「心が望むものをすべて」 第4章 (1/3) Whatever Your Heart Desires Ch. 04 by AngelCherysse 第3章

その長い休暇の間、私と彼女はずっと夢の国で過した。一緒に買い物をしたし食事をした。飲んだりダンスをしに出かけた。私と彼女の女2人だけで。信じられるだろうか?  ほんとに、なんて盛りだくさんなのだろう。セックスもたくさんした。ほんとに何回も。速く、激しい、狂ったようなセックス。ゆっくりとした、優しい、官能的なセックス。家の中、ありとあらゆる場所でセックスをした。車のボンネットの上でもしたし、ブティックの試着室の中でもした。真面目腐った人たちの声が聞こえた。

「あの2人、やってるの? あの時の音? 愛し合ってると言うべき? 責任ある大人同士のこととして?」 

あなたたち、分かってくださいね? すべて、愛なの。毎日、どの瞬間でも、私たちが2人ですることはすべて愛なのよ。5年前とほとんど同じく、私はダニーと恋に落ちたと言ってよかった。改めて最初からもう一度、恋に落ちたようなもの。今度はダニエルと。奇跡について話しをしたい?

私は、しぶしぶではあったけれど、木曜日の夕方3時間ほど、ダニエルにセリーヌのところに行く時間を与えた。彼女には、可能な限り、理想的な女性になる方法を覚えて欲しかった。ダニエルが、この、新しく、圧倒的にエロティックでもある生活に、丸一日中、浸る。そう思うだけで、私は濡れてしまうのだった。そんな状態がしょっちゅう。

いや、濡れてしまうとか言う前に、そもそも、私はいつも濡れていたと言ってよかった。いつも「疼いている」状態。はしたなく自分で激しく擦り続けたい衝動。あの、ダニエルの最初のレッスン結果。それを目にしたときと言ったら。ダニエルがすべて自分で行ったと自慢していた、あのメイキャップとヘア・スタイリング! それを見たとき、私は、彼女を習いに行かせて、そして彼女の先生がセリーヌで、本当に良かったと思った。ダニエルは、声までも前より官能的で、セクシーに変わった。明らかに、セリーヌは発声訓練も行ったのだろう。

でも木曜のレッスンの後は、月曜が来るまでずっと、私は彼女を独り占めにした。

月曜の朝、ダニーは私をベッドから蹴落とさなければならなかった。私に仕事へ出る準備をさせるため。私はずっと彼女にくっついていたいのに! 

私とダニーは、双方、妥協することにした。つまり、彼女も起きて、私と一緒にシャワーを浴びること。熱いシャワーを浴びながら、彼女は私へ「行ってらっしゃい」のエッチをしてくれた。それをしてもらったら、眠気覚ましの朝のコーヒーはほとんど余分。

その後、2人で着替えをした。この日も彼女にコルセットをつけてあげた。コルセットの紐を締めていくのがとても楽しい。彼女は、私の希望に応じて、ストッキングを履き、靴はハイヒールのマラボウ・ミュール(参考)を履いた。それから、裾の長い、流れるようなフォームのペニョワール(参考)と部屋着を羽織る。一方の私は、ブラウスと「生真面目スタイルのスーツ」を着て、ビジネス用のパンプスを履く。このような役割の逆転には、何かすごくエロティックなものが感じられた。毎朝セクシーな「妻」に見送られて仕事に行く私。彼女の方は、まるで生まれたときからそうしていたかのように、この新しい役割に順応していた。本当に、ずっと日曜日だったらいいのに。

「今日は何をして過すつもりかな、可愛い奥さま?」 明るい声で訊いてみた。

彼女は、私の言葉で自分の新しい立場を認識たのか、嬉しそうに微笑んだ。

「午前中に仕上げなければならない記事が1本あるの。その後の午後はセリーヌのところに行くわ」

よく事情が理解できず眉をひそめる私を見て、彼女はクククと笑い、両腕を広げて私の首に抱きついた。体を押しつけ、キスをしてくる。

「バカね。今日は月曜日。サロンは休み。セリーヌのレッスンは、お昼から始って、多分、午後いっぱいは続くと思う」

私は、このチャンスに飛びついた。「だったら、それが終わった後、一緒に夕食を食べに出ない? 後で電話して、時間を調節しましょう」

ダニーはすぐにその提案に同意した。私はにっこり笑って彼女を両腕で抱いた。

「ねえ、訊きたいことがあるの。あなたは、こうなったこと、オーケーよね? あんまり急なことだったから・・・それに、信じられないくらいセクシーに変わったし・・・」

ダニーは頬を赤らめた。口元が少しひねり上がった。躊躇いがちの笑みを見せる。

「圧倒的だし、ある意味、怖いところもある。ああ確かに、こうなったことに僕はオーケーだよ。君の言い方を借りれば・・・」 そう言って、大きな笑みを見せた。

「・・・君がこういうことを理解してくれるとは、僕は全然、想像していなかった。ましてや、こんなに夢中になってくれるなんて。君は僕に、真剣に考えてみるようにと言ってたけど、確かにそうするつもりだよ。君のためだけにそうしたい。ただ、一番の心配は、僕たちこれからどうなるのだろうということなんだが」

