「心が望むものをすべて」(第1章) Whatever Your Heart Desires Ch. 01  出所 by AngelCherysse

私は、夫に出会う前は、男とのことで問題を抱えたことはなかった。男が問題の種になるようには決してさせなかったから。高校、大学、そして卒業後と、ずっと私の周りには男が集まっていた。背の高い人も低い人も、逞しい人も痩せている人も、騒々しい人も内向的な人も、私はその男たち全員を魅了した。彼らを私を欲しくて気が狂わんばかりにさせてきたし、今もそうしている。私は聖人ではない。私の美貌や、官能的なサファイア色の瞳や、すらりと長い脚や、悩殺ボディを利用して私が欲するものを手に入れても、私は何ら恥じることがない。私の崇拝者はたくさんいるけど、彼らは私のことを「男の子のおもちゃ」から「セクシー系」とか「悩殺美女」とか果ては「染め毛の金髪」までいろいろな呼び方をしてきた。でも私は全然気にしない。今は不動産関係の仕事をしている。私がこの仕事で成功するために、男たちに生物的な安らぎを与えて、というか、まあ、単に気持ちのいい肉欲セックスをしてあげ、男を「利用」してきたと言いたいなら、言ってくれても構わない。男たちだって、同じように女の私を利用してきたのだから。何か関係が複雑になりすぎたり、あるいは私が単に飽きてしまったりしたときは、いつでも私は軽々と男を乗り換え、次の段階へと移り進んできた。謝ったこともなければ、後悔もしていない。

そんな私が、ダニー・デイビスに出会ってしまった。彼が私のタイプかどうかなどを話すつもりはない。というのも、私のタイプの男と言ったら、腕が2本あって、足も2本あって、私のあそこを埋めてくれる素敵で太目のペニスがあって、求めに応じて私をいかせることができる男なら誰でも良いと言ってよく、その他のことはすべて交渉次第だからだ。ダニーは、しっかりとした痩せた168センチの体格に、これらすべての点を備えていた。デートの初期の義務的で儀礼的な「軽いおしゃべり」の段階の時に、彼がフリーのライターをしているという情報を手に入れた。長い脚のおかげで、高校と大学時代はクロス・カントリーで天性の能力を発揮したらしい。彼は卒業後もランニングを続けていた。後で分かったことだが、そのことで彼の驚くべき持久力が説明できる。私はどちらかと言うと可愛い感じの男が好みだ。そして、ダニーは実際とても可愛いのである。その手の可愛らしく見せる仕事をしている男たちがいるが、そんな男たちよりもずっと可愛い。あのキラキラ輝く誘惑的な緑の瞳。あの瞳に見つめられたら私は跡形もなく彼に吸い込まれてしまうだろう。私は、どうしても彼を自分のものにしたくなった。そして、その通りにしたのである。

男たちが「一晩じゅうできる」と能力を自慢するのは、女なら誰でもしょっちゅう聞かされていると思う。だがダニーは、まさに文字通り、一晩じゅうできるのである。私の体から服を剥ぎ取りながら、私の「心が望むことをどんなことでも」してくれると得意気に話した。私は、山ほど希望があったのだが、それを全部、彼は私にしてくれた。

ああ、あの最初の夜。私たちはまるでケダモノのようにセックスをした。ダニーは私の体にある穴のすべてを奪ったし、考えられる体位のすべてを行った。彼は、明け方までに、私を文字通り、わなわな震え、うわごとを言い、理性をなくした女体の塊そのものに変えてしまった。私が相手してきたすべての男たちの中で、自分の欲求の前に私の欲求を叶え、自分のオルガスムの前に私のオルガスムをもたらした男は、彼が最初である。(しかも私のオルガスムの回数は数え切れないほど)。最後には、とうとう私の方から、堪忍して、もうできないと懇願していた。彼はそれを聞いて、にっこり微笑み、私を両腕で優しく抱いてくれた。二人、体を寄り添いながら、朝日が昇るのを見た。こんなスーパーマンのような彼と、関係を一夜だけのもので終わらせることなど絶対にできない。私はそう思った。

