゆっくりと腰を持ち上げ、そして降ろしてみた。こっちの方がもっと気持ちいい。彼女の大きなペニスの上、僕はゆっくりとではあるけれど、上下に動き始めた。乳房が跳ねて、あっちこっちに動き回った。できるだけ跳ね回らないようにと、僕は両手で胸を押さえなくてはいけなかったが、手で押さえながら動くと、これもまた気持ちいいと分かった。結局、両手で乳房を押さえながら、僕は動き続けた。

自然と両手で乳房を揉みながら、目を閉じ、頭を後ろに傾けていた。腰だけは勝手に動き続けている。そして、その間にカレンも目を覚ましたようだった。どうしてそれが分かったかと言うと、彼女の手が僕の腰を掴み、彼女も僕に協力するように腰を使い始めたから。完全に目覚めたのか、ずんずんと下から突き上げてくるのを感じる。

「こんな起こしかたってある、アンバー?」と彼女は何気なさそうな調子で言った。

僕は頭を元に戻し、彼女を見降ろした。「君のせいだよ。君は寝ながら股間で僕を突いていたんだから」

彼女は何か言いたそうな感じだったが、僕は反論のチャンスを与えなかった。体を前に倒して、彼女の顔に片方の乳房を押し付け、口をふさいだ。

カレンは僕の要求に応じ、勃起した乳首を吸い始めた。同時に、結合してる部分の動きを一手に引き受けてくれた。

大きなペニスで繰り返し貫かれる感覚は夢のように気持ちいい。そして、大きなペニスで繰り返し貫かれながら敏感な乳首を座れる感覚は、さらにはるかに気持ちいい。

「ああ、いいっ! ああ、このおっぱいを吸ってくれ。もっと突いて! もっと、もっと強く突いて!」

ふたつの異なった部分をこういうふうに攻められ、その朝、最初のオーガズムはあっという間に襲ってきた。

「あああっ、いきそう。いくよ、君のおちんちんでいくよ! いい? いい? ああっ、いくっ、いくーっ! やめないで、カレン。すごいんだ! すごくいきそうなんだ。いく、いくぅぅぅぅっ!」

僕がオーガズムに達している間、彼女はずっと突き続けてくれた。しばらくすると、彼女は突然びっくりするような力を出して、僕の体を抱いたまま反転し、僕の上になった。そして、僕の小さなアソコに対して、大きな一物で残虐ともいえそうな攻撃を始めた。

自分が何を言っていたかすら今は分からない。ただ、僕は自分の体のコントロールができなくなっていたばかりか、自分の口のコントロールもできなくなっていた。カレンを何度も褒め、励ましたのは確かだし、祈りの言葉も叫んでいた。それに加えて、他人が聞いたら顔が青ざめるような下品な言葉も言ってたと思うし、助けを懇願する言葉も言ってたかもしれない。

カレンに激しく突かれながら、僕はさらにもう2回、オーガズムを味わった。長く持続するオーガズムだった。そしてその後、今度はカレンに髪の毛を掴まれ、強引に目を合わせるようにさせられた。乱暴で強引だったけれど、不思議と嫌な感じはしなかった。仕向けられるまま、彼女の瞳を見つめた。すると彼女は最後の一突きと言わんばかりに強く叩きこみ、深々と挿入したままで留まった。力強い噴流が僕の中の肉壁に当たるのを感じた。まるで消化ホースから噴射するような強い噴流だった。

こんなふうに髪を鷲づかみされるのが不思議と気持ちよかった。その快感と、妻の発射した熱い精液が、おそらく僕の子宮と思われる内壁に当たり砕ける快感。そのふたつの快感に酔いしれながら、僕は4回目のオーガズムに達した。

僕は両手で妻のピチピチに張りのある見事な丸みのお尻をしっかりとつかみながら、満面の笑顔で彼女を見つめていた。これほど完全に満足感に浸ったことはないのではないだろうか。男だった時は、一日に2回射精できたら良いほうだと思うけれど、今のは、1回のセックスで立て続けに4回もいったのか? そんなのって……何と言うか、退廃的すぎる。まだ、夜明け前だというのに。

「あんなふうに起こしてしまったけど、怒っていないよね?」

カレンは怒ったふりをしたが、顔は笑っていた。「あんなふうに起こしてくれるならいつでも構わないわ」 そして時計をちらっと見た後、「でも、もう、シャワーを浴びて仕事に行く準備を始めなくちゃ」と言った。

「ああそうだね。僕も、脚のガクガクが収まったら、朝食の用意をするよ」

妻は僕を見ながら、笑いだしそうになって言った。「でも、その前に、あたしを離してくれなくちゃ」

ああ、そうだった。僕はまだ彼女を脚の間にしっかりと抱え込んだままでいたのだった。僕が脚の力を緩めるのに合わせて、彼女は素早く僕から抜け出た。あそこが敏感になっていたのか、抜け出るときの摩擦でもジンジンと感じてしまい、思わず、悩ましい声を出していた。

妻が抜け出たのを受けて、素早く手をあそこに当てて、漏れないように蓋をした。正直、手を当てても、あまりいい感じはしなかった。

脚に力が戻ってきたのを感じ、起き上がって、トイレに行き、できるだけ妻の出した子種液を絞り出そうとした。

「カレン? 僕が妊娠するまで、どれくらい時間がかかるのかなあ?」

シャワーの音に混じって彼女が返事する声が聞こえた。「あたしが、生殖能力がある精液を出せるまで、少なくとも、あと4日は必要よ。多分、1週間近くは必要とみておいた方がいいわ。それに、あなたの方も、あと2週間は排卵しないはず。だから、今はただの練習なの」

トイレットペーパーで股間を拭いたが、思わず泣き声が出た。あそこが、信じられないほどヒリヒリしている。「練習自体は気に入ってるけど、あそこが死ぬほどヒリヒリしてるよ」

カレンがシャワーから出てきた。僕はトイレに座ったまま、体を拭く妻の様子を見ていた。

「ええ、そうね。そういうものよ。でも、ヒリヒリしても、その価値はあったんじゃない?」 と彼女は訳知りの様子で訊いた。

「ああ、確かに。朝食は卵でいい?」

「ええ、スクランブルエッグをお願い」と妻は僕の頬に軽くキスをし、身支度をするために部屋に急いだ。僕はトイレを流し、手を洗い、Tシャツだけを着て、彼女の朝食の準備に取り掛かった。

******

フライパンからスクランブルドエッグを皿に盛っていると、パチンとお尻を叩かれた。びっくりして跳ね上がり、危うく全部落としそうになった。振り返り、妻を睨み付けた。

カレンはくすくす笑いながら皿を取った。「そのプルンプルンのお尻を叩かれたくなかったら、そうやって見せびらかしてはダメ。Tシャツ一枚で、そんなふうに丸出しにしてるんだもの」

僕は自分の皿に盛りつけながらため息をつき、自分の席に座った。彼女に対面する位置である。少なくとも、ちゃんと座ろうとはした。だが、あそこが本当にヒリヒリしてて、脚を普通にはしていられず、横に流すようにしないと座れなかった。

「じゃあ、今夜は僕にエッチはしないわけだね」と、僕はできるだけ平然さを装って言った。

それを聞いてカレンは笑い出し、口に入れてたものを噴き出してしまった。いったん口の中が空になった後は腹を抱えて笑っている。

僕は眉を顰めて、ナプキンで顔をぬぐった。「はい、はい、そうやって大笑いすればいいよ。今夜は態度を変えるのだろうから」

彼女は肩をすぼめたが、まだ笑いをこらえている。「多分そうかも。でも、立場が逆になるのって面白いわ。あたしたちが初めて結ばれた時……あたし、ほとんど毎週末、何か月間も氷枕の上に座っていたのよ」

それは知らなかった。「え? 僕は君にこれと同じことをしてたの?」

「その通り。でもね、そうなってもいい価値があったわ、毎回。だからさっきも訊いたでしょ? 価値があったかって。でも、今のあなたは、セックスの間、すごく声を出すようになったわね。どういうわけか」

「ああ、それって恥ずかしいよ」と僕は気落ちした。

「いや、いや、違うの。素敵なことだって言ってるの! 前のあなたはセックスの時いつも静かだったでしょ。それをあたしがずっと気にしてたのは知ってるはず。だから、その点が変わって嬉しいということ。それだけよ」

彼女は食事を終え、食器をシンクへと運ぶために立ち上がった。歩き方がちょっと変だった。

「僕が変な歩き方になってる理由は分かるけど、君はどうして?」

妻は滅多に顔を赤らめたことはないのだけど、この時は、顔を真っ赤にした。「ああ、ちょっとね……全部、後ろにもっていかなくちゃいけなくって。じゃないと、病院で変に盛り上がってると思われちゃうから。あたしの……あたしの睾丸、大きすぎるみたいで……」

