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「隔離への順応」(11)

「こ、こんなの……支持するわけないわ!」 ヘザーは事態の変化にあわてた。「絶対に! さあ、仕事に戻りなさいよ!」

「あたしは、もう、あなたのメイドじゃないわ」とあたしは両手を腰に当てて言った。「ここはポールの家なの。そしてポールは、あたしはもうそんなことしなくていいと言ってるの」

ヘザーはポールを見た。「本当?」

ポールは肩をすくめ、「ああ」とだけ言った。簡潔なひと言だったが、その簡潔性ゆえにいっそう効果的だった。

ヘザーは、腰砕けになって椅子に座った。「理解できない」 床のタイルを見つめる彼女の顔にブロンドの髪が垂れた。「わけ分かんない」

あたしは彼女の隣に立った。自分がコントロール権を握ってると感じたのは何年ぶりだろう。たった2時間ほど前のことだった。彼女は帰宅し、あたしとポールが一緒になっている現場を見たのだ。ポールは、今後どうなるかをヘザーに時間をかけて説明した。この家に留まりたいなら、ポールをあたしとふたりで共有することに同意しなければならないと。だけど、言うまでもなく、ヘザーは聞く耳を持たなかった。

でも、あたしには分かる。ヘザーはその提案を受け入れるだろうと。ヘザーはあたしにはもはや関心がないかもしれない。けれど、あたしの代わりになったこの男性には身も心もささげている。彼女の心の中、すでにギア・チェンジしてるのは疑いようがなかった。多分、頭の中で、ポールがあたしに興味を示したのは、ほんの一時的なことだと思ってるはず。いずれ、ポールのあたしへの気持ちが色あせれば、自分が元の立場に戻れると。そう思い込むことが、彼女のよじれた性格には心地よいのは間違いない。

でも、ポールとあたしの間にあるものは移ろいやすいものではないことも知っている。彼はあたしを愛している。この1ヶ月という短い期間の情交だったけれども、彼は何度もあたしにそう言ってくれた。だけど、あたしが彼を信じる理由はそれではない。彼の言葉ではなく行動だった。行動は言葉よりはるかにずっと声高にものを言うのを知ったし、彼の行動は真の愛について語ってくれている。

ヘザーが顔をあげた。「それ、どんなふうになるの? 一緒に寝る夜を交互にするみたいな?」

「それについては3人で考えよう」とポールは彼女の横にひざまずいた。彼は、彼女の顔にかかった髪の毛を優しく払いのけた。それを見て、あたしは胸に嫉妬の痛みがわくのを感じた。その痛みを隠し、耐えながら、彼の話しを聞いた。「だが、さしあたり、この関係では、僕たち3人の関係は平等としておこう。僕は君たちのどっちも愛しているんだ」

でも、平等に愛するってわけじゃないなと、あたしは思った。それは間違いないと思った。

つづく




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