613 | 615
Epiphany 「開眼」
昔、自分は将来どんな人生を送るんだろうといろいろ予想していたけど、今のこの人生は、予想してた人生のレパートリーに入っていなかったのは本当だ。別に自分が不幸だと言ってるわけではない。実際は、全然、不幸じゃない。あたしは充実している。どういうふうに充実しているかは、うまく表現できないけれど。でも、あたしは充実している。それに加えて、自分は、運命によってこうなるべきとされていた人間になれている気持でいる。でも、そういう気持ちに反して、いまだに、自分が最終的になるべき人間になり切っていない気持もしている。
多分、これは確認しておくべきだと思う。つまり、かつて、あたしは他の男性と同じく普通だったということ。というか、少なくとも自分自身はそう思っていたということ。確かに、あたしは特殊なフェチを持ってたし、伝統的な男らしさという言葉を聞いて、誰もが思い浮かべる概念に当てはまるような男ではなかったのも自明。だけど誰一人として、なかんずく、あたし自身、あたしが今のこういう存在になるとは予想できていなかった。
もし、あの時の新入生いじめに屈するのを拒んでいたら、今の自分はどうなっていたんだろうと思うことがよくある。彼らがあたしに履かせようとしたパンティをひと目見て、即座に、自分は男子学生クラブに加入するためだけとは言え、自分を辱めるつもりはないと、きっぱり断っていたら、どうなっていただろう? その時はそれで済んでも、いつか別の時に、あたしは自分の本性を発見していたのでは? それとも、自分が本当になるべき姿に全然、気づかずに人生を歩んでいたのかも?
今となっては、そんな疑問は意味がない。というのも、もう過ぎてしまったことだから。あの時、あたしは渡されたパンティを履き、男子学生クラブに入り、結局は、クラブの会長のオモチャになったのだから。会長はあたしに体を変えるよう言い張り、あたしも、その要求に屈した。屈した理由はたった一つで、しかも単純な理由。彼があたしにしてくれることを自分から切に求めるようになっていたから。
生まれて初めてペニスを口に入れたとき、啓示を受けた。その時のことで、あたしは、セックスがどんな行為になりえるか、どんな行為をすべきか、そのすべてに目を開く結果になった。口唇奉仕とセックス。そして、セックスに伴う足指が内側にきゅうっと反る(参考)ようなオーガズムを繰り返し経験した後は、もはや女体化にあらがうことすらしなかった。むしろ、自分自身それを望んだ。
ホルモン、整形手術、婦人服、女性としての所作。全部、問題じゃなかった。女体化に至る一つひとつの段階を進むにつれ、あたしは真の開眼に近づいていった。
そして何年かすぎ、今のあたしがこれ。当時の自分の面影はどこにもない。でも、それは構わない。それというのも、好きなだけおちんちんを得られるから。それこそがあたしにとって意味のあることだから。
List