僕は鼻を鳴らした。手で口を押え、噴き出さないように堪えた。でも、また笑いがこみあげてくる。そしてまた。結局、笑いをこらえるのを止め、さっき、妻が僕のことを笑ったのと同じように大笑いしたのだった。

「そんなに面白いことじゃないわ、アンバー」

僕も立ちあがって、流しに食器を戻し、洗い始めた。「分かってるよ、分かってる」

少し経ち、僕は歌い始めた。「大きな玉があるのは誰? 大きな玉があるのは彼女! 彼女のタマが一番大きい。誰よりも!」

カレンはそれを聞いて笑い始めた。「オーケー、ちょっと笑っちゃったじゃないの。けど、もう行かなくちゃ。じゃあ、仕事に行ってくるわね、あなた」

僕は彼女にキスをした。「愛してる」

「あたしも愛してるわ」

******

洗濯ものは洗濯機に入れたし、食器も食洗器から出したし、部屋の掃除も終えた。気がつくと何もすることがない状態になっていた。最近はこういうことが普通になっている。いったん子供ができたら、こういう自由な時間は一切消えてしまうだろうというのは分かっていたけど、今は、時間がたくさんあって持て余している。単なる主婦でいると、いくつか慣れなければならない状態があるということか。

僕は、昔からあまり熱心になるような趣味は持っていなかった。カレンが学校に通っている間、僕は仕事を2つ抱えていたし、自由な時間はいつも彼女と一緒に過ごしてきた。いろいろ体に良いだろうということで、運動もやっていたし、実際、筋肉がついていたように見える。だが、変身によって余分になった体重は自然に消えてしまうわけではなかった。行き場を失くした筋肉細胞は愚かにも脂肪へと成りすました。その変化で唯一、良かったことは、脂肪の大半が最適な場所についたということである。乳房やお尻や太ももだ。その結果、僕は驚くほど豊満な曲線美を誇る体つきになっていた。

暇に任せてテレビのチャンネルを変えては、何か死ぬほど退屈にならずに済む番組がないかと探した。昼間のテレビについては、昼間も放送しなければならないのだろうし、そうでなかったら、あのような番組にはならないはずだが、別に、あのような番組が好きだという人がいても、僕は別に気にしない。ただ、残念なことに僕はそういう人ではない。

最後には、ミュージック・ビデオの番組に出くわした。誰かが、僕が言及するのは完全に間違っている階層の人間であるような物事についてラップを歌っていた。ただ、若い女たちが曲に合わせてお尻を振っていて、そこに僕は惹きつけられたのだった。

最初は、あの豊満な女体が跳ねたり揺れたりする姿を見て楽しんでいただけだった。僕は今やバイセクシュアルになっていたが、だからと言って、素晴らしい女性の体を見て喜ぶことがなくなったわけではない。ただ、観ているうちに、ふと、僕自身のお尻の方が、踊っている女たちよりも大きく、そればかりか、つるんとして丸く、官能的でもあることに気づいたのだった。僕もああいうダンスができるだろうか? それを知る方法はひとつしかない。インターネットだ。

早速、女性としてエロティックにダンスする方法を教える動画を探し始めた。そして、男性としてストリップをしていた時の踊り方とは、まったく完全に違った動きだと分かった。

これなら筋肉をつけずにエクササイズをすることができそうだ。いま以上に筋肉をつける必要はなかったが、いまの体重をキープし続けるには、運動をする必要があった。

僕は新しい趣味を見つけたのかもしれない。

******

女性化してほぼ4週間が過ぎた頃、僕は常時、パンティの中にナプキンを仕込ませるようになった。生理が始まり、所かまわず血液を垂れ流してしまうかもしれないと恐れていたからである。最初、生理が始まるのを知らせる兆候が察知できるかもしれないとあてにしていていたが、それでも、実際に始まってみるまでは暗中模索状態だった。

10日が過ぎたが、何も始まらなかった。だんだん心配になってきた。もし生理にならないとしたら、それは、僕の体内の、赤ちゃん製造装置に何か異常がある可能性を意味する。さらに4日ほど過ぎた。その頃には、午後になると決まって嘔吐するようになっていた。もしかして……

直感に従って、薬局に行き、妊娠テスト剤を買った。結果はプラスだった。信じられず、もう一度、行き、さらにふたつ買ってきた。そして、その2回のテストも僕が妊娠していることを示したのだった。

「つわり」のことを「朝の吐き気(morning sickness)」と言うが、これはとんでもないネーミングであることが判明した。これは一日のどの時間でも起こりうる症状だった。

カレンに言わなければならない。と言うか、妊娠こそが、このジェンダー変更の最終目標だったのだから。ただ、カレンに伝える時、ちょっと楽しいことができるかもしれないと思った。僕はまたも買い物に出かけ、「世界で一番のパパ」とあるTシャツを買い、ギフト・ボックスに入れラッピングしてもらった。カレンなら、このユーモアを喜んでくれるだろう。

先の休暇の時に使ったデジタル・ビデオカメラを掘り出し、メモリーカードが空になっているのをチェックした後、ディナーテーブルでカレンが座るところが中心になるようセットした。この位置にセットすれば、彼女が多少動き回っても、彼女の反応が収められるだろうと期待して。

僕はカメラの隣に立って、カレンが帰ってくるのをそわそわしながら待った。そして、ようやく、玄関の外、キーがじゃらじゃらなる音が聞こえた。僕は素早くカメラを録画状態にし、カメラのそばから急いで離れた。彼女には、僕がこのビッグニュースを知ったときの彼女の反応を録画していることを知られたくなかった。

カレンが家に入ってきた。笑顔でまっすぐ僕のところに来て、ただいまのキスをした。同時に、ちょっとだけ僕の乳房をいじってくる。

「おかえりなさい。仕事はどうだった?」

「順調だったわ! 夕食は何?」

カレンはいつも帰ってきた時はお腹を空かせている。だから、彼女がすぐに夕食のことを言っても、僕は全然気を害さなかった。多分、この知らせを聞いたら彼女はお祝いのために外に食事に行きたがるのではと思い、夕食のことは何も計画していなかった。

「カレン、ちょっと座って。君にプレゼントがあるんだ」 そう言って彼女がちゃんと予定したところに座るのを確認した後で、寝室にギフトボックスを取りに行った。

プレゼントを彼女の前に置いた。彼女がラッピングを剥がし、中を覗くのを見ながら、僕はワクワクして思わず小躍りするように動いていた。

カレンは安物のTシャツを両手に持って掲げた。しばらく、困惑したような顔で前面の文字を読んでいた。すると、みるみる彼女の目が潤んできて、両手を震わせ始めた。それに合わせて掲げたTシャツが震えている。

「こ、これって……あたしが思ってることを意味してるの?」

僕は笑顔で自分のお腹を擦って見せた。「そうだよ。子供ができたんだ。君は僕を孕ませたんだよ」

僕はカレンが歓声を上げると思っていた。キャーッと金切り声を上げるかもと。だが彼女は、そうではなく、心の深いところから絞り出すようなすすり泣きを始めた。そして涙でよく見えないのか、やみくもに両手を広げた。ハグを求めてる。シャツが手から床に落ちた。

僕は彼女に近づき、彼女は両腕で僕の体を包んだ。顔を僕のお腹のところに埋め、泣き続けている。熱い涙が僕のドレスの生地に染み込み、肌に伝わった。

僕は立ったままだったが、座ったままで泣き続けるカレンを抱き、背中をできるだけ撫で続けた。少し時間がかかったけれど、ようやく彼女は自制心を取り戻し、僕のお腹に狂ったようにキスをし始めた。

ちょっと引きさがると、カレンは顔を上げ僕を見た。その表情に、僕も泣き始めていた。「あたし、どうしても……どうしても希望を捨てたくなかったの。でも、本当に子どもを持てるなんて思っていなかった。ああ、ありがとう、アンバー。ありがとう、タイラー。これって……これって、これまであたしがもらった贈り物で最高の贈り物だわ」 もちろん彼女があのバカっぽいTシャツのことを言ってるのではないことは分かっていた。

僕はこみあげてくるものがあって声を出せなかったけれど、それは問題なかった。というのも、彼女は僕の胴体に顔を向けて、僕たちの赤ちゃんに話しかけ始めたから。

「こんにちは、あかちゃん。あたしは……あたしはずっとあなたのことを待っていたのよ。夢に見てたし、お願いしていたし、お祈りもしてた。あなたに会えるなんて思っていなかったの。あなたがこの世界に出てこれるようになった時には、あたしがそばにいるからね。両腕を広げて、あなたを待っている……」

