「裏切り」 第1章 Betrayed Ch.01 by Angel Cherysee 出所
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妻は浮気をしている。僕はもう見て見ぬふりをすることなどできない。あの水曜日の午後。僕の目の前のディスプレに証拠がはっきりと映っていたから。

探偵を雇って彼女を尾行させ、疑念の裏付けを取った自分。そんな自分が、何だか…何だか、すごくチンケになった気分だった。こんな言葉、自分は決して使わないだろうと思っていたんだが…

まるで僕の方が彼女を裏切っているような気分。二人の間の信頼関係を裏切ってるのは自分の方かと。彼女と8年間にわたって培ってきた信頼関係。そのうち3年間は夫と妻という関係で培ってきたのだ。

コンピュータの画面に映るDVDの画像は、嫌なシーンを映している。それを見ながら僕は自分が間違った人に信頼を寄せていたことを知った。

スーザンと僕は高校時代から恋人同士だった。彼女は、明るく陽気で、皆に好かれるチアリーダ。そして僕は、情熱的で知的で、かつ、負けん気が強いクロスカントリーのスター選手だった。

スーザンは、それまでジェフ・スペンサーというフットボール部の選手と付き合っていたのだが、彼と別れた直後に僕と付き合い始め、二人は一緒になったのである。

エメラルド色の瞳の赤毛の彼女は、誰もが憧れる魅力的な女子高生だった。そして、誰も、オモテ立っては、相手を僕に乗り換えたことを「格下げした」と咎める者はいなかった。

僕たちの高校は試合結果がモノを言う校風で、ジェフの属していたフットボールチームは全国高校チームの中では中位程度に留まっていた点がひとつ。それに、なるほど、ジェフはチームの中では明らかにモテそうな男で、十分に才能があるクオーターバックではあったが、他の選手たちに比べてチームの運を台無しにするプレーが多く、批判の的にもなっていた男だった。当然と言うか可哀想にと言うか、ジェフは敗北者の烙印をつけられていた。一方、僕の属していたロング・グリーン・ラインというクロスカントリー・チームは、全国大会で連戦連勝中であり、僕はアメリカ史上、まぎれもなく最速の高校生選手であると言われていたのだ。

とは言え、スーザンは第一級のイイ男をあきらめて、ただのランナーに乗り換えたと、陰口を叩く者がいたのも事実だった。

「そんなのほっとけばいいのよ」 スーザンはつまらないことのように甘え声で言った。「私は勝者が好きなの。あなたは進みたいところに好きに行って。わたしはあなたの行くところについていきたいの」

僕たちは同じ大学に進んだ。そして大学4年のときから同棲しはじめ、卒業と同時に、教会で式を挙げた。二人とも、それぞれの分野で仕事を頑張り「進みたいところに」行けるよう努力した。彼女はマーケティングと広報部門で有能新人となったし、僕も商事関係で自分の位置を築く道を進んでいた。

僕は毎朝、仕事に行く前に15キロ、ランニングをしていたし、スーザンはスーザンで毎日ジムでエクササイズを続けた。二人とも自分自身のため、そして互いのためにと、出逢った時と同じような身体的ピーク状態を維持し続けたのである。

その間、二人の性生活は本当に夢のようだった。僕は、スーザンにとって、いつも夢に思っていたような男だったのである。つまり、ベッドでは優しく、気配りができる男だった。触ってほしいと彼女が思う部分を的確に知り、触れることができる。一生、この男性とベッドを共にしていきたいと思えるような男だった。

「…それに、あなたほど可愛い男の人は見たことないもの。…そこのところが、大きなプラスだわ」

その「プラス」部分がどれほどだったのか、僕には良く分からない。だが、その褒め言葉を僕は嬉しく感じた。僕たちは愛に満ちたのどかな生活を送っていた。…と、僕は思っていた。

スーザンは、地元のプロ・フットボールチームの広報の仕事を始めた。チームのプロモーションを預かる副部長として、重要な地位についたのだった。

そのチームのクオーターバックたちの中でめきめき頭角を現してきていたのが誰だか分かるだろうか? そう、その通り! ジェフは、高校卒業後、本格的なフットボール・チームを有する第1級クラスの大学の奨学金を勝ち取り、入学したのである。その後、全米選手協会に選ばれ、大学フットボール年間優秀選手賞で2位につけ、二つの試合でMVPになり、初回のドラフト指名で獲得を争われるまでになったのだった。

僕はスーザンがジェフと寄りを戻すのではないかと気になったが、男性心理がもたらすくだらない不安感にすぎないと、無視したのだった。なんだかんだ言っても、あれは高校時代の話だったのだからと…

だが、その後、日増しにスーザンは家に戻ってくるのが遅くなっていったのだった。彼女が不在となる頻度がだんだんと増えていき、その時間も長くなっていった。何か警報が発せられてる感じだった。二人の関係で、何かが変わってしまったのではないかと、僕は不安になっていった。

理由を訊いても、彼女は仕事のせいだと言って、無視していた。彼女が見せる視線の様子、あるいは視線を避けるそぶりこそ、僕の疑惑をいっそう募らせる要因だった。

確かに二人一緒にいるときは、スーザンは愛情を寄せてはくれていたが、それでも僕は、何か以前にはなかったようなヨソヨソしさを感じていた。何か得体のしれないものが、僕たちの生活に徐々に忍び込んできていて、僕たちを分断させている… そう感じた僕は、その正体が何であるかを明らかにしようと決意した。

