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Exposed 「さらけだして」
何か体を隠すモノを求めて、急いで動くべきだった。毛布、ローブ、タオル……自分の手でもよかった。だけど、私は動けなかった。どうしても動けなかった。結局、私は素っ裸で、何もかもさらけ出したまま突っ立っていた。まずはジョンが最初の動きを見せるのを待っていた。
「ご……ごめん」と、彼は目をそらし、このホテルの部屋の、いま閉じたばかりのドアに目をやった。「どうやら、間違った部屋のカギを渡されたみたいだ」
私は、まるで何があっても気にしないかのように装って、ゆっくりと浴室に行き、ローブを取った。それを肩にはおり、前を閉じた。でも、帯で締めることはしなかった。不思議と冷静だった。彼に私の秘密をすべて見られても構わないという気持ちだった。
冗談でしょう? もちろん、気にしていた。恐ろしくて内心ビクビクしていた。心臓が高鳴り、胸から飛び出そうなほどだった。頭から血が引いて、すぐにも気絶しそうになっていた。でも、そんな様子を見せるわけにはいかない。絶対に!
「もう、こっちを向いてもいいわよ、ジョン」と、私はベッドに腰かけ、声をかけた。「多分、いくつか質問があるでしょうから」
「君が自分の部屋で何をしようが構わないのだけど……」と彼はつぶやいた。私の方に向き直ったけれど、私の顔を見ようとはしていなかった。私の右肩の上の方の何かを見詰めているようにしていた。「もう、出て行こうと思って……」
私はベッドから跳ね飛び、彼のところに駆け寄った。追いついたときには、すでに彼はドアを半分開けていた。私は彼の手首をつかみ、ドアを無理やり閉めさせた。「あなたが見たものについて、話し合わなければならないわ。座って」
多分、彼は逃げ出すことを考えていたのだろうと思う。なんだかんだ言っても、私たちは友人ではない。出張で一緒になったただの同僚の関係だ。彼は、私について何か知りたいと思ってるわけでもなかっただろう。でも、いくらか押し問答のようなことを続けているうち、彼は諦めて、部屋の中へと進んだ。ベッドに腰掛けたのを見て、「それでいいわ」と私は言った。
ジョンは頭を左右に振って「見たものを忘れようと思ってるよ」と言った。
私はぐっと歯を食いしばった。見たものを忘れる? 何言ってるの! 私はローブの前をはだけた。「だったら、もう一度見てよ! ジョン、これが私なの。私。私を見なさい!」
「見てるよ。ちゃんと見てる、マーク」
私は目を細めた。だけど、ローブの前は閉じなかった。「最初に知る人があなたになるとは思っていなかったわ。私はいま変わる途上にあるの。分かる? しばらく前から変身を始めていたわ。私は今は女になってるの」
「見たから分かってるよ」と彼はつぶやいた。
「来月、カミングアウトするつもりなの。みんなにね。だから……」
「ぼ、僕は気にしないよ。だから、もう自分の部屋にもどりたいんだけど」
「まあ、いいわ。でも、秘密がバレてしまったわけだし、私は、この出張の間は一切、取り繕わなくてもいいかもと思ってる。一種の、本番前のリハーサルね。これから2週間、私はマークではない。メアリになるわ。それに、そういう格好にもなるつもり。だから、間違ったりしないようにしてね。分かった?」
ジョンは溜息をついた。彼としては、こういうことを求められるのも大変なのだろうというのは分かる。でも、それを気にしてるわけにはいかない。私はすでにいろんなことを耐えてきたのだ。彼の気持ちを気にしているわけにはいかなかった。私自身、私の女性化が彼を居心地悪くさせるかなど、気にする余裕がなかった。悪いけど彼には、あるがままの私を受け入れてもらわなければならい。他のすべての人にも、そうしてもらわなければならない。
「分かったよ。で、もう出て行ってもいいかな?」
私は横によけて「いいわ」と言った。「でも、忘れないでね。私はメアリ。マークじゃなくて」
「忘れるわけないと思う」と、彼はドアへと歩きながら、震える声で言った。ドアを開け、出て行く直前に、彼は振り返って言った。「ところで、君はとても可愛い女の子になると思うよ」
ドアが閉まった。お腹の辺りが震えるのを感じた。とても可愛い女の子。今までの人生、その言葉を聞くのをずっと待ち続けてきたのだった。いい感じだった。とても、とても、いい気持ち。
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