***

何日か経った。ダニーは、単なる気持ちのいいセックス相手では収まらない、それをはるかに上回る存在であると判明した。頭が切れて、おかしくて、ロマンティックで、自然でのびのびしてて、押し付けがましく欲張らない。彼はよく私を笑わせてくれたし、泣かせもする。嬉し泣きだ。それに私を考えさせる。私たちは、普通は、彼のアパートではなく私の家に一緒にいた(本当のことを言おう。不動産のエージェントは、フリーのライターよりはるかに経済力があり、よい暮らしができるのだ)。ダニーは私の家を褒めてくれたし、私も家を自慢に思っているのだが、同じ誇りを彼も感じてくれた。彼が私のところに泊まっていくときはいつも、私が仕事をしている間に、彼は片付けものをしたり、掃除したり、さらには掃除機をかけてもくれる。男女関係以外の関係であっても、そのことだけでも彼を同居させる価値があると思うだろう。だがダニーの場合は、それ以上なのだ。彼は料理もでき、私が仕事でくたくたになって帰ってきたときに、美味しい夕食で私をもてなすことも、当たり前のようにしてくれるのである。彼と一緒にいることがとても自然で、とても正しいことのように思われた。私は彼にすっかりハマッてしまっていたと言ってよい。ダニー中毒。彼とはどうしても離れられない・・・

ダニーは、それこそ1000以上のやり方で、彼の生々しいセクシュアリティを使って私を焦らした。それこそ情け容赦なく、臆面もなく、私の女心の部分を刺激した。「臆面もなく」と言ったのは、彼の振る舞いが、意識的でわざとしているように思ったから。でも、彼を知れば知るほど、彼は意識的に振舞っているのではないと思うようになった。彼は、自分が私という女に与えている影響について、本当に気がついていないようなのである。それに、他の女たちに与えている影響についても。二人で一緒に出かけるといつも、私は他の女が彼に目を向けるのを見ていた。しかも、その女たちの視線が、何気ない視線というわけではないことも。私は、メスの豹が、米国農務省認定の一級品の肉を見たとき、どうなるか知っている。さっと近づき、即座に良肉だと判断するのだ。それに、そういうメス豹が次に何をするかも充分知っている。私は、この惚れ惚れするような良質の男肉を自分のモノにしているか? いやいや、だめ。私はあからさまに縄張り意識を持ち始めた。私のことを想像してみて欲しい。リベラルで颯爽と独身生活を満喫していたキャリア・ウーマンであるクリステン・コナー。その私が、この貧乏で、可愛くて、寛容な男をどうしても教会の前に引きずり出したくて仕方がなくなったのである。他のあばずれたちが彼に爪をたてて襲い掛かることがないようにと、ただそれだけを願って。

誓いの言葉を交わす前に、私は率直に彼に忠告した。私は、自分の人生に彼が関わることを望んでいるし、彼を必要としている。それは事実だが、私は、たった一人の男の女になるとは約束しないと。いつか分からないが、もし私の目の前に魅力的なペニスが現れて、ぶら下がっていたら、私はその機会を逃さないだろうと。

そして実際、私はそれを行った。その初めての浮気のとき、夫となったダニーの目に浮かんだのは、裏切られた痛みというよりは、むしろ、失望の表情だった。ダニーが心の中でどんな感情を抱いたかは分からない。だが、彼は、私の欠点も含めてすべてを受け入れてくれた。そして、その出来事について、気持ちを傷つける言葉を一言も話さなかったのである。彼の名誉のために言っておきたい。ダニーには、他の男と遊んだ私を受け入れる責任はまったくなかった。にもかかわらず、彼はそうしてくれたのである。

次第に、私は、他のどの男たちも、ダニーがしてくれるように私を満足させることはできないと悟るようになっていった。確かに、性的欲求は解消される。しかしそれは純粋に身体的な点でのみだった。夫がするように、感情面で私に触れる男もいなければ、それを試みることすらする男はいなかった。それまで私はダニーを求めているとか必要としているとかは何度も断言していたが、ようやくにして自分は彼を愛しているのだと理解したのだ。それまでの私の人生で他の人間に対してこのような感情になったことは一度もなかった。私は他の男との情事を完全にやめたわけではない。だが、ダニーには精一杯説明して、それらの出会いが単なるセックスだけであると理解してもらった。ほとんどいつも、一夜限りの遊びで、それ以上のことはないと。私がそれ以上を求める可能性は決してないと。ダニーは、私の他の男との火遊びを考えられるうちで最善のやり方で諦めさせたと言えるだろう。

