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Understanding 「理解」
「ごめんなさい、いま何がしたいと言ったの? 聞き間違いかも知れないけど、あなた、まさか……」
「ポルノをしたい」
「そうよね。そう言ったような気がしてた」
「ジョークじゃないよ、ヘザー。本気だよ」
「分かってるわ。ただ、こうなることに気持ちができてなくて。ええ、そうよね……あなた、バイセクシュアルかもって言ってたものね。分かってるわ。あたしは心が広いつもりだし。それに、あたしの下着を着てみたいと言い始めたときも……あの時の言葉、何だっけ? 味付けをしてみたい、とか? ええ、そうよね。構わないわ。ストラップオンの時も同じだった。味付け。それから、あなたが女の子として外に出たいと言い始めたときも。あの時も、ただのお遊びだと思ったいた。ロールプレーを始めたときも、そうだったわよね? あなたが、女性ホルモンを摂取し始めたと言った時も、大したことじゃないと思っていたわ。それで別に大きな変化があるわけではなさそうだし、と思って。そう、あたしは、あなたの方針にただ合わせてきただけ。分かるわよね?」
「別に、キミは合わせてきたわけじゃないんじゃないかな? すべての段階で、ボクに逆らって、いちいちケンカしてきたと思うけど? それにボクにはそんな選択肢があったとは思えないよ。ボクはただ……」
「そんなこと、もう話し合いたくなんかないわ。分かってるから。ともあれ、あたしはまだあなたを愛しているの。それにあたしはこれを受け入れている。でもだからといって、こういうことをあたしが喜んでるわけじゃないのよ。あたしは男性と結婚したと思ったのに……まあいいわ。どうでも。もう過去形のこと。あたしたち二人は先に進んできたものね? でも、今はどうなの? これってどうなの? 本当は驚いちゃいけないのかもしれないけど、あたし、本当のところ、驚いてるの。こんなことって、って思ってるの!」
「ボクたちはおカネが必要なんだよ」
「おカネが必要なのはいつでも同じじゃない? でも、あなたも思うんじゃない? あたしがストリップ・クラブに勤めるのを見たいとは思わないんじゃない?」
「ボクは別にストリッパーになるつもりはないよ。ポルノをしたいと言っただけ。もういろいろ調べたんだ。まずは、オンラインで動画チャットをやって、みんなが求めるポーズを取ることから始めようって……その後は……」
「というか、もうネットに出してるでしょ? レドイットで見たわ」
「ああ、あれね。でも、フォロワーを集められると思うんだよ……つか、ボクのような女の子を求めてる市場は割と大きいと思うんだよ。結構、儲けられると思うんだ」
「多分、そうなるでしょ? でも、その心の準備はできてるの? つか、時々、その気になったときに男にアナルをやってもらうのと、仕事としてやられるのって、ずいぶん違うと思うけど? それにあなたのお父さんやお母さんはどう思う? あなたのお友達はどう思う?」
「もう、ボクがカミングアウトした時に、たいていはボクと口をきかなくなってるよ。それに、今でも仲良くしてくれてる人たちは、ボクが何をしても、ボクを受け入れてくれると思う。君と同じように」
「ん、もう! こういうの最悪! あんたがそこまで知っててやってるのを知って、本当にムカつく! ええ、あたしが何を言っても、あんたやめないでしょ! そこが最悪……どう言っても……まあいいわ。どうでもいいわよ。すんごいポルノスターになれば? もう、あんたがどうなろうと気にしないから!」
「キミなら分かってくれると思ってたよ」
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