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Get your purse 「ハンドバッグを持って」
「ハンドバッグを持って。遅刻したくないから」
「え? バッグ? どこに行くの?」
「本気で訊いてるの? 前にも話したじゃない。あなたの同窓会よ」
「ぼ、ボクの……同窓会? ボクは行きたくないって言ったよ」
「そして、あたしは、行くべきだって言ったの。そして今も、行くべきだって言ってるの。さあ、バッグを持って」
「こ、こんな格好じゃ行けないよ。髪を切って、スーツを着なくちゃ……」
「あたしは、その服装で完璧だと思うけど? あなた、いつもピンク色が大好きって言ってるじゃない? 恥ずかしがることないから」
「いや、いやだ! というか……ボクは……みんなは……みんなは、ボクがこの数年、何をしてきたか、全然知らないんだよ」
「同窓会報に載る話題とは思えないものね。だから何? きっと、他の人だって変わってるわよ」
「でも、ボクは……キミも知ってるだろ? ボクは、フットボールのクォーターバックだったんだよ。それが今は……」
「シーメールのポルノスター。確かに、それはちょっとショッキングなニュースになるとは思うわ。でも、それはあなたが選んだ人生なの。ちゃんと自分で対処しなくちゃ」
「ぼ、ボクが選んだわけじゃないよ。キミじゃないか」
「あたしの理解とは違うわねえ。でも、どっちにせよ、今のあなたが、あなたなの。隠しても無意味だし、あたしは隠すつもりはないわ。だから、もう一度だけ言うけど、ハンドバッグを持って、車に乗りなさい。遅れたくないの。さあ、早く。そう、そう。やっぱりあなたはいい娘ね」
「これが、あなたが望んだこと。それを忘れないでね」
「ボクはこんなの望んでいなかった、カルラ。ボクがこんなのを望むなんて、どうしてそんなふうに思ったんだ?」
「あなたのインターネットの履歴を見たから。あなたの好みを知ったから。女装とかあれこれ、あなたが投稿した書き込み、全部読んだわ」
「だからキミは勝手にボクに……あれ? 何だ? ボクは怒ろうとしてるのに。怒って当然だと思ってるのに。だって、目が覚めたら、いきなり自分が女になっていると、そんな感じなのだから。ボクは何もかも覚えている。嫌で嫌でたまらなかったし、それは今も変わらない。それなのに、なんでだ? 怒ることができない」
「ええ、それが催眠術。ごめんなさい。でも、あなたじゃ、思い切って飛び込むことができないと思ったから。だから、あなたの代わりにあたしが決めてあげたの」
「き、キミが……ボクの代わりに決めた? カルラ、ボクにはこんな大きなおっぱいができてしまってるんだよ。それに、ボクは……思い出した……ボクが知ってる人みんな、ボクはトランスジェンダーだと思っている。それに、ぼ、ボクは……セックスまでした。あの……あの……」
「あのジョナサンと。でしょ? あれ、あたしが設定したの、忘れた? こんなことを言ってあなたの気持ちが変わるか分からないけど、あなた、ジョナサンに抱かれて、ものすごく喜んでいたわ。他のことは全部忘れてしまっても、あの時のことはしっかり覚えてるんじゃない? あたしはそう踏んでるけど?」
「ぼ、ボクは……そ、それについては話したくない。僕はただ……ただ元に戻りたいだけだ。昔のボクに戻りたいだけだ」
「それは無理ね。でも、これがあなたの一番のお気に入りの願いだったでしょ? これこそ、あなたが日記に書いてたこと。あなたが、自分にはなれないって、あんなに嘆き悲しんでたわねぇ。あれ、なんて書いていたっけ? 確か、本当の自分? 本当に哀れをさそう言葉を綴っていたわ。自分は、それなりに見られる女にすらなれないって。まあ、それにはあたしは同意しなかったけど。実際、あたしが正しかったと分かったし。今のあなた、すごく綺麗だもの」
「ぼ、ボクはそんなつもりじゃ……あれは、違うんだ。本気で書いたものじゃないんだよ、カルラ」
「あら、それは残念だったわね。でも、今のあなたは、この姿なの。どうしようもないの。その姿が好きになれるといいわね」
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