私は微笑んで、彼女の頬を優しく撫でた。

「あなたは、そんなこと全然心配しなくていいの。あなたが気を使わなければならないのは1つだけ。私のためにゴージャスな女性に変わること。それだけなの。他の事は全部、私が受け持つから」

私は彼女の唇にやさしくキスをした。そのキスで、私の言いたいことを彼女にしっかりと念を押した。

私は、くるりと振り向いて、玄関を出た。胸を張って私の車へと歩きながら、私は少し苦笑いをしていた。私のためだけに、そうしたい? ホント? ダニー? あなたは自分自身がそうなるのをどれだけ求めているか、私に知られたくないんじゃない? 可愛いあばずれさん。あなたが本当に心からそれを認めてくれたら、その時こそ私は本気ですべてのことを受け持つことにするわ。あなたのために。

***

夕方5時。ダニーの携帯に電話をかけた。彼女は、たった今、セリーヌとのレッスンが終わったところだと言った。ダニーには、オマリーのお店に飲みに来るように誘った。そこで軽く飲みながら、どこでディナーを食べるか決めることにしよう、と。ダニーは了解した。彼女は、私が、ディナーを食べるのをどの店にするつもりか分からなかったと言っていた。だから、とりあえず「セクシーで、繊細さに満ちた」スタイルに決めてみたと言う。そうすれば私が喜ぶと思ってと。私は、早く彼女を見てみたくて待ちきれないと伝えた。

オマリーの店は、アイリッシュ・パブで、私の職場からそう遠くはない。私たちお気に入りの、仕事帰りに立ち寄る飲み屋(watering hole)だ。時には、同僚たちと一緒にランチを食べに行く場所でもある。

私たちが席取ったブースの高い背もたれの向こう、私の愛する人がドアを入ってくるのが見えた。5時30分ごろ。しとやかで女性的な全身から、官能的な色気が染み出てくるよう。照明の変化に目を慣れさせるためか、立ち止まっている。私は席から立ち上がり、彼女を迎えに近づいた。

軽く抱き合い、互いに頬にキスをした。その美しさを堪能するように、一度引き下がって、彼女の全身を頭からつま先まで見た後、彼女のスタイルに対する私の気持ちを伝えた。本当に彼女の言葉通り、「セクシーで、繊細さに満ちた」スタイルそのもの! 

着ているスーツは新しく買ったスーツの1つ。黒のピン・ストライプ(参考)柄のスーツ。その体にぴったり合ったジャケットは、幅広の折り襟で、腰にかけてはぺプラム(参考)になっている。腰にスリムに密着したタイト・スカートは、太ももの中間までの丈。形の良い彼女の脚は、薄地の黒ストッキングに包まれ、その先は、ヒール高12センチの黒エナメルのパンプス。黒のクレープ(参考)のブラウスは、ジャケットの折り襟のVの字に合わせてボタンを外してある。胸の半分辺りまで外しているので、彼女の胸の深い谷間があらわになっている。髪は、美容室から出てきたばかりのよう。この前の水曜日のように、豊かに、ふんわりとセットされていた。化粧も依然として大胆だったが、この5日間の化粧ほどは劇的ではない。彼女の容姿は、セクシーで若い秘書といった雰囲気だった。職場に相応しいというよりは、上司の目を楽しませる目的で装った秘書のそれではあるが。それにしても、まさに「セクシーで、繊細さに満ちたもの」という表現にぴったりの姿!

私はダニーの手を引いて、ブースに戻った。背丈が高いオーク製の背もたれを回って、ブースの前に来る。突然、ダニーは身を強張らせて、立ち止まった。

「ジャッキー? ベス? グウェン? ご紹介するわ。こちらがダニエル。私の生涯を通しての愛する人です」 女の子のような甘い声で発表した。

私はダニーの手を握ったまま、しっかりと離さなかった。彼女が逃げないようにするため。いや、彼女が気絶して倒れないようにするためだったかも知れない。もちろん、紹介は本当のところは不要だった。夫のダニーは、私の同僚のエージェントであるジャッキーとベスには前に会っていたし、私たちの秘書のグウェンとも、職場の様々なパーティや行事で顔をあわせていたから。

