「心が望むものをすべて」 第4章 (2/3) (1/3)

「でも、前もって、教えてくれても良かったのに。そうしたら、精神的に準備ができたかもしれないのに」

「教えようと思えばできたわ。・・・でも、そうしたら、ここに来てくれた?」

彼女は鏡の中、私の顔をじっと見つめた。私たちは口紅を塗りなおしていた。

「ああ・・・今度、君の夫として顔を出すとしたら、どんな顔をしていけばいいんだろう?」 溜息混じりに言う。

私は彼女を抱き寄せ、小さな女の子のするような笑みを見せた。

「どうして? 私があなたにそういうことして欲しいと思っているの?」

ダニーは、諦めたように、再び溜息をついた。

「もっと私を驚かすようなことを用意しているの?」

私はちょっと肩をすくめて見せ、にんまりとした笑顔になった。

「夜はまだまだ先があるし、私たちにもまだまだ先があるの」

ブースに戻るとすぐと言ってよいほどに、会話の話題は食事のことに変わった。5人ともお腹がぐうぐう鳴っていて、それは否定しようがなかったから。誰かが、ステーキ・オン・ア・スティック(参考)とポテト・スキン(参考)を食べたいと言った。たちまち、私たちは全員でフライデーズ(参考)に向かうことになった。

ジャッキーとベスは私の車に、ダニエルはグウェンの車に分乗した。私と一緒のジャッキーとベスは、私の「新妻」のことについて、一時たりとも口を閉ざすことがなかった。2人に限ったわけではないが、彼女たちは、いつもダニーはとても魅力的だと思っていたらしい。そして、今、この2人は、彼というか彼女が、すごくゴージャスな女性に変身しているのを見て、大きなショックを受け、のショックから立ち直れないでいると言っている。

2人の話題は、細やかに気を使ってくれながらも、私たちの性生活の話題の周辺を巡っていた。私は、この先、ダニエルにどのような変化が待ち構えているか分からないけど、ともかく、近い将来に関しては、今のまま変わらないだろうとだけ言っておいた。これまでも、ダニエルの将来についての私の見込みは間違ったことがなかった。だから、私は絶対の自信があった。ともかく、その時点では、2人とも、我を忘れるほど、私のことが羨ましくて仕方なさそうにしていたことだけは確か。

私たち3人が先にフライデーズに着いた。幸い、すぐにテーブルを取ることができた。このようなことは滅多にないことである。ましてや、今日はフットボール・シーズンの月曜の夜。だから、すぐにテーブルにつけたのは運が良いと言ってよかった。ダニーとグウェンは10分ほど遅れて到着した。ダニーは私の隣に座り、グウェンはジャッキーとベスの間に座った。会話は、オマリーの店で中断したところから再開された。

私は、すぐに、何か変な様子に気がついた。私は自分の直感をいつも信頼している。そして、その私の直感が、今、重大な警戒信号を鳴らしているのだ。あの2人のどちらかの話し方が問題だというわけではなかったし、互いに向けあう目つきが問題だというわけでもない。いや、むしろ、2人が注意深く視線を避けあっているところが、妙な雰囲気をあらわにしている感じだった。敵対心ではない。もしそうだったら、私は、2人の素振りからそれを読み取っていたことだろう。それとは違う何かだった。

突然、怒りに毛が逆立つのを感じた(参考)。私はダニーのことを隅から隅まで知っている。これまで、「彼」が私に隠れて浮気をすることなど、一度も心配したことがなかった。彼は私に身も心も夢中になってくれていたから。同じように、私は「彼女」となったダニーも、同じ理由で、道を外すなど思ってもいなかった。でも、「彼女」は、新しく女の子の世界に入ってきたばかりだし、元々、他人に合わせる性格をしている。一方のグウェンについても私はよく知っている。彼女は男を次々に手玉に取るタイプ。新しい肉の味を求めて男たちを捕まえていく、セックスの略奪者。これまでも、彼女は、心変わりをする以上の頻度でカラダの相手を変えてきたように思うし、何より新しいものを試してみるのが好きなタイプだ。この店に来るまでの間に、どっちがどっちに火遊びを持ちかけたか、天才科学者でなくても、そんなことは簡単に分かる。

