「ポルノ・クイーンの誕生」 第6章 Making of a Porn Queen Ch. 06 by Scribler 第1章第2章、第3章第4章第5章

次の水曜日、私は2回目のグループセラピーの集まりに出かけた。はじめの1時間、私は、年下の男の子の話しを聞いた。彼は、自分のこれまでの人生がいかに悲惨で、両親がいかにひどい人間だったかを語っていた。でも、私にしてみれば、彼の両親はまったくひどい人間なんかではないと感じた。なるほど、彼の父親は、息子が女装するような人間になるのを望まなかったのだろう。その不満は私にも理解できる。でも、彼は父親に殴られたりしたわけではない。それにこの男の子の話しぶりからすると、彼の父親は充分、彼を愛していると、私には思われた。

なぜそんなことをしたの、と訊かれても困るけれど、私は、その男の子に食って掛かってしまった。ちゃんと父親に愛されているので幸せだよと、むしろ両親に感謝すべきだよと言ったのだ。さらに続けて、私は、自分の父親に愛されておらず、一度も父親に抱かれたことも、触れられたことすらなかったと訴えた。集まりの最後の方では、私は目から涙を流していた。

エーカーズ先生にオフィスへと連れられながら、私は、小さな女の子のようにめそめそ泣いていた。先生は私が泣き止むまで私を抱きしめてくれた。そして、ようやく泣き止むと、「先週も言ったけれど、集まりに出たくなかったら出なくてもいいのよ」と言ってくれた。

気持ち的に集まりに出たい出たくないにかかわらず、私はこれからも出席するつもりでいた。先生にホルモンの注射を受け、病院を後にした。多分、集まりで泣き出してしまうのは、今回が最後というわけではないだろうなと思った。

実際、それから3ヶ月間、私は誰の話しを聞いても、泣き出したい気持ちになった。たいていは、自分を抑えることができたけれど、病院を出て車に乗り込んだとたん泣き出してしまうこともあった。

次の1ヶ月は、生活にあまり変化がなかった。毎週、金曜日にはヘレンとデートを繰り返した。映画を見に行く時もあれば、ダンスに行くこともあった。私は、男の子だった時分にはダンスをしたことがなかったので、最初にダンスクラブに行った時は、おどおどしっぱなしだった。ヘレンに教わって、音楽に合わせて身体を揺らしたけれど、いつの間にかそれらしいダンスを踊れるようになっていた。

最初の1ヶ月が過ぎる頃には、自分の身体にわずかに変化が生じてきていることに気づいた。乳首が少し大きくなってる感じがしたし、乳輪も広がってる感じがした。それに気づいたのは私だけだったので、他の人には何も言わなかった。多分、期待感からそんな気になっているのだろうと思った。ただ、一つだけ確かなことがあって、それは乳首がいつも痒い感じがしていることだった。それに、他の人に愛撫された時など、以前よりずっと敏感になっている感じがした。

ちょうどこの頃、ローレルがトレーシーとマークの家から引っ越した。カリフォルニアで暮らすことに決めたらしい。そちらの方が映画産業が盛んだからとのこと。それに加えて、ローレルは、ある男性と出会って、恋に落ちたのだった。彼女が出ていた映画のセットで知り合ったらしい。二人は一緒にカリフォルニアに引越し、そこで一緒に映画を作っている。

2ヶ月目が終わる頃には、常時コルセットをつけていたおかげか、胴体に変化が出てきた。初めてコルセットをつけた時のような、締めつけられる感じがしなくなっていた。

最初、体重が減ったせいでそう感じたのだろうと思った。基本的にベジタリアンの食生活を送っているので、体重は7キロくらい落ちていた。そのせいで、コルセットを締めるとき、マリアにレースをきつく引っ張ってもらわなければならなくなったのだろうと思っていた。

でも、ある日、鏡の前に立ってみると、ウエストのところがキュッと引き締まっていることに気がついたのだった。それほどはっきりと分かるわけではないけれど、確かにカーブができてる。でも、気づいた変化はそれだけではなかった。