その、得体のしれない「何か」。それが今、僕の前のディスプレーの中で再生されている。二人はまた付き合い始めたのだ。僕には想像できないような高度に進んだ電子機器を使った捜査のおかげで、二人の姿がディスクにしっかりと捉えられている。

高校時代からすでに、ジェフ・スペンサーは、その男性的な逞しい体格のおかげで、女子たちには憧れの的に、男子たちには羨望の的になっていた。いま、ジェフは、あの時代よりもさらに逞しくなっていた。僕は身長170センチなのに対して、彼は198センチはありそうだった。体重も僕より40キロは多いだろう。それも決して脂肪などではなく、すべてが全身を覆う岩のような筋肉の重さだ。

ジェフは妻に愛の行為などはしていなかった。肉欲に任せて犯してるといった方が正しかった。太い25センチ以上もある道具を使って容赦なくスーザンの身体に打ち込みを続けている。

発情した二匹の動物が身体をぶつけあっている。ビデオを見ながら、その場の淫らな匂いが嗅げるほどの淫らさだった。スーザンは情け容赦なくパンチを連打され、殴りつけられているようなものだった。だがそんな乱暴なセックスをされているにもかかわらず、スーザンがそれを全身で受け止め、喜んでいるのは疑いようもなかった。絶頂に達した時、白目を剥くのが見えた。全身を痙攣させるのが見えた。そして喜びの絶叫を轟かせ喉を震わせるのが見えた。

念のために述べておくが、僕は妻を満足させていなかったわけではない。彼女を絶頂に導くことは僕の得意としていることである。僕は舌や指先だけを使って、何時間も彼女を焦らし、燃え上がらせ、興奮させ、最後には強烈なオーガズムをねだり泣くようにさせることができる。そして最後にもうひと押しして彼女を限界から解き放つと、妻は僕の髪をつかみ、僕の顔を股間に強く引き寄せ、実に長く強烈なオーガズムに達して、身体を震わせるのだ。

だが、そのようなオーガズムと、ジェフが与えているオーガズムとはまったく質が異なることは、どんな男も分かることだろう。僕は、侮辱された思いだったし、怒りも感じたし、裏切られた思いでもあった。何より、喪失感が大きかった。

探偵は、過剰なほど細かな点まで調べ上げていた。まさに、提供した報酬の最後の一円まで使い切った完璧な仕事をした。その調査員は、別の調査会社が僕の件に加わろうとしているのを知ると、即座に、妻の浮気以外の事項にも調査を拡大して、サービスを強化した。例えばジェフの習慣や嗜好なども調べ上げた。その調査は見事なものだった。ジェフが僕のふしだらな妻を犯すこと以外にどんな行動をしているか、それを知った時、僕は、それがあまりに信じられないことに、ただただ呆れて頭を振るだけだった。マイルドな言い方をするなら、スーザンが僕に対して誠実でないのと同程度に、ジェフもスーザンに対して誠実ではないということだ。

何か暴力的なことをして報復する。そういう考えも頭に浮かんだが、その考えは、頭に浮かぶと同じくらい早く、頭から消えた。「完全犯罪」ができるなどといった甘い幻想は、僕とは無縁だ。そういう極端な手段に出て一時的に満足したとしても、監獄で一生を暮すとなれば、何の意味もないだろう。

ジェフが女癖が悪いことは彼の弱点であり、考えようによっては、僕に有利になるよう利用できるかもしれない。適切な計画を立てるには時間がかかるものだ。さしあたって今は、ジェフと妻の二人とも、楽しませておくほかないだろう。

調査会社は、上で述べたフォローアップの調査をする過程で得た別のDVDも提供してくれた。それに映っていたどぎついシーン。それを見て、僕は、自分の中に潜んでいたあるものが点火するのを感じた。

漠然としか知らなかった世界、曖昧な言葉でしか触れられてこなかった世界。そういう世界への憧れ。その世界は、僕たちがこの都会に住むようになって以来、確かに僕の周りに存在していたが、今までは一度もそれについて考えたことはなかった。

それが、目の前のディスプレーに映し出されている。それに直面し、僕は、その世界を探ってみたいという衝動に駆られた。仮に、スーザンとジェフに復讐をするとしたら、この世界こそが、手始めの場所となるだろうと考えた。それに、今となっては、僕には失うものなど何も残っていないじゃないか、と。

***

初めて「リンガーズ」の店に行った体験は、僕にとって、まさに心に大きな影響を与える体験だったと言える。金曜の夜だった。のどかだった僕の世界が一気に崩れ去った日から二日後である。

それまで僕は女装者たちと接した経験はゼロだった。それが今、僕は、街でも最も有名な、あるいは悪名高い、高級ショー・ラウンジの中、趣味の良い装飾を施された狭い部屋で、そういう女装者たちにとり囲まれているのである。

最初に学んだことは、このような「女の子」たちは実に才能があるということである。確かに、大半のパフォーマーたちは実際には歌わず、ポップの有名女性歌手のレコードに合わせて口パクをしてるにすぎなかったが、それでも、視覚的な表現の見事さは圧倒的だった。そして「女装」の点に関して言えば、ここにいる偽の妖婦たちの美しさに嫉妬のあまり顔が真っ青になってしまう生物学的な女性は山ほどいることだろう。