私は、ダニーの頭に穴が開くかと思うほど、じっと見つめた。彼女が私の視線に気づき、私と目を合わせるのに、時間はかからなかった。ダニーと私は、目をあわすだけで相手が何を考えているか理解できる稀な特質を共有している。彼女は、簡単に、私の無言の質問を読み取ってくれた。彼女は、私がグウェンたちに対してどんな気持ちでいるか、充分、分かってくれていた。

ダニーは、ほんのちょっとだけ笑みを見せた。その表情だけで私の疑念は裏付けられたといえる。だがそれに続いてダニーは、ほとんど知覚できないほど軽く頭を振って見せた。それによって、彼女がグウェンの申し出を丁寧に断ったことが分かった。最後に、ダニーの脚が私の脚に当てられ、手が私の太ももの内側を優しく擦った。それによって、ダニーが私への忠誠を守ってくれたことも分かった。

ああ、私は本当にダニーのことを愛している! 私は心のノートに書きとめた。ダニーが一緒にいるときは、グウェンのことをしっかり見張っておかなければいけない、と。

店の中、熱狂的なフットボール・ファンが、次第に、騒々しくなってきた。さらに2杯ずつみんなで飲んだ後は、私たちも同じく大騒ぎをしていた。そんな私たちにエスコート役を買って出る男たちが現れても、全然、驚かない。男性が5人、私たちのところに来て、丁寧に同席を求めてきた。5人のそれぞれが、私たちが飲んでいたもののお代わりをおごってくれた。

私も、私の女友達も、こういう状況には慣れきっている。皆で一緒に出かけると、しょっちゅうあること。でも、ダニーと一緒にいる時にこういう状況になったのは初めてだった。しかも、気がつくと、今は、彼女自身にも熱烈に付き添いたがっている男がくっついているではないか!

私にくっついた男は、背が高く、逞しい筋肉質の体をした金髪。名前はロン・ランドールという男だった。まさに男の肉体そのものといった体格。彼は地元のヘルス・クラブに所属する個人トレーナーだった(これは嬉しい驚き!)。私は結婚指輪を隠そうとはしなかったが、彼も、それを見ても引き下がるわけではなかった。

一方、ダニーに取り付いて彼女を悩ませていた男はというと、テリー・ケネディ。彼も金髪でロンと同じクラブで同じ仕事についていた。ふむふむ。陽気なアイルランド系の若者が、美しいアイルランド娘を探しにやって来たってところかしら。もし彼が本当のことを知ったら・・・私の3人の友達にもそれぞれ同じように男がくっついていた。

ちょっと浮かれた浮気心も垣間見える楽しい時間。みんなで、フットボールのこと、映画のこと、そして、もちろん(私たち4人がエージェントとなっている)不動産業のことなどをおしゃべりした。もし、私が、ロンは魅力的な男ではないと言ったなら、それは嘘になるだろうし、別の状況だったら、おそらく私は二の足を踏まずに彼をゲットしようとしたことだろう。

ふとダニーとテリーの2人が目に入った・・・一瞬、以前、ダニーとセックスしながら語った私の妄想が頭をよぎった。つまり、誰か男たちが現れて、私とダニーの2人が並んで彼らとセックスする妄想。・・・私はあそこが濡れてくるのを感じた。

と同時に、私の中の別の部分から、ピリピリした緊張感が高まってくるのを感じた。そのような感覚は、それまで味わったことがない。だけど、その源というか原因は察知できていた。ベスが、私に視線を向け、それからダニーの方へ視線を向けて見せた。彼女も感じていたのね! 

さて問題が出てきたことになる。もはやロンといちゃついている場合ではなかった。さらに、その問題に加えて、もうひとつ、ベスとジャッキーは私の車に乗ってここに来たという事情も考えなければいけない。2人の車は会社に止めてある。グウェンの車はここの駐車場にあるが、どうやら今の彼女は本日のおすすめ料理を見つけたようだし、ダニーを乗せて戻る可能性はなさそうだ。いや、訂正:いかなる場合でも、グウェンはダニーと2人だけで車に乗ることはナシとしなければ。

ジャッキーとベスは2人とも結婚している。だが、私と同じように、時々、わき道に逸れて他の男と楽しんできた。彼女たちの意向も聞かなくてはならない。私は口には出さずに、目と目のやり取りで彼女たちの意図を探り、多数決を取った。ジャッキーとベスは2人とも小さく頭を横に振った。みんなは1人のために、1人はみんなのために、ということで決定。グウェンの方をちらりと見た。彼女は相手の男のこと以外、何も考えていない様子。まあいいわ、ほとんどみんなは1人のためにと、そういうことにしよう。

