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Weakness 「弱さ」

やめたい。やめなければいけない。これからフィアンセと築き上げようとしている人生のためにも、この行いが必ず引き起こす悲しみを防ぐためにも、全部、捨てなくてはいけない。服も、ウイッグも、化粧品も全部。いつの日か、みんなにバレてしまい、私は破滅してしまうだろう。その瞬間、今のこの生活が終わりを告げる。そして、そうなってしまった場合、誰を責められるだろう? 他ならぬ自分だけだ。

それでもやめられない。何回、やめようと頑張ったか数えきれない。毎回、元に戻ってしまう。秘密の生活での可愛い衣服を捨てては、また元に戻してしまうのを何度も繰り返してきた。ベッドに横たわり、もうあれには手を触れないと何度も誓ってきた。そして、それに失敗するたび、涙で枕を濡らしてきた。もう今となっては、お馴染みのサイクルになっている。お馴染みではあるけど、ひどく落ち込むサイクル。

セラピーにも通ってる。セラピストには、トランスジェンダーかもしれないと言われた。それは間違いだ。そんはずがない。私は女性の服を着るのが好きなだけ。10歳の時、姉のパンティが間違って私の衣装入れに入れられているのを見つけた。その時からの嗜好。もし、今あの時に戻れたなら、幼い自分の手からそれをひったくって、貧血で顔が青くなるまで、その子に幼い叫び続けただろう。その道を進むと、悲しみのほか何もないんだよと。幼い私は、私自身には得られなかったメッセージを得るかもしれない。そして、自分の人生を築き、立派な男性になるかもしれない。

でもそれは仮想の話。実際の私はあのパンティを履いてしまった。そして、あの感覚……ハラハラする気持ち、ぴったりと包まれる気持ち、理解できない妙な興奮、それらに全身が洗われてしまった。今でも、ドレスアップするたび同じ感覚を味わっている。今でも、ホテルの鏡の前に立ち、お気に入りのパンティを2本の指で目の前に広げると、同じ感覚がふつふつと湧き上がってくる。体毛を剃り、お化粧をし、眉を揃え、そして完璧になる。私は決して男とバレることがない。そのことが憎らしい。その一方で、私はそんな自分を恥じている。そのことも憎らしい。ふたつの心がいつも戦い、いつも片方が圧倒的な勝利を収めてしまう。とは言え、心の中には、男らしさもまだかろうじてしがみついている。そして、男として生きることこそ、自分がずっと望んでいることだと言い続けている。

皮肉なのは、フィアンセが私のことを理解してくれそうだということ。彼女はそういう人。いつも支援してくれるし、進歩的な考え方をしてるし、私が彼女になって欲しいと求める姿に喜んでなろうとしてくれている。でも、私は嘘をついている……まさにその点で落ち込んでしまう。今日は仕事で出張していることになっているのだ。いつもの、女性に変身しての旅行で別の都市に来ていることにはなっていないのだ。何度もしてきたこの旅行では、いつも最後には誰か知らない男性とベッドを共にしてきた。私のような、大きな余分物を持ってる女性を好む男性を見つけるのは、全然難しいことではない。でも、そういう男性たちはみんな同じ罪悪感を目に浮かべている。私自身と同じ罪悪感を。

今週ずっと、落ち込みと戦ってすごすことになるだろう。ああ、それなのに、私はいまだ身支度を続けている。いまだ遊びに出かけるつもりでいる。私は今夜、お酒を飲み、ドラッグをし、夜が明けるまで、この罪悪感を片隅に隠し続けるだろう。でも、朝になれば、この罪悪感は必ず戻ってくる。そして荷物をまとめ、家に戻ると、決まってもう二度としないと誓うのだ。自分の人生はとても大切すぎて、こんなつまらないフェチのために放り投げることはできないのだと。

でも1日か2日も経たないうちに、次の旅行に出かける計画を始めてしまう。これは、邪悪なサイクルで、どうしてもこのサイクルから逃れることができない。何もかも、心が弱く、何年も前のあの日、あのパンティを履いてしまったせい。心が弱くて、一回だけのこととして、サッパリと縁を切ることができなかったせい。そして、今も心が弱く、やめることができないせい。強い力があればいいのにと、こんなに願っているのに。




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