***

結婚してからの4年間、私は幸せだった。幸せに舞い上がっていたと言ってよかった。緊張関係が生じてきたのは5年目になってからだった。ダニーとのセックスが変になったとか、つまらなくなったとか、頻度が落ちてきたとかではない。そのような点は一切なかった。ダニーは前と変わらず私が知っている中でも最もテクニックがあったし(テクニックに関して彼は私を師としている)、最も思いやりがあって、最も気を使ってくれる男と言えた。ああ、あの彼の舌! ちろちろと動いて私を焦らし続けるあの才能溢れる舌使い。彼は、私の乳首やあそこやクリトリス、そして体のすべてを舌で刺激したり、焦らしたりしてくれた。文字通り、何時間も舌で私の体を洗い続けてくれるのである。そして指での愛撫! この上なく繊細で軽く優しいタッチができる。もちろん、そうすると私を空高く舞い上がらせることができると分かるときには、敏感な乳首を強くつねったり、噛んだり、吸ってもしてくれる。

そしてメイン・ディッシュはあの20センチのペニス。大きく傘を広げた、バルブのような頭部と根元に行くにしたがって太さを増していく肉茎。挿入されたときの充実感。彼は必ずいつもと言ってよいほど、私を連続オルガスムの状態に導いてくれた。全身ががくがく震え、理性がすべて吹っ飛ぶようなオルガスム。私は、何も考えられなくなって、何度も繰り返しいきっぱなしになってしまう。そうなってしまうわけは、彼がまさにセックス・マシーンのようだから。いつまでも持続できるのだ。

そして、実はその点が問題なのである。ダニーはいつまでも終わらないのだ。この話を読んでいる人が何を思っているか私には分かる。頭がおかしいんじゃないの? それのどこが問題なのよ? 答えは簡単だ。ダニーはいつまでも射精しないので、いつまでも終わらないのである。結婚前も後も、何度となく私とセックスしてきてるのに、これまで一度も彼は射精したことがなかった。口でしてあげても、彼をいかせることができなかった。いや、フェラチオに関して言えば、私は決して才能がないわけではない。それに、彼は自分でするならば射精できるのだ。ダニーは、普通、私がいないところで、後になってからそれをしている。私が、一緒に付き添うと言い張って、彼のその瞬間を2人で分かち合うときもある。彼に、いく時にどんなことを思い浮かべているのかと訊くと、彼は、いつも必ず、私のおかげで彼がとても気持ちよく幸せになっているところを思い浮かべていると答えた。ええ、確かにそうなのだろう。

ダニーはと言うと、彼は一度もそれについて不満を述べたことがないし、私に当たったりしたこともない。そのことを考えてる様子でもなかった。考える必要性を感じていない様子なのである。でも、私は違う。私は夫を愛しているのだ。本当に、深く、狂わんばかりに愛しているのだ。そして、彼が私に授けてくれた性的・精神的充足感という贈り物に、心の底からお返しをしてあげたいと思っているのである。だが、どれだけ努力しても、私にはそれができない。私では彼をいかせることができなかったのである。それまでの私は、男をいかせることができないなどという問題は一度もなかった。にもかかわらず、この世で信じられないほど最高に素敵で素晴らしい男と結婚したのに、その夫をいかせることができないのだ。性的に自分が上手く行っていないのではないかという不安。そんな不安を感じたのは生まれて初めてだったし、それによって私は感情的に落ち込んでしまっていた。

***

ある朝のこと。私はあわただしく出かける準備をしていた。ダニーは、固定の仕事相手との打ち合わせですでに家を出ており、夜まで帰ってこない予定だった。私の方も遅刻しそうになっていた。この日は、3つの支払いが重なる「トリプル・ウィッチング・デー」だった。電気代、ケーブルTV、それに携帯電話の料金を払わなければならない。オンラインで銀行から振り込むようにしていた私はコンピュータの前に座った。

その日の朝、ダニーは多分Eメールのチェックにコンピュータを使っていたのだろう。彼は、気が散っていたか、その時の私と同じく急いでいたに違いない。コンピュータを立ち上げたまま、彼のアカウントに入りっぱなしになっていた。それまでダニーはそんなことをしたことが一度もなかった。彼の属しているパソコンの思想学派では、コンピュータを使用しないときには、電気を節約し、ハードディスクとモニターの不必要な疲弊を防ぐため、必ずシャットダウンすべきで、ACPIがその仕事をしてくれるなどと信用してはならない、という風になっている。ともかく、急いでいた私は、いったんログオフして自分のアカウントから入りなおすことはせず、より素早く片付けられるようにと、ダニーのアカウントを通してインターネットにアクセスした。