運が良いことに、フットボールの試合は大勝になりそうだった。それを口実に利用する。第4クォーターが始るとすぐ、私たちは帰ることにすると申し出た。ロンの目にも、他の3人の男たちの目にも、落胆の表情が浮かんだのは、見間違いようがない。運の良いナンバー5の彼のことは話しは別だけど。

特に理由はないが、営業をする者がいつもそうするように、私はロンに名刺を渡した。

「もし、不動産のことで何かあったら、私に電話をくださいね」

ロンは、口元を少しだけ吊り上げた。

「多分そうするよ」

***

私はジャッキーとベスを職場まで送り、車から降ろした。すぐに走り去ったりはせず、2人がしっかりと車を発進させ、事故を起こさず走り去っていくまで見届けた。その後、まっすぐ家に戻った。

下着がびしょびしょになっていた。ロンとセクシーないちゃつきをしたことも原因だが、もうひとつ、(ロンとテリー? あるいはロンと誰か他の男? といった)2人の男と、私とダニーの2人が一緒にセックスをするという2X2の妄想が時おり頭をかすめていたのも、その原因。

でも、そのような妄想を現実化するには、ダニーと私の間の信頼関係をもっと確固としたものにしなくてはならない。そして、そのためには、2人でしなければならないことがいろいろあるはずだ。

家に着くと、ダニーの車はすでにガレージに止まっていた。家は暗かったが、寝室からは明かりが漏れている。ふと、私がロンといちゃついていたときに彼女が見せた、言葉には出なかったが、熱のこもった反応のことを思い出した。この件では、2人の関係について、多少、修復作業が必要になるかもしれない。

「ねえ、私ちょっとだけ言っておきたいことが・・・」

バタン!

背中を寝室の壁に強く押し付けられた。私の体内から呼気が出つきてしまうほどの強さで押し付けられる。ダニーの唇が私の唇に襲い掛かった。彼女のオブセッション(参考)の香りが私の感覚を占領する。本能的に、両腕を彼女の首の周りに巻きつけ、両脚で彼女の腰を包み込んだ。

彼女は、20センチのクリトリスを私のあそこに突き刺した。それを受けて、再び、私の体内からありったけの呼気が吐き出てしまう。彼女の逞しいクリトリスがハンマーになったように、私を壁に張り付け、釘を打ち込んでくる。私たちが一緒になってからこれまで、彼女が、こんなに強引に、情熱的に私を奪ったのは初めてだった。

1分もしないうちに、最初のオルガスムが私の中で爆発した。それから5分もしない内に、第2、第3、そして第4のオルガスムに襲われた。いつの時点で、私がベッドの上、仰向けで体を丸められ、激しく貫かれていたのか、分からない。それに、いつの時点で、私が彼女の上に乗り、彼女のクリトリスの上で踊っていたのかも分からない。いつしか、単発的な快感の爆発の一つ一つが溶け合って、ひとつの大きな流れに合体していた。熱く融けた溶岩の川。その灼熱の溶岩は、夜じゅう燃え続け、私の魂を熱く焦がした。その間ずっと彼女は一言も言葉を発しなかった。

真夜中から明け方に近くなっていた。ようやく、彼女が動きを止めた。・・・でも、一番、動きを止めて欲しくないときに彼女は動きを止めたのである。

その夜、何度、彼女に強烈なクライマックスを味わわされたか知れない。その強烈なクライマックスが、再び私に迫っていたときだった。激しく乱され、絶頂のふちに今にも達しようとしていた。その瞬間である。彼女のクリトリスが、私のあそこから今にも抜け落ちそうなところまで引き抜かれたのだった。まさにもう少しという最悪の瞬間に与えられた意地悪。私は悲鳴を上げて、不満を訴えた。ダニーは、穏やかな目つきで私を見つめていた。

「さっき、言っておきたいことがあるって言ったけど、何?」

私は、純粋に悪意に満ちた顔で彼女をにらみつけた。

「もう忘れて!」

声にならない声で言いながら、彼女のお尻に両手の爪を立て、思いっきり引っかいた。そして彼女のクリトリスを思いっきり自分の割れ目に引き寄せる。それだけで十分だった。再び強烈なオルガスムを感じ、私は宙を舞い降りた。底なしの宙をいつまでも・・・


つづく
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