例の女の子はすぐに見つけた。調査会社のディスクに映っていたのでよく覚えている。ラクウェル・ウェルチ(参考)が自分のクローンを作っていたみたいなものだった。いま、その麗しいドッペルゲンガーは、バーカウンターのところで、背もたれの高いスツールにちょこんと腰かけている。誘惑的なストッキングの脚を見せつつ組み、無頓着な雰囲気を漂わせて客たちを何気なく眺めているところだ。僕には、彼女があの誘惑的な太ももの間に「場違いなモノ」を潜ませている姿を想像するのが困難だった。

僕は、何気なさをつくろいつつ彼女に話しかけ、会話を始めた。彼女の名前はダイアナ。ハイヒールを脱げば、彼女は僕と同じくらいの身長だろうと判断した。

何気なく会話を始めたとは言ったが、実際、内心では僕はこれ以上ないほど緊張していた。だが、最初に声をかけたとき、ゴージャスなブルネットの彼女は誘惑的に微笑み、僕と一緒に飲むことに簡単に同意してくれたのである。その一杯が数杯へと続いた。彼女は予想に反して驚くほど僕に無警戒だった。その理由は、この夜が更けるにつれて僕にも分かることになるのである。

この新しい知人を通して、僕はこの世界についてもう二つ新しいことを学んだ。ひとつは、彼女たちに対して「女装者」という言葉を使うことは、悲しくなるほど時代遅れであるということだった。ここにいる女の子の大半は、すでにずっと前に「女装」と「女性化」を隔てる一線を越えており、もうその線を逆向きに越えて戻ってくる意思を持っていないということである。ダイアナが、その好例であった。

もうひとつは、ここにいる女の子の多くが、人類最古の職業、つまり売春をして最低限の生活を営んでいるということである。というのも、まともな経営者が彼女たちを雇い、仕事をさせるとしても、それより意味のある仕事はないからと言える。

さらに数杯飲んだ後、僕たちは店を出て、「もっとプライベートな場所」に移って会話を続けることにした。そう、皆さんが予想なされるとおり、金銭のやり取りがあった。彼女の方は喜んで自分の時間を僕に分けてくれ、僕の方は、それに見合ったことを彼女にしてあげたかったということである。ダイアナは僕が提供した金銭の額を見ると、嬉しそうに微笑み、今夜はずっと僕のものにしていいわと言った。僕が求めていたのは会話だけ。しかもセックスに関する会話じゃない。ただ情報を集めたいだけなのだが…

僕はポケットから写真を出し、彼女に見せた。彼女は蔑むような顔でその写真を見た。

「ああ、こいつね…」 と彼女はフンと鼻を鳴らした。「ええ、この変態なら知ってるわ。2、3回、こいつとデートしたことがある。クラブの他の子たちともしてたけど。確かに、少なくともこの人は素質があるし、その使い方も知っているわ」

「変態?」 と僕はためらいがちに尋ねた。

本能的にスーザンの身の安全が心配になったからだ。彼女がしたことに腹を立てていたのは事実だが。

「あのねえ、みんな変態ばっかりなのよ。みんな、品格があって高潔で堅実な市民、地域の中心人物たち。でも、それは誰も見ていないところではがらりと変わるの。みんな、他の人と同じく、イヤラシイことが大好き。いや、普通の人以上にそうね。あの人たち、私みたいな女の子にもどっぷりハマるんだけど、『オモテの世界』にいる人には知られたくないわけ。私が知る限りでは、この男は、まだアレをお尻で受け入れたことはないと思うけど、私のお尻にするのは好きね… それに私のアレをしゃぶるのも大好き」

これは欲していた以上の情報だった。ジェフ・スペンサーのような誰もが認めるイイ男が、生物的に言えば男性であるとはいえダイアナのような美女を抱く。そういう光景を想像するのは、たいした難しいことではない。だが、あの「男の中の男」がペニスをしゃぶってる光景を思い浮かべるのは、かなり難しいことだった。確かに「変態」という表現は適切なように思われた。

多分、酒を飲んでいたので気が大きくなり、それで判断力が曇っていたのだろう。僕は、時がたつにつれ、この官能的な妖婦のことにますます心を惹かれてきているのに気づいた。とはいえ、彼女の一見したところ純粋無邪気な振舞いは……どこか怪しい。明らかに誘惑的に振舞っているのだが、何か奥に秘密がひそんでいるようで、そこに僕は引っかかっていた。彼女を欲しいと思うと同時に、彼女を恐れていた。そういう状態を何と言うのだろう? 彼女の正体について僕が感じていたことが何であれ、僕は自分で過ちを犯そうとしていた。

「そう言えば、僕もここにいるけどね。ということは、僕も変態ということになるのかな?」

美しい妖婦は片眉を上げ、興味深いと言いたげに微笑んだ。

「その通りね… あなたはここにいる… そうよね?」

そう言うなり、ダイアナは、僕の膝の上、一度座り直し、両腕で僕の首を包みこむようにして抱きついた。しみひとつない透き通った肌の顔が目の前に来た。そこに毛穴が見えたとしても、すべて数え上げることができただろう。彼女の呼気にシナモンの香りが混じってることも、濃厚な香水の香りも嗅げた。見事な胸の谷間も目の前だった。偽物とはとても見えない。

