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Better this way 「今のままがいいのに」

「もう、何とかしてよ、アレックス。そんな大したことじゃないでしょ?」

「大したことじゃないって? マジで言ってんの? どうしてそんなことが言えるんだろう? ボクは変態女みたいになってるんだよ!」

「それってそんなにイヤなこと? あんた、とんでもない差別主義者なのね」

「ボクは差別主義者なんかじゃないよ。女になりたくないって言っただけで、差別主義者にならないだろ」

「その気になれば、あんたを変えて、今のその姿を好きにすることもできるのよ。また催眠状態に戻して、アレクシスを普通の人格にすることができるの。そうなれば、そんなに不幸に感じなくなるんじゃない? あんた、この1年、ずっとアレクシスになっていたんだから」

「やめてくれ。本当に! またボクを精神的に犯すなんて、何でそんなことを言えるのか信じられないよ!」

「自分で求めたことでしょ。忘れたの?」

「姉さんは、ボクをだましたんだ。分かってるはずだよね? 催眠術が本物だって、ボクに分かるはずがなかったんだ。それに、仮に、姉さんの言うことが本当だったとしても、催眠術でこんな姿にされるなんて、ボクに分かるはずがなかったじゃないか」

「あたしのせいじゃないわ。あんたが心を閉ざしていたんじゃないの。それにね、あんた、今の格好の方がずっとクールだわ。今はお友達がいっぱいいるじゃない? それって、昔のあんたみたいな超オタクからしたら、180度の大変化よ。それに、あんた、前は、学校のあの逞しい男たちのことばっかり話していたけど、あの人たち、今はあんたに夢中になってるわ」

「だって、あいつらボクと……分かるだろ?……ボクとやりたがってるからだよ!」

「ますます、あんた、エロ可愛い女が適してるとしか考えられない」

「まさか、ボクを元通りになんかしないだろ? そうだよね?」

「ちょっといい? あんたを元に戻す条件はただひとつ。あと何ヶ月か、あたしの妹になっていること。そして、その状態を本気で楽しもうとすること。それだけよ。それで、今年の終わりになってもまだ元に戻りたいというなら、その時は、条件付けを全部解除して、元の普通の状態に戻してあげるわ。そうなったら、可愛い服を着たいと思ったり、男たちと遊び回りたいと思ったりしなくなるでしょうね。また、あのバカみたいなキモいオタクに戻ると。それでいい?」

「それこそボクが望んでいることだよ。いいよ。何でも。もうすでに1年はこんな調子で生きてきたんだし。あと数か月なんか、どうってことないよ」

「オーケー。この話ししてる間、あんたずっと素っ裸でいたってこと、早く話すべきだったかもしれないわね。すぐに身支度を整えて。出かけるわよ」

「えー?! ヤダ! あたしの服、どこ?」

「すごく面白いことがおきそう!」




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