ブラウザを開き、「お気に入り」をクリックし、銀行のウェブ・サイトへのリンクをクリックした。支払い自体は5分ほどで済んだ。作業を終え、ブラウザを閉じようとしたとき、ある考えが浮かんだのである。いや、「お気に入り」にあるリンクで銀行のリンクを探していたときに無意識的に頭に記録された考えだったのかもしれない。私は、もう一度「お気に入り」をクリックした。そして案の定、それがあったのである。「密かな欲望」という名前のフォルダ。正直に考えて欲しいのだが、そのようなフォルダに何が入っているか、誰でもどうしても知りたくなるのではないだろうか? 私はそうなった。

おおよそ20分後、私は職場にその日は欠勤すると電話を入れた。その後、私はブックマークされたウェブサイトを見て2時間ほど過した。ダニーは、会員サイトに対して自動ログインの設定をしていたので、私はその中身を自由に閲覧して回ることができた。ストーリーを置いてあるサイト数箇所にブックマークされていた。ストーリーとその作者のリンクにはハイライトされているものがあった。ハイライトは、そのサイトにダニーが最近アクセスしたことを意味している。私は、まず、そのリンク先を最初に読んだ。勘を働かせて、次にダニーの「マイドキュメント」フォルダの中を見た。そこには多量の読み物があり、さらにもう数時間、私はそれを読んで過した。結局、私はモニターを見続けるのに疲れてしまった。ダニーの「お気に入り」と「マイドキュメント」のフォルダを他のアカウントからも共有できるように設定し、コンピュータをシャットダウンし、新鮮な空気を求めて、外に出かけた。

少なくとも今は私にも分かった。そういう状況が存在すること、女性の中にはその状況に直面している人がいること、それ自体は新しいことではない。ただ、私自身が、個人的なレベルでこれに直面しなければならない事態になったことがなかったというだけだ。ストーリーを読み、会員のフォーラムをざっと見たおかげで、私と似た状況に直面している女性たちの反応について、私は以前より幅広い理解を得ていたと思う。

たいてい、そのような女性たちの最初の反応は、ある種、裏切られたという感覚だった。その人たちの意見は理解できたが、どういう理由か分からないが、私はその意見には組みできないと思った。ガラスの家。最初に思ったのはそれだった。私が最初に石を投げつける立場にいないのは確かだ。私には似合わない。仮にダニーが何か悪いことをしたと言えるとして、何が悪かったかといえば、不作為の罪と言えるかもしれない。あの「密かな欲望」について何も明かさなかった点だ。他の女性たちなら、それを安易な言い訳として利用し、自分自身の中の異常な部分を棚上げにして、自分の方が道徳的に優れているという自覚を得ようとするかもしれない。でも、私は「他の女性たち」ではなかった。そのような女たちの反応には、それが何であれ、何かを隠す嫌らしい口実が潜んでいるように思えた。

いろいろ読んでみると、まさにこの同じ女性たちが、それぞれのパートナーの事実暴露に対して、様々に異なった反応をするようだった。ばかばかしい反応をする女たち。明らかに、そのような話しは作り話であると分かる。他には、相手を憎むように変わる女たちもいた。これは私にあれだけ愛を注いでくれている男性に対して私にはとても想像できない反応だった。さらには、奇妙奇怪な反応をする女たち。残るほんのわずかな女たちの場合、このことに純粋にエロティックな興奮を感じたようだった。そういう反応をした彼女たちのことを知ったとき、私には新しいシナリオが浮かんだ。これが、少なくとも、私とダニーの両方にとって肯定的な経験になる可能性を秘めていると悟ったのである。

私は、歩きながら様々なことを整理し考えた。自分が本当にどういう気持ちでいるのか? ダニーはどのように感じると思うか? 何かできるとして、私たち2人について自分は何をしたいと思っているのか? それが2人の関係にどのような影響を与えるか? 何より重要なこととして、本当のところ、何が一番重要なのかを検討しなければならなかった。私にとって、彼と私にとって、何が一番大切なのか? 私たちのどの部分について何が大切なのか?

