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Chubby 「私はデブ」

昔のあたしは不安感をこじらせにこじらせた人間だった。成長期は、まさに例の子供そのもの。どういう子供か、みんな分かるよね? 太った子供。引っ込み思案の子供。教室で窓から外を見ているだけの子。皆に自分のことは無視して、忘れてほしいと思ってるだけ。もちろん、決して望み通りにはならない。他人の目から隠れようと頑張れば頑張るほど、目立ってしまう。いちばん目ざといのが同年齢の子供たち。

何人かいるけど、他のデブの子供のように、何か人から認めてもらえるような才能があったら、そんなにひどくはなかったと思う。でも、あたしは別に面白い人じゃなかったし、フットボールに人生を見つける運命にもなかったし、頭が良くもなかった。みんなが憐れむ、ただの肉の塊。当然、嘲笑のターゲットになっておかしくなかったし、実際、そうなった。めちゃくちゃイジメられた。

「イジメ」という言葉は、あたしがされたことを表すのに適切な言葉のようには思えない。「拷問」が近いかもしれない。けど、それも、しっくりこない。ともかく、毎日が地獄だった。でも、何のため? みんな、あたしをいけにえにして、ちょっとした気晴らしをしていたってこと? 振り返ってみると、単なる気晴らしにしては残酷すぎることばっかりだった。繰り返すけど、子供は残酷だ。本当に。

多分、あたしが典型的な男らしさに欠けていたことも原因だったと思う。シングルマザーに育てられ、遊び相手は姉や妹だけだったので、あたしは少なからず女性的な振る舞いをするようになっていた。そして、人はそういうところに目ざとく反応する。それに加えて、シャワールームで、他の男子にあたしのあれが小さいのを見られたもんだから、確実に、悲惨な生活の開始になった。あっという間に、学校全体に知れ渡った。もちろん、連中はあたしのアソコが哀れな存在であることをことあるごとに口に出した。

多分そういうこともあって、あたしは女性的な方向に引っ張られていったのだと思う。姉や妹たちは、あたしとは違って、心配の種はなかったようだった。少なくとも、心の奥ではそう思っていた。姉妹たちは、みんなあたしと同じ体形だったのに、だからと言って誰にもイジメられてはいなかった。もちろん、脚の間にぶら下がる親指ほどの存在について、つまり、自分は何者かを考えさせる存在について、思い悩むことなどなかった。そんな環境だから、女装は一種、自然な成り行きだったと思う。そしてあたしはいつの間にかクラスのクイーンになっていた。

あざけりは気にしなかった。あおりもいじりも。クラスメートによるからかいなんて、すでにどっぷり味わっていたから。だから、連中の中傷に同性愛ヘイトが加わってきた時も、「別にぃ?」と思った。連中があたしをシシーと呼んでも、「別にぃ」と思った。フットボールチームのキャプテンがあたしのことを「チビちんぽのデブ尻野郎」って言ったけど、そんな程度でしょ。気にするまでもない。

15歳の誕生日の2日前に、あたしはトランスジェンダーだとカミングアウトした。控えめに言っても、ママはすごくあたしの味方になってくれた。ずっと前から知ってたって。最初からだって言ってた。でも、少しだけだけど、心の中、そんなふうには感じなかったよって言いたい自分がいた。自分がトランスジェンダーだってカムアウトしたのは、あたしに与えられた選択肢からすれば、そうするのが最善で、いちばん困難なことが少ない道だと思えたからだって、はっきりさせたい自分がいた。でも、あたしはママに反論しなかった。ママには、あたしが内面的には女の子なのでトランスジェンダーだって告白したと、そう思わせておくことにした。ひょっとすると、本当にそうなのかもしれないし。よく分からないけど。

その頃から、ホルモン剤が効果を見せ始めた。思春期に入ったばかりだったので、実際には、男性的な特徴と言えるものは何も始まっていなかった。そして実際、17歳になるころまでに、あたしは本当に女性的になっていて、クラスメイトの中には、あたしが元は女でなかったなんて忘れてしまっているような人もいたほど。それも理解できないわけじゃなかった。だって、あたしの乳房は姉妹たちのよりもずっと大きくなっていたから。あたしのことを、女性へと変身した男と思うより、元々、女性だったと思う方がずっと簡単だったから。

そして、高校3年になるまでに、すでにあたしはデートを始めていた。このあたしが? デートを? そんなのあり得ないって、頭がぶっ飛ぶような感じだったけど、なぜか男の子たちが、しょっちゅうあたしをデートに誘ってくる。その子たちは、あたしがデブなのを気にしていないようだった。少なくとも、気にする人ばっかりじゃなかった。あたしは、そのことに乗ることにした。大きく。そして、とうとう、正真正銘のフットボール選手を相手にバージンを卒業した時、あたしは過去を振り返るのをやめた。自分は女なんだ。それだけなんだって。

大学時代になるまでには、その気持ちの上での態度は確固としたものになってきて、学位を取って2年たった今は、あたしのことを愛してくれる男性を見つけている。彼は完璧じゃないけど、それを言ったら、あたしも同じ。あたしも彼を愛している。たいていは。確かに、時々、あんなに無慈悲にイジメを受けていなかったら自分の人生はどうなっていただろうって思うことはある。その場合でも自分は女になっていただろうか? 多分なっていたかもしれない。そうでないかもしれない。でも、今のあたしは後悔をしていない。あたしは、自分が幸せになるためにしなければならなかったことをしてきたんだ。そして、なんだかんだ言っても、結局、誰でも、それしかできないことなんだから、と。




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