715 | 717




Temporary 「一時的」

「分かったよ、ペニー。キミの勝ちだ」

「ん? あたしが何に勝ったって?」

「知らないよ。自慢する権利を勝ち取ったってことかな。賭けをやったとかじゃないし、競争したわけでもない。だけど、キミは正しかったよ」

「何について? はっきり言ってほしいわ」

「ボクが女の子として通るということ」

「通るどころじゃないわよ。それに、女の子でもない。お色気むんむんのセクシーおんなよ。あたしは、あなたならそうなれるって言ったけど、先週は、まさしく、あたしが正しかったことを証明した一週間だったわね」

「だから、そう言っただろ。他にボクに何をさせたいと思ってるんだ?」

「それは面白い質問ね。家に帰りがてら、そのことについて話し合いましょう。さあ、ちゃんと身支度をして。あなたには、最高のルックスで家に帰って欲しいから」

「も、もう、帰る? その前に、まずは元通りにするんじゃないのか?」

「元通りにする? なんでそんなことしなくちゃいけないの? あたし、今のあなたが好きなのに」

「だって、一時的だって言ったじゃないか!」

「ええ、一時的よ。1年間なら一時的でしょ?」

「い、一年……? そ、そんなの……こ、こんな姿で戻るなんてできないよ。あのクリニックに行って、これを全部元通りにしてもらわなきゃ。元に戻せるって言ったよね?」

「まず第一に、そもそも、あたしはそんなこと言った覚えはないわ。あたしたち、テスト走行をしてみてもいいかもとは言ったけど。他のことは全部、あなたが勝手に推論しただけでしょ? 第二に、それを全部元通りにするなんて、すごい無駄遣いにならない? 少なくとも、あたしのエッチな奥様としてしばらく過ごすという経験をした後でもいいんじゃない? そして最後に、それ不可能なの。いま、あなたを元通りにしようとすると、あなたのDNAはバラバラになってしまうの。最後にはドロドロの気持ち悪い塊になって床に溜まってしまうことになるのよ。だから、選択の余地はないの。だから、男らしく覚悟を決めて……女らしくと言った方が正しいかな……諦めて、変えられないことを受け入れること。ついでに言うけど、今のあなたなら、家に戻ってもあなたのお友達にすごくちやほやしてもらえるんじゃないかしら?」

「な、何て言ったらいいんだ……」

「何も言うことないわよ。だから、そのセクシーなお尻を椅子から上げて、身支度して。1時間したら出かけるわよ」




List