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Ironic 「皮肉」
「なんか変? なんでそんな目でボクを見てるの?」
「そんな目って?」
「もう、頼むよ、ミシェル。裸になったボクを見ると、いつもそういう顔になってるよ? もうキミの心を読もうとするのは、うんざりしてきてるんだよ。もっとコミュニケーションが必要だっていつも言ってるのは、キミの方だよね? 違う? だったら、さあ、コミュニケーションしようよ」
「いいわ。でも、あなた、嫌な気分になるかも」
「ボクはこの通り、心の広い男だよ。キミがどんな批判を繰り出そうが、ボクは受け入れることができる」
「あたしは、この2年くらいの間にあなたがずいぶん変わってしまったと考えていただけ」
「変わった? ボクはずっと前から同じだよ」
「あなたは、そう思うようにされてるから、そう思うのよ」
「何を言いたいの? ボクが間違っていると言ってるの? 何て言うか……ああ、確かに……確かにボクはちょっと振る舞いを変えてきたと思う。それは否定しないよ。それに、そう、その通り。あの夫婦問題専門セラピストのおかげでボクたちずいぶん助かったと思うよ。以前のボクは間違いばかりしていたのは知っている。でも、彼女の助けで、ボクは自分の行動がすごくキミを傷つけていたか分かったんだ。そして今のボクたちは……」
「催眠術って本当だと思う?」
「え? いや、全然。本当のわけがないよ、明らかに。でも、なんで、いま催眠術の話しなんか?」
「本当に分かっていないのね。最初は、あなたはフリをしてるだけだと思っていた。あたしを懲らしめようとしてるって。あれよ……髪の毛とかお化粧とかいろいろ。でも、あなたはさらに進んで、唇もそんなふうになるように手を入れたでしょう。その頃から、あたしは、それまでとは違ったふうに成り行きを見るようになったの。そして、あなたがその途方もないインプラントの胸を付けた時までには、催眠術って本当なんだって納得していたわ」
「何の話をしているの? 胸のインプラント? 髪の毛? お化粧? 気が変になったの?」
「彼女はあたしにある言葉を教えてくれた。あなたを催眠から解く言葉。あなたが自分自身の体にしたことを教える言葉。あなたに、浮気をするバカからセックスしか頭にないエロ女に変身した全過程を思い出させる言葉。その言葉を使おうとしたことがあったけど、その時は適切な時とは思えなかった。それを言っても、あなたは依然として自分自身をコントロールできないでしょう……本当の意味ではできない。あなたの精神に加えられた変化は恒久的なものだから。でも、変化したということははっきりと自覚するでしょうね。ジョンソン先生が言うには、それこそが本当の懲罰であるとのこと」
「な、何を言ってるの? 恐がらせようとしてるのか、ミシェル……」
「これだけ言っても足りないようね。分かったわ。言うわよ。リンゴ、象、血紅色」
「ああ……ああ、神様! 何が起きてるんだ? まるで……痛い……痛いよ!」
「シーっ……痛みは数秒で消えるわ。静かにしてなさい」
「き、キミは……ああ、ボクは……お、おっぱいがある……キミはボクを……く、くそっ……友達がみんな……」
「そう。その通り。それに他にも、もっと。そろそろ全部思い出してるんじゃない? 見て取れるわ」
「な、何で、こんなことを……」
「こういうことがあたしにはできると分かったからというのが大半ね。それに加えて、あなたが女性蔑視の人間だったから。罰を受けるべき浮気者だったから」
「ボクをこんな……こんな奇人に……こんな姿にする代わりに、ただボクと別れればよかったじゃないか……」
「そんなことして、おもしろいことがある? さあ、立ち上がりなさい。仕事に行くのよ。仕事は忘れてないわよね? あのストリップ・クラブ。ずいぶん通っていたでしょ? そして、今は、毎晩、あそこでステージに上がっている。すごい皮肉ね。気持ちがいいくらい皮肉が効いてるわ」
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