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Little sister 「妹」
「おや、おや、おや……やっと姿を見せる気になった人は誰かしら? 昨日の夜は楽しかった?」
「そのことは……話す気になれないわ」
「いいじゃないの。あたしたち、いまは姉妹になったのよ。ちょっとガールズ・トークをしてみたいと思わない?」
「話したくないって言ったはずよ、ジェス。家の中に入れてくれない? ちょっと匂うわよ。ムカムカしてて、気持ち悪いわ」
「あなたも、そんなにいい匂いはしてないけど? 何、この匂い。酒臭いけど、それよりなんかムッとする感じの匂い。ぶっちゃけて言っちゃうと、セックスの匂いじゃない? でも、あんたもあたしも、それってありえないと思ってるけど?」
「いいから、中に入れて」
「あんたがパーティから姿を消した時、何が起きたのか、ちゃんと知りたいわね。何もかも。それを聞いてあたしが満足できたら、家に入れてあげてもいいわ。でも、そうじゃなかったら……そうねえ……昨日の夜、あんたが一緒にいた人が助けてくれるんじゃない? お願いすればでしょうけど……」
「ほんとに、ジェス……見逃すことくらいできないの? あたしは、家に入ってシャワーを浴びて、普通の服に着替えたいの。1時間もしないうちに、ママとパパがここに来るでしょ? 一緒にブランチを食べようって」
「だからこそ、あんたはちゃんと話をしなくちゃいけないのよ。あたしの妹でしょ?」
「そういうふうに呼ぶの止めてくれない?」
「あら、だって、その姿を見たら、他に何て呼べって言うの? トラビス? とてもじゃないけど、もうそうは呼べないわ。弟? それも無理。妹という呼び方が一番ふさわしいんじゃない? さあ、全部、吐きだしなさいよ。隅々まで知りたいわねぇ」
「いいよ、分かったわ。あたしは酔っぱらった。そこまではいいよね? 酔っぱらって、羽目を外してしまった。その時、あたしにドリンクを最初からずっとおごってくれた男が出てきて、彼の部屋に行ったところまでは覚えている」
「彼の部屋で何が起きたの?」
「そんなことを言わせるの? セックスしたよ。これで満足? あんたの勝ち。良かったね。姉さんが、あたしにこんなバカげた服を着せて遊びに行かせたんだよ。あたしが女じゃないことすら分からない男にひっかけられたんだよ? オトコだろうが気にしなかった人だったのかもしれないけど。知らないよ」
「で、良かったの?」
「何も覚えていないよ!」
「このご婦人は強情だと思うねえ(The lady doth protest too much, methinks.:シェークスピア『ハムレット』の言葉)。加えて、顔を赤らめている。しかも、あたしは彼のホテルの部屋のドア先に立って、しばらく中の様子に聞き耳を立てていたのよねえ。あんたが叫び続けていた言葉、何だっけ? ああそう、『もっとヤッテ、もっと! もっと強く! 強くヤッテ! あたしをあなたの好きなエロ女にして!』だったかな? 声の調子は、今ので合ってた?」
「な、何言ってるのか知らないよ。いいから、中に入れてよ。ママやパパにこんな服を着てるのを見つかったら……」
「あら、いやだ。それはダメね。ママたちにバレたら、せっかくのお楽しみが台無しにされちゃうもの。あたし、昔から、可愛い妹が欲しいと思っていたの。そんな妹が、とうとうできたんだもの」
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