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Devious「奸智」
「実に素晴らしい。彼は気がついたかな?」
「いいえ、ご主人様。お言いつけの通り、彼は以前の人生について何ひとつ覚えていません。現在は、朦朧状態ですが、もし、私にお許しいただけるのなら……」
「いや、まだだ。この状態を味わっていたいのでね」
「お望みの通り、ご主人様」
「彼がかつて私の上司だったことは知っているかな?」
「はい、ご主人様。存じ上げております」
「ならば、彼がどんなクズ人間だったかも知ってるだろう。彼は自分が私より、いや誰よりもずっと有能だと思っていた。彼は、みんなを針のムシロに包まれた状態にするのが大好きな男だった。私たちを虐待するのが好きな男だった」
「確かに」
「だが今の彼を見なさい。女にされて、カラダしか取り柄がなさそうな頭の軽い人間になってる。しかも、そうするのに要したのは、ちょっとした催眠術だけ」
「それと整形手術が多数回必要でした、ご主人様」
「それもあったな。だが、少し分からなくなっていることがあるのだ。そもそも、彼が元の自分が誰だったかを思い出せないなら、こういうことをする意味があるのだろうか?」
「しようと思えば、彼の人格を少しだけ片隅に残しておくこともできます。自分が何を失ったかに気付く程度の量ですが。体の変化に影響を与えることはないでしょうが、自分がかつてどんな人間であったかは分かるだろうと思います」
「おお、それは奸智といえるな。実に賢くも邪悪な計らいだ」
「私はご主人様に奉仕するために生きております。そのようにいたしましょうか?」
「ああ、もちろんだ。ぜひそうしてくれ。そして、それが終わったら、彼は私の秘書として新しい仕事に就く。彼が社員の共有淫乱として会社に奉仕するようになるのもすぐだろう」
「お望みの通りに」
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