お尻も前より素敵になっているのに気づいた。もともと女性的なお尻をしていたけれど、今は、はるかに女っぽくなっている。前より、キュッと締まり、セクシーに突き出る形になっていた。

胸も変わってきていた。乳首を見ると、長さが出てきていたし、乳輪もはっきりと大きくなっていた。さらに乳首の回りに脂肪の組織ができつつあるのにも気づいた。まだまだブラジャーをつけるには充分ではないけれど、大きくなっているのは事実だった。

他にも変化があった。例えば髪の毛。髪の毛の質が変わってみたいで、感触が違っていた。前よりふさふさになっている気がした。散髪に行ったとき、フレデリックも私の髪の毛の変化に気づいた。それから、脚も。2ヶ月前よりずっと細くなり、形も良くなっている。

3ヶ月が過ぎようとする時には、誰もが私の変化に気づいているようだった。裸の私を見た人に限ってのことだけれど。胸は前より大きくなっていた。ブラジャーを満たすほどにはなっていないけれど、Aカップならほぼ満たすほどに。乳首も、高さも大きさも、元のほぼ3倍に膨れていたし、乳輪は50セントコインほどの大きさになっていた。

体毛も変化を見せていた。もはや、ひげはほとんど剃る必要がなくなっていたし、たとえ生えてきても、細く柔らかい毛に変わっていた。髪の毛は、前にも増してボリューム感が出てきているようだった。いまだ、体毛リムーバーは使っているけれど、先月は、1度しか使う必要がなかった。ただ、脚の毛だけは例外で、そこはいつも無毛状態に手入れし続けていた。

常時コルセットをつけていたおかげで、いまや、すっかり女の子っぽい腰つきになっていた。誰もが、砂時計の形になっている私の胴体に目を奪われていた。一度、マークに言われたことがある。後ろからセックスすると、本当に、女の子にしているのと同じ感覚になると。

このような体の変化で、一つだけ、困ったことがあった。それはペニスである。今は、前に比べて少し小さく、細くなっている。たいていの時は、問題なく勃起ができるが、何度か、勃起するまで時間が掛かったことがあった。それに、勃起せずに射精してしまったことも、2、3回あった。エーカーズ先生にそのことを話したら、摂取するホルモンを調整してくれた。おかげで、その問題はほぼ解決できている。

そろそろ豊胸手術を受けても良いのではないかと感じていた。エーカーズ先生は、ホルモン注射では、これ以上、自然な形で胸を大きくできない段階になったと判断したら、次の段階として、手術を行うと言っていた。

唯一の問題は、豊胸手術を受ける前に、エーカーズ先生に加えて、マシューソン先生の了解を得る必要があるということだった。と言うのも、私はマシューソン先生の手術を行って欲しいと思っていたから。マシューソン先生は、トレーシーの豊胸手術を行った先生で、是非とも先生にして欲しいと思っていた。トレーシーの胸は、豊胸しているとはまったく感じられない。私の胸もトレーシーの胸と同じように素敵にして欲しいと思っていた。

エーカーズ先生もマシューソン先生も、同意書にサインすることを了解してくれた。ただ、3つ条件があった。第1の条件は、術後も半年はセラピーを受け続けること。第2の条件は、1年間、ホルモン治療も受け続けること。この2つの条件には、私もまったく問題がなかった。ホルモンについては、マリアがいまだにいくらか取り続けているのを見ていたし、何年も続けていると知っていたので、条件になくとも、摂取は続けるつもりでいた。

第3の条件は、他のに比べて、ずっと同意しがたい条件だった。先生たちは、私に、自分の父親に、どうしようとしているか説明するよう求めたのだった。ただ連絡するだけではダメで、実際に父親に会い、話しをすること。そして、本当に会って説明したか、証明することを求めていた。

先生たちが言うことは正しいと分かっていた。私自身、父に会い、自分がどれだけ彼に傷つけられた思いだったかぜひ伝えたいと感じていた。だけど、先生は、私に、女の子の姿で会いに行くよう求めていた。私も、いずれ、そうするつもりではいた。だけど、私の頭の中では、例えば、父の臨終のときなどに、その姿を見せようと思っていたのだった。でも、私が望むものを手に入れるためには、他の選択肢はない。すぐにでも、女の子の姿で父に会いにいかなければならない。