勃起してくるのを感じた。それを彼女に気づかれたくないと思った。僕が彼女に興奮していることを知られたくなかった。

だが、彼女の方がウワテだった。勝利者のように微笑んでいたのだった。甘えた声で僕に言った。

「正直に言っていいのよ… あなたもちょっと変態になりたいと思ってるんじゃない? それを否定しようとしても、あなたのお友だちが私にイエスって答えてるわ」

彼女は僕の膝に乗せたお尻をぐりぐり回して擦りつけ、嘘じゃないことを示した。

ダイアナの身体は、あるべきところに見事に肉が付いた体つきだった。だが、決して体重が重いわけではない。どうして僕は息が苦しくなっているのだろう? どうして心臓が高鳴っているのだ? ダイアナは僕が戸惑って沈黙しているのを、暗黙のうちに承認してるものと理解した。

「やっぱり思った通り… ねえ、二人でもっと…もっと気持ち良くならない? あなたも、その分のおかねは払ってるんだから…」

蕩けてしまいそうな気にさせるこのメス狐は僕の首から腕を解いて、僕のシャツのボタンを外し始めた。僕は必死の思いで両手を出し、彼女の手を押さえ、していること、これからしようとしてることをやめさせようとした。だが、なぜか手が動かなかった。まるで、夜道に飛び出しヘッドライトで目がくらんでしまった鹿のようなものだった。ダイアナのチョコレート色のつぶらな瞳に見つめられ、僕は動けなくなっていた。

いつ、彼女の服を脱がせたのか思い出せない。いつ彼女とベッドに入ったのか思い出せない。気がついた時は、ベッドに仰向けになっていて、彼女に覆いかぶさられていた。そして、口いっぱいに彼女の乳房を頬張っていた。それまで僕はスーザンのCカップの胸がこの世で最高の乳房だと思っていた。だが、ダイアンの方がさらに大きく、柔らかで、なおかつ張りがあった。口や手で私を愛撫してと訴えかけるような魅力がある乳房だった。

そのような訴えかけをしているものは、彼女の乳房だけではなかった。身体の下の方にも、そのようなモノの存在を感じることができた。まったく用がないところに、何か大きなものがあるのを感じた。蛇のように僕の股間を這いまわり、その身体を、すでにすっかり勃起している僕のペニスに擦りつけてくる。僕は彼女の巨乳にだけ意識を集中し、そちらの方は頭から消そうと努力した。だがそれは無理だった。

「あなた、好きなんでしょう? 違うの? こんなふうに私の身体を擦りつけられるのが…あなたもこんなに固くなってる… あなたの平凡な奥さん、こんなことできないでしょう? どんな女にもできないわ… あなたが欲しいモノ、私にはあるのよ… あなたが本当に欲しいモノ…」

こんなもの欲しくない! 僕はジェフ・スペンサーのような男が彼女にどんな魅力を感じたのか、それを知りたかっただけだ。どうしてジェフは、僕の妻のスーザンのような最高の女と付き合っていながら、隠れてこんな女まがいと遊んでいたのか、その理由を知りたいだけだ。

だが、現実はというと、僕はこの、この…女とベッドに入ってしまっていた。

いま僕はは、彼女にのしかかられ、しゃにむに乳房を吸いまくり、下腹部を彼女のペニスで擦られている。だが、本当に狂っているとしか思えないことは、こんな状態にあっても、僕のペニスはこれまでなかったほど固く、強く勃起していることだった。俺のこいつは、いったい何を考えてるんだ?

するとダイアナは僕に手を使い始めた。長い爪で太ももの内側を引っ掻かれる快感は、極上の拷問ともいえた。間もなく、その指は徐々に上へと進路を向け、僕の硬直した肉棒を愛撫し始めた。ああ、なんてことだ、すごい快感だ。

優しく勃起を握り、ストロークを始めた。気が狂いそうなほどの欲望が湧いてきて、気絶しそうになる。

彼女は、さらにもう一本、手を使い始めた。右手でペニスを愛撫しつつ、左手は僕の右手を探り当て、ゆっくりと、しかし力強く、僕の手を彼女の勃起のある位置へと引き寄せ始めた。

いやだ! ダメだ、やめてくれ、絶対に嫌だ! 俺はゲイじゃない。男が欲しいわけじゃない。イヤだ、イヤだ、イヤだ… ああ、だが、何て興奮なんだ!

ダイアナが僕の身体を降りて行き、口に勃起を咥えてくれたときは、ほっと安心したと言ってよい。これなら、また「普通」のセックスになるからだ。彼女の持ってる棒状の物体のことを意識し、悩まなくて済む。

いやむしろ、最高の感覚だった。真に才能ある舌と唇に奉仕されると、こんなにも素晴らしいのかと思い知らされた。僕は自然と両手を彼女の頭に添えていた。決して頭を強引に動かそうとしていたわけではなく、ただ手を添えていただけだった。そうすることが、何と言うか、自然な形のように思えたからだ。僕と彼女のつながりが増える感じがするからだ。…「つながり」だって? 僕は何を言ってるんだろう?