そこまで言って、彼女は急に喉を詰まらせ、鼻水を啜った。「……だから、何一つ心配することはないのよ。あなたはあたしに会いに来れるよう、大きくなりさえすればいいの。他のことは全部あたしが面倒見てあげるから。約束するわ」

カレンはもう一度、愛しそうに僕のお腹にキスをし、それから、また、そこに顔を埋めすすり泣いた。この時は僕も一緒に泣いていた。

カレンは、ぎりぎりだったけれど、最高級レストランの予約に間に合った。ディナーの間、彼女は堂々と例の「世界で一番のパパ」のTシャツを着ていた。レストランの人たちがドレスコードを盾に僕たちを追い出さなかったのは、カレンがいくらか包んだからだろうと思っている。

カレンの反応に夢中になっていて、僕はビデオカメラのことを忘れており、ずっと録画しっぱなしにしていた。だから、カレンの反応ばかりではなく、キッチンテーブルでその後に行った激しいセックスも録画していた。カレンは、その両方の録画について、とても僕に感謝してくれた。

******

妊娠が確実になったすぐあと、カレンはWイェックスを摂取するのを止めた。というのも、僕は吐き気や疲労感、それに乳房が極度に敏感になり、全然セックスをしたい気持ちがなくなっていたからである。これは妻にとっては拷問だった。Wイェックスを摂取することにより性欲が増加するため、彼女は一日中、非常にムラムラした気持ちになるのに対し、僕の方はその気がまったくなくなったからである。彼女がWイェックスの摂取を止めるのは当然のことだった。彼女はすぐに以前の女性の体に戻った。

しかし、3ヶ月ほど過ぎた頃になると、吐き気も疲労感も消え、乳房も普通に敏感な程度まで落ち着いてきた。そして、それに伴って、僕の性欲も、それまでの欠如に対して復讐するかのように激しく戻ってきたのだった。

そして僕は女性の体になって初めて自慰をした。片方の手の指でクリトリスを擦り、もう片方の手の指をあそこに出し入れする方法で。ああ、確かに、イクことができた。でも、何かが足りない気分だった。

カレンが仕事に行っている間、両手をせわしなく動かして欲求を晴らしてはいたものの、ますます不満が蓄積してしまう。それを何日か続けた後、僕は家の中をあっちこっちひっくり返しては、カレンがどこかにディルドっぽいものを隠していないかと探し回った。だが、何も見つからなかった。どうしても指だけでは物足りない。何かに貫かれなくては満足できない。

かすかに膨らんできたお腹が隠れるようにゆったりとしたトップを着て、ハンドバックを持ち、僕は近くの成人向けショップへと出かけた。

そういう場所には前に行ったことがあるが、そこで売っている様々なディルドには一度も注意を向けたことがなかった。でも、今は体内のホルモンが猛り狂っているせいか、その売り場は、貴重なお宝が壁いっぱいに陳列されるようにしか見えなかった。

ひと通り見て歩き、カレンが脚の間に備えていたものに近いものを見つけた。と同時に、別の物も目に入った。円筒状の容器に梱包されたWイェックスだった。タイプと持続期間で分類され、陳列されていた。

それもひと通り眺め、やがてひとつに注意が向いた。ブルー・Wイェックス7・ライトという商品。7日間はペニスが持続するタイプである。僕はそれを掴み、レジへと向かった。ディルドの方も手に持ったままだった。

******

カレンが仕事を終え、家に戻ってくるのを待った。彼女が帰ってきた時、僕は着替えすらさせなかった。上着の襟をつかみ、ぐいっと彼女の顔を引き寄せ、その口に舌を突き入れた。

カレンは、訳が分からない様子で、びっくりして僕を見た。そんな彼女を責めることはできない。僕自身、この何か月か、とてもそっけなく振る舞ってきていたから。

「えーっと、アンバー? どういうこと?」

「ごめん。僕はずっと君を無視してきたと思う……」と僕は謝り始めた。でも、すぐに彼女は僕の言葉を遮った。

「いいえ、それはいいの。妊娠すると、どういうことが起こるか、分かってるから」

「それでなんだけど、今はそういう時期が過ぎたと思う。で、それが過ぎると同時に、すごくエッチな気分になっているんだよ。だから、どうしても頼みたいことなんだけど……。オプションその1は、これを使ってくれること」 僕は、そう言って、封を切った、少しだけ使用済みになってるディルドを片手に握って出して見せた。

「これを使ってふたりでちょっと楽しいことができると思う。で、オプションその2は、これを飲んでくれること」

そう言って、キーを置くところに置いておいたWイェックスのシリンダを握った。「……そして、近くにあるテーブルに僕をうつ伏せに押し倒して、僕を犯してくれること。僕が君をカンカンに怒らせてしまったかのように、めちゃくちゃに犯してくれるといいんだけど……」

カレンは、ちょっとだけシリンダを見つめていた。その後、やにわに僕の手から奪い取り、「ああ、ありがとう!」と叫んだ。そして、巧みな手つきで包装からWイェックスを取り出した。そして、片手で着ていた医療用のガウンをたくし上げ、あごのところで押さえて胸と胴体を露わにし、もう片手で、ズボンとパンティの腰ゴムのところを引き下げて、下腹部の肌も露出し、リビングルームにいるというのに、まさにその場でWイェックスを注入した。

注入し終わったシリンダをカウンタに置いた後、カレンは急いで上着を脱ぎ、ズボンと下着を足首まで降ろし、脱ぎ捨てた。僕は彼女の股間のアレが成長してくるところは見たくなかったので、後ろのカウンターの方を向き、ドレスの裾を腰まで手繰り上げ、足を大きく開いて、カウンターに覆いかぶさった。この時を予想してパンティは履いていなかったから、カレンには僕のツルツル肌のアソコが丸見えになっているはず。すでにびちゃびちゃに濡れていて、準備が整っていた。実際、あそこから体液が溢れ出て、脚を伝って流れるのを感じる。

「ヘーイ、相棒! お前に会いたかったぜ」

彼女がそう言うのが聞こえ、僕は肩越しに振り返ってカレンを見た。カレンは自分のペニスをしごきながら、それに話しかけていたのだった。思わず笑いだしそうになるのをこらえ、その代わりに、彼女のためにちょっとエッチなダンスをして見せることにした。

カウンターに覆いかぶさったまま、背中を反らし、太ももを前に後ろに動かし始めた。こうすると、お尻の左右の頬肉が閉じたり開いたりを繰り返し、あそこの口がパクパクするのが見えるはず。こんなことができるのをカレンに見せるのは恥ずかしすぎて、これまではできなかったし、うまくできるか分からず、誰かにして見せる気にはならなかったけれど、この時は、死ぬほどエッチな気分になっていたので、カレンが、ピエロの格好になった僕とエッチしたいと言っても、喜んでそれに応じただろうと思う。

「おお、おおっ、わーお」 と彼女は魅了されたような声を出した。「それ……すごくセクシーだよ、アンバー」

僕は動きを変え、今度は、腰を振り始めた。お尻の肉をプルプルと振動している。同時に、ドレスを押さえていた首の後ろの結び目を解いた。背を伸ばして直立すると、ドレスがスルスルと身体を伝って床に脱げ落ちた。

カレンを誘惑できるかもしれないと期待して、下着はナシでいた。当然、ブラもしていない。靴を除いて、すっかり裸の姿になり、カレンの方へと身体を近づけた。お尻をゆっくり回転させながら、彼女の固く勃起したペニスへと擦りつけていく。カレンはもう自制できなくなったようだ。執拗に僕の背中を押して、僕を前かがみにさせてくる。幸い、カウンターからそんなに離れていなかったので、カウンターの端を掴んで体を支えることができた。

カレンは、僕の腰の左右をぎゅっうと握り押さえながら、挿入を待ち望んでいた僕のアソコに一気に根元まで入れてきた。滑るように滑らかに入ってくる。

「ああ、いい……」

僕は無意識的にアソコで彼女の長く太い肉棒を締め付けていたようで、彼女はその感覚を堪能するかのように、太い声で唸った。

一方の僕は、自然と、女性的で泣きそうな声になっていた。「ううっ、やって! お願い、動いて。動いてください。あなたのおちんちんが欲しいの」 

ただ入れられたままで、動かないでいられると、気が変になりそうだった。かゆいところがあるのに、そこを掻かれずに、ただ触れられてるだけのようなむずがゆさ。

僕の妻はなんて素晴らしいのだろう。僕の求めに応じて、ゆっくりと腰を引き始め、あの丸太のような太いペニスがほとんど抜け出そうなところまで出したところで、ほとんど僕を突き倒すほどの力強さで一気に根元まで突き入れてきてくれた。カレンのペニスを何日も恋焦がれ続けてきた後だけに、安堵感が下腹部を満たし始めるのを感じ、思わず嬉し涙が溢れ出そうになった。「カレン、そう、その感じ。強くやっていいんだよ。ヤッテ、ヤッテ、もっと犯して!」