何人かの人々とグループで仕事をしていると、ある程度、長期間一緒に働いていれば、誰には秘密を漏らせるが、誰には漏らせないかが分かるようになるものだ。私たちのエージェンシーでは、この3人が、秘密を打ち明けられる仲間だった。彼女たちは、個人的なことについて、どんなことでも一緒に陰謀を企むことができる仲間だった。

私とこの3人は、あれこれのパブに出かけて、仕事帰りの「ハッピー・アワー」(参考)を飲んで過してきた間柄であるのはもちろん、あちこちのナイトクラブに出かけて、「オトコ漁り」(参考)をしてきた間柄でもある。彼女たち3人のオトコ関係については、すごく個人的で詳しいところまで私は知っていた。相手は何をしている誰それで、彼女は、いつ、どこで、何回、そのオトコとセックスしてきたかというところまで。

そのような間柄なので、私の人生の愛に関する部分でのこの大きな変化について、職場についてすぐに彼女たちに教えないなど、私には考えられなかった。彼女たちなら、事実を教えても「クール」に扱ってくれると信頼できる。彼女たちに、私とダニーの2人と一緒に飲みに行こうと誘ったとき、暴れ馬でも彼女たちを近づけないで置くことなどできないほど大騒ぎになった。

「クール」とは言ったが、これは控え目すぎる言い方だった。3人揃って「オー・マイ・ゴッド!」と叫んだ後、3人ともブースから飛び出て、ダニーのことを頭のてっぺんからつま先までじろじろと見つめた。親愛をこめたハグや熱狂的な賛辞の言葉が延々と続く。どんなに傷つき、壊れやすい自我の持ち主でも、これだけ熱狂されたら、心が癒されることだろう。

それもようやく落ち着き、私たちは席に座りなおした。ダニーはグウェンと私の間に、その向かい側にはジャッキーとベスが座った。そして飲み物を飲み始める。2杯目が回った頃には、愛するダニーは、少しずつ、私たち女の子の1人のように変わっていた。

当然のことだが、ダニエル自身のことと「カミング・アウト」の話題が会話を占めた。質問が出るだろうとは思っていたが、案の定、山ほどの質問。その質問のどれ1つも、私が促したわけではない。

私の同僚たちは、当然、この「女の子になったばかりの初心者」である彼女に関して、特に、彼女の感情的な側面に興味を持った。ではあれ、これが微妙な問題であることも察してくれており、十分に気を使ってくれていたのも分かった。ダニーは、自分自身の信用のため、さらに私の声に出さない応援もあってか、すべてに気兼ねなく率直に答えた。

でも、彼女は、ある種の質問に対しては困っていたように見えた。特に、彼女が男性に対して心を惹かれることがあるかどうかと言った質問がそれである。大事なことは、その問題や、それに対する彼女自身の感情的反応に、彼女が自分で立ち向かうことだった。これは、もし「ダニエル」が1つの人格としてこれから成長していくことになるとすれば、当然、考えなければならない問題なのである。

私はダニエルと、鼻先のパウダーを直すためトイレに行った。2人だけで行けるようにした。2人だけになったら彼女は何か私に言うことがあるはずと思っていたし、彼女が言うことも、はっきり予想がついていた。

ダニエルは私の予想を裏切らなかった。

「一体、どうして私にこんなことができるの? 恥ずかしくて死にそうだったわ!」 堰を切ったように、いきなり言い出す。

「ダニー? あなたを辱める意図はまったくないわ。今は、前にも言ったことを繰り返すことしかできないわ。つまり、あなたには何も恥じるところはないということ。永遠にクローゼットの中に隠れているわけにはいかないでしょう? 外に出て、人々に会って、人々にあなたと会わせなければ。美容サロンでは、レクシともセリーヌとも、他の女の子たちとも大丈夫だったじゃない? それに先週、私と行ったクラブでも、そこにいた人たちとも、何も困ったことにはならなかったでしょう?」

「クラブは違うわ。あそこにいた人は皆、知らない人ばかりだったから。でも、今日のあの3人は、私たちが付き合い始めてからずっと、私のことを知っていた人たちなのよ」

「まさにそこが大事なところなの。あの3人は、確かにあなたを知っているわ。知的で、ユーモアがあり、心が温かく、愛情豊かで、思慮深い人間としてね。あなたは依然として、そういう人物であることには変わりないわ。ただ、それを包む『外見』が、以前より少しだけ魅力的になっただけ。私の友達たちは、それでオーケーなのよ。その点は、レクシもセリーヌも同じ。みんな、ずっと私のこと羨ましく思ってきてくれてたわ。あなたという、私が手にしている愛する人のことを、彼女たちは、とてもうらやましく思ってきてくれてたの。それに、さっきの様子からすると、今は、以前に増して、そう思っているんじゃないかしら?」


つづく
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