その「つながり」はすぐに形となってしまった。僕をおしゃぶりしていた彼女は、突然、僕のペニスを軸に身体を半転させ、張りのある太ももで僕の頭を挟んだのだった。いきなり、恐怖以外の何物でもない彼女の代物が、僕の顔面から何センチも離れていないところに出現したのである。

その時点ですでに、僕の感覚はオーバーロードになって麻痺していた。僕は、視界に現れた揺れる肉塊を、畏敬の心持でただ見つめていたのだった。

そして彼女は身体を降ろしてきた。僕は絶対にやらないぞと心に誓って、身構えた。俺はそういうヤツではないのだ。しっかり口を閉じて、抵抗しようとした。

僕のペニスへの口唇愛撫のため、僕は心臓が高鳴り、肺が酸素を求めてうねりだしていた。一方、彼女の太ももは僕の頭をしっかり挟み込み、鼻を覆ってくる。僕は呼吸を止められたが、できる限り我慢した。だが、とうとう辛くなり、息をするため口を開けた…

むぐぐあうがあうがうううっ…うっぷふう!

口の中に侵入され、生理的にぶるぶる震えた。少し酒に酔っていなかったら、胃の中にあるものをすべて吐き戻していただろう。

彼女は別に強く押し込んできたわけではなかった。ヘルメット部分を入れるために、ちょっと口の中に浸しただけと言える。舌先がそれに触れ、僕は舌をひっこめた。何とも不快で、不自然な感覚だった。

頭の中が高速回転した。「不自然」? 妻のスーザンが僕にフェラチオをするときはどうなのか? これよりも「自然」なのか? ダイアナの場合はどうなのか? 「自然」ではないのか? 彼女はいまも僕に世界一流クラスのフェラチオをしてくれているのだ。こんなふうにダイアナと一緒にいるうちに、僕は、彼女のことを、外見どおりの美しい女性以外の存在に思うことが次第に難しくなっているのを感じていた。僕はまったく問題なく妻にクンニリングスしてきた。だったら、ダイアナほど魅力的な女性をどうして拒むことができるだろう? 単に彼女が、へこみへそ(参考)でなく、でべそをしているからと、それだけの理由で拒むことなどできないのではないか?

僕はその物体を舌でちょっとだけ弾いてみた。とたんに彼女が身体全体を震わすのを感じ、励まされたような気持がした。

舌先で亀頭の底辺を優しく撫で、それから舌を回すようにして頭部を何度かこね回した。ダイアンは反応し、ちょっと引き下がっては、もうちょっと深くへと押し込んできた。彼女はこれを何度も繰り返した。

やがて先端が喉に触れるまでになった。喉奥を突かれた僕は、無意識的に咽かえった。彼女はちょっと引き下がり、そこで一旦停止し、また前に突き進んできた。僕はちょっと咳をしたが、今回は、それほどショックはなかった。この美しい娼婦は、僕の反応に気づき、いったん僕のペニスから口を離した。

「ああ、とても素敵よ、感じるわ… 喉を開く感じにして、お願い… 鼻で息をするの。抵抗しようとしないのが肝心。なされるままに受け入れるの。あなたがこれが欲しいと思ってるのは知ってるわ」

僕は自分自身と葛藤していた。僕はこんなもの欲しくないんだと思い起こし、自分に言い聞かせようとした。だが、実際は僕の口への彼女の攻撃を押しとどめることは何もしていなかった。彼女の美しくトリムされた陰毛が鼻に触れてるのに気づいたとき、誰より、僕自身が驚いていた。奇妙な思い出が頭の中に現れた。子供の頃、熱心にテレビを見ていた時の思い出がフラッシュバックしたのである。

「全部食べたなんて信じられない」(参考

ダイアナの顔は見える姿勢ではなかったが、彼女はにっこり笑ってる気がした。多分、僕のペニスを包んでいる彼女の口の動きから、そう感じたのだろう。

フェラチオをされ、打ち寄せてくる快感。それと同時に、この状況から生じる複雑な感情。これはもはや限界を超えていた。強力な快感が沸き起こり、僕はそれに囚われ、圧倒され、そして押し流された。視界がはっきりしなくなった。背中が反りかえり、マットレスから浮き上がっていた。血液がこめかみに多量に流れ、ずんずんと音をたてた。その轟音しか聞こえなくなる。あらゆる神経が一斉に発火し、全身が痙攣した。そして、僕は射精したのだった。何リットル何リットルも、海ができるほど出した。少なくとも僕にはそう感じられた。

射精が終わり、しばらくすると、情熱の波が薄らいできた。僕は子猫のように弱々しい存在になった感じだった。ダイアナは顔も下半身も僕から引き下がり、身体を反転させ、僕の上に横たわった。そして僕にディープキスをしてきた。その時まで彼女は僕に一度もキスをしていなかった。

彼女の探るような舌先を受け入れようと口を開けた瞬間、僕は大変なことになったと思い知らされた。ダイアナは飲み下していなかったのだ!

僕自身が放ったものの残りを、力強く舌を使って僕の口の中に押し込んでくる。僕はもがいたものの、彼女に覆いかぶさられていたし、それまでの興奮の連続で力が出尽きていたのだった。結局、この時も、僕はダイアナにやりたいようにされてしまった。僕は目を閉じ、仕方なく自分自身のスペルマを飲み込んだ。目は閉じていたが、心は、このような大変なことをしている自分に驚いていた。

何となく恥ずかしい気持ちになって僕はうつ伏せになって顔を隠した。僕は多量に射精したのだが、まだダイアナはイッていない。僕は妻のスーザンを満足させることができなかったばかりでなく、この女性も満足させることができなかったのか!