カレンはベストを尽くして僕の求めに応じてくれた。彼女の股間が僕のクッションのような尻肉とぶつかり、平手打ちするような音。この音は僕には素晴らしい交響曲にしか聞こえない。でも、すぐに彼女は体をこわばらせ、僕の中に子種液を発射してしまった。早すぎる。射精を受けて僕自身、オーガズムに突入できたし、カレンと一緒に絶頂を味わうことができたけれども、これだけじゃ物足りなかった。どうしても、もっとしてほしい。

カレンは息を荒げながら、体を引いた。それに合わせて僕の奥まった部分から彼女の長く太いモノが滑り出ていくのを感じた。

「ふうー、あたし、ずっとこれを……」

彼女は途中まで言いかけて、黙ってしまった。僕が前に手を伸ばして、ディルドを掴み、それを自分で、当たり前のように平然と根元まで突っ込んだから。それに押されて、彼女が僕の中に出していた精液が隙間からほとばしり、あたり一面に飛び散った。僕は、そんなことはお構いなしに、その青いシリコン製のおもちゃで狂ったように自分を犯し続けた。目にもとまらぬスピードで出し入れを続けた。

そんな僕を見て、カレンは何か言っていたのかもしれないけど、たとえ何か言っていたにしても、僕の唸り声の方がはるかに大きかった。室温の温かさのディルドは、妻の熱い肉棒には全然比べ物にならなかったし、自分で出し入れしなければならないのは、彼女に力強くえぐられることに比べて、色あせたことにしか感じられなかったけれど、どうしても欲求が収まらないときには、仕方なかった。

ディルドを使って、何とかもう一度だけ達した後、ディルドを突き刺したまま、カレンの方に向き直った。彼女はショックを受けたのか、唖然とした顔でそこに立っていた。ズボンとパンティを足首に絡ませ、医療従事者用のトップをたくし上げたまま、僕のあそこから噴き出たスペルマで体の前を汚してる。濡れた半立ちのペニスは下を向き、その先端から残っていた白濁がとろりと床に糸を引いた。

カレンのペニスのその姿、何かを語っている気がして、僕は、あたりがドロドロで汚れているのも忘れ、カレンのズボンが足首に丸まっているままであるから、彼女は僕から離れ逃げることはできないだろうと、それしか考えられなくなっていた。

素早くカレンの前に尻をついて座り、彼女のペニスを咥えこみ、吸いながら、片手でディルドを動かし始めた。もう一方の手は彼女の尻頬を掴み、彼女が引きさがっていかないよう、押さえ続けた。

彼女のペニスを覆う、僕たちふたりが分泌しあった体液のミックスは、僕にとって、神々のみが食することができる最高の美食のような味がした。もっともっと舐めようとするうちに、いつの間にか根元まですっかり口の中に入れていて、さらに喉奥の先まで飲み込んでいた。どんどん飲み込み続けて、ある意味、ディープスロートをする形になっていたけれど、苦しさは何も感じなかった。このおちんちんをもう一度、固くさせなくては居ても立ってもいられないという気持ちだった。どうしても、また、欲しい。

カレンは、射精後であまりに敏感になりすぎていたのか、僕から引きさがろうとしたけれど、僕はそうはさせなかった。片手で押さえていたディルドから手を放し、彼女を動けないようにするため、両手で押さえた。左右の手を彼女の丸い尻の頬肉にあて、できるだけの力で自分に引きつけた。鼻の先が彼女の恥丘に埋もれ、恥骨に当たりつぶれる。カレンの美味しすぎるおちんちんを1ミリ残さず、口の中に入れ、その愛しい下腹部に顔を埋めるのが嬉しくてたまらない。

「ああ、アンバーったら……」 彼女は僕から離れようとはするが、それができず、困ったふうな声を出した。「いったい、どうしちゃったの?」

彼女のペニスを咥えながら、懇願してるようにも聞こえる声を上げた。すると、喉の奥、それがピクッと跳ねて、ヒクヒクするのを感じた。僕は、AC/DCの「ビッグ・ボールズ」(参考)をハミングしながら、あごに当たっていた彼女自身の「ビッグ・ボールズ」を撫で始めた。

後から考えると、Wイェックスで彼女の性欲が増幅されていなかったら、多分、あんなに早く再び勃起させることはできなかっただろうと思う。でも、実際には、Wイェックスのおかげで、本当にすぐに勃起させることができたのだった。

ゆっくりと顔を引きつつ、その下辺部分に舌を走らせたり、残りのヌルヌルをきれいにすべく強く吸ったりしながら、口から吐き出した。

そして、大きく見開いている彼女の目を見つめながら、その長い肉棒を握って、下の部分を舐め続けた。「ねえ、もっとヤッて、お願いだよ」

「なんと……」 妻は、足首に絡まるズボンから抜けながら、小さな声だけど驚いた声をあげた。「いったい何があったの?」

僕は立ち上がり、彼女の小さな分身を握って引っ張りながら、寝室へと歩き出した。「分からない。一昨日あたりから……どうしても、おちんちんが欲しくなっていて。ごめんね」 そう謝ったけれど、寝室へ向かう歩みを止めたわけではなかった。

「まあ……」 彼女の声には喜んでいる調子がこもっていた。「じゃあ、良い意味での性欲増進が始まっていたわけね」

ベッドのそばまで来て、腰を降ろし、仰向けに倒れ込んだ。その間も、妻の股間に生える宝物を握ったままで、彼女を一緒に引きずり込んだ。

「それって、この状態のことなの? 気が変になってきてるのかもしれないって思っていたよ」

「うーん。あなたの肉体が、必要としていることを、あなたの心に伝えようとしているだけのこと。だから、それに逆らわないこと。たいていは、食べ物の好みが変わるとかだけど、こういうこともあるの」

僕は脚の間のドロドロの割れ目に彼女の分身を近づけ、入れるようにと引っ張った。カレンはその求めに応じて、ゆっくりとした滑らかな挿入で、奥まで入れてくれた。

「そう。そういうことなら、僕は本気で、完膚なきまでの荒々しいセックスを渇望している状態。だから、このベッドを壊す勢いでやって。いいね?」

妻は苦笑いして、さっそく、力強い小刻みな突きで僕を攻撃し始めた。

突きの動きが始まるとともに、僕の乳房が上下左右に激しく揺れ始めた。カレンは、暴れまわる乳房を押さえようとしてか、手を伸ばして、片方の乳房をぎゅっと握った。

「優しくして……まだ、胸はすごく敏感なんだ」

彼女が握る力を緩めるのを感じ、僕も自分の手でもう一方の乳房を押さえた。乳房が跳ね回るのは、そんなに快感があるわけではなかったけれど、ずんずん激しく打ち込んでもらって、気持ちいいセックスをするためには跳ね回る大きな乳房を押さえ付けなければならないとすれば、そういう代償は喜んで払いたい。

「もっとやって……えぐる感じでぐいぐい犯して……その大きなおちんちんでやりまくって!」

片方の手が空いていた。その手をカレンのお尻にあてて、彼女が突きを送り込むのに合わせて、自分の股間方向へとぐいぐい引きつけた。そういうことをしても、たいして妻の動きのための助けになっていたとは思わないけれど、それほど、彼女にはできるだけ荒々しく犯してほしい気分だった。

そして、激しい突きがひとしきり続いた後、とうとう、僕は絶頂に達した。歯を食いしばり、全身を硬直させながらオーガズムを耐え続けた。このオーガズムは、かなり長々と続いた。その間、妻はずっと強い出し入れを続けてくれて、そのおかげで、快感は強度をいっそう増したし、持続時間も長くなった。なぜか目に涙が溢れ、泣いていた。それほど満たされつつある感覚だった。

カレンに彼女の限界を超えて狂ったような激しいペースを続けてもらいたく、僕は我を忘れて夢中で懇願したり、脅かしたり、おだてたりを繰り返した。彼女もそれに応えようと、必死でピストン運動を続けてくれ、そのおかげで僕は連続オーガズムの状態になり、何度も何度も達し続けた。やがて、妻の方がスタミナが切れ始めると、僕は彼女の体を抱えながら反転し、上になり、運動の仕事を引き継いだ。

