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Rescue 「救出」
「バカなことを言うな、ミグエル」とアダムは怒鳴った。両腕を組み、武器商人を睨み付ける。「俺がここに来た理由ははっきり分かってるだろう。俺の兄がどこにいるか言うんだ。そうすれば、お前がやってることには口を出さない。銃なんか、俺はどうでもいい。密輸も興味がない。俺が求めてるのは兄だけだ。この野郎、今すぐ、兄を連れてこい」
ミグエルはにんまりとした。これほど自信に溢れた表情はないと言える表情だった。だが、アダムには何の意味もない。ベテランの麻薬捜査官である彼は、ミグエル・エストラーダのような犯罪者にどう対処してよいか熟知している。犯罪カルテルとも対決して、生き延びてきたアダムだ。ちんけな銃密輸ギャングなどに怖気づくことはない。これほど危険な状況であっても、兄のジェシーが2年前から行方不明になっており、追跡した結果、この武器商人につながった以上、ここで怖気づくわけにはいかない。
「何か飲み物はどうだね?」とミグエルは尋ねた。オールバックの髪で、コミックの悪者みたいな顎ヒゲを生やしたヒスパニック系の男。彼はパチンと手を鳴らし、母語で何か言葉を発した。アダムは顔をけわしくしたが、何も言わなかった。ミグエルが何を言ったのか分かるまでは、何も言わない。
何秒か後、裸の女が腰を振りながら部屋に入ってきた。……いや、違う。女ではない。いかに弱小とは言え、脚の間にぶら下がるモノが示している。極度に縮小した男性器を別にすれば、彼女はゴージャスと言える女だった。ブロンド髪、はち切れんばかりの大きな乳房、成人雑誌の中開きのために取っておかれるタイプの曲線美。間違いなく、彼女はたいていの男たちが夢見るタイプの女だ。だがアダムは彼女を無視した。この女はショーウインドウの飾り物だ。権力の印。それ以上の意味はない。重要なのはミグエルだ。
「バニー? 手間をかけてすまないが、私のお客に何か飲み物を出してくれるかな? バーボン、だったかな? コビングトン捜査官」
「バカ野郎、お前の酒など飲まねえ。俺が欲しいのは……」
「お兄さん、だよね」とミグエルは遮るように言い、ブロンド女へ手を向けた。「そう言っていたはず。まあ……私は、当局に協力しないと言った覚えはないのだがねえ……」
「何をお前は……」
「君のお兄さんだよ」とミグエルはいっそう嬉しそうな笑顔になった。「ちょっと形を変えてしまったのは認めよう。だが、一番いい形に変わったと思わないかね? 君も同意すると思うんだが。あんなガリガリの男が、実に美しい姿で開花した。本当に愛らしいと私は思う。実に愛らしい」
アダムは横の女性に目を向けた。じっと見つめる。そしてようやく、ミグエルが仄めかしたことが腑に落ちる。「う、嘘だ……」と彼はつぶやいた。
ミグエルはアハハと笑いながら立ち上がった。「1ヶ月後か2ヶ月後あたりに、本当にウソだったらよかったのにと思うでしょうな。その後は、君も態度が変わり始める。このバニーのように。白状してしまいますとね、私は美しいモノについてペアを所有するのが大好きなんですよ。特に、そのペアが、私に歯向かおうとする愚か者への警告としても使えるとなると、いっそう目がなくなる」
アダムは、この危険な状況について熟考する前に、行動に移し、脚を広げ、政府支給のピストルに手を掛けた。だが、銃をホルスターから出す前に、大きな手が伸びてきて銃を奪われ、床に押し倒されるのを感じたのだった。ミグエルのボディガードから逃れようと、唸り、もがくものの、その男はNFLのラインマンのような体格であった。いくらもがいても無意味な抵抗であり、何秒もしないうちに、アダムは動かなくなった。
ミグエルは、床に押さえつけられたアダムの横に立ち、見下ろした。「おやおや、お前を屈服させるのはなかなかの楽しみになりそうだ。実に楽しみだよ」
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