ダイアナと目を合わせることができなかった。その目の中に、失敗した自分自身が映っているのを見るのが怖かったからだ。

ダイアナは僕の背中に全身を預けるようにして覆いかぶさったまま、僕の手に手を重ねた。彼女のペニスは僕の口の中に入っていた時と同じく勃起したままなのが分かる。その固くなった存在を感じるたびに、僕が彼女を満足させられなかったことを思い知らされた。それは今は僕のお尻の割れ目に寄り添っていた。だが、少ししたら、ダイアナはちょっと態勢を変えた…アレが動いてる…

「いや、ダメだよ…」 僕は弱々しい声で叫んだ。

だが、ダイアナは容易に僕を操った。僕の両手首をしっかり握り、同時に太ももを使って僕の脚を広げてくる。そして、耳元に熱い息を吹きかけながら囁いた。

「しーっ! 大丈夫よ、可愛い子… 怖いのは分かるわ。誰でも最初は辛いもの。優しくしてあげるから。約束するわ。…ママには、あなたが欲しいものが分かるのよ…。ママは何でも知ってるの…」

本物の男なら抵抗しただろう。本物の男なら彼女を押しのけ、向こうの壁に投げつけ、頭を踏んづけて、憤然として部屋を出ていくことだろう。それにそもそも、本物の男なら、自分の妻が高校時代の元カレに好き放題に身体を遊ばれている間に、シーメールの娼婦とベッドを共にすることなどないだろう。

最初は指だった。冷たくヌルヌルした指が僕の中を滑らかにするのを感じた。僕は少し身震いした。指が入るのを感じたことに加えて、その後に起きることを想像したからだ。

指が抜けでると、その次に、もっと大きなものがはっきりと存在を露わにし、僕のすぼまった穴に押し付けられた。

「じゃあ、いいわね?…行くわよ」

彼女は決して乱暴にはしなかった。むしろ優しく、僕の口を犯した時と同じだった。少しずつ前進してきては、休みを入れ、引き下がり、そうしてまた前進してくる。

僕はできるだけ身体をリラックスさせようとはしていたが、それでも、僕の身体は、彼女のヘルメット部分に二つに引き裂かれるみたいに感じた。すべての女たちが処女を奪われる時に上げるように、僕は哀れっぽいうめき声を上げていた。

深く侵入すればするほど、その痛みは強烈なものになっていった。だが痛みも強かったものの、僕の頭を支配していたのは、それではなく、こんなふうに身体を奪われているというショック、驚き、恐怖の方だった。

やがてダイアナはすべてを僕の中にねじりこんでいた。僕は身体を引き裂かれたように感じていた。そして、彼女は徐々に抜き差しを始めた。押し込むテンポも強さも、次第に増していき、やがて僕に股間を激しく叩きつけるまでになっていた。彼女の睾丸が僕の陰部をピタピタと叩いていた。彼女は僕の両肩をつかみ、爪を食い込ませて、打ち込みとリズムを合わせて僕の身体を持ち上げるように引き寄せ、それを繰り返した。

心の中に恥辱の気持ちが湧きあがっていた。

自分の妻も満足させられない、本物の男になれなかったという恥辱。他の男に妻を寝取られたという恥辱。自分のものを守るために立ちあがらなかったという恥辱。そして、シーメールの娼婦に、誘惑され、こんなにもたやすく、そしてこんなにも力強く身体を奪われてしまっているという恥辱…

だが、そういう湧きあがった恥辱感が、僕の中で沸騰し、やがて心の中で強烈に爆発したのだった。目もくらむような閃光がいくつも飛び散った。そして、僕は叫んでいたのだった。…やめろ、とではなく、もっと強く、と。

彼女は射精に達し、強烈な勢いで僕の中に噴射した。その噴射の強さは僕自身の強さと同じだったと思う。自分がこのような行為をされているというショッキングな自覚ゆえに、僕は、またもや限界を超え、達していたのだった。この時は、自分の分身にまったく触れていなかったのにである。

僕は完全に疲れ切っていた。身体的にも精神的にもぐったりとなっていた。どこまで屈辱感を味わわされるのか。限度がないらしい。スーザンは僕のことを何と言っていたか? 「あなたほど可愛い男の人は見たことない」… 妻の目には、「可愛い男」など、ジェフ・スペンサーのような逞しい男に比べれば、まったく相手にならぬ存在に映っていたのだろう。それは確かだ。そして、いま僕の上に覆いかぶさってるこの美しい男オンナも同じように感じているのも確かだ。たった今、彼女に僕はおもちゃにされてしまったのだから。

自尊心? 何だ、それは?

僕は急いでズボンを履き、慌ててチャックを上げ、ベルトを締め、他の衣類を抱え、狂ったように急いでドアに向かった。ドアを閉めるとき、僕の背中にダイアナが優しく声をかけるのが聞こえた。

「またすぐに会いましょう…変態さん」

その夜、僕は家には帰らなかった。帰れなかったというのが正しい。今は帰れない。いや二度と帰れない。ともかくあそこで生活するなんてできない… 確かに言えることとして、スーザンが家にいるとして、彼女と顔を合わせる心づもりができていない。

その夜、僕はホテルに泊った。熱いシャワーを長々と浴びた。それから、携帯電話の電源を切り、ベッドに這いあがり、シーツに潜りこんだ。そして、打ちひしがれ、動揺に満ちた心のまま、眠りに落ちたのだった。この経験で僕は目覚めてしまうことになるのである。

***

ひどい一週間だった。週とはいえ、実際には金曜の夜にダイアナのアパートから逃げ帰った時から始まり、あの長く、何もできなかった土日も含むのであるが、この一週間は大変だった。

