Caption 36


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背後からダンテにゆっくり挿入され、トリイは叫び声をあげた。痛みはあったが、少しだけだった。いや、痛みよりもはるかに快感の方が大きかった。そして彼の叫び声もそれを反映した声であった。

グレート・チェンジから6年が経っていたが、まさにこの瞬間まで、トリイの男性としての自我が生き残っていたのである。白人男性としての自我がますます弱体化されていったにも関わらず、その過程を生き延びてきていたのだった。彼は新しいファッションの衣類を着るようになっていたし、時には性欲に負けて、ディルドを購入もした(実際、それでほぼ毎日、自慰をしているのであるが)。だが、彼は最後の一線だけは越えまいと、男性と交わることは拒否し続けたのである。治療法が見つかるまでは、決してこの一線は越えないと。

もちろん、トリイは治療を受けるつもりでいた。もう一度、男性に戻りたかった。だが、彼の中に、boiであることで可能なことをすべて、少なくとも経験しておきたいという気持ちもあった。そのようなわけで、かなり思案したあげく、トリイはboiとしての本能に身を委ねてみることにし、本物の男を求めようと決めたのだった。そして彼はダンテと知り合った。

トリイは心の準備が不十分だった。ダンテと知り合い、その結果として得た経験はそんな未熟なトリイには圧倒的だった。ダンテに抜き差しを繰り返される間、純粋な、真に混じり気なしの快感がトリイの全身を襲ったのである。

行為が終わり、トリイは新しい恋人の腕に包まれながら、考えることはたったひとつだけだった。

「いろいろあるけど、boiであることも、そんなに悪くないわ」


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