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Safe word 「合言葉」

「なんで、そんなにソワソワしてるの? あなた、こういう変なことにハマってると思っていたけど?」

「ぼ、ボクは…… ただ……分かるよね? ボクは、公共の場所で裸になるのはキミの方だと思っていたところがあって……」

「何言ってるのよ、ヤメテよ。それって、完全にありえないでしょ。それに、あなた、可愛すぎて、そんな厚いコートで隠してることこそ、ありえないわよ」

「ぼ、ボクは別に……可愛いとか関係ないし。男なんだから」

「それについては、もう話し合ったわよね? あなたがその言葉を使うの、あたし気に入らないって。あなたは可愛いの。あたしの可愛くて愛らしい、エッチな人。さあ、そのコートを脱いで。そう、そう。いい子ね。あっ、あなた、シャワーを浴びた後、ケージをつけ戻すのを忘れたの? エッチな子ねえ、ほんとにエッチなんだから!」

「ぼ、ボクは……何もしてないよ……ねえ、家に帰りたいんだけど。こんなの居心地悪すぎるよ」

「合言葉を聞いていないけど?」

「き、きゅうり」

「あら? 言ってなかったかしら? 今朝、合言葉を変えたのよ。あなたのコック・ケージのところにメモを置いておいたはずだけど? アレをつけていないとすると、多分、あなたメモを見てないのかも」

「でも……だけど……ボクは別にこういうことをしたいわけじゃないって言ってるんだよ、バネッサ。本当に。家に帰りたいよ」

「バネッサ様でしょ? あなたも同意したことじゃないの。それにあたしかあなたのどちらかが、合言葉を言うまでは、プレーを続けるって、あなたも同意したことじゃないの。あなたが前もってちゃんと準備してなかったなんて、あたしのせいじゃないわ」

「別に忘れたわけじゃ……ていうか、こんなこと無理だよ。ボクはキミの夫なんだよ?!」

「そういうことを言うのね? あら、向こうの方から、あなたを助けようと、素敵な男性が来るわ。すごく大きな体。逞しそう。それに、彼のあの表情。あなた、素敵な時間を過ごすことになりそうね。さあ、楽しんできて! それと、約束を忘れないこと。あなたは、彼が望むことが何であれ、それをしなくちゃいけないという約束!」

「ちょ、ちょっと待って、バネッサ。……バネッサ様……お願い、ここに置いていかないで! コートを置いていってよ! ボクは……こんな。ああ、なんてこと! ああ……」






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