仰向けになった妻の股間にそびえる肉棒めがけ、自分の体重全部をかけて、ずしんずしんと何度も、全力で、身体を打ち下ろした。打ち下ろすたびに、妻の肉茎が僕の下腹部の中、子宮口の肉壁に押し潰されてるような感じがした。そして、またも僕はオーガズムに突入する。声を上げていた。オーガズムがまさに終わりかろうとするとき、妻が僕の中に噴射するのを感じた。それを受けて、僕はもう一度、小さなオーガズムを感じた。

赤ん坊のような声を出しながら、ゆっくりと腰を彼女の骨盤部に降ろした。ようやく、あのひどいかゆみのような疼きが充分に癒された。激しく掻きむしったようなもので、そのつけが後で回ってくるだろう。だけど、ヒリヒリ状態に備えて、冷凍庫にアイスパックを用意しておいた。

ぐったりとして動かなくなった妻の体から注意深く降り、背中を向けて隣に横になった。そして後ろに手を回し、彼女の腕をつかんで自分に引き寄せ、スプーン重ね(参考)の姿勢になってもらった。

「カレン?」 少し恥ずかしさが混じった調子で声をかけた。「ちょっとだけ抱いててくれる?」 強烈な性欲は満たされたので、今は何よりも情愛が欲しくなっていた。

「アンバーったら、あなたにバイブを買ってあげたらいいのか、セックスマシーンを作ってあげた方がいいのか分からなくなったわ」と彼女は言い、柔らかくなりかかっているペニスを僕のお尻の頬肉の間に挟めたまま、僕をきつく抱きしめた。

「こういうことがこれから普通に起きるとしたら、自分でセックスマシーンを作るかもしれないよ。真夜中にセックスを求めて君を起こすわけにはいかないから。君は充分に睡眠時間を取らなくちゃいけないもの」

彼女が会計士かなんかだったら、ためらわずにセックスを求めるだろうけど、彼女は医師だ。人の命が彼女がしっかり集中できるかどうかにかかっている。

カレンは笑い出したけど、僕は半ば真剣だった。

続く4日間、目覚めのセックスと仕事帰りのセックスに加え、昼休みに家に戻ってのセックスも求めた結果、妻は僕に最高級のバイブばかりか、ディルドももう1本、そして「シビアン」(参考)と呼ばれる装置も買ってくれた。僕はこのシビアンが大のお気に入りになった。

******

妊娠6か月目に入った。最近は女性になっての生活にかなり順応してきている。でも、ブラジャーを付けながら、鏡を見て、改めて悟った。もうこれ以上、自分をだまし続けることはできない。このブラジャーはどう見ても小さすぎる。カップの上に肉がはみ出ているばかりか、両脇からもはみ出ている。

結局、新しいブラジャーを買いに出て分かったのだけれども、カップのサイズで言えば、丸まる2カップ分は大きくなっていたのだった。トリプルD(参考)からダブルGになっていた。このおっぱい、本当にバカげた大きさになっている。試着室で自分の姿を見て唖然とした。ふたつの大きなおっぱいと、妊娠して膨らんだ丸いお腹の姿。まるで自分が3つの巨大な半球だけでできていて、それにちょっとだけ顔がついているような存在。

ブラを買いには出かけたものの、実際、外に出ていくのが嫌になっていた。特に婦人服の店に行くのが嫌だった。大きなお腹をしていると、近くにいる女性たちは、ほとんどみんながみんな、どうしても僕のお腹を触りたくなってしまうようで、すぐに話しかけてはお腹を触ってくる。僕のお腹は公共のモノじゃないのに! 近寄らないでって平手打ちしたくなってるこっちの気持ちを、そういう女たち、どうして分かってくれないのかなあ。

でも普段は、カレンが服の買い物に付き合ってくれるので助かる。彼女は、主に、ウエストをベルトで留める形のゆったりしたサマードレスを選んで買ってくれた。このおかげで、妊婦用の特別なパンツを着なくても済む。それに、胸元が空いてて薄地なので、どんな他の衣類よりもずっと涼しい。最近は、常時、体が火照った状態が続いていた。

熱く火照った体に、常時、性欲が高まった状態。それに反して、自分の体が、ものすごく太って魅力を失っているように感じ始めていた。

びっくりするほど高かったけれども、結局、ブラを4つ買って帰宅した。暑くて暑くて、すぐに服を脱いで下着だけの姿になった。落ち着いて、カウチに座ったけれども、悲しくなってひとり声もなく泣いていた。そんな時、妻が仕事から帰ってきた。

「ただいま、アンバー。……えっ? どうしたの!?」

彼女はびっくりして駆け寄り、僕の横に座った。慌てた様子で両手で僕の顔を挟み、僕の目を覗き込んだ。僕が一番恐れていることは、彼女が僕を用済みと思い、僕を捨てること。一方、彼女が一番恐れていることは、何かの理由で僕が流産してしまうことだった。母体としての僕の体を心配するのは分かるけれども、彼女は過剰になりすぎることがあると言っても言い過ぎではない。

「何でもないよ。ただ、自分がデブの醜いクジラになったような気分になってしまっただけ。君は、こんなわたしを見て、どうして我慢できるてるの?」

カレンは落ち着きを取り戻していたが、僕の言葉を聞いて困惑した様子で瞬きした。「え? どういうこと? あなたはすごくセクシーよ。いつまでも、触っていたいくらいに」と、彼女は当然と言わんばかりに答えた。「どうしてそんなことを思ったの?」

僕は鼻を啜った。「新しいブラジャーを買わなくちゃいけなくなって、買いに行ったんだ。で、試着室で試着して……全身鏡でどんなふうに見えるか見てみたら、すごく大きくて!……」とそこまで言ったところで、僕は泣き出してしまった。馬鹿げた行動だとは分かっていたけど、どうしても泣かずにいられなかった。

もちろん、妻はすぐにペニス中心の考え方を始めて、僕のショッピングバッグを漁った。「へーっ、ダブルG?! あたしの妻はダブルGになってる?」

僕は返事すらしなかった。アヒルのような歩き方で寝室に行き、ドアを音を立てて閉め、鍵をかけた。僕は傷ついていたのに、彼女の方はおっぱいのサイズにしか関心がない? ベッドに突っ伏して、ひとり自分を憐れんだ。

「アンバー?」 妻がドアの向こうから呼ぶ声が聞こえた。ドアノブを回す音も。「もう、アンバー。ごめんね。あたしが何をしてあなたの気持ちを傷つけたか分からないけど、何であれ、ゴメンなさい。ああ、あなたはすごく綺麗よ? 大きなおっぱいになって、いっそうセクシーに見えているのよ?」

僕はすすり泣きをしながら、少しでも理性を取り戻そうとしていた。僕は自分が醜くなったと感じていた。一方、カレンは僕の体の性的な部分にだけ関心を向けた。そして、どういうわけか、その点に僕は怒りを感じた、と。……でも、どうしてだろう? 赤ちゃんを身ごもっていることで、頭が変になっているに違いない。少なくとも、それが理屈が通る唯一の説明に思えた。

体を引きずるようにしてベッドから降り、ドアのロックを外した。依然として怒ってはいたけれど、そういう感情を消そうと必死に頑張った。ドアを開けると、カレンが心配そうな顔をして立っていた。「あたし、何かした?」と顔をゆがめて言う。

僕は彼女の腕に顔を埋めた。「僕は、ちょっと頭が変になっていたんだ。僕の問題で、君のせいではないよ。流れに任せてくれる? お願い?」

彼女は何も言わず、僕の背中を撫でてくれた。それがとても気持ち良かった。体の前面に大きな重りを抱え、ずいぶん背中に負担をかけていたのに気づいていなかった。そう、このバカみたいに大きなおっぱいと僕たちの宝物の赤ちゃんで、背中が凝っていたのだった。

「ああ、それ、すごく気持ちいいよ、カレン。天国に登るような気持ち」

そう喘いで、妻の体をさらに自分に抱き寄せた。彼女も指を立てて腰のところを押してくれた。それがあんまり気持ち良くて、僕はあっはーんと悩ましい溜息を漏らした。

気持ちよさに浸ってうっとりしていたものの、すぐに妻の様子がおかしいのに気が付いた。どんどん背中を丸めて身をかがめる格好になっていくし、とても居心地が悪そうな顔をしている。

「どうしたの?」と訊くと、カレンは決まりが悪そうに笑って僕から離れ、ズボンの中に手を入れ、ちょっと腰をくねらせた。その後はすぐに安心したような顔に変わり、元通りにまっすぐ立つ姿勢に戻った。もちろん、どうしたのだろうかとじっと見てみると、彼女の医療従事服の股間のところにテントが張っていた。

