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Fate 「運命」

抵抗しようと思えばできたかもしれないと思っている。いや、抵抗すべきだった。そう思う。頭の中、いろんなことがごちゃごちゃしていたせいで、今は、他の道があったかどうかも分からない。他の道を選んでも大きな違いがあったのかも分からない。たとえ、持てる限りの意思の力を使っても、こうなることを防げたかどうかも分からない。情けないけど、自分が欲したことなのかどうかも分からない。あまりにいろんなことが起きた後となっては、分からない。こんな姿になった後となっては。

これは最初から彼女の計画だったのだと思う。そうに違いないし、あたしは確信している。だけど、それを知ったからといって、何が変わるわけでもない。起きてしまったことは変えられないのと同じで、彼女に歯向かうなどできなかった。歯向かうと思うだけで、胃の辺りが苦しくなるし、頭脳が……どれだけ中身が残っているか分からないけど……頭脳がぐちゃぐちゃになる。あたしは彼女が欲することをするし、あたしは彼女が欲する存在。その関係に対して、あたしにできることは何もない。

もちろん、最初からこうだったわけではない。ああ、なんて前のことだったのだろう。だけど、あたしと彼女が普通のカップルだった時があった。彼女がこんなふうに変わってしまうなんて、ひとかけらも兆候が見られなかったし、あたしも自分の運命について、薄っすらとした予感すら持っていなかった。でも、あたしたちが気づいていようとなかろうと、運命というものは、じわじわと近寄り、その歩みを止めようとはしないもの。いま、あたしは、こうなる運命にあったのだと目の当たりにしている。

時々、何もかも忘れてしまうことができたらいいのにと思う。もし、それを彼女に頼めば、彼女なら確実にしてくれるだろうとは思う。でも、あたしは、かつて自分がそうであった男性と今の自分とをつなぐ細く弱い糸を断ち切ることができない。かつてあたしのことを友人と呼んでくれていたすべての人々から遮断され、自分が男性であった頃の生活の記憶が悪夢のようにあたしを悩ませているにも関わらず、いまだに昔の自分とのつながりを断ち切れずにいる。

そして、あたしは彼女があたしのために選んだ人生を送っている。あたしは売春婦なのだろうか? 分からない。自分ではおカネをもらうことはないから。でも、男たちは何か支払っているのは直感的に分かる。何を払っているのかは、分からない。この生活の現実について、あたし自身、知りたいと思っていないのだろうと思う。棺桶に閉じ込められた、かつてのあたしの逞しい男らしさ。その棺桶の釘を抜くなんて、耐えられるとは思えない。そんなことをして、生きていけるとも思えない。そもそも、自分はそんなことをしたいとは思っていないのかもしれない。






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