父とは、家を出た日からずっと会っていない。父は東海岸に引越し、計画通り、望んでいた仕事についていた。しかし、依然として、何週間に1回は、会議のためにこちらに飛んできていると語っていた。

とうとう心を決め、とある月曜日、トレーシーに付き添ってもらいながら、私は受話器を取り、父に電話をした。

電話に出た父は、とても晴れ晴れとした、快活な声を出していた。父の声を聴いた瞬間、自分がこれから父を苦しめようとしているのを思い、電話をするんじゃなかったと後悔しそうになった。

「お父さん、僕だよ、スティーブ」

私は、無意識的に、普段使っている、女の子っぽい甲高い声で話していた。

「スティーブ、ちょっと声の様子が変だな。大丈夫なのか?」 と心配そうな父の声。

私は本来の男の声を使うのを忘れてしまったのだった。咳払いをしてから、返事した。

「大丈夫だよ、お父さん。そっちはどう?」

「私は大丈夫。それより、何か問題でもあるのか? 何か困ったことでも?」

父の声には、ちょっといぶかしがっている調子が入っていた。

私は、10歳の頃までは父に電話をしていたが、その後は一度もこちらから電話をしたことがない。今になって電話をかけたことで、父は疑念を抱いたに違いない。

「いや、大丈夫。何も問題はないし、困ってもいないよ」

「そうか、良かった。ともかく電話してくれて嬉しいよ。そろそろ、お前の誕生日が近づいてきた頃だと思っていたところなんだ。一緒に祝いたいとね」 父は安心した声に戻っていた。

一つ、父のために言っておくべきことがあって、それは、父が私の誕生日を忘れたことがなかったということだった。いつも、誕生日に何かしてくれた。たいていは、一緒にレストランに行って食事を取ること。私の誕生日は、次の金曜日だった。だから、父と会う機会を持つのに格好の理由となると思った。でも、父と一緒に祝う誕生日は、これが最後になるだろう。それだけは、確信していた。

「僕もそうしたいよ」

「良かった。それじゃあ、金曜日の7時に、フランクリンの店で会うというのはどうだろう?」

「分かった。そこでお父さんに会うよ」

私は、この電話も、もう終わりに近づいてると、少し安心した気持ちになっていた。そして、少し話しを続けた後、互いにさようならと言って、電話を切った。後は、金曜になるのを待つだけ。

電話を切るとすぐにトレーシーが、どんな感じだったか訊いてきた。レストランで会うことになったと伝えると、彼女は、その時のために新しいドレスを買わなくちゃいけないわねと言った。

それを聞いて、私は、父と会う不安感がすぐに吹っ飛んで、新しいドレスを買いにショッピングに出かける楽しみに、興奮し、夢中になった。けれど、その日の夜ベッドに入り、落ち着くと、とたんに不安がぶり返し、父はどんな反応をするだろうと心配になった。

マークは、この週、出張していて、木曜まで帰ってこない。なので、私はトレーシーと一緒にベッドに入っていた。

トレーシーは優しく前戯を繰り返し、私の心から父のことを振り払らってもらおうとしたけれど、うまく行かなかった。トレーシーがしようとしていることに没入できるほど、くつろいだ気分になることができない。

トレーシーは私を興奮させることを諦めたようだった。

「お父さんが何をするか、心配しているのね? お父さんが、レストランで騒動を起こすと思うの?」

私は頭を振った。

「いや、そういうことだけは、父は決してしないとはっきり言えるわ。たとえ警察署であっても、公の場所で騒動を起こしたりは、父は絶対にしないと思う。そうはならないと思うわ。多分、黙って店から出て行って、その後は、2度と私に口を聞かない。多分、そういう反応をすると思う」