「ごめんなさい。後ろに引っ込めていたのですごく居心地が悪かったの。多分、今のあなたが一番見たくないモノだとは思うけど」

僕は顔が火照るのを感じた。「ちょっと、取り乱してしまっていたから。って言うか、ほんとに、自分がすごく醜くなったと動転していた。でも、それと同時に、すごくエッチな気持ちにもなっているんだよ。それで……ソレだけど、僕がその原因なの? こんな醜くなっている僕なのに?」

妻は僕にキスし、僕は彼女が我慢していたことに気づいた。

「あなたはあたしにはセクシーに見えてるわ。あたしたちの赤ちゃんを身ごもっているから、なおさらセクシー。それに加えて、あなたのおっぱいにもゾクゾクしてるの。あたしが思っていたよりもずっと大きくなっているって知ったところだったし。さらに加えて、Wイェックスを飲んだせいで、ちょっとしたきっかけでもすぐにエッチな気持ちになってしまうのに、こんなセクシーな妻が下着姿であたしに抱きついているのよ? そんなことや何やらを思えば、こうなってしまうのは驚きに値しないんじゃない?」

僕は唇の端を噛み(参考)、自問自答した。妻を見ると、キツキツのブラに締め付けられてる僕の胸の谷間をじっと見つめてる。僕は背中に手を回し、ブラのホックを外した。重たそうに膨らんだ乳房をカップの中から引っ張り出し、ブラを横に放り投げた。

それから彼女の手を取ってベッドに引き寄せ、自分自身は横寝になった。乳房がどっしりと重なり合い、しかも膨らんだお腹がその下から押し上げてる。こういう格好になると、乳房もお腹もいっそう巨大に見える。

カレンは完全に普通のことだと言ってくれていたけど、乳首も乳輪もかなり黒ずんでいた。でも、自分のことながら、この黒ずんだ乳首と白い肌のコントラストには、ちょっとハッとさせられる。妻の手を引っ張って横に寝かせ、乳房に愛撫するよう求めた。彼女は喜んで応じてくれた。

優しく揉んだり、強く吸ったりしてくれる。それにより全身に火がついてくるのを感じた。僕も手を下に伸ばし、彼女のパンツの腰ゴムの中に差し込み、彼女のアレにも愛撫を始めた。すっかり固くなっているモノを握り、優しくしごき始める。

僕はすっかり夢中になっていた。妻の巨大で太いペニスは先走りを分泌し始めていて、しごいているところからクチャクチャと湿っぽい音が聞こえてくるほどの量になっていた。だが、彼女は突然、顔を引いて、「ええっ?」と言い、僕の乳首から離れた。驚いた顔をしてじっと僕の乳首を見つめている。

僕は妻のペニスをしごくのを止め、無意識的にぎゅっと握ったまま、凍り付いた。不安になった。

「どうしたの?」

「あ……えっと、初乳だわ。すごく早いけど、あなた、初乳を分泌している。Wイェックスのせいで分泌が早くなったのかしら?」

「で……初乳って何?」 カレンは僕がパニックになりかかっているのに気づかないのだろうか?

ようやく妻は顔を上げ、僕を見た。「つまり……初期段階の母乳と考えていいわ。実際の母乳の分泌の前に乳房が分泌するものと」

手を乳房に押し付け、大きな半球を歪ませながら、乳首を見える方向に向かせた。黄色い濃密なミルクが一粒、出てくるのが見えた。

とはいえ、全然、美味しそうには見えなかった。「どんな味がした?」

妻は唇を舐め、チュッと音を立てた。「悪くはないわね。何と言うか、シリアルを食べた後の残った牛乳みたいな味。温かくて濃いってだけの味」

「ああ。それじゃあ、もうおっぱいは吸ってくれないということ?」 と僕は唇を尖らせた。もっと吸ってほしかったのに。

「いや、こんなこと言って、あたしのことを気持ち悪いって思わないならだけど……ちょっと、あなたからミルクを飲みたいなって思ってるんだけど……」

僕は目をぱちくりさせた。「本当?」

「そういうことを考えただけで、ムラムラ興奮してくるの。ねえ、いいでしょ?」

唇を噛んで、自分たちの態勢をちらりと見た。僕の膨らんだお腹が邪魔になるかもしれない。その場合は、膝のところに頭を乗せてあげる姿勢になろう。それはそれでいい感じだと思う。

「してくれなくても気にしないけど、するなら熱心にして。でも、その前に服を脱いだら?」

カレンはニヤリとして、勢いよくベッドから降り、引きちぎるように素早く服を脱ぎ捨てた。身軽に行動できる彼女の姿を見て、急に羨ましい思う気持ちが沸いた。

その間に、僕も、腰をくねらせてすでに濡れてるパンティを脱いだ。その時点では、これが身に着けていた唯一の衣類。カレンは裸になると抱きついてきて、僕の両腕に包まれるようにして、勃起した乳首を咥え、強く吸い始めた。まるで、力づくで吸い出そうとするかのように。

見えないけれども、お腹の底辺部分に妻のペニスが当たっていた。すごく熱く固くなっている。周期的に力が入るのか、その度に、頭部が膨らむのを感じた。僕は手のひらを舐め、ゆっくりと彼女のソレをしごき始めた。

乳房に愛撫をされているだけで、小さなオーガズムが何度もやってきた。オーガズムの山と谷を行ったり来たりする感じ。これも気持ちよかったけれども、もっと強い刺激が欲しかった。

「クリトリスをいじって」と小声で囁くと、妻は忠実に求めに応じてくれて、手を僕の脚の間に伸ばして、擦り始めた。僕も、触りやすくしてあげようと、片足を上げなければいけなかったけれど、その姿勢になった後は、ふたりの行為は滑らかで順調なものに変わった。互いに手で愛撫をし、加えて僕は乳房を吸われている。この関係だと、僕の方が先にイカされてしまうだろうなと思った。

案の定、すぐに本格的なオーガズムが襲ってきた。それに意識を占領されてしまい、妻の方に十分な注意を払っていなかった。警告のサインを見逃してしまったのだった。妻のペニスは最大に膨らみ、握る僕の手の中でヒクヒクと痙攣した。と同時に、丘のように盛り上がる僕のお腹の下辺に、灼熱の溶岩をまき散らした。

カレンは快感からか、口を大きく開き、結果、彼女の唇は僕の乳首を離れ、あの甘美な快感が急に失われてしまった。思わず、駄々をこねるような悶え声を出したものの、彼女のオーガズムが終わるまで手の動きは止めなかった。

ようやく彼女が落ち着いたのを受けて、僕は体を起こし、妻が放った精液を手で拭い始めた。その様子を彼女が見ているのに気づいた僕は、イヤラシイことを思いつき、妻と目を合わせながら、手のひらについた精液をぺろぺろと舐めて見せた。

「まあ、なんてことを」と彼女は笑った。「あなた、それでも、自分はセクシーじゃないと思っているの?」

僕もくすくす笑った。そして、その時、お腹の赤ちゃんが蹴ったのだった。びっくりして身をこわばらせ、何事かと、自分のお腹を見つめた。すると、またも蹴ってくる。

「ちょっと、手を出して!」

そう言ってカレンの手を取り、小さな命が不平を言っているところに当てさせた。しばらく間があったけれど、やっぱり、もう一度、蹴ってくるのを感じた。

「あっ!」と妻は叫び、ついさっき、自分でドロドロに汚してしまった部分であるのもすっかり気にせず、顔を僕のお腹に押し付け、両サイドに手を添えた。彼女が何かもっと動きがないかとワクワクしながら待っている間、僕は愛情をこめて妻の髪を撫で続けた。そのままの姿勢で20分以上は待っていたと思うけど、とうとう、どうしてもおしっこがしたくなってしまい、僕はベッドから出た。小さな膀胱め、赤ちゃんがぎゅうぎゅう押すのに負けてしまったのか。

******

真夜中、股間の痛みと、マットレスがひどく濡れているのを感じ目が覚めた。掛布を剥ぐと、ベッドの上がびしょぬれになっていた。

大変だ。破水している。

体温のせいか暑くて仕方なく、妻と寝るとき、体をくっつけることはしなくなっていた。そこでベッドの向こう側に手を伸ばし、カレンの身体を揺すった。

「カレン! カレン!」

彼女は寝ぼけ顔で僕を見た。「アンバー、どうしたの?」

「破水してるんだよ!」とパニックになって答えた。

それを聞いて彼女は起き上がり、突然、変身したかのように、彼女が持っている能力を最大レベルに上昇させた。

「分かった。落ち着いて。陣痛はある?」

「うーん、あったと思う。それで目が覚めたんだと思う。病院に行かなくちゃ!」

「赤ちゃんが生まれようとしてるけど、今すぐ出てくるわけじゃないわ。起きて、体をきれいにして。いいわね? あたしは入院関係の準備をバッグに詰めるから。シャワーじゃなくてお風呂に入ること。オーケー? シャワーの最中に陣痛で転んだりしたくないでしょ?」

「でも……」 僕は抵抗した。今すぐ病院に行かないといけないのに!