このような問題について、考えようと思えば、何日も、何週間も、そして何ヶ月もずっと考え続けられたかもしれない。私が話しを読んだ女性たちの何人かがそうしていたように。だが、私の場合、そんなに時間をかける必要はなかった。すぐに答えが見えていた。そのようにすぐに答えが出たという事実、それ自体、私に何かを語りかけていたに違いない。

散歩の帰り道、家に近づきながら、私は、自分がどのような気持ちでいるか、この問題にどのように対処するつもりでいるか、かなりはっきりと意識できるようになっていた。だが、何かに手をつけてしまう前に、ともかく、ちょっと軽いテストをしてみる必要がある。

***

家の前に来ると、ガレージの戸が開いていた。私の車の隣にダニーの車が止まっている。今朝、彼が出て行く前、私たちは、私が仕事から帰ったら一緒に食事に出かけようと話し合っていた。ごめんね、ダニー。私は今夜は違うことをしようと考えているの・・・。

家に入ると、ダニーはリビングにいた。コーヒー・テーブルのそばに立っている。手にはスーツ・コートを掛けたままで、まだネクタイも解いていない。まだ帰ってから5分も経っていないようだった。彼は私の姿を見て、明るい笑顔を見せた。

「お帰り。車があったけど。早く帰っ・・・」

彼はそこまでしか言えなかった。その先を言う前に、私が彼に飛びつき、両手で胸を突くようにして彼を後ろに押していったからである。ダニーは私に押され後ずさりしながら、リビングから玄関ホールに出て、廊下を過ぎて寝室に入った。そして広々としたカリフォルニア風キングサイズ・ベッドに仰向けに倒れた。私は、一言も言わず、ただひたすら彼の体から衣類を剥ぎ取った。脱がせた服を床に放り投げる。そして、すぐ後には、彼の服の上に私の服も投げ重ねた。裸になった彼の上に覆い被さり、すでに半立ちになっているペニスを咥え、完全に勃起するまで舐めしゃぶった。依然として何も言わず、ただ彼の瞳を熱を込めて見つめながら、彼の上に乗り、彼の夢のように素敵な肉柱で自分を貫き、しゃにむに体を上下に弾ませた。

「それで、これって、僕の顔を見てとても嬉しいってことを伝えたいのかな?」

相変わらず気の利いた訊き方をする。私は、甘え声で言った。

「ああん、ええ、そうよ。今日はとってもあなたに会いたくなって仕方なかったの。私、いけない女の子だったの。会社をズル休みして、家で、ずっとウェブをやってたの。エッチなアダルトサイトばっかりいっぱい見たわ。写真を見たり、音声を聞いたり、動画を見たり。いやらしいストーリーを読んだり、会員制のフォーラムに入ったり。それですっかりエッチな気分になって、あなたが家に帰ってきて私を慰めてくれるのが待ちきれなかったのよ」

「いったいどんなサイトを見たんだい? 君がこんな風になってしまうなんて?」 ダニーは信じられないといった面持ちで訊いた。

「オルタナティブ・セックス。ほんとにエッチでゾクゾクするものばかり。今まで見たことがないようなもの。男同士のセックスとか、女同士とか、3人プレー、輪姦、ボンデージ。それに、とてもセクシーなTガール(=シーメール)も見たわ」

その瞬間、ダニーのペニスが私の中でピクンと動くのを感じた。私は言葉による誘惑を一時中断し、一度深呼吸をした。下半身の動きは相変わらず続けたまま。そして、深呼吸をした後、思い切って続きの話しをした。

「ダニー? あの女の子の姿をした男の人たち、すごく魅力的だったわ。とても大きな胸をした人たちがいた。ウエストは細くて両手で指が回りそうだったし、お尻もセクシーで官能的。私たちが寝室でよくポルノを見るわよね? そのポルノに出てる女優より女の魅力がある人がいっぱいいたの。服装はみな同じ感じね。すごく淫らな感じの服。そして何より素敵な女なのにペニスがついてるの。大きくて、綺麗な形をしたのが。ダニー? あなたのに似てるペニスをした人が何人かいたわ。それを見てたらとても興奮しちゃって!・・・」

