「心が望むものをすべて」(第3章) Whatever Your Heart Desires Ch. 03 by AngelCherysse

愛し合った後の余韻を楽しみながら、私とダニエルは夜遅くまで話し合った。私は、ライフスタイルでのこの興奮に満ちた新しい変化について、行く先のことを思い、興奮でわくわくしていた。二人の愛の交わりは、これまでの私たちの関係の中でも、最も強烈で最も喜びに満ちたものだった。何より、これまでの2人の肉体的な交わりについては、私だけが一方的に喜んでいたのに対して、ついに2人共々喜び合えることができたのである。私は、これから先は、これがもっと良くなるばかりだろうと期待することができたのである。

ダニーは、私より、少し複雑に思っているように見えた。彼女は、この急激な変化に自分の身を委ねたことについて、早くも躊躇いを感じているのではないだろうか。その恐れに私は心配になった。私は、彼女をさらに刺激したくないと思い、間接的に、この問題にアプローチした。少しおどけて訊く。

「こんなことを訊くと陳腐だっていうのは知ってるけど、さっきのあなたもすごく感じたんじゃない?」

彼女は、おどおどとした様子で微笑み、そして頷いた。力ない声で呟く。

「これまでで一番良かった・・・。君が、すごく逞しい男だったから」

その言葉に、2人ともくすくす笑っていた。

「じゃあ、今夜は完璧な失敗(bust)だったわけじゃなかったわけよね?」

「失敗(bust)」という言葉に、ダニエルは、自分の膨らんだバストにちらりと視線を落とし、おどけた調子で切返してきた。

「分からないよ。でも、これよりもっと『完璧』になる必要があると思う?」

私は、明るくからかうように、彼女のわき腹を突いて笑った。まさにその話題こそ、私が求めていた切り出し口だった。何か思惑があるような笑みを浮かべて、話しを始めた。

「そうねえ・・・それについてはもっと改善することができるのは確か。実際、すでにちょっと考えていることがあるの。もし、その胸について真面目に考えるなら、しばらくそれを続ける必要があると思うわ。つまり、毎日ということ。ダニエル? 前に、ここしばらくはスケジュールが空いているって言ってたわよね?」

ダニーは、ちょっと考え込んでるようだった。頭の中で、何かを整理しているようだった。それから、ゆっくりと頭を縦に振った。

「あ、うん・・・」私の反応を引き出すような感じで返事を長く伸ばしていた。

「小さなプロジェクトが2つと大きなプロジェクトが1つある。大きい方はすでに動き出しているけど、在宅でする仕事で、Eメールで出せばいいもの。人と対面しての打ち合わせは予定にはないよ」

私は明るい笑顔を見せた。

「素敵! 私の方は、山ほど有給休暇が溜まっているの。明日の朝になったら会社に電話するわ。ちょっと待ってね・・・今日は火曜日で・・・いやもう水曜日ね。ねえ、今週一杯、週末明けまで仕事を休んで一緒に過ごさない? 2人でいろいろ遊ぶの。女の子っぽい遊びね。ともかく、一緒にいろいろ楽しむのよ。ちょうど、私たち、もう一度、初めから互いのことを知り合うようになるものだわ。最近、私もあなたもストレス過剰だったと思うし。ちょっとだけ人生を楽しむことにしましょう? どう? 私たち女の子二人だけで?」

ダニーは唇をすぼめて、私を見ていた。それから彼女自身に視線を落とす。私は彼女の両手を握った。猫なで声で話し掛けた。

「ねえ、ダニエル・・・。全然オーケーなのよ? いま私たちの間で起きていること、それをあなたがどう思うか分からないけど、私にとっては、本当にものすごく興奮することなの。あなたはとても綺麗な女の子になるわ。ほんのちょっとだけしなくちゃいけないことがあるけど、それをすれば、男たちが次々に討ち死にしていくようなゴージャスな女性にもなれる。あなたがこれまでいつも私に言ってくれてたようにね。たとえ、ちょっと普通じゃないように思えたとしても・・・」

私は、そう言いかけて、彼女の並外れて大きな乳房を優しく揉んだ。

「・・・それは、私たち2人とも、そういう女の子が好きだからってことじゃない? 覚えているわよね? 私は、あなたの夢を叶えようとしているの。そしてそれは私の夢でもあるの・・・

「この5年間、あなたは私に、何度となく、『私の心が望むものすべてを』私にしてくれると言ってくれて、しかも、その通りに実現してくれたわ。何回だったか、もう数え切れないほど。でも、今までは、私の方はあなたにそれをして上げることが一度もできなかったの。自分の夫をいかせることすらできなかったのよ。もういやになっちゃう。まるで本当に巨大な壁にぶち当たったような気持ちだったの。ところが、今ようやく、あなたがこれまで私に対して、本当に自分を犠牲にして四手くれたことを、あなたに対してしてあげる方法が見つかったのよ。しかも、その方法だと、私自身のリピドーが過熱状態になるほど興奮できて、これまで仕事バリバリにしてきた私に一週間仕事をサボる気持ちになって、そして、あなたに初めて出会った夜と同じくらい、あなたに夢中になってしまう。そういう方法なの。前に、あなたに言ったことがあったけど、今もう一度、言うわ。もし私を信じてくれたら、私はあなたに、あなたの心が望むものを実現してあげる。テクニカラー・ドルビー5.1のセンサラウンドの大音量で」

