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A deserved punishment 「当然の報い」

「よう、お前、カールを見たか?」

「今はカーラって呼ぶべきじゃないかな。ああ、見たけど?」

「同じ人間だなんて信じられないな。マジで。あんなこと、どうやってできたんだ?」

「どうやってって、お前はちゃんと知ってるはずじゃないか、サム? 会社は、この件についてさんざん会議をしたんだぜ?」

「ああ、もちろん、それは分かってるよ。俺も会議にいたからな。あいつはヤバい女にハラスメントをしてしまったんだ。で、結局、会社から、クビになりたくなかったら、処罰を受けろと言われたと」

「俺もその会議にいたよ。だったら、何を言いたいんだ?」

「俺が言いたいのは、どうしてカールは、こんなふうにされるのを許したのかってこと。それに、どんなふうにして、あいつはあんな姿に変わったんだということ。俺は、あいつが、いかにもオカマですって姿になって出てくるとばかり思っていたんだ。それがなんと……」

「本物の女になって出てきたと。分かるよ。確かに重要な点だ」

「それなのに、お前は気にならないのか? あいつと話をしたか?」

「もちろん、気にはなっているよ。だけど、気にしたからって、俺に何ができる? あいつは、ああなることに同意したんだ。加えて、俺に言わせれば、あいつはああなるのも当然の報いだと思うぜ。あいつが粘着的に追いかけまわした結果、いったい何人、秘書が辞めていったか数えきれない。しかも、その数には、あいつがシツコク言い寄って体を許してしまった秘書の数は含めていないんだからな」

「確かにダメなことだよ、ケビン。俺は、その点については反論しない。だけど、あいつは、これから1年間、あの格好で過ごさなくちゃいけないのか? 何て言うか、そんな処罰って、あいつがやったことに見合う処罰なのか?」

「俺に聞かれてもなあ。俺が知ってるのはひとつだけ。会社の男性社員の何人かが、あいつを見る眼つきからすると、あいつは、それなりにたんまりお灸を据えられる心づもりをしておいた方がよさそうだってことだけだよ」

「え? まさか……」

「俺に言わせれば、お前は、うちの会社の同僚たちを過大評価してると思うぜ。それに、みんな知ってることだけど、何かあったとしても、ちょっとした苦情の報告を1本書けば、カーラはすぐにクビになるんだ。会社の男たちがそれを利用することはないなんてお前が思ってたとしたら、お前、俺が思ってたよりマヌケだってことになるぜ」

「マジかよ。ぞっとするなあ」

「気色悪い粘着野郎には、それなりのことが起きるのも当然ということさ。ていうか、それなりのことをヤラれるって言うべきかな」




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