621 | 623


Self-discovery 「自己発見」

「オーケー」とチェイスはビキニのボトムズを脱ぎながら言った。「君が正しかったよ。言ったからね? これでいいよね?」

「え、何て?」と彼のガールフレンドのマンディは、片手を耳に添えて聞き返した。「もう一度言って。でも、ゆっくりとね。じっくり味わって聞きたいから」

「ハッハァー」とチェイスは了解したことを示す声を上げ、ビキニのトップの紐をほどいた。トップを外し、横の衣類の山に放り投げた。「面白い。実に面白いよ。でも、ああ、いいさ……認めるよ。ボクは楽しい時間を過ごした。こうなるとは思っていなかったけれど、でも……」

「あなた、2週間近くも、ふてくされたり、ぶつぶつ唸ったりしてたのよ」と彼女も同じく服を脱ぎ始めた。「それに、おへそにピアスするときも、ずいぶん怒ったわよね」

チェイスはへそのピアスをいじった。「分かってるよね? これはおしまいにしなくちゃ。そうだよね?」

「あなたがそうしたいなら」と、マンディは彼に近づき両腕を彼の腰にまわした。そして彼のぷっくり膨らんだ左右の尻頬をぎゅっと握った。「でも、別にお終いにしなきゃいけないわけじゃないわよ」

チェイスは不満そうな声を出して、彼女から離れた。「いや、もちろん、おしまいにしなくちゃ。って言うか、楽しかったよ。それは認める。でも、もうボクたちは現実の世界に戻らなくちゃいけないんだ。ボクには友達がいるし、両親もいるし、仕事もある。家に戻ったら、普通の状態に戻らなくちゃいけないんだ」

「でも、この状態を、あたしたちにとっての新しい『普通の状態』にすることも考えられるわ。あたしもあなたも可愛いでしょ? 男たちにちやほやされたり、あの素敵なオモチャで一緒にプレーしたり……これからも、こんなふうに楽しく暮らしていけるのよ? 別に妄想を語ってるんじゃないの。あなたは、ここに来て初めて本当のあなた自身を見つけたみたいだし、それに……」

「ダメだよ」とチェイスは後ろを向いた。しかし、彼女の言っていることが正しいという意識が、心の玄関をバンバンと叩いている気がした。この1週間、彼は一度も自分が劣ってるとは感じなかった。確かに、落ち着かない気持ちだった。だが、女のフリをしてると気づいく人が誰もいないと知るや、すぐに、その落ち着かない気持ちが消えていき、代わりに、純粋に楽しい気持ちがあふれてきたのだった。

しかし、彼は、女装にまつわる現実的なあれこれよりも、まさにこの、楽しかったという点に最も不安を感じた。そして、不安と同時に興奮も。

「こういうのは、どうかしら? 家に帰ってからもこれを続けるっていうのは? あなたは外に出たりしなくてもいいわ。ふたりだけの小さな秘密にして。いいんじゃない?」

秘密。その提案は良さそうに聞こえた。それにリスクもない。誰にも知られないんだよね? そう思い、彼はにっこりと微笑み、そして言った。「そ、それって、良さそうだね」




List