月曜の朝、僕は会社に欠勤の電話を入れ、個人的なことに時間を使った。その後、スーザンが確実に家にいない時をみて、僕たちの住処のロフトであるプリンターズ・ローに戻り、僕の衣服や持ち物を回収してきた。このロフトは分譲マンションに変わる計画になっていた。僕がまだ、その変更契約にサインをしていなかったのは幸いだった。

部屋を出るとき、楽しかった記憶を思い返しながら、僕たちのーーあるいは、僕だけのーー幸せだった住処を最後にもう一度振り返った。そして、僕は玄関を出た。僕の背後で自動ロックのドアがカチャッと音をたてた。僕とスーザンの関係の終わりを告げる音に聞こえた。

まずは、離婚のための書類を用意した。その際、「公然で、かつ悪質な不貞」(参考)という言葉を使った。僕の弁護士は、DVDを見た後、僕の裁判はスラムダンクになると保証してくれた。有無を言わせぬ圧勝ということなのだろう。

経済的側面でも、スーザンとの離婚は同じく簡単に済むとのことだった。手続きを進めるときに、いくつか前もって注意していたのが良かったのである。つまり、銀行口座を別々にしておくとか、資産の保護をしておくとか、外国に土地を所有しておくとかである。

スーザン個人の収入に加え、相手の男が百万長者であることも考慮に入れれば、彼女は僕の資産を当てにする必要はないだろうし、そもそも、法的にそうする立場にはないのである。僕の弁護士が吐き捨てるように言った。

「財産関係で奥さんにできることと言えば、前のめりになって尻を突きだし、自分で尻頬を広げておねだりすることくらいだね。そんなことも奥さんなら平気でできそうだが」

彼の言葉に僕は内心、ゾッとした。彼は、早速、裁判所に書類を送り、翌朝、ちゃんと処理されたか確かめると約束した。

火曜日のお昼ごろから携帯電話が鳴り始めた。スーザンは先の週末も月曜日も、まったく電話をよこさず、僕の安否を確かめる気などなかったのに、おかしなものだ。多分、僕が週末に帰宅していなかったことすら気づいていなかったのだろう。

発信者のIDですべてが分かる。僕は、即座に職場の電話をスーザンからの電話を拒否するように設定し、会社の受付にも、スーザンから電話があっても取り次がないよう指示した。彼女は連絡方法を携帯の方に変えたのだろう。携帯のディスプレーには「プライベートな発信者」とあった。僕はまた簡単にだまされるつもりはない。携帯にかかってきても出ることはせず、放置し、留守電に切り替わるにまかせた。

火曜日の午後、僕は、ノース・ピア(参考)から通りひとつを隔てたストリータービル(参考)にある購入権利込みの賃貸マンション(参考)を借りる契約をした。寝室が二つある快適そうなマンションで、窓からは、オグデン・スリップ(参考)とその先のミシガン湖が見渡せ、息をのむような素敵な眺めが楽しめる。僕はボートが好きで、これまでもオグデンスリップに行き、ボートのオーナーたちが近くのレストラン街でディナーを取ってる間、彼らのレジャーボートを見て楽しんできたのである。次の夏が楽しみだった。ともあれ、何か楽しみに待つものがあるというのは気分的に良いものだった。

続く三日間は、特にきっちりと計画を立てずに、あちらこちらを駆けまわりながら必需品を買い求めることでいっぱいだった。仕事の後、勤めている商事会社の同僚や同業者の仲間たちとの付き合いがあった。会社のクチコミ網はすでに僕と妻の間に何かがあったことを伝えていて、誰もがその話題を避けた。

僕の新しいマンションは豪華だったし、新たに備え付けた家具類のために一層、高級感が増していた。他の住民は、概して若く、紳士的であり、かつ最新流行に敏感な先進的人種だった。夜ともなると、周辺のレストラン、クラブ、商店などにどこからともなく多くの人々が集まってくる。

あの金曜日以来、毎日の夜が、長く、孤独で、苦悩に満ちた夜になっていた。セックス以外の夢が見られなくなっていた。目覚めている時も同じで、セックスが僕の頭の中を支配し、生活を支配していた。それが一週間続いた。

夢の中で、僕はノース・ミシガン通りの真ん中を素っ裸で歩いているのである。通りには人が列をなしていた。妻のスーザンとその愛人ジェフ、僕の友人や同僚たち、それに赤の他人たちも。僕の周りのいたるところで性行為が展開している。僕はまったく無力で、周りのセックスの展開や成り行きを変えることができない。ただ見ているだけである。そして、誰もがセックスをしながら、そんな僕をあからさまにからかっているのである。

そんな中、二つの眼が面白そうに僕を注視しているのを僕は感じていた。まるで僕を何かエンターテイメントの対象であるかのように、あるいは、個人的な玩具であるかのように僕を見ているのである。僕は、その二つの眼に一挙手一投足を見られ、恥ずかしく感じているし、侮辱的にも感じている。僕はその眼を嫌悪しているし、恐れている。だが、それでも、その眼を求めてもいるのだった。あの眼をもう一度見たいとは決して思っていないのだが、それでも、その眼に見つめられないことも耐えがたいと感じているのである。