「アンバー。ちゃんとあたしの顔を見て。今はお風呂のことだけ考えて。その後にどうなるかは、その後で考えるの。全部、あたしがケアするから。いいわね?」

僕は急いでベッドの端に移動して、大きくなったお尻を振ってよちよち歩きでバスルームに行き、バスタブの蛇口を回した。信頼できることがひとつしかないとしたら、それは、僕の聡明で有能な妻が、必要なことすべてについて思い、考え、知っていることなのだ。僕は何を? 彼女の指示の通り、お風呂に入ることだけを考えればいいのだ。

******

18時間にもわたる、これまでの人生で最も苦痛に満ちた時間の後、元気な泣き声を上げながらタイラー・レジナルド・ジョンソンはこの世界に加わった。3200グラムとというとても元気な赤ちゃん。道理で、あんなに痛かったわけだ。

僕は全身汗まみれだった。妻の指の何本か、骨を折ってしまったかもしれない。本気では思っていない脅かしの言葉を山ほど言ったかもしれない。でも、カレンからあの大切な小さな男の子を渡され、両腕で抱いた時、そして、その子に乳首をあてがい、初めて授乳した時、あの苦しみも、それに伴う乱暴も悪態も、すべてそうする価値があったのだと思った。どんなことも、そうする価値があったのだと。

カレンは震える指先で、赤ちゃんの額にかかる髪の毛を払いのけ、おののいた様子で僕に微笑みかけた。「やったわね、アンバー。ああ、すごい……あなた、驚くべきことをしたのよ」

僕も疲れた顔で笑みを返した。本当に疲れ切っていた。「僕たちやったよね。でも、どうして君が赤ちゃんを取り上げてくれなかったのか、いまだに分かっていないんだけど。君が取り上げてくれたら、手が届かなかったので、君の指の骨を折ることもなかったと思うんだけど」

彼女は両手をかざして見せた。両手ともぷるぷる震えていた。「これがそのわけよ。それは病院の方針に反するの。でも、充分正しい理由があるのよ」

「ああ、分かった。ところで本当に僕の名前を赤ちゃんにつけたいと思ってる?」 僕は出産した本人であるので、赤ちゃんの名前を決める裁量権が僕にあるという。これは知らないことだった。

「もちろん。それより良い名前が思いつかないわ」と妻は請け合った。

僕は自分の息子の顔を見た。実際、タイラーという名前はふさわしいと思った。もっとも、どんな名前も、この美しい、しわだらけのピーナッツにはふさわしいだろうけど。「こんにちは、ジュニア。愛しているよ」

カレンが感極まってすすり泣いた。「とうとう家族ができた。これがあたしの家族」

病院で回復を待つ間、ジュニアと僕には絶え間なく来客があった。カレンは職場では重視されているようで、雑役婦から病院の管理部のトップ連中に至るまで、誰もが僕と息子を見に来たがった。

望むらくは、僕とカレンの両方の両親が生きていて、孫を見られたらと願ったが、それは叶わない。

******

ジュニアを優しく揺らしながら、授乳していた。ジュニアは貪欲に僕の乳房からミルクを吸っている。僕はこの時間が大好きだった。授乳のたびに、この子との絆を感じる。真夜中の授乳ですら、好きだった。

「アンバー? あと2週間くらいね。また男に戻ること、ワクワクする?」 貪欲に乳を啜る息子を見ながら、そしておそらくは、僕のおっぱいを盗み見もしつつカレンは、ニヤニヤして僕に訊いた。

僕はジュニアを見つめ、頭に手を当てた。「それについてだけど……もう1年続けたいと言ったらどう思う?」

「本気で?」 カレンは驚いた様子だった。

「ジュニアはまだ授乳中だから。Wイェックスを追加かなんかで打ったら、ミルクを出し続けることができるわけでしょう?」

「まあ、そうだけど。でも、本当にそれでいいの?」

「本気だよ。粉ミルクを使わなくてもいいなら、ずっと母乳で育てるつもり。その方がこの子にとってもいいし」

「分かったわ。病院に予約を入れておくことにする」

「ありがとう。愛しているよ」

******

12か月後、今度は女の子が生まれた。ブルック・サマー・ジョンソンが僕たちの家族に加わった。

******

最初のWイェックスを摂取してから、あと4日で3年目になろうとしていた。その効果が消え始めたのだった。

ブルックをお昼寝させ、ジュニアに食事をとらせている時だった。ベビーチェアに座らせ、どうかお願いだからニンジンを食べてとなだめていたら、突然、頭に奇妙なかゆみが出て、髪の毛がみるみる短くなり始めたのだった。

ジュニアは目を丸くして僕の顔を見つめ、大声で泣き始めた。

大変だ。すぐに着替えないと、服をビリビリ破いてしまうことになる。

「ここにいるんだよ、ジュニア。いい子でいるんだよ。いいね?」 

本当は「ママはすぐに戻ってくるから」と言いたかったけれど、そうはならないだろう。実際、無理だ。僕は素早くジュニアの食器を片付け、寝室に急いだ。

第二段階に入って、乳房がしぼみ、代わりに筋肉が膨らんでくるのを感じ、できるだけ急いで服を脱ぎ捨てた。そして素裸でベッドに仰向けになった。骨格が変わる間、立ったままでいられそうに思えなかったから。何分もの間、辛抱強く変化が落ち着くのを待ち続けた。その間にもジュニアの泣き声はますます大きくなっていて、結局、妹のブルックも起こしてしまった。

ようやく変化が落ち着いてきて、終了したように感じ、ゆっくりとベッドから降りた。自分の身体がこれほどの大きさになることがどんな感じか、すっかり忘れていた。急いでクローゼットの一番下のところに突進し、タイラーの衣類を入れてた箱を開け、とりあえず、フィットしそうなものを選んで着た。

出産後に増加した体重が完全には戻っていなかったからか、3年前より少し太っていたが、服は充分フィットしていた。服を整え、急いで子供たちのところに戻った。そして、その時、非常に大きな問題に直面したのだった。

子供たちが僕を認識していない。

知らない人がいきなり部屋に入ってきたと、ふたりとも、いっそう激しく泣き叫んだ。だが僕はどうすることもできない。ジュニアをベビーチェアから降ろしてあげたら、彼は一目散に自分の寝室へと逃げて行ってしまった。どう考えても、僕から隠れるためとしか思えない行動だった。ブルックを抱いてなだめようとしたけれども、全然、落ち着いてくれなかった。

万策尽きて、結局、僕が知っている最も賢い人物に電話することにした。

医師たちは携帯電話を常時持っていることはない。そこで病院に電話し、彼女を呼び出してもらうことにした。家のことで緊急事態が起きたと。実際、僕の立場からすると、それは大げさな言葉ではなかった。

永遠とも思えるような長い時間の後、ようやく彼女が電話に出た。「はい、カレン・ジョンソンですが」

「カレン、すぐに家に帰ってきてほしい」 号泣するブルックを抱きながら、電話口に叫んだ。

「あなた、誰?」とカレンは怪訝そうな声を出した。僕は一瞬、呆然として手に握る電話を見つめた。

「タイラーだよ。君の夫の」 歯ぎしりしながら答えた。

「あっ、ああ……タイラー! ごめんなさい。何かあったの?」

「子供たちが僕を分からないんだよ! 家ではふたりとも怖がって、大変なんだ。君に帰ってきて、ふたりをあやしてくれないと、どうにもならないんだよ!」

「分かった。できるだけ早く帰るから」

電話を切って、ブルックのお気に入りの歌を歌ってあげたが、全然、効き目がなかった。もう気が狂いそうだった。

******

ようやく、本当にやっと、カレンが帰ってきた。しくしく泣く娘を僕の腕から抱き受け、代わりに不透明の黒いプラスチックの袋を僕に手渡した。ブルックは、カレンの腕に抱かれて、ようやく落ち着き始めた。

「ジュニアは?」 カレンはブルックを優しく揺すりながら、僕に心配そうな顔を向けた。

「自分の部屋にいる。僕は……僕はどうしたらいいんだろう?」

「あなたに渡したそれ、7日間用のピンク・Wイェックスなの。この事態、あたしが思うには、あなたはそのままパパとして、この状態を何とか対処していくか、それとも……またママに戻るかだと思うの。その方向で行きたいと思った場合のことを考えて、それを持ってきたわ。でも、どっちを選ぶかは、タイラー、あなた次第。ジュニアの様子を見てくるから、考えてみて」

