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Pulling up the roots 「根元から」

「でも、キム叔母さん、みんながボクをじろじろ見てるんだよ! 家の中に戻って、少なくとも、ワンピースだけでも着させてくれない? これって、すごく恥ずかしい!」

「みんなが見るのは当然のこと。そもそも、可愛い女の子たちがビキニを着るのはどうしてだと思ってるの? まさか着心地がいいからとでも? みんなに見てもらうためじゃないの。 ほら、いいから、大人になって、レクシー」

「ボクをレクシーって呼ぶのやめて。ボクの名前はアレックスだよ」

「そんな容姿なのに? いえ、いえ、あなたはレクシー。あなたのお母さまは、ちゃんとした教育を受けさせようと、あなたをここに送り込んでくれたのよ。そんなお母さまをがっかりさせてしまったら、あたしバチが当たるわ」

「でも、それと、ボクが女の子みたいな格好をすることが、どんな関係があるの? ていうか、叔母さんがボクにいろんな本を読ませるけど、ボクは、それは構わないんだよ。テレビやゲームも禁止されてるけど、それも気にしない。でも、女の子のフリをするのって……?」

「あなたはフリをしてるんじゃないの。あなたは今は女の子になってるの。このこと、あなたに、何回言わなくちゃいけないのかねえ」

「で、でも、どうして? ボクが男でいると、何がダメなの?」

「何もかもよ。レキシー、男は諸悪の根源なの。あなたが読んでる本から、何も学んでいないの? 歴史上のいろんな出来事、いろんな戦争、殺し合いについて、読んできたでしょ? なのに、まだ理解してないの? ちゃんと確かめずに先に行ってしまう。それこそ男たちがすることよ?」

「でも、ボク自身は誰も傷つけたことなんかないよ」

「まだ、今のところはね。でも、時間の問題だわ。さあ、もう文句を聞かされるのは充分だわ。この姿が、今のあなたなの。それを受け入れるのが早ければ早いほど、あなたは幸せな気持ちになれるわよ」

「でも……」

「ちゃんと考えてから言い出すこと。いいわね、レキシー。もう一言でも文句を言ったら、あなたの体に何かもっと恒久的な変化をしなくちゃいけなくなるわよ。叔母さんはね、前から、あなたの脚の間にあるその小さなモノが気に入らないの。だから、ちょっとした些細なことでも、あたしは、あなたがソレなしでも大丈夫と判断することになると思うわよ。だから、何かひとこと言おうとする前に、それを思い出すことね」

「ぼ……ボクは……わ、分かったよ。いいよ、分かった、キム叔母さん」

「それでこそ、あたしの可愛い姪ね」




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