「・・・動画も見たわ。Tガールが本当の女の子にセックスしているのとか、Tガールが男に入れているところとか、逆にTガールが男に入れられているところとか。・・・ああああ・・・。それを見ながら下着の中にクリームっぽい愛液を出しそうになっていたわ。・・・ねえ、ダニー? こんなことを言って気を悪くしないでね。そのとき、ちょっと変なイメージが頭に浮かんだの。あなたなの。あなたがTガールになっているイメージが出てきたの。あなたは、すごく大きな胸をしていて、ウエストはきゅっと細く、それからお尻にかけて大きく丸く膨らんでいたわ。胸元が丸く大きく開いた短いタンクトップを着ている。お腹が露出していて、おへそにはアクセサリーのリングがついていたわ。スカートはタイトな皮のミニスカート。ストッキングを履いているんだけど、その付け根のところまで見えるようなすごくミニのスカートね。そして悩殺ハイヒール。どこから見てもポルノ女優のような姿。ダニー? あなたが本物の淫乱女のように見えたの。化粧ももちろん、そういう女のするような化粧・・・」

「・・・そして、そんな女の姿になったあなたが横になってるイメージが出てきたの。今あなたがそうしているように、ベッドに仰向けになってる。そして、いま私がしているように、その女になったあなたの上に私が乗って、あなたのペニスを入れてバウンドしているのよ。そうしながら私は自分に言っていたわ。・・・すごく気持ちいい。すごく、すごくエッチで刺激的。いつまでもこうしていたい、って・・・」

私は、ダニーの上で体を揺らしながら、手を股間に持っていって指でクリトリスを擦っていた。私が出した愛液で指がびしょびしょに濡れ、ぬるぬるしていた。それからお尻のほうに手を移し、ゆっくり、注意深くダニーの狭くすぼまった小さな穴に指を入れた。優しく指を出し入れしながら話しを続けた。

「・・・その時、こんなことも思ったの・・・こんな素敵なあなたを私が独り占めして楽しんでいていいのかって。男を家に連れてくるべきだわ。すごく逞しい男を。そしてその男が私とあなたの2人にするの。とても大きなペニスをした男に可愛いあなたがセックスされるところを横で見ていたら、すごく興奮するんじゃないのかとも思ったわ。いや、もっといいことがある。男を2人連れてくるの。そうすれば、女の姿になったあなたと私が並んで、男たちにされるってことも体験できる・・・」

ダニーの噴射を感じた。その最初の噴射で、私は火星まで吹っ飛ばされるのではないかと思った。すごい噴射力。続く6回の噴射も、最初と同じくらい強烈だった。それに、私自身、自分の意識の流れを熱を込めて語っていたことで、失神しそうになるほど高まっていた。

自分でも不思議に感じたが、一番興奮したのは、私が愛するダニーがTガールになって、他の男に抱かれているのを見ていることや、私と並んでそれぞれの男に抱かれていることだった。それを思い浮かべただけでいきそうになっていた。限界を超えてオルガスムに達するきっかけとして、ダニーの噴射だけで充分だった。それを受けただけで、一気に舞い上がり、そして長い、長い降下に続く・・・

それは、体の奥深いところから始った。それが津波のような力と速度で全身へと広がる。見えるのは、目の奥でいくつもの星が強く輝いては消える様子だけ。聞こえるのは、脳にどっと押し寄せる血液が流れる轟音だけ。感じるのは、私の全身を飲み込み、怒涛のように洗い流すエクスタシーの大波。それが私の中から外へと叩きつけるように押し寄せてくる。それにダニーの大きなペニスも感じる。熱く溶けた溶岩を私のあそこの奥へと噴出している。それまでの人生で、私は、自由奔放にセックスを楽しんできたし、何人も男を経験してきていた。だが、この瞬間ほど、充実し、力を感じたことはなかった。

もし誰かがダニーと私がベッドで抱き合って寝ているところを見たなら、誰でも、2人が凍え死にしかかっていると思うことだろう。すでにオルガスムの波が消えてからずいぶん経っているにもかかわらず、依然として2人ともがくがくと震えていたからだ。それほど強烈な快感だった。愛するダニーの出した体液が私の中から染み出てきて、両太ももを伝い流れるのを感じた。まるであそこから何リットルも溢れてきているような感覚。