カレンはブルックを抱いたままジュニアの部屋へ行った。僕はリビングに立ったまま、手の黒い袋を見つめた。

自分は、子供たちとはアンバーとして絆を築いてきた。ふたりを出産し、授乳し、お風呂に入れてきた。アンバーとしてふたりを愛し、アンバーとしてふたりに愛されてきた。

大きな枠組みで考えた場合、タイラーになることは、そんなに重要なことだろうか? いや、違う。そうじゃない。

僕は寝室に行き、Wイェックスの指示書きを注意深く読み、自分で自分に注射をした。

10分後、ママに戻った僕は前とほぼ同じ服に着替え、寝室を出た。乳房は最初の妊娠の時に2カップ分膨れ上がり、二回目の妊娠時に、さらにもう1カップ分膨らんでいたけれど、アンバーからタイラーに変わり、その後、再びアンバーに戻った時点で、その膨らんだ部分はすべて消えていた。クローゼットを漁り、妊娠前に着けていたブラジャーを引っ張り出し、身支度を整えた。

ジュニアの部屋に入ると、カレンにあやされていたジュニアは、僕のところに駆け寄ってきて、小さな腕で僕の脚に抱きついた。

ジュニアを抱き上げ、しっかりと抱きしめた。「ごめんね、すごく恐かったよね? ママはもう二度と離れないから、大丈夫。もう二度と、絶対に」

「アンバー?」 とカレンが問いかけた。

「カレン、僕はこんなことは繰り返せないよ。これからずっと、君は奥さんを持つことになるけど、それでもいいかな?」

カレンはにっこりと笑い、ブルックを少し強く抱きしめた。「ええ、もちろん。あたしは大丈夫、やっていけると思うわ」

******

「おばあちゃん、おばあちゃん! 見てみて!」

孫に目を落とすと、彼は何かの絵を掲げていた。何が描いてあるかさっぱり分からない。手を伸ばして、優しく愛し気に彼の髪を撫でてあげた。「すごく良く描けてるわね、スティーブン! グランマにも見せてあげたら?」

スティーブンが走って部屋から出ていくのを見届け、感謝祭のディナーの準備をする仕事に戻った。

隣でパイを作っているブルックが、私の肩に自分の肩を擦りつけ、ニヤリと笑った。「ママも、あれ、何が描いてあるのか分からなかったんじゃない? そうでしょ?」

「全然。でも、スティーブはあんなに自慢して見せてたわよ」

私は、一年の中で感謝祭が大好きだった。カレンよりも私の方がこの時期を楽しみにしているし、毎年楽しむバケーションよりも気に入っていると思う。感謝祭になると家族みんなが集って食事などいろいろ楽しむから。そのひと時の幸せを私は貪欲にかみしめることにしている。

ジュニアとジュニアの妻のイブ、そしてジュニア夫婦の3人の子供たち。ブルックとブルックの妻のエミリー、それにブルックたちの2人の子供たち。それにジョシュアとジョシュアの妻のジェシー。ジョシュアは私たちの3番目の子。最後に、我が一家の一番下の子のジョージ。ジョージは今はジーナ。そしてジーナの妻のフランチェスカ。みんな私たちの家族。

詰め物をしていた七面鳥から顔を上げ、背伸びをした。お腹に重りを抱えていた期間がずいぶん長かったからか、背中にそのツケが回ってきてる。

「ジョシュアが来るのは何時ごろか、分かる?」

ブルックは肩をすくめた。「多分、ギリギリだと思うわ。ジョシュアはエミリーがまた妊娠したと聞いて、すっかり変になってるの。ほら、ムラムラしてるって言うか、あれ」

「ジョシュアは、ジーナが妊娠しようとしてることには何も問題ないように思えるけど?」 

ジョージとフランチェスカは、私とカレンの場合と同じで、子作りの問題を抱えていた。カレンは長い時間をかけてフランチェスカと心のこもった話し合いを続けてきたし、私も長時間、電話でジーナと妊娠した後のいろいろな問題について話し合ってきていた。

「うん、ママもよく知っているでしょ? ジョシュアは、エミリーが彼の一番の友だちのビリーだった頃からずっと、アレだったのよ。これまでの子供たちふたりが生まれるときもずっと変だったし、今度生まれてくる子供についても変になると思うわ。それはそれでいいの。エミリーは、あたしたちには、ジョシュアがそういうふうになるのを構わないでって言ってるから。ジョシュアは、新しい甥が生まれて、可愛がれるようになれば、元通りになるでしょ。ジョシュアは、ビリーっていうかエミリーが妊娠するということを思うと、おちんちんが立ってしまうだけなのよ」

私は顔をしかめた。ビリーが脳腫瘍を患い、生存するためにWイェックスを摂取しなければならず、その結果、エミリーになったことは、別にビリーが悪いわけではない。そのビリーと言うかエミリーがブルックと愛し合うようになり、彼の方が、ふたりの子供を喜んで産んだことは、素晴らしいことだった。すでにエミリーはWイェックスの摂取をしていたので、ブルックを妊娠させることはできなかったのだから。

「後でジョシュアとそのことで話をしなくちゃいけないようね」

「ママ、放っておいて。ほんとに。3か月くらいしたら、問題じゃなくなるから」

「分かったわ」 そう言って私は顔の向きを変え、娘にいたずらっぽい笑みを見られないようにした。「ところで、この前のバケーションでのママと私の写真があるの。見てみたい?」

「いやよ、ヤメテ!」とブルックは叫んだ。「あたしが、ママが男になってるのを見るの、どんだけ嫌がっているか、ママも知ってるくせに!」

年に一度、私は、Wイェックスの効果が薄れる時を見計らって、カレンとふたりでバケーションに出かける。夫と妻として。それはそれで私たちは楽しいのだけど、子供たちは嫌っていた。

子供たちが大きくなった時、私たちは、子供たちを前に座らせ、アンバーとタイラーについて話しをした。みんな、私が一時的に男性に戻ることを承諾してくれたが、男性に戻った私は、彼らにとってはやはり見知らぬ人にすぎなかった。どんなに頑張っても、無理だった。私が女性でいる方が、誰にとっても気楽なことだった。

「ほんとに見なくていいの?」

「ええ、いいの。で、次のバケーションの計画はできてるの?」 ブルックが話題を変えたけど、私は逆らわなかった。

「うん、ハワイよ。でも、今年は、私はママのままでいて、ママの方が一時的にパパになるのを考えているの」

ブルックは作っていたパイを落として、粉まみれの両手で耳をふさぎ、キッチンから駆け出した。「ああ、聞きたくない!」

私は大笑いし、笑いが止まらなかった。そこに生涯の愛する人がキッチンに入ってきた。この歳になっても、彼女は、結婚した日と変わらず美しい。

「いったい何事?」と彼女は娘が駆け出していったドアを指した。

「次のバケーションの計画についてちょっとほのめかしたの」

「ああ、それなら分かるわ。後どのくらいかかる?」

私はキッチンを見回し、残ってる作業を考えた。「多分1時間くらい。パイの仕上げがあるから。どうして?」

カレンは素早く周囲を見回し、誰もいないことを確かめた。それから手を伸ばしてきて、イタズラそうな笑みを浮かべながら、私の重たい乳房の片方を持ち上げ、掴んだ。

私は片眉を上げてにらんだ。

カレンは私に近づき、囁いた。「エミリーはお昼寝をしてるし、子供たちはそれぞれの家族と一緒で2時間くらいは出かけてるの。今はあなたとあたしだけ。ちょっと楽しいことしたくない? それとも、2人の老女のままでいる?」

「私が老女じゃないのは確かだけど? そんな手の裏を見せてしまって大丈夫? 私のおっぱいをべろべろ舐めまわるつもりなんでしょう? 何か昼食を胃袋に詰め込んだ方がいいわよ。簡単には終わらないと思うから」

私が重力を嫌っていることは言っただろうか? ほんと、この胸の重さには悩まされっぱなし。

カレンは再びあたりを見回した後、私のドレスの上から胸の谷間に顔を埋め、舐めながらぶるぶる顔を揺すった。彼女は60歳になっても、心は十代のまま。こんな年老い、太った私でも、彼女はこの乳房を愛してくれる。

私はふざけ混じりにカレンを叩き、作業の仕上げを急いだ。私はおばあちゃんかもしれないけど、今も、29歳の時と変わらず、妻のおちんちんが愛しくてたまらない。

Wイェックスでカレンの性欲がどれだけ高まっているか、試してみよう。年増の女ふたり。私の大きなお尻! カレンには、溜めこんでるものを全部、出してもらわなくちゃ。


おわり
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