私は、自分の言葉が本当であることを強調しようと、ダニーに狂ったように情熱的にキスをした。2人、呼吸を求めて唇を離したとき、彼女はようやく小さな笑みを見せた。

「分かった。そうなって欲しいと思っているんだ」

私は彼女を抱きしめた。とうとう私たちは壁を突き破ったのだと実感があった。感極まって、私は愛しく彼女を見つめた。ネグリジェ姿でそこに座る彼女は本当に綺麗だった。あのボディ、絶美と言えるエメラルドの瞳、そして光沢があって量感もある肩まで伸びたブロンドの髪の毛。それらを持ってすれば、誰も彼女が男性だと思う人はいないだろう。

その瞬間まで、私は自分がこれまで長髪の男性にどうして強く惹かれるのか、まったく手がかりすらなかった。これまで付き合ってきた男性の中、特に思い出に残っている男性の大半が、髪を伸ばし、ポニーテイルにしていた。ダニーもそうだった。今や、その理由が分かった気がした。今でも、混雑したナイトクラブで、私の将来の夫になるダニーに目を奪われた時のこと、彼と出会った最初のときのことを思いだせる。彼がクラブの店の中を歩いていくのを、私の目はまるでレーダーのように追跡し、そして私は夢中になって追い求めていった。私は、自分が欲しいと思ったものを見つけたら、それを手に入れるのを恥ずかしがって躊躇ったりしたことは一度もない。その後の話は、皆さんもご存知のとおりだろう。

マラソンのような長時間にわたる愛の時間とその後の神経を酷使するような会話のため、私はもう1分も目を開けていられなくなっていた。明日は忙しい日になりそう。明日から予定していることを、いろいろ思い浮かべた。特に楽しいことを。眠りに落ちるとき、半ば夢の中のことのように、隣から呟く声が聞こえたような気がした。

「あまりに良すぎて、本当のこととは思えない・・・」

***

翌朝10時、私たちは玄関を出て、私のメルセデス500SLに乗り込んだ。ダニーの着替えは私自身が、特に優しい愛をこめて行った。まずは、当然、黒皮のコルセットをつけさせ、ウエスト・ラインを魅惑的にぎゅっと絞る。多分、私の錯覚なのかもしれないが、すでにコルセットの効果が現れているように見えた。前日より少なくとももう2センチ半はきつく絞って結んだのに、ダニーは苦痛をほのめかすことすらなかった。彼女の形の良い脚を強調して見せるため、フレンチ・ヒール(参照)の薄地の黒ストッキングを選んだ。下着は、黒のレースのビキニ・パンティで、それを使って、彼の曲げた「クリトリス」をお尻の割れ目にしまい込み、見えないようにする。ストッキングの踵の部分は、黒い子牛の皮のドルセー・パンプス(参照)に隠れる。このパンプスは足首のストラップで留めるもので、ヒール高は13センチである。

トップはしなやかな生地の赤シルクのキャミソールで、胸元が深くゆったりと開いていており、深い胸の谷間が充分に見えるものにした。薄地の生地は、まるで焦らすかのように、コルセットに締められた腰のラインとノーブラの胸の頂上についている突き出た乳首の輪郭を浮き彫りにしている。キャミソールの裾は、黒のマイクロ・ミニスカートに手繰りいれられている。ラム皮のタイト・スカートである。このミニスカートは、立っている限りはストッキングのトップを隠してはいるが、歩いたり、腰を降ろしたり、前屈みになると、そうではなくなる。ダニーは、私が気が変になったのではないかと思っていたようだ。確かに、自分でも、自分の気が変になっていると分かっていた。その場で彼女をレイプしてしまいたい衝動に駆られる。それを避けるためにできることは、彼女と一緒に今すぐ外に出かけることしかない。

ダニーがあの摩天楼のように高いヒールに実に急速に順応していることに驚いた。まだ歩き方は完璧ではない。だが、すぐに上達するのではと思わせ、かなり有望だった。街に行って、男たちが彼女を見て目を楽しませるところを、一刻も早く見てみたくて仕方がなかった。しかし、彼女のセクシーなイメージと吊り合わないところがまだあった。それは首から上の部分である。化粧としては、軽く唇に艶を与える口紅しかしなかったし、長く豊かな髪の毛にも、セットをしていなかった。まずは早速、その点から状況を修正することにしよう。

10時25分、エデンの前の開いている駐車スペースにバックで駐車した。ダニーは私を見て、呆気に取られたように微笑んでいた。

「いま君が考えていると僕が思っていることを、考えているのかな?」

私はにっこり笑って、ウンウンと嬉しそうに頷きました。そしてちょっとイヤラシイ声で言いました。

「毒を食らわば、皿までもって言うじゃない。『女の子っぽいこと」をするって言ったでしょう? これより女の子っぽいことってないと思うわ」

「そうかなあ。本当に僕にこれをすべきだと・・・?」

「いいから、黙って! これは、私があなたに求めていること。私があなたに求めたことは、あなたは『できない』とは言えないのよ。私を信じて。すでに予約も取ってあるわ。レクシィが待ってると思う」

彼女は目を皿のように大きくした。

「レクシィに話したのか?」

「黙って! 彼女は大丈夫。私は、この瞬間を期待して、この1週間ずっと下着をびしょ濡れにしてきたんだから。昨日の夜に言ったでしょう? あなたは何も恥ずかしがるところはないって」

ちょうどその時、歩道を、背の高い、逞しい男性が2人通り過ぎた。2人とも男性ファッション雑誌の『GQ』のページから出てきたばかりのような素敵な男性だった。私は銀のメルセデスのルーフを開けていたので、2人ともどうしても目を奪われてしまったようだ。運転席に座るブロンドの美女と、助手席に座る、同じくらい魅力的で自信に溢れた服装の美女に。2人はにっこり微笑み、うち一人は口笛を吹いた。私はダニーに目配せをした。

「今の見た? 私が言った通りでしょう? あなたは、化粧もしてなくて、髪の毛も風でばさばさになっている状態ですら、男たちをそそる存在なのよ!」

「あの人たちは君を見ていたんだよ」 

私は彼女の腕のところをおどけてパンチした。

「この男殺し! あの人たち、私たち2人を見ていたわよ。そして、まさに見たいと思っていたものを目にしていたはず。あの人たちが、あなたのおっぱいを見るためにわざと上から見下ろすようにして見つめても、私、全然驚かないわ。だって、あなた、本当に恥知らずの可愛いエッチ女そのものだもの!」

「仕方ないだろう。そういう風な格好をさせられているんだから」 ダニーはウインクをして見せた。

「そう、それでいいの。それに、忘れないでね。これから、あなたの見栄えは、もっともっと良くなるばっかりなのよ・・・」

お店のドアを入りながら、私は彼女にそう言ってウインクした。

「・・・それとも、もっと悪くなる、のかも」

***

アレクシス・ジョーダン。通称レクシは、私が不動産紹介業の免許を取得し、「山の手」へと移ってきて以来の、私のスタイリストであり、友人である。個人的なことも打ち明けられる親友である。彼女とは、仕事に対する志向も同じだし、好きな男のタイプやセックスについても同じ嗜好である。レクシは上流階級の得意客を相手に稼いだお金を投資し、2年ほどで、前の雇い主から、この「エデン」という店を即金で買収した。

私とレクシは少なくとも週に1回は会っていた。特に、私が気晴らしをしたいと思ったときなど、彼女の店に立ち寄り、一緒にランチを食べたり、互いのスケジュールが許すときなど、一緒にお酒を飲みに出かけたりしていた。先週も、あのダニーの本当の姿を知った翌日に、彼女と一緒にランチを食べていた。その日、2人それぞれサラダをむしゃむしゃ食べていた時、私は、資産(4)を利用する好機が来たと判断し、何気なさを装って、爆弾発言をしたのだった。艶のある黒髪の彼女は、私の言葉を聞いて、フォークを落としたし、同時に、あごも落として、あんぐりと口を開けたのだった。

「な、何をするつもりだって?」

私は陰謀めかしてにやりと笑った。

「耳を疑ってるかもしれないけど、聞き間違いじゃないわよ。ホント、あなたが蝿になって、昨日の夜、私たちの寝室の壁にいてくれてたらなあと思うわ。私がダニーに、彼がTガールになった姿を想像したって言ったときったら、すごかったわ。彼のものすごい噴射で、体を撃ち抜かれ、頭のてっぺんから噴水のように吹き出すんじゃないかと思ったもの」

「えーっと、私たち、まだ、例の『絶倫君』の話しをしているのよね? 本当に一晩中続けられる彼の話し。 舌使いが最高の彼、逞しい20センチの持ち主、女性に無限のオルガスムを提供してくれる男・・・彼、おんな男だったの?」

「潜在的な傾向があるのは確かだわ。前に私が言ってたの覚えている? 彼と付き合い始めてからずっと彼は乾いたままだったって? 出してくれたことなかったって? 今は違うわ。どのボタンを押すかさえ分かれば、もう、噴水が出しっぱなし、止められなくなるの。ただ、一番困ったことがあって、それは、このことが私自身をものすごく興奮させることだってことに全然気づいていなかったこと。今じゃ、このことを考え始めると、いつまでも考えちゃって、とめることができなくなってるのよ」

エステティシャンの彼女は悲しそうな顔をして頭を振って見せた。

「ものすごくもったいないことをしているようにしか見えないなあ。ねえ、もしあなたが彼に飽きたら、私に譲ってよね。私なら彼をたちどころに男性として立派に機能できるようにさせられる。ああ、どうしてあんな宝石みたいな男を台無しにするのか、信じられない」

私はちょっと邪悪っぽく笑い、頭を振った。

「何も、台無しにしてないもの。女友達ということ! ものすごく美味しいお菓子を手に入れた感じ。私の大好きなキャンディー・ケーンに何か悪い影響を与えるようなことは一切するつもりはないわ・・・」

私は自分の言ったことについてちょっと考えこんだ。別のシナリオの世界が急に広がり、頭に浮かんでくる。

「・・・少なくとも、今はまだ。ともかく、自分のキャンディを喜んで手放すには、それなりに納得のいく理由がなければしないと思う。そのことについてはずいぶんいろんなものを読んだのよ。ことを台無しにせずに、「ダニエル」を、皆に可愛がられる年間最優秀ペットにする方法は山ほどあるわ。そう言えば、「イブの肋骨」にいる女の子について話しをしてくれたのは、あなたよね? あの店の女の子には、それこそ雑誌で取り上げられてもおかしくないような可愛い3本脚の女の子がいるって?」

レクシは頷いた。私が言った「イブの肋骨」という店は、地元のTガール専門のナイトクラブ兼ナイトショーのラウンジのことである。私は、レクシが「普通と違う」好みのセックス相手を求めることがあることを充分に知っていた。それに彼女がそこのショーにも通じてるし、ショーによく出る「女の子」たちにも通じていることも知っていた。レクシは、何か思い出して微笑んでいた。多分、私たちが話している若手「女優」の一人とした火遊びのことを思い出してるのだろう。

「・・・素敵な脚よ・・・しかも、3本ともとても素敵・・・そう言えば、あなたにもいつか試してみた方がいいと言ったような気がする・・・でもこんな・・・ねえ、正直に言っちゃうけど、ダニーなら圧倒的になるわよ。彼、ものすごく可愛いし。うん、そうね、分かった。納得したわ! でも、1つだけ条件があるわ」

私は何だろうと思いながら彼女を見つめた。

「どんな条件?」

「彼女についての仕事が終わったら、その仕事結果を味見させて欲しいわ」

私はピクリとも動かなかった。スタイリストの彼女と友達になって以来、2人はいろいろな秘密や夢をバラしあってきたし、一緒に飲みに行ってきたし、時には2人で男を紹介するところに電話したこともあった。レクシにはどんなことでも断る理由がなかった。その時までは、そうだったのである。だが、今は違った。私はうまく自分の気持ちを隠した。だが、微笑んでは見せたものの、その笑顔にはひとかけらも温かみがなかっただろうと確信している。

「それについては後で話しましょう? ふー、何か大きな重荷が心から降りたような気がするわ。さて、これからは、残った部分をどう解決するかを考えなくちゃ。いろんな人と接する必要がありそう・・・」

レクシは私の手を握り、私を安心させるように擦ってくれた。

「その点でも、私が助けになってあげるわよ。ものすごく役に立ってくれそうな人を知ってるの。私から、その人に力になってくれるように計らってあげるわ。それに彼のイメージチェンジについてだけど、来週の水曜日までには、彼のほう、何とかなりそう?」

私は、熱を込めて頷いた。

「昨日の夜の彼の反応からすると、多分、どうしてもと言われたら明日にでもあなたのところに連れてこれると思う。でも、水曜日の方がいいわね。それだけ時間があれば、あなたにも私にもちゃんと準備する時間が取れるわ・・・私は、まずはショッピングをしなければ!」

***

「レクシ? こちらが私の新しい女友達のダニエル。彼女、すごく素敵だって、わたし前にあなたに言ってたわよね?」

甘い声でレクシに言った。前の週、彼女とランチを食べた後、予想した通り、レクシはダニーを頭のてっぺんからつま先までじっくり見て、品定めした。まるで、ダニエルに襲い掛かって殺しそうな勢いの視線だ。レクシの顔にありありと「欲望」の文字が浮き出ている。彼女と一緒にクラブに出かけ、彼女が誰かいい男を見つけ、視線を定めると、レクシはあの表情を浮かべるのだが、私はその彼女の表情がキュートだといつも思っていた。そして、今も・・・。レクシは何も言わずにエッチな思いに浸ってたが、その時間はちょっと不自然なほど長かった。その後、彼女はダニーの手を取り、歓迎した。

「『素敵』というより『美味しそう』というのがもっと正確な言葉だわね。こんにちは、ダニエル。エデンにようこそ。クリステン? ダニーが求めていることにぴったりの美容師がいるのよ。今週、うちの店に来たばかりのセリーヌ。もう何ヶ月も前から美容学校から彼女を引き抜こうとしていたんだけど、ようやく、引き抜きに成功したの。あの学校で一番のインストラクターだから、彼女を盗んだと言って、あの学校のブラディ・エリソンにわたしリンチされるかもしれないわ。ヘアもメイキャップもネールも、どの点を取っても、セリーヌより熟達しててアーティスティックな人はいないわよ。それに、ドラマティックな美容術にかけては、彼女、真の天才と言えるの。だから、ここにいる私たちのお友達、つまりダニエルね、彼女にいろいろさせるにはセリーヌを選ぶのが最適なのは確かよ」

レクシは後ろを振り向いて、サロンのフロアの向こうに目をやった。

「セリーヌ? ちょっとこっちに来てくれる?」

レクシの一番新しい従業員に、私もダニーも同じく魅了された。セリーヌは、まさに優美そのものの圧倒的なアフリカ系美女だった。ダニエルよりも背が高い。プラットフォームのスティレット・サンダルを履いているから一層背が高く見える。そのハイヒールを履いて実に滑るように優雅に歩いてきた。彼女の官能的な女性的プロポーションを持ってすれば、私たちの好みのポルノ女優の多くがかすんでしまうだろう。顔には、大きく表情豊かなチョコレート色の瞳、ありえないほど高い位置に鉛筆の線の程に細い弧を描いた眉、ハッと息を飲むほど高い頬骨、そして彼女の人種の女性たちの特徴でもあるぷっくり膨らんだ唇がついていた。だが、他の黒人女性とは異なり、鼻は細く、まっすぐで、繊細そうな印象を与えている。正直言って、彼女は「処置」をしているように見えた。だが、同じ処置でも素晴らしい処置であるのは間違いない。彼女のメイキャップやヘア・スタイルは実にドラマティックで、大半の白系アメリカ人女性には昼間の姿としては不適切と思うかもしれないが、芸術的な施し具合により、彼女の洗練された黒人女性の美しさを引き立てるという目的に、信じがたいほどよくマッチしていた。

「セリーヌ? こちらがダニエル。そしてこちらは彼女のガールフレンドのクリステン」

セリーヌは最初は私と握手した。だが、ほとんど私を見ていなかった。彼女の関心はもっぱら、新しく彼女の客となったダニエルに注がれていた。レキシがダニーを襲い掛かりそうな視線で見ていたと言うなら、セリーヌはダニーを貪り食うような視線で見ていた。どういう理由か私自身、説明はできないが、その時のセリーヌのダニーへの接し方に、私はまったく不安を感じなかった。

「ハーイ!」

セリーヌがダニーの手を取りながら、猫なで声で声をかけた。彼女の声は、その身なりに相応しく、滑らかで、官能的、そして挑発的でもあった。

「会えて嬉しいわ」

ダニエルは、このスタイリストに手を握られ、傍目で見ても分かるほど圧倒されているようだった。それは私も同じだった。もっと正確に言うならば、私とダニエルは、彼女の爪に魅了されていたと言ってよい。こんなに長い爪は初めて見たのである。根元から先まで恐らく5センチはあるだろう。緩やかに弧を描いて伸びたその爪は、先が四角に切られ、様々な色彩のマニキュアで彩られ、ゴールドもふんだんに使ったネール・アートを施されていたのである。ネール・アートを施された爪は、私もダニーもいつも涎れを流してしまうほど好きなもので、二人が望む「イケナイ娘」にぜひ欲しいものでもあった。あの瞬間、ダニエルの心にどんなことが浮かんでいたか、私には手に取るように分かっていた。私の方は、ともかく、あんなに長い爪をして、どのようにして仕事をしているのか不思議に思っていた。ともあれ、彼女の爪は、彼女のような最高級の美女に完全に相応しいものに見えていた。

「ご準備はいいかしら? 可愛い娘さん? あなたにはちょっとアイデアがあるの。それをしたら、男の子たちは、あなたを見ただけで、みんなズボンの中をクリームだらけにしてしまうはずよ」

ダニーが、そんな状態に本当になって欲しいと思っているのかどうかは怪しかった。だが、この派手なエスティシャンの何倍も素敵な女性にダニーが変われるなら、私も嬉しい。

ダニエルがセリーヌに連れられて、セリーヌが作業するブースへ向かうのを私は無言のまま見つめていた。レキシは、実に嬉しそうに微笑んでいた。セリーヌとダニエルが、私たちの声が聞こえないところへと姿を消したのを受けて、私は驚いた顔をしてレキシを見た。

「あなた、一体どこで彼女を見つけたの? 彼女、すごいじゃない!」

「このまえ言ったように、セリーヌは美容学校のインストラクターだったの。でも、彼女、なかなかでしょう?」

「ええ、ほんと・・・。でも、彼女、実情を知ってるの?」

レキシは取り澄ました顔をしていた。

「ノープロブレム。彼女、しっかり心得ているわ。もっと言えば、彼女はそういうお客さんが来るのを待っていたの」

「私たち、みんなダニエルを待ち望んでいたわけね」 私は夢見がちに返答した。

レキシは私の手を取り、にっこり微笑んだ。

「さあさ! あなたの方も始めましょう」

その時の私は、無意識的に太ももを擦り合わせていた。脚の間に生暖かい湿り気がでているのに気づいたからだった。

「ええ、分かってる。私もすでに始っちゃってるみたい」

レキシが私のエステを終えた後もまだ、セリーヌはダニエルへの作業を続けていた。お昼の12時になっていた。レキシは午後の3時まで予定がなかったので、セリーヌが魔法の如き作業を続けている間、彼女と一緒にランチを食べに出ることにした。サロンのこちら側からは、セリーヌがダニエルにどのようなことを行っているか、はっきりとは分からなかった。そんな私の心をレキシは読み取った。

「心配しなくていいのよ」

ドアの外へと私を連れ出しながら彼女は、甘い声でなだめた。チシャ猫のような笑みを口元に浮かべている。

「今、ダニーは最高のエステティシャンの手にかかっているの。あなたは結果に大喜びするはずよ。約束するわ。結果のすべてに満足するはず」

私はレキシにちょっと疑うような目をして見せた。そんな私を全く気にせず、彼女は私と一緒にメルセデスに乗り込んだ。

***

私たちは3時10分ほど前にレキシの店に戻った。セリーヌは仕事を終えたばかりで、クライアントであるダニエルをフロントに連れてくるところだった。私は、前方からやってくる人物を見て、体が固まってしまったように立ちつくした。たった1日前までは明らかに男性だった、その人物。髪の毛は長くなり、背中の中ごろまで来ている。キラキラ輝く金色の髪は、彼女のピンク色の、染みひとつないつるつるの肌と、愛らしく輝くエメラルド色の瞳に完璧にマッチしていた。ヘアは豊かに広げられ、ゆるくカールした大きな房がいくつも顔の周りで跳ねていた。

目の辺りは、セリーヌ自身の目と同じ風にたくみにメイキャップされている。まず注意を惹き付けるものは、大きなまつ毛だろう。シャドウには様々な色合いが完璧にブレンドされていた。眉毛の辺りはダークなモスグリーンがあり、そこからまぶたにかけて穏やかに曇った白へと変化を見せ際立たせている。幅広のライナーは目じりの先まで伸び、エキゾチックな魅力を、彼女のキラキラ揺らめく瞳に付け加えていた。

頬紅には暗色と明色が上手くコンビネーションされ、彼女の頬骨は以前よりずっと高く見えるようになっていた。セクシーな口元はクラレットのワイン色(参考)で縁取られ、濃い光沢のある赤で色付けされていた。唇は、前よりぷっくりと膨らみ、豊かで、キスをしたくなる姿に変わっていた。

まあ! それに今は爪も伸びている! セリーヌの爪ほどは長くはないが、多分、根元から3センチ以上はあるだろう。彼女の美しい唇と同じ、濃い紫色に染められ、ゴールドのネール・アートでキラキラ輝いていた。この人は、本当に、私が4時間前にここに連れてきた人と同じ女の子なの? そんなことってありえるの?

彼女は、女性らしく落ち着いた足取りで私に近づき、かかとを軸にしてくるりと回り、セリーヌの手仕事の結果を充分にじっくりと見せ付けた。それから体を私の体に押しつけ、何気なさを装いながら、あの紫色の爪で私の太ももの内側を優しく引っ掻いた。

「気に入った?」 焦らすような言い方で訊いてくる。 「私、ゾクゾクしてるの」

私はただ唸り声をあげて、弱々しく頷くだけだった。ああ、誰か、お願いだから、私のあそこの奥にある水道の蛇口を締めて! 支払いのチェックにサインをするとき、手が震えないようにと意識的に努力しなければならなかった。危うく支払いの総額を確かめないところだった。でも、家の電気代の2か月分だからって、それが何? 充分それだけの価値のあることだわ!

セリーヌとダニーは抱き合って、唇を合わせないようにと投げキスをした。セリーヌの息を飲むほどの圧倒的な仕事を台無しにしないためにである。

「電話するのよ」 セリーヌが命令口調でダニーに言った。

「ええ、明日」 ダニーが約束した。

店の出口に向かいながら、私はどうしても一言いいたくなっていた。

「ダニエル? お友達ができたようね」

ダニーはまっすぐ前を見たまま、いたずらそうな笑みを浮かべ、頷いた。そして、夢見がちに呟いていた。

「ええ。それは確かだわ」

車を出してカーブを曲がると、ダニエルは私にすがり付いてきて、さっき行ったように、再び私の太ももの内側を何気なくなで始めた。私は運転に意識を集中させるのが大変になっていた。