私は、小さなテストを行い、それに対して肯定的な反応を引き出したのだ。「肯定的」? いや、「計測不可能なほど、とてつもない」と言った方が当たっている? ダニーがこのテストに合格なのか不合格なのかは、テストの「問題」を私自身がどう評価するかにかかっていた。

否定できないことが1つあるのは確かだった。私もダニーも、たった今、これまでで味わったことがないような強烈なセックスを経験したということである。私の言葉による誘惑にダニーが反応するだろうとは予想がついていた。予想していなかったのは、私自身の反応だった。体をつなげ、夫の魅力的なエメラルド色の瞳を見つめて動いていたとき、私は、自分の中にあるとは思ってもみなかった別のセクシュアリティが自分の中に存在していたことに気づいたのである。このような性の世界に興奮する自分。もちろん、そのような性の世界に思ってもみなかった高いレベルの快感があることを私に教えてくれたのは、これまで付き合ってきた男たちの中、ダニーだけということになるだろう。彼自身がその快感に喘ぐ姿を私に見せて教えてくれた。その世界を探る機会を与えてくれたことで、私は、ダニーと一緒になって本当に良かったと感謝した。私は、自分の出した問題に答えを出したと悟って、興奮にお腹の辺りが震えだすのを感じていた。しかも「計測不可能なほど、とてつもない」正解の答えを自分は出したのだ。

***

2人で、あわてて床に脱ぎ散らかしていた服を拾い集め、必要に応じて、汚れ物を洗濯籠に放り入れた。ダニーはベッドのシーツを交換するのも手伝ってくれた。このことも、私たちにとって、初めてのことだった。2人とも、すべて一緒にしたい気持ちになっていたのである。彼も私も、まるで、生まれて初めてセックスを体験した10代の若者のようだった。あの時、私は、これ以上幸せな気持ちには多分なれないかもしれないとすら感じていた。

2人で一緒にシャワーを浴びた。互いの体に石鹸をつけて流し合う。シャワーを浴びながら、優しく心のこもったキスと愛撫を繰り返した。体の汚れを落とし、タオルで拭いた後、寝室に戻って服を着た。すでに夜の9時過ぎで、2人とも、今夜は、当初の予定と違って、これから外に出かけることはしないと分かっていた。2人同時に大きなベッドの方へ視線を向け、2人とも、何も言わずとも、今夜の大半をどこで過ごすことになるか分かってることを確認しあった。少なくとも、軽く食事をしてから、その後はずっとこのベッドの上で過ごすことになるだろう。私たちは、それに相応しい服を着ることにしよう。

私たちの寝室には、1つの壁面の沿って、長いドレッサーが設置してある。2人で使っているドレッサーである。一方はダニーの、別方向の部分は私のものをしまってあった。ダニーは、彼の方に進み、一番上の引出しを開け、新しいブリーフを取り出した。私はその彼の手を押さえた。全裸のまま、夫と引き出しの間に体を割り入れ、彼を制止する。口元に軽く笑みを浮かべながら、太ももの後ろのところで引き出しを押して、元通り閉じた。それから彼の手首を握って、左の方、私の物をしまってあるドレッサーの方へと連れた。私の方のドレッサーの一番上の引き出しを開け、中を見て、薄地のナイロン製のビキニパンティを取り出した。その腰ゴムのところに指を2本挿し入れ、夫の前に広げて見せた。意味ありげに片眉を上げて、微笑みかける。サファイア色の私の瞳は、彼を挑発する表情をしていたことだろう。

「楽しみに浸らせて・・・」 私は甘える声で頼んだ。

私たちは交差点に立っていた。私たち2人の関係はどちらの道を進むこともできる。今まで2人で歩いてきた道をそのまま進むか、あるいはまったく新しい方向へ進むか。私自身は進みたい道があったが、それでなければならないとは思っていなかった。選択は彼に委ねていた。ダニーは何か決めかねているような目の表情をしていた。おそらくちょっと不安の表情も見えていただろう。私は、微笑で彼に応えた。私自身はもう心が定まり、落ち着いて、爽やかになっているのだと彼に伝わるようにオーラを発散して見せた。実際には、そのような心の状態ではなかったが。もっと言えば、私も彼と同じく、心は定まらず、不安を感じていたのだが。

