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Caught 「現場を押さえられる」

自分から脚を広げ、ジョエルにあたしのすべてを自由にさせている。そうすべきじゃないのは分かってる。でも、そうしながら、こうなる他に道はなかったのだと自分に言い聞かせようとしていた。自分は環境の犠牲になったのだと。脅かされてこうなってしまったのだと。自分はこんなふうになりたくなかったのだと。でも、そんなのすべて嘘だと分かっている。すべて嘘。だけど気にしない。……とりわけ、ジョエルに力強く打ち込まれると、そんなこと、どうでもよくなる。

ジョエルが、あの長くて太いモノをあたしのあそこに深く突き刺してきた。それに合わせて、あたしの震えた悶え声が部屋を満たす。このようなことを、ずっと前から夢見てきた。それも、何度も何度も。どの夢想も、この行為が中心になっていた。でも、夢想と実際は全然違う。現実は、ずっとずっと動物的。ずっと生々しい。ゾクゾクしてしまう。どうしても、中から湧き上がってくる興奮を隠し続けることができい。興奮。熱い気持ち。湧き上がってくる喜び。でも、今は、今だけは、その気持ちを隠さなくてもいい。

頭の下の枕を握り、息も絶え絶えに、枕を握りながら喘いだ。「や、やって……」 そして、ジョエルは、あたしが求めたとおりにしてくれた。彼は、あたしを突くたびに、うっ、うっ、と頑張ってる唸り声をあげている。強く速い突きの連続。その激しさからも、彼の情熱が伝わってくる。ひと突きひと突きに、切羽詰まった気持ちと、これであたしにとどめを刺してやるという強い意思がこもっていた。彼のがあたしの奥底に突き入ってくる来るたびに、男としてのあたしの部分が少しずつ削られていく。それは嫌なことではなく、むしろ嬉しかった。少しずつ彼のカラダによって女に変えられていくのが嬉しい。それを喜んでいたし、そうなっていくことを求めていた。

もちろん、アナルを貫かれた経験はある。もう何十回も。でも、それは全部、本物に比べたらみすぼらしいとしか言えないプラスチックの代用品だった。ガールフレンドのジェニファーが股間に装着した人工的なファルス。ジョエルのに比べたら、無に等しい代物。

そして、とうとう絶頂の時が訪れた。オーガズムが全身を駆け巡る。……そして、その時になって初めて、あたしは誰かに見られているのに気づいたのだった。誰かがいる気配。あたしは、絶頂の余韻の最後が溶け消えた後、うっとりとしながら、閉じていた瞼を開いた。そして、ドアのところにガールフレンドのジェニファーがいるのを見たのだった。ベッドに横たわるあたしを睨み付けている。

「チッ!」とあたしはつぶやいた。まだ、呼吸が乱れたままだった。

「ん? 何?」 何も知らないジョエルが訊いた。ジョエルは自分の妹が彼の裸の背中に矢のような視線を放っていることに気が付いていない。「痛くしてしまった? もしそうならゴメン……」

「ち、違うの……」 とひそひそ声で吐き出すように言った。「ジェ……ジェニファーが……」

「前にも言っただろ? キミは別にジェニファーの所有物じゃないんだよ」と、ジョエルは、愛しそうに、あたしの顔についた乱れ毛を除けながら言った。「僕たちがこうしてること。こっちの方が特別なんだ。それに……」

「な、何よ!」 ジェニファーが叫んだ。「なに言ってるのよ、ジョエル!」

あまりに突然のことだったので、あたしは何が起きたのか、すぐには理解できなかった。今さっきまで、ジョエルは、あたしの上に乗って、愛し気にあたしの瞳を見つめていたはずなのに、さっと姿が消えてしまっていた。そして、部屋の向こうに目をやると、隅に退散していて、潤滑剤で濡れたままの股間を両手で隠して立っているジョエルがいた。あたしはというと、まだ彼のベッドの上にあおむけで横たわっている。両脚を広げたままの格好で、怒り狂ってる彼女を見ていた。

「ジェニファー! なんでここに……」とジョエルが言った。

「あんた、いつから、あたしの彼氏とヤッテきたのよ?」 ジェニファーはジョエルに近寄り、指を突くようにして問い詰めた。「あたしは、あんたに彼を盗んでもらうために、あんなに長い間、一生懸命に頑張ってきたとでも言うの!」

「ジェニファー、ぼ、ボクが説明するよ……」 とあたしは口をはさんだ。

ジェニファーは、今度は、矛先をあたしに向けた。「あんたは喋らないで! あんたは、兄とセックスすることにした瞬間、しゃべる権利を放棄したのよ! あんた、こういうこと……なんて言ってた? 『女の子っぽいこと』だったかしら? そんなことには興味ないと、ずっと言い張っていたでしょ。なのに、こんな格好になってるあんたを見るなんて、思ってもいなかった。そしたら、何? このざまは?」

確かに、こんなザマだった。ジェニファーが、まだ裸のままのジョエルを罵倒している間、あたしは、頭の中で、自分がこうなるまでのことを整理していた。

自分が転げ落ちるように女性化の道を進んできたことは、なにも自分で選んだ道では決してなかった。すべてジェニファーに促され、あたしはそれに従ってきただけだった。というのも、心の奥では、彼女のような女の子をガールフレンドにできるのは奇跡だと思っていたから。もっと言えば、そもそも、女の子なら誰でも、自分のガールフレンドとなってくれるなんて運がいいとしか思っていなかった。自分は背が小さく、ガリガリで、ハンサムというより可愛らしい顔つき。なので、女の子たちには全然魅力的には映らない。だから、ジェニファーが要求を並べ始めると、当然のように、あたしは彼女が求めることに従った。髪の毛を伸ばし、お化粧をし、女物の服を着る。何が起きてるか、自分でも分かっていた。自分が何に変えられているのかも分かっていた。でも、心の中では、これは正当な代償だろうと思っていた。彼女の言うなりになることは、自分自身は構わないと思っていた。

そして、その頃からジョエルがあたしに接近し始めたのだった。でも、悪い気はしなかった。彼といると自分が価値のある存在のような気になれた。そんな気持ちになったことは、ジェニファーと一緒の時には一度もない。そして、今日、ついにあたしはジョエルの口説きに降参することにしたのだった。あたしが彼に身をゆだねた、まさにその時にジェニファーが帰宅したのは、単に運の悪い偶然としか言いようがなかった。

「さっさと起きなさいよ、アレックス。家に帰るわよ!」

「でもボクは……」

「今すぐって言ってるんだけど!」 ジェニファーが怒鳴った。あたしはさらに反論することも考えず、素早く動いていた。ジェニファーは彼女の兄の方を向いた。「あんたのことは、後で対処するから。良いことにはならないということは約束しておくわ。誓ってもいいけど、あんたの人生を滅茶苦茶にしてやるから、そのつもりでね」




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