私は、そう言いながら、涙が頬を伝うのを感じた。

トレーシーは私を抱き寄せ、囁き声で言った。

「それなら良いわ。つまり、お父様が、あなたを傷つけたりしないならね。少なくとも公の場所では。私とマークも付き添うから、お父様があなたをどこかへ連れて行って、痛めつけたりするようには、決してさせないから」

「ええ、でも・・・本当の気持ちでは、父には、少なくとも話しをするまでは、立ち去ってもらいたくないの。多分、父は、むっとして出て行ってしまうだろうとは分かってるけど、そうなって欲しくないと期待しているの」

私は涙を流しながら話した。トレーシーは優しく私をなだめながら、気持ちは分かるわと言っていた。でも、私にはトレーシーにも私の気持ちは本当には理解できていないのじゃないかと思っていた。このことについては、誰にも私の気持ちは理解できないと。

その週の残りは何事もなく過ぎた。火曜日には、お昼まで家の仕事をし、お昼からトレーシーに連れられて新しいドレスを買いに出かけた。最終的に私が選んだドレスは、私が持っている服のなかでも、一番、地味な感じがするものだった。

黒のシルク・ドレスで、ほぼ1週間分の給料全額に当たるほどの値段。首回りが閉じる感じになっていて、喉仏がうまい具合に隠れる。スカート部分もついていて、裾が膝頭に触れる程度の丈だった。それから、新しい靴と、ドレスにマッチしたハンドバッグも買った。

この頃までは、かなりお金が貯まっていたので、衣服に使ったお金のことは気にならなかった。豊胸手術は、1万5千ドルほどかかるのは知っていたし、その分のお金はもう少しで貯まる予定だった。トレーシーからの給与に加えて、マークの仕事のためにフラッファーとして働いているおかげで、ほとんど不自由なく暮らせている。

この3ヶ月ほど、私はヘレンと一緒に、20本以上の映画の撮影に参加していた。ヘレンは、バイ・セクシュアルが関わらない映画でも働いていた。その種類のポルノ映画では、私は参加が許されなかった。多分、ストレートな役者だと、私のような女の子が回りにいると、ゲイのように見えてしまうので、好まれないからだろうと思う。実際は、ストレートな俳優の大半はバイセクシュアルなのだけど、他の人にそのことを知られたくないのだろうと思う。

マークがゲイ映画を作るときには、私も参加した。ゲイの俳優は、他の俳優とはまったく異なった人種だった。私がシーメールなせいだろうけれど、私と社交的に仲良くなる気がまったくないようだった。でも、次のシーンのために勃起しておかなければならないので、私のフェラを歓迎してくれるのが普通だった。もっとも、結局のところ、あの人たちが私のことを嫌悪しているのは、うすうす感じ取れた。

そのことは全然気にならなかった。というのも、私の方もゲイの男の人には関心がなかったから。私が好きなのは、バイの気がある男の人。ともあれ、実際は、この仕事をする理由は、やはりお金のためであることは変わらない。

3ヶ月ほどの内に、ほぼ1万5千ドル貯まっていた。でも、一度、豊胸手術をしたら、その貯まったお金は一気になくなってしまう。だから、また蓄えを作るためにも、男優へのフラッファーは続けなければならないのは分かっていた。

お金のことについて、そういう事情があったものの、父に会いに行くときの一着目のドレスを買った時には、お金のことは、すっかり頭から抜け落ちていた。父に会う夜は、本当に特別な夜にしたいと思っていた。父に、こういうドレスを着た私がどれだけ愛らしいかを見て欲しかったというのもあるけど、それに増して、今の私がどれだけ幸せでいるかを知って欲しかった。

でも、父に会いに行く日のことを考えれば考えるほど、私は、面会をキャンセルしたい気持ちになるのだった。父には、もう、これ以上、私に腹をたてて欲しくない、もう父を悲しませたくない、と。

水曜日の夜、私は、いつもの通り、グループ・セラピーに出席した。そして、あまり深く考えずに、私は、みんなに、今度父に会いに行くことにしていると言ったのだった。

マシューソン先生は、父に会って何を言うつもりなのか尋ねた。先生に問われたその時になって、私は何を言うか、何も考えていなかったことに気がついた。私は、その場で適当なことを言ってごまかした。マシューソン先生も、エーカーズ先生も、そんな私のことを見抜いていたのは確かだった。

