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Normal 「普通」
「ちょっと、パパ、マジ? 少しはプライバシーを守ってよ。ボクはもう18歳だよ。パパも、ボクを大人として扱い始めなきゃダメだよ」
「ああ。確かに。その通りだな。すまない。だけど……お、お前、ブラをつけてるのか?」
「もちろん。これについては話し合ったよね、パパ? 最近、ボクはちょっと胸を抑えなくちゃいけなくなったって」
「ああ、分かってる。ただ……その……お前はこれが普通のことだと思ってるのか?」
「胸が膨らんだ人はブラジャーを着けるものだよ。そしてボクも胸が膨らんできた。ゆえに、ブラを着けることは普通のこと。パパは何を考えてるの? まるで、あのチアリーダーの話しをまた最初から繰り返そうとしてるみたい」
「パパはいまだに、お前がどうしてスカートを履くようになたったか理解できていないんだよ。確かに男のチアリーダーは見たことがあるけど、その男子たちは、誰もスカートなんか……」
「そういうふうになってるってだけの話しだよ、パパ。ああ、パパは本当に頭が古いんだから。パパが次に何を言い出すか分かるよ。次は、ボクのプロム・パーティのドレスにも文句をつけるんだ」
「ど、ドレス?」
「ああ、そうだよ、パパ。パパは、流行に敏感な息子を持ったという事実と折り合いをつけなくちゃいけないよ。醜いスーツとか着て行かなくちゃいけないとか、そんなふうに考えているみたいだよ、パパは」
「私は古臭い人間じゃない。ただ理解できていないだけだ。どうして、何もかもが……この1年くらいの間に本当に何もかもが変わってしまったんだ。どうしてなのかが分からないのだよ。以前のお前は……お前は普通だっただろ? それが今は……。パパの友だちは、ほとんど、お前のことをシシーかなんかだと思ってるんだ」
「それで? パパはどう思ってるの?」
「パパはお前のことを愛している。だからこそお前のことを心配してるんだよ。本当に心配してるんだ」
「じゃあ、心配しないで、パパ。ボクは大丈夫。普通の男子だよ。だからお願い。心配するのはやめて」
「心配がやむとは思えないよ」
「それはありがとう。でも、ちょっといい? ボクは着替えをしなくちゃいけないの。マーカスが車で迎えに来るから。彼が来た時、一番ステキに見えるようになっていたいから」
「マーカス? お前、お、男とデートするのか?」
「もう、頼むよ、パパ。彼はボクの友だち。ボクと彼とでディナーを食べて映画を観て、それから彼の家に行くの。デートじゃないよ。ボクはゲイとかじゃないもん」
「わ、分かった。まあ……まあ、楽しんできてくれ。それに、安全にな」
「うん。バッグいっぱいにコンドームを持っていくから大丈夫」
「な、何を持っていくって?!」
「冗談だよ、パパ。ただの冗談。持っていくのは2個か3個。別に乱交するつもりはないから」
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