私が愛する人は、差し出されたパンティを受け取った。上半身を屈め、片脚を入れ、次にもう一方の脚も入れる。それから、ゆっくりと注意深くパンティを、ふくらはぎ、そして両膝の上へと引き上げた。太ももの途中のところで一旦とまる。彼の「持ち物」を腿の間に優しく収めるためである。もし私の推測が正しければ、彼のそれは、すぐにも再び息を吹き返し跳ね上がるだろう。その時までは、彼には、いや彼女には、滑らかな恥丘をしていて欲しいと私は思った。持ち物を収める仕事が終わった後、私も手伝って、パンティの腰ゴムを手繰り上げた。きゅっと引き締まった彼のお尻の肉を、薄地の生地がぴったりと包む。透けて見える生地を通して見ても、ダニーには立派な「クリトリス」や睾丸があるようには見えなかった。女性らしく柔らかく盛り上がった恥丘しかないように見えた。

私自身は薄地の赤いナイロン・レース(参考)のペニョワール(参考)を選び、それを着た。それからダニーの両手首を掴んで、寝室の中にある私の大きなウオークイン・クローゼットへと導いた。私はペニョワールとマッチした床につくほどの丈の薄地の赤いナイロン・レースのドレッシング・ガウンをまとい、それから赤のマラボウ(参考)で縁取られたミュール(参考)に足を入れた。透明なルーサイト(アクリル樹脂)の13センチのスティレット・ヒール(参考)がついている。普通なら、ダニーと私は同じくらいの身長だ。だがこのヒールを履くと、私の方が夫を見下ろす形になり、2人の関係を導く私に相応しい雰囲気を与えてくれたのだった。

私は腿の中ほどまでの丈の黒シルクのキモノを選び、何も言わずダニーに広げて向けた。彼も何も言わずに私の意図を汲み取り、背を向け、私に袖に手を入れさせた。滑らかな生地で彼の肩を包んだあと、私の方を向かせた。前身ごろを閉じ、帯をきゅっと結び、キモノが崩れないようにする。それから私は彼の前に進み出て、唇に軽くキスをした。

「ありがとう、ダニエル」 甘い官能的な声で言った。 「さて、一緒にキッチンに行きましょう? 私たち2人とも少しお腹がすいていると思うから」

私は「彼女」の手を取り、寝室の出口のドアに向かった。寝室、廊下、リビング・ダイニングの硬板の床をスティレット・ヒールのコツコツとした音を鳴らし進む。そしてキッチンのタイル・フロアに対しても同じく。

私は「ダニエル」に対して立ち止まる機会も、口を挟む機会も一切与えなかった。それに「彼女」の方も、2人の関係に関して私が権威を持ち、取り仕切る立場にいるという点を受け入れ、口を挟もうとはしなかった。彼は私がダニエルと女性の名前で呼んでも反対しなかった。私は、自分が支配的な存在になったのを感じ、気分が高揚した。まるで身長が3メートルになったかのよう。

2人で、チェダー・チーズとジャック・チーズのスライス、クラッカー、そしてぶどうとイチゴの盛り合わせを作った。シャブリ・ワインを1本開け、ワイン・グラスを2つ用意した。そのすべてをトレーに乗せ、ダニエルに運ばせて、二人で寝室に戻った。私は胸の中で心臓がドキドキと音を立てていたのが彼女に聞こえていないようにと切に願った。

私と彼は、小さいけれども重要な1歩を踏み出したのである。この旅がいつまで続くのか、そしてどこにたどり着くのかはまったく分からない。でも、進むに連れて、いくつかルールを決めていかなければならないだろうとは思っていた。

私は、感覚的に、この段階には危険性が潜んでいると思っていた。一つでも道を誤ると、つまり一言でも言葉を誤ったり、文脈から外れたりすると、台無しになってしまうだろう。だが、そのような危険性にもかかわらず、私には、楽天的な気持ちを新たに、このまったく未踏の未来を楽しみにしている部分があった。私たち2人にとっての未来、2人の関係にとっての未来、そして私個人にとっての未来である。彼女のエメラルド色の瞳には、まだ不確かな気配が浮かんでいた。恐怖感と言えるかもしれない表情。だがそれは私の気のせいかもしれない。それに、その瞳には希望の光も浮かんでいたようにも思える。そのいずれなのか、その答えは時が出してくれるのを待つしかない。


つづく
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