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Tit Man 「おっぱい男」

「フェリシア、ちょっと、これについて話し合いたいんだけど」

「何について?」

「正気で言ってるの? ボクを見てよ! まるで……口にすら出せない! もう、これ以上、隠しきれないのは確かなんだ。本当に、ボクの体に変なことが起きてるんだよ」

「そう? あたし、気づかなかったけど?」

「気づかない? どうして、ボクの胸のこれに気づかないなんてあり得るの? ボクが化粧を始めたことも、なんで気づかないの? こんなバカっぽいタトゥーを入れたことも? 神様に誓いたいくらいなんだ、こんなの止めたいって! 本気だよ。だけど、どうしてか分からないけど、やめられないんだ。毎朝、目が覚めると、今日は、お化粧はしないし、髪を切りに行くって自分に言い聞かせるんだけど、気が付くと、まつげの手入れをしていたり、口紅を塗ったりしてるんだよ。どうして、それに気づかないなんて言えるんだ?」

「ああ、そのこと? それ、あたし、気に入ってるんだけど」

「な、何だって?」

「今の新しいあなたのこと、あたし、大好きよ。あなたがこんなに扱いやすい人になるなんて知らなかった。もう、あなたが友達と飲みに出かけるのを心配する必要がなくなったし、あなたが…なんて言ったかしら?……そう、コントロールを失う?……あなたがそうなるのを心配する必要がなくなったのは確か。ええ、そうそう。それに、もう、あなたに顔をひっぱたかれると、気にする必要もなくなったわ」

「で、でも……いや、ボクは……そんな、一度も……」

「訊きたいなら言うけど、今はすべてがずっと良くなっているの。それに加えて、あなたって、ずっと前から、おっぱい男だったわよね? だからこそ、あなたは、あたしにこんなバカげた豊胸手術を受けさせたんでしょ?」

「ぼ、ボクは……そういうのが好きだったから……分かるよね?……大きい胸の女が好きだから……」

「自分で言う? あなた自身は女でもなんでもないじゃない? なのに大きな胸の女が好きという? だからこそ、あたしは今のあなたの姿が大好きなのよ」

「ボクが好きなことが、関係あるのか?」

「もちろんあるに決まってるじゃないの。あなた、いつでも好きなように変えられるのよ? なのに好きこのんで、その姿でいるわけでしょ? あなたは根っからのおっぱい男なの。さあ、もういいから、可愛らしく振る舞って、あたしに飲み物を作って持ってきて? 返事は?」

「あ、今すぐに……」




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