ホルモン注射のためエーカーズ先生のところに行ったら、先生は私に言った。

「分かっていると思うけど、お父様に何を言うつもりでいるにしても、その言葉で、面会の雰囲気ががらりと変わることになるはずよ。父親というものは、予想したようには振舞わないものなの。私の父も、私が自分のセクシュアリティについて話したとき、予想外の反応をしたわ。多分、あなたのお父様も同じ。私は、父には分かってもらえると、私を完全に応援してくれるものと思っていたの。でも、実際は、父は完全に反対に回ったわ」

先生が言ってることは理解しているつもりだった。私がどれだけ心配しても、どれだけ入念に計画を立てても、私には、父との面会の場を仕切ることはできない。父が、一旦、女性の服を着た私を見たら、それ以降は、父が完全に場を仕切ることになるだろう。

それでも、父と会うときに備えて、私とトレーシーは計画をたてることにした。トレーシー、マーク、そして私の3人が、先にレストランへ行き、テーブルを確保する。トレーシーは、小さなデジタル・ビデオカメラを持って行き、私たちの面会の様子を撮ることにした。たとえ、父がすぐにその場を出て行ってしまうことになったとしても、少なくとも私は分かってもらおうとしたことが分かると思うし、それを見て、先生たちも納得してもらえると思ったから。

木曜日の夜になり、トレーシーは、翌金曜日は私の誕生日でもあるので、家の仕事はしなくても良いと言ってくれた。ということは、金曜日は、寝ていようと思ったら遅くまで寝ていられることになる。だけど、実際は、マリアが私のベッドから出ると共に、私は目が覚めてしまったのだった。

マリアと一緒にシャワーを浴びた後、私は、キュートなミニのサンドレス(参考)に着替えた。フレデリックのところにいく予定になっていたから。仕事は免除になっていたけれども、それでも、トレーシーとマークのところに朝食を持って行った。ただ、朝食を出した後、寝室を出ることはなく、そのまま腰を降ろして、二人とおしゃべりをした。

トレーシーが朝食を終え、入浴をして着替えた後、私たちはフレデリックの店に向かった。トレーシーからの誕生日プレゼントとして、私は、完全トリートメントをしてもらった。つまり、カットとスタイルばかりでなく、マニキュアとペディキュアもしてもらったのである。

この頃までには、私は自分の爪でいられるようになっていた。この3ヶ月で爪が伸び、つけ爪は一切必要なくなっていた。髪も長くなっていて、パーマネントのおかげで、今は、素敵にカールして、肩先にかかるようになっていた。トレーシーと家に戻った時には、そろそろディナーに出かける準備を始める時間になっていた。

下着には、茶色のシルク・ストッキングと、黒サテンのレースアップ・コルセット(参考)を選んだ。コルセットは、マリアに手伝ってもらって、特にきつく締めてもらった。パンティは、黒サテンのソング・パンティで、これなら私のクリトリスも足の間にしっかりと納めておける。

ランジェリー類を身につけた後、今度はお化粧に取りかかった。お化粧も、この頃にはすっかり上達していた。ゴスっぽいものから、可憐なおしゃれなティーンエイジャーまで、どんな雰囲気でも出せるようになっていた。今夜は、エレガントだけど、地味な雰囲気にすることにした。

服装の中で唯一、地味とはいえない部分が、ハイヒールだった。ヒール高8センチほどのパンプスで、ヒールのところは、ゴールドで、とても細いものだった。スティレット(参考)とまではいかないけれど、それにとても近いと言える。ゴールドのヒールは、ハンドバッグについているゴールドの鎖とマッチしていた。

支度が出来上がった後、全身鏡の前に立った。生まれつきの女であるどの女の子よりも、ちょっと女の子っぽさが増していると思えた。思わず笑みが漏れてしまう。これなら、レストランに入った途端、かなりