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People change 「人は変わっていくもの」

「お前なあ!」 と俺の親友のアレックスが言った。俺がバスルームに飛び込んところ、彼がトイレに座っていたのだった。アレックスは俺を見るなり、飛び上がって、ジーンズを無理やり引っ張り上げた。「何だよ、いったい? プライバシーって知らないのか?」

「お、お前、パンティを履いてるのか?」 俺はしどろもどろになっていた。酒を飲んでいたから。と言うか、俺たち、パーティに出ているのだから、誰もがしどろもどろになっていた。「ピンクのパンティ?」

「バカを言うなよ」と彼はジーンズのボタンを直していた。「パンティなんて、女が履くもの。ボクは女じゃない」

俺は頭を左右に振った。アレックスは確かにそう言った。もちろん、そう言うだろう。だが、事実として、このパーティに来てた男たちのうち、アレックスを女と間違えるヤツが結構いたのは知っていた。俺自身、アレックスが知らない男の膝にまたがって、首根っこに抱き着いてるのも見たし。しかも、アレックスは、それが変だとまったく思っていない様子だった。

「でも、ピンク色だったぞ?」

アレックスはずいぶん変わった。しかも、ものすごく短期間のうちに。1年ちょっと前までは、アレックスは俺たちフットボール・チームを州の決勝戦まで引っ張ってくれた男だったのだ。俺たち男たちみんなが、ああなりたいと憧れる存在だったんだ。でも、そのアレックスが今はこんな姿に。アレックスの以前の姿を忘れてしまいそうだ。

この変化が始まったのは、アレックスがリリスと出会ってからだと思う。彼女は可愛いと言ってよく、みんな、ふたりが付き合うのをいぶかったりしなかった。だけど、リリスは変だったのだ。分かるだろうか、ゴスっぽい女だった。俺たちみんな、アレックスは、女のサンプル収集をやってるんだなと思った。モテモテのあいつなら、当然あり得ることだった。だが、その頃からアレックスは変わり始めたのだった。最初は、髪の毛を黒く染めただけだった。だが、彼女と付き合い始めてたった2ヶ月だったのに、アレックスは信じられないほど体重を減らし、クォーターバックはもちろん、そもそも運動部の人間とは思えない体になっていた。そして、服装も変わり始めた。

アレックスは、中性的なファッションだと言った。俺は女のファッションだと言った。だが、俺たちは、それについてはあまり話し合わなかった。男同士だと、そういうもんだよ。分かるだろ? 俺としては、あいつのファッションを受け入れた。変わってしまっても、俺の大切な友だちだし。あいつが化粧を始めたときも、俺は何も言わなかった。髪の毛を伸ばし始めたときも。腰に小さな花のタトゥを彫ったときも。俺は、ただ、あいつのやりたいことに合わせていた。

「いいよ、分かったよ」と、アレックスはジーンズのボタンを外し、膝までグイっと降ろした。そして、布の端切れとしか見えないようなパンティを露わにしたのだった。ちんぽがあるか、ほとんど見えない。「ボクはパンティを履いているよ。リリスがボクに買ってくれたんだ。似合ってると思ってるよ」

「で、でも、パンティだぜ? なんでパンティなんかを……」 俺は口ごもった。

「何を履こうと勝手だよ」とアレックスはジーンズを元通りに引っ張り上げた。「これからも、自分の履きたいものを履くよ。みんなが早く、そんなボクに慣れてくれたら、みんな、ハッピーになれると思うよ。じゃあ、出て行ってくれる? プライバシーをちょうだいよ。ちょっとお化粧の手直しをしなくちゃいけないんだから」

俺が後ずさりしたら、顔面に当たる勢いでドアが閉まった。思うに、あの時はじめて、俺はアレックスの変化は一時的なものではないと悟ったのだと思う。アレックスは俺が知ってる人間ではなくなっていた。それを受け入れたいのはやまやまだったが、俺はこれにどう対処してよいか分からなかった。仕方なく俺は、何もできずそのまま、パーティに戻り、混乱した思いを押し流そうと、酒をあおった。それで思い通りに混乱が消えたかというと、実はうまくいっていない。










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