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Anything at all 「どんなことでも」

「おや、おや、おや……。お前、本当に来るのかなあって思っていたところだぜ」

「ハーイ! シーン、どんな調子?」

「どんな調子? 面白い質問だな。それをお前が訊くのかって。お前、前は、俺が何しようが全然気にしなかったじゃねえか。でも、お前が変わったのはそれだけじゃなさそうだな。だろ? いろいろ話しは聞いていたが、ここまでとはな。正直、予想していなかったぜ」

「話し? どんな話し?」

「お前がトランスジェンダーだって話しだ。まあ、見りゃわかるが。正直言えば、お前はすごいなと誇りに思うか、お前の面と向かって大笑いするか、迷ってるところだよ。俺も、人間だれしも、本来の自分になるべきだと思ってる。だから、お前を誇りに思うよ。だけど、その一方で、俺は……お前のことをクソ野郎と思ってるんだ。だから、ザック・ミラーが、俺のことを殴りまくって、俺をオカマ野郎と呼んだあのザック・ミラーが、トランスだと判明して面白いと感じる俺もいるんだ。ああ、確かに、俺、頭の中、ふたつに分かれているな」

「ぼ、ボク……トランスジェンダーじゃないよ……」

「あれ? そうなの? じゃあ、俺は、そのドレスに惑わされてるのか? それとも、ドレスの上からも見えるパンティラインに惑わされてるのか? それとも、その胸の小さな盛り上がりに惑わされてるのか?……」

「違うよ! 本当だよ、シーン。全部、ただの勘違いなんだから。クロエがずっと前から言ってるけど、ボクにはホルモンの問題があるんだ。でも、誰もボクが男だと思ってくれないので、むしろこういう格好をした方が良いんじゃないかってクロエが言うもんだから。それに……ぼ、ボクは……よく分からないんだよ。何が自分に起きてるのか分からないんだ。シーン、キミは医学生だよね? キミならボクを助けられるんじゃないかな。クロエは、ボクを病院に行かせてくれないので、だから……」

「助ける? どうして、俺がお前を助けると?」

「だ、だって、……なんて言うか……キミはいい人だと思うから!」

「俺が? 俺は役立たずのオカマじゃなかったっけ? ちんぽ吸い? オトコ女? あと何だっけ。でもいいか、ひとつ言っておくぞ、ザック……」

「クロエが、ボクは今はゾーイと名乗らなきゃダメと言ってるんだ。ちゃんとホルモンの調子が良くなるまでは、そうしなきゃダメって……」

「ゾーイか。そっちの方が似合ってるな。いいか、ゾーイ。俺はゲイじゃない。俺はバイセクシュアルだ。女も男もOK。分かるよな? 俺には区別はどうでもいいんだ。でも、ひとつ取引をしよう。お前は気に入らないかもしれないが、その条件なら、お前を助けてあげられるかもしれないぜ」

「取引? 何でもするよ!」

「よろしい。いま言ったことを忘れるなよ。じゃあ、今夜、俺のところに来い。住所は後でメールする。それと、何かセクシーな服を着てくるのを忘れるなよ」

「え、何?」

「俺の助けが欲しいんだろ? だったら、俺のルールに従えって。俺の言うことを聞くこと。それがイヤなら、自分で何とかしろ、ということ」

「わ、分かったよ。とてもキュートな黒いドレスがあるから。それに……」

「おっと、その先は言うな。今夜、見たいから。8時な。それに忘れるなよ。何でもするって言ったよな? どんなことでも、って」












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