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No special treatment 「特別扱いはナシ」

「カレン、本気でやってるわけじゃないよね? これ、バカげてると思うんだよ。ほんとにバカげてる」

「あなた、素敵よ。それに、もちろん、あたしは本気。どうして本気じゃないと思うの?」

「ていうか、ボクを見てみてよ。こんなの、完全に不適切だよ」

「それ、他の給仕人たちが着てるのと同じユニフォームよ? 正直、どこがそんなに大変なことか分からないんだけど」

「マジで言ってるの? これが大変なことって分からないの? ボクは化粧をしてるんだよ? それにこれは、誰が見ても女のユニフォームだよ。……この、腰のところをキュッと締め付ける感じ、気が狂いそうだよ。さらには、ストッキングまで履いてるんだよ。それなのに、どうして大変なことじゃないなんて言えるのか、分からないよ!」

「ねえ、お願いよ。スタッフには男はあなただけってわけじゃないの。トレントを見てごらんなさい。彼、ユニフォームに文句なんか言っていないわよ」

「でも、トレントはゲイなんだよ。と言うか、女装者とか? よく知らないけど。でも、彼はボクとは違う」

「ああ、よかった。アバズレがふたりして、ユニフォームみたいな些細なことに愚痴を言うのを聞かされたら、気が狂っちゃうもの。ジェス? あなたがあたしの弟かどうかなんて気にしてないの。あなたは、この夏、あたしのところで働くことに同意したし、あたしも次の学期の分、あなたの大学の学費を払うことに同意したわ。そういう約束だったわよね。あなたがはもっと勉強を頑張って、奨学金も取り続けることができたはずなのに、パーティやら飲み会やらで遊び回ったの。まあ、取った行動には結果がつきまとうもの。今は生活のために働かなくてはいけなくなってしまったわね。それは、あなたが嫌いな規則でも、それに従わなければいけないということ。で、そうだとすると、どうなると思う? その愚かなプライドを飲み込んで、ちゃんと約束を守ってくれるつもり? それとも、また、愚痴を言って、負け犬になるつもり? パパもママもあんたのこと、そうだと思ってるけど? あんたはどうするの?」

「で、でも、ボクはカウンターの後ろ側の仕事はダメなの? でなければ、帳簿付けでもいいんだけど。それもダメなら……」

「それがあんたの仕事。ジェス、あなたの仕事はそれなのよ。それをやるか出て行くかのどっちかね」

「そ、そんな、選択肢はほとんどないよ」

「あなたにはずっと選択肢があったわよ。選び続けた結果が今でしょ。今度はどれを選ぶの?」

「分かったよ。やるよ。ここで働くよ。でも、男たちがボクに言い寄ってきたら……」

「他の給仕係の女の子がするのと同じことをするように。おべっかを使えばいいのよ。男たちを焦らすの。そうすればたくさんチップをもらえるわ。それが仕事。それ分かってる?」

「分かってるけど……」

「あら、そう。……それと、仕事中は、あたしはカレンじゃないの。カレンさんね。それを忘れないで」








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