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Awkward discovery 「気まずい発見」

「オーケー、で……うん。これって、何て言うか、気まずいな」

「気まずい? マジで言ってんの? こんな場で、その言葉を使う? 頼むわよ、トレント。あんた、あたしの下着着てるのよ! 何なのこれ? ほんと、マジで……何なのよ!」

「ああ……うん……。これについては……こういうことだったって。これ、知らないでほしかったんだけど……」

「なに、それ? 言い訳になってないじゃないの。ほんとに」

「いや、その……。つまり……変なふうに見えてるかもしれないけど、違うんだよ。いい? ボクは他に選択肢がなかったんだ」

「そう。でも、そんなことやってたらダメよ。さもないと、パパの誇りで喜びでもある息子は、実は女装好きだってパパに言いつけるからね」

「まず第1にね、ボクは誇りとか喜びとか言われるのが嫌なんだよ。パパが姉さんをボクと違ったふうに扱うのは、ボクのせいじゃないよ。第2に、言ったよね、ボクは女装好きじゃないって。これは……これは、今回が初めてじゃないけど、いつまでも続くことでもないんだよ。ボクには他にしようがないんだ。いい?」

「どういうことか、もっと説明が欲しいところだわねぇ、トレント」

「いいよ。分かったよ。ボクはひとつ授業を落としそうになってるんだ。生物学の単位が取れなかったら、詰むんだよ。奨学金を止められてしまう。野球も続けられないし、大学も終わり。退学してしまうんだ。そうしたら、結局、パパと一緒に自動車修理工場で働くことになっちゃうんだよ。分かる?」

「それが、あんたがあたしの服を着る説明になるとでも? それに、あんたのヒップ、どうしてあたしのより大きくなってるのよ?」

「ウェストのトレーニングの結果だよ。でも、それが重要じゃないんだ。重要なのは、教授のところに行ったら、究極の選択を出されたということ。教授のために……アレを……教授とアレをするか、さもなければ単位を出さないかのどっちかって。姉さんが何て言うか分かってるよ……気持ち悪いって言うんだろ? ああ、ボクだってそうさ。でも、それしか道はないんだよ」

「ちょっと待って。生物学? あんた、そもそも、このセメスターで生物学を取ってないんじゃない?」

「生物学関係は去年のこと。加えて、卒業までに実験系の科学の授業をもう一つ取らなくちゃいけないんだ。だから……いや、ボクはただ、将来のために基礎固めをしているだけだよ。完璧に理屈が通ってるだろ? ちょっと待ってよ。なんで笑ってるの?」

「別に。理由なんてないわ。本当に。あんたは、今のまま、続けたらいいわ。もっと言えば、この週末にあんたと一緒にモールに行くことにしたわ。あたしと一緒なら、女の子のショッピングができるでしょ? あんたが着たい可愛いランジェリー、好きなだけ買えるんじゃない?」

「え、何? ボクはべつに……ね、姉さんはパパには言わないよねえ?」

「言わないわ。でも、ちょっとだけ忠告しておくけど、あんたのその体を見たら、パパだって、遅かれ早かれ気づいちゃうわよ。だったら、多分、あんたからちゃんと告白した方が良いはずよ。どうなるかなんて分からないわ。パパも、もうひとり娘ができて喜ぶかも?」




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