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Theme party 「テーマ・パーティ」

「アレックス、これは居心地悪いなあ。本当に」

「パパ、何言ってるの。そんなに悪くないって」

「そんなに悪くない? お前はすっかり露出してるじゃないか! 娘だったら、服装を監視しなくちゃいけないこともあろうが、これは? お前は私の息子なんだよ。なのに、お前のその格好は、まるで……」

「そこが肝心なところなんだよ、パパ。これはテーマ・パーティなんだよ。みんな、似たような格好をしてくるんだよ。少なくともボクの友だちはみんな、そうなんだから」

「お前の友人たちとは違うんじゃないのか?」

「なんで? ボクはパーティを楽しんじゃいけないの? パパはボクを信頼してないの? ボクは18だよ。学生なんだよ。ボクがまだ自宅から通っているからと言って、大人じゃないということにはならないよ。自分で自分のことを決めることができるはずだよ」

「それは分かってるよ。パパがこういうことを理解しようとしてきたことは明らかだと思うよ。でも、お前は女子学生クラブに入ろうとしているんだろ? その上で、お前はそういう格好をして、男子学生クラブのパーティに出ようとしてる! パパは、どうしてもこれは見逃すわけにはいかないんだよ」

「ボクの友だちはみんな同じことをしてるよ」

「お前の友だちはみんな女子学生じゃないか!」

「そして、ボクは違う。その点にパパが引っかかってるのは分かるよ。でも、世の中はどんどん変わっているんだよ。女子学生クラブで入会の宣誓を認められた男子学生は、ボクが第1号だけど、ボクが最後になるとは思えないよ」

「でも、そもそも、どうしてお前は男子学生クラブに加入できなかったんだ?」

「そうしたくなかったから。アメフトのチームに入りたいとか、パパと一緒にハンティングに行きたいとか、他の似たようなことをしたいと思わないのと同じだよ。こういう服装をしているからと言って、ボクが男らしくないということにはならないんだよ。パパばどう思うか知らないけど」

「いや、パパも同じだよ。お前のことを……男らしくないなんて思っていない」

「じゃあ、それを証明して見せて。笑って、ボクにハグして、行ってらっしゃいと言って。他にも何でもいいよ。パパは、ボクが、期待とは異なる人間になるのを不満に思っているよね? そんなボクを受け入れる態度を全然見せてくれていないよね?」

「……す、すまない。本当に。でも、いいかい? ちゃんと用心するんだよ。いいね? じゃあ、楽しんできなさい」

「そうするよ、パパ。思う存分、楽しんでくるよ」






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