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Loyalty 「思いやり」
「哀れだな、ドミニクは。お前ら、ドミニクを覚えているよな? 殺し屋だ。野郎どもは、ドミニクが来ると聞いただけで恐怖のあまり小便をちびったものだった。だが、今のドミニクを見てみろ。どんな姿になってしまったか、よく見るんだ」
「ヴィト、お前……。俺は助けを求めてここに来たのに、それをお前は……」
「黙ってろ、淫乱! ああ、淫乱こそ、今のお前だよ。それに、俺が何でお前を助けると? 今のお前は、俺にとっては、何の役にも立たない。まあ、もちろん、ひとつだけ、明らかに役に立つことがあるが。お前が牢屋に入っていた時にしていたことと同じことだ。お前が自分で自分の面倒を見ることができないなら、何で俺がお前の面倒を見ると思うんだ?」
「そんな話、理屈が通らない。お前が助けてくれるのは、俺が助けを必要としていないときだけ、っていうことになるんじゃないのか? 頼むよ、お願いだ。俺は、あそこでケダモノたちの餌食にされたんだ!」
「で、お前はアルファ(参考)じゃなくちゃいけなかったんだ。食うか食われるかで言ったら、食う方だな。捕食者でなくちゃいけなかったんだ。それが、ふたを開けたら、お前は餌食の方になっちまってた。お前、そのことがこのファミリーにとって、どんだけ恥さらしになったか分かるか? 俺たちの組織全体にとってどんだけ恥さらしか? 俺たちが皆をぶちのめすために送り込んだトップの男が、こともあろうに、刑務所のシャワールームでひざまずいて、ちんぽをしゃぶるとはな。俺がお前を助けても、お前を前と同じと思うヤツは誰もいないだろうぜ」
「ということは、あんたは知ってて……」
「ああ、そうだ。連中がお前を壊わすのを放っておいたのさ。あのケダモノどもがお前を少しずつ変えていくのを放置していた。連中を阻止しようと思えばできたぜ。別のムショに移すとか、保護役をあてがうとか、やろうと思えばできた。でもな、さっきも言ったが、そんなことしても、俺には何の得もねえんだよ。で、今、お前はここに戻ってきた……助けを求めてやってきた。カネを援助してくれと。何のためのカネって言ったっけ? 連中がしたことを元に戻す、とかだったか? だが、それで何かいいことあるのか? 今後、誰でもいいが、お前と会ったとき、会ってるのはシシー以外だって思うやつがいるとでも、本気で思っているのか?」
「いや、あいつらは、なんとかして……」
「無理だよ。お前自身、無理だって分かってるだろ? だが、俺はお前を見捨てたりはしないぜ。お前は俺の大切な仲間だ。俺が、自分の仲間に冷たいなんて、誰にも言わせるつもりはねえよ」
「あっ、じゃ、助けてくれるのか? ああ、ありがとう、ヴィト! 本当にありがとう! 約束するよ……いや、誓うよ! 絶対、お前をがっかりさせるようなことはしないって」
「感謝するのはまだ早いな。お前が望むならだが、『リボンルーム』にお前の居場所を用意している」
「あ、あの……あの売春宿に?」
「そうだ。家賃はタダだ。まともな生活をするチャンスだな。新しい人生を築くチャンス。それが、俺が提供する案だ。受けるか、出ていくか、どっちかだな、ドミニク」
「そ、それは……いや、そんなことできない……」
「いや、できるさ。それに、これを蹴ってもお前はいずれカネのためにセックスすることになる。そんなカラダをしてる以上、お前には選択肢はほとんどないのだよ。同じ仕事をするにしても、お前にとってもっと馴染みのある場所でやってもいい。なんなら、その仕事を俺のところでやってもいいんだぜ? どうだ?」
「わ、分かった……。あ、ありがとう、ヴィト。がっかりさせないよう、頑張るから」
「お前なら大丈夫だぜ。でも、さしあたり今は、お前がムショで学んだスキルを披露してみるのはどうだ? うちの野郎どもにも、ちょっとばかり、ストレス解消が必要がやつらがいてな」
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