彼女はそんな私の耳に息を吹きかけながら、訊いてきた。

「それで?・・・今度は何?」

この日の午後に彼女と一緒にしたいと思っていたことについては、私はすでに頭の中に全部のリストができていた。でも、今は、彼女と一緒に家に帰り、ベッドの中に飛び込むことしか考えられなくなっていた。そのことをダニーに伝えると、彼女は口をとがらし、異議を唱えた。

「あなたのためにこんなにきれいに着飾って、セクシーになったのに? 何を考えているの? 私を外に連れ出して、見せびらかして欲しいわ。すごく興奮していて、食事のことはあまり考えられないけど、少なくとも、飲みには連れて行って欲しいわ!」

確かに私も彼女を連れ出したいと思った。でも飲みにではない。それでも、ダニエルの言うことには一理あった。彼も私を人前に連れ出して見せびらかすのが好きだったのである。私自身も、そういう風に自分を見せびらかすのが好きだったこともあるし。彼はいつも私のことを自慢に思っていてくれていたし、自分がいかに美しいものを手にしているか、他のすべての人に見てもらいたいと思っていたのである。私は、そういう態度になれるほど自分に自信を持っていた彼が好きだった。確かに時々、私は浮気をしたけれど、彼には私の浮気を疑うような根拠を1つも見せなかった。

いまや立場が逆転してる。私は、それを問題と思い始めていた。これまでのダニーとの様々な性的実験では、ひと目につく場で行ったものにせよ、そうでない場で行ったものにせよ、すべて2人だけでしたものだった。スイング・クラブに行ったこともなければ、スワッピングをしたこともない。他の女性を交えての3Pすらない(レキシは、そのことでしょっちゅう私に恨み言を言っていた)。他の人を交えるかどうか? それは私が決めることであって、彼の決めることではない。私を家で待っててくれるもの、つまりダニーが、どれだけ素晴らしい人であるか、私自身がよく知っている。彼のような男性に手をつけるためなら、自分の生んだ最初の子供ですら売り飛ばしかねない女たちがいるだろうと承知している。しかも、決して彼を離さなくなるだろう。私のことを偽善者と言いたければ、言っても構わないわ。夫を他の女性と分かち合うなど、私には到底できそうもない。彼が他のメス猫の腕に抱かれている姿。それを想像しただけで・・・・

ダニーは、道沿いの小さなキャフェを目に留め、そこの駐車場に車を入れるよう私に促した。そのキャフェは以前、2人でよく立ち寄った店だった。座った席は、店のパティオと人通りの多い歩道とを仕切っている低い錬鉄製のフェンスのすぐそばのテーブルだった。ダニーは、席に座り、脚を組んだが、その身のこなしはまさに熟練した者のする身のこなしだった。ストッキング擦れあう、柔らかく、官能的にザラザラした摩擦音に私の感覚が痺れていく。まあ、彼女ったらすごいスピードで仕草を会得してきている! 私はブラッシュワイン(参考)のカラフ(参考)を注文した。2人で互いに見つめあいながら、腰を降ろし、雑談をしていた。ダニーは右手を私の左手の上に置いていた。私の手の甲の敏感な皮膚を紫色に彩色した爪で優しく引っ掻いている。テーブルの下では、何気なさを装って、ハイヒールのパンプスで私の脚を擦っていた。私はどうしようもなく腰をくねらせてしまっていたが、びちゃびちゃとした湿った音がしていないことにむしろ驚いていた。それほどパンティがびしょ濡れになっていたから。

ワインを飲みながらそこに座っていた1時間あまり。その間に私とダニーは、控え目なものではあれ、ちょっとした暴動を引き起こしていたと言える。視界に入るどの男性も、最初、ダニエルを目にした後、必ず、2回か3回は振り返って彼女を見ていたのだ。だが私にはそれは気にならなかった。もっと言えば、昔ダニーが私を外に連れ出したときにいつも、彼が感じていたと思われるスリル感を、ようやく理解し始めていたのだと思う。この事態にあえて直面することにしよう。男たちは犬なのだ・・・全員とは言わずとも、大半がそうなのだ。あっという間に終わる、狂ったようなセックスには男たちは適している。だが、それより真剣な係わり合いについては、お茶を飲む時間程度しか付き合うことができない生き物なのだろう。だから、男たちがあからさまに性的欲望を見せつけてきても、私はまったく怖いと思わない。それに、彼らが私の「ガールフレンド」に色目を使い、逆に私の彼女が彼らに色目を送り返すのを見るのも楽しかった。私は先週、自分が言ったことを思い返していた。つまり、家に逞しい男を2人連れてきて、並んで横になっているダニーと私の両方にセックスしてもらうこと。ひょっとしたら・・・

彼女の隣に座りながら、自分が、そのようなことに、生まれて初めて肯定的に感じている。自分のその心境の変化に、かろうじてだが警戒した。ダニエルは私の心境を見抜いたようだった。

ダニエルは声を震わせながら私に声を掛けた。

「ねえ・・・、ちょっと悩んでるんだけど・・・セリーヌは、今日は髪の染色とパーマができなかったの。一度に、それだけの処理を全部行うと髪の毛を痛めることになるってってた。ということは、来週、もう一度、サロンに行かなくちゃいけないんだけど・・・それに加えて、今週はずっとカーラーやらスタイリング用のブラシの使い方を習得しなくちゃいけないの。そういう物の使い方、全然知らないし。それと、そうする替わりに・・・」

「そうする替わりに?」 私は片眉を上げて彼女を見た。何を言うのか興味がある。

ダニーはいたずらっぽく微笑み、話しを続けた。

「その替わりに、セリーヌは私に個人的にレッスンをしてもいいって言ってくれたわ。基本的に、化粧術についての全カリキュラムとなるはず。髪、メイキャップ、ネイル、その他すべて。そのカリキュラムが終われば、資格を取る試験を受ける準備さえできるようになるらしいわ。多分、しばらくの間、毎週何日か夕方に彼女のところに通うことになると思う。セリーヌは明日から始めても構わないって言ってたわ。宿題もあるって。もちろん、私は・・・」

彼女はさらに笑みを大きくしながら、テーブルの下、足の指を滑り動かし、危険なほど私のあそこに近づけてきた。

「・・・もちろん私、あなたを練習台にすることもできるとおもうし。どう思う?」

私は、興奮した気持ちを隠すのが精一杯だった。

「か、彼女・・・全部あなたに教えるのね・・・私とあなたの2人のために・・・それに、あなたは、一日中そういうお化粧の勉強をする方が楽しいと思っているのね? ライターとして文章を書く代わりに?」

彼女は、嬉しそうに頷いた。

ちょっと考えてみよう。自分が正直にどう感じるのか、考えてみよう。目の前にいる、新たに作り出された私専用の可愛いおもちゃ。悩殺的でゴージャスで女らしいおもちゃ。その子が仕事を変えようとしている。彼女がその仕事に就けば、彼女を最大限に女性化したままにしておくことができるし、私が2人の関係で支配的なままでいられるし、今後の2人の人生をずっと、共に甘美なほど幸せでい続けられることになるのは、ほぼ確実だ。うーむ。充分考えよう・・・じっくり時間をかけて!

「すごい! 試してみたい? だったら私もすごく嬉しいわ!」 私は即答で答えていた。

彼女もわくわくしているのは明らかだった。そして、次の瞬間、彼女の物腰が一変した。まるでスイッチを切り替えたかのよう。今までそこに座っていた、嬉しそうに感情があらわにはしゃぐ、子供っぽく可愛いセクシー娘が、急に、野性的で性的魅力を剥き出しにしたセックスアニマルに変わったのだった。彼女はテーブルの向こうで身を乗り出し、長いまつげの目でセクシーに私の口元を見つめた。

「今すぐ私を家に連れ帰って、激しくセックスして私を狂わせて・・・」 熱い溜息混じりに言う。

ダニエル? 同じことを2回繰り返して言う必要はないわよ。

どうやって無事に家に帰れたのか分からない。覚えているのは、彼女の舌先が私の耳をくすぐっていたことと、彼女の指先のステキな爪が、私の太ももの内側と割れ目の周囲を優しく擦り、私を焦らし続けたことだけ。玄関先にやっとの思いでたどり着いたときには、私の全身は、過剰に興奮した神経終末の束に成り果てていた。愛液がはしたないほど溢れ、太ももを伝っていた。全身の制御ができず、小刻みに震えていた。

2人、大きなふわふわのソファのところに立っていた。ダニーは私をきつく抱きしめた。彼女の鼓動が感じられる。彼女の抱いている欲望のレベルは私のレベルと同じだった。彼女は唇を私の耳元にぴったりと寄せ、甘い声で、「いって」と言った。それと同時に舌を私の耳に挿し入れ、指を1本使い、その爪で軽く私のクリトリスを弾いた。たった一回だけ。

それだけで決まってしまった。あっという間にオルガスムに達し、その強烈さに私の膝はがくがく震えた。体を立たせていられなくなり、崩れるようにして後ろのソファの腕のところに倒れこんだ。フラシ天(参考)のクッションの上に横寝になって倒れる。そしてダニエルが私の上に乗っていた。私の全身はがくがくと激しく痙攣したままだった。次から次へと強烈な快感が波となって私の体を飲み込んでいく。その間、彼女はしっかりと私を抱き包んでいた。その後、私は彼女の腕の中、小刻みに震えながら横たわっていた。胸の中、心臓が激しくハンマーを打つように鳴っていた。その時になってもまだ、私は目を開けても、焦点が定まらずにいた。ダニーの満足そうな笑顔だけが見えていた。

「今の、良かった?」 からかうように言う。

そして、彼女が本格的に私に対する仕事を始めたのは、それからだったのである。その時のオルガスムは、その夜の最初のとっかかりにしか過ぎなかったのだ。その夜はそれから数え切れないほど味わうことになったのである・・・・


つづく