その眼は緑色ではなく、茶色だった。

金曜日の午後、電話が来た。

「いつまで我慢するつもりなの?」 

電話の向こう、ダイアナが平然とした口調で僕に訊いた。

「アバズレ!」 僕は唸った。

「私はいつもそう」 彼女は誇らしげに答えた。

「また僕に嫌なことをさせるために電話してきたのか?」 いきなり核心を突いた。

「そんなふうに取らないで…」 ダイアナは慌てた様子で答えた。「…あなたはいつでも出て行けたはずよ。なのにそうしなかった。私に、僕はしたくないことをさせられてるとすら言わなかったじゃない」

彼女はちょっと沈黙した。自分の言った言葉を再考してるようだった。

「本当のところ…」 彼女はずっと穏やかでなだめるような口調で続けた。「本当のところ、この前はあなたに間違った印象を持たせてあなたを帰してしまったのかもしれないわ。あんまりたくさん変態… あ、つまり、私、私自身が扱われたように男の人を扱っちゃう悪い癖があって… あなたにあんなことするなんて失礼だったわ。あなたは私に優しかったもの。本当の紳士として振舞ってくれていた。あなたが私のところから出て行かなかったことで、私、あなたも私に好印象を持ったんじゃないかって思ったの。だから… 私、間違ってる?」

言いたいことがあまりにもたくさんあった。彼女がこの一週間、どんなに僕の思考や夢を独占してきたかについて… 僕は言葉にすらできなかった。

「…どうやら、少なくとも否定はしないようね…… それはともかくとして、あなたは、私にとって一番魅力的な人だったわ。こんな気持ちになったこと、ずいぶんなかった。こんなこと話しているのが自分で信じられないけど、だけど、私、あなたのこと、この一週間ずっと想い続けていたの… それで、どうなのかなって… もしよかったら、私に償いをさせてくれない? ただでいいから?」

僕はびっくりしていた。おそらくダイアナは毎週10人以上の男たちとセックスしているだろう。にもかかわらず、僕のことを想っている? 個人的に僕に会いたい? 

僕はこの世で一番感受性の強い人間とは言えないだろうが、それでも、僕は、彼女が「ただで」と即座に言ったことは、僕自身の迷いの気持ちをなだめるためばかりでなく、彼女自身の迷いの気持ちを落ち着かせるためでもあると察知した。彼女は僕に会いたがっている。僕自身、この一週間、動揺し迷い続けていた。そのこと自体、僕もダイアナに心を奪われていることを表している。そう思った僕は、すぐに会う段取りを決めた。

ダイアナはレイクビュー(参考)に住んでいる。そこに向かう車の中、僕は極度にいきり立っていた。レイク・ショア・ドライブ(参考)は渋滞していて、ノロノロ運転だった。悪いことはそれだけでは済まないのか、彼女の住処の近くでは駐車することは不可能だった。

ようやく彼女のマンションに着くと、ダイアナはブザーを押して僕を建物に入れてくれ、そして階段を登りきると、彼女は玄関先で待っていてくれた。

彼女は、ガーターベルト、ストッキング、スティレット(参考)のサンダル、そして床まで届く丈の薄地の黒いペニョワール(参考)だけの姿だった。頭のてっぺんからつま先まで絶美だった。ダイアナは瞳を躍らせ、そしてパッと顔に魅惑的な笑みを浮かべた。

「ハーイ、また会えたわね。ようこそ…!」

僕は片腕で彼女の胸を突き、無駄な挨拶を遮った。僕の動きに押されて、彼女は倒れそうになりながら後ずさりし、そのまま小さなスタジオ型のアパート部屋の奥へと進んだ。と言うと、何か無様な格好だったように思えるかもしれないが、念のために言っておけば、ダイアナは、あの摩天楼のように高いヒールのサンダルを履いていたものの、実に美しくバランスを保ち続けたのだった。だが、そのバランスもベッドのところにきたところで崩れてしまい、彼女はベッドに仰向けに倒れ込んだ。

そして僕は彼女が倒れたと同時に、彼女に覆いかぶさり、すぐに彼女のペニスを口に咥えたのだった。

それから1時間以上、僕は唇と舌を使って、ダイアナを焦らし、苦しめ、いたぶり続けた。何度も絶頂の淵まで高めては、愛撫を中断し、そしてまた絶頂へと追い立てた。最後には、僕の喉奥へ射精するのを許したが、そこに至るまでの長時間、彼女は喘ぎ、叫び、よがり泣き、狂ったように身をくねらせ、手にこぶしを作って僕の両肩を叩き続けたのだった。

絶頂を終えた後、彼女はようやく深く呼吸し、言葉が発せられるようになった。絶頂の後、そうなるまで10分近くかかっていた。

ダイアナは天井を見つめながら言った。

「…そうねえ…無駄話はいらないわね…… これで、すべて許してもらったと思っていい?」

「この週末、何か予定がある?」 僕は質問に質問で答えた。

「いまは予定ができちゃったわ。さっきまでは仕事に行くつもりだったけど……。分かるでしょ? 女の子は家賃を払わなくちゃいけないから…」

「その心配はいらない。僕が持つから」

「本気でそう言ってるの?」 ダイアナは用心深そうな顔で問い返した。

「とりあえず、やってみて、様子を見てみよう」

ダイアナは片眉を上げた。僕は彼女のその表情が魅力的に思った。それから彼女は僕の痛いほど固くなったペニスを擦り始めた。

「とりあえず、やってみる? ……ええ、いいわ。私もやってみることにするわ。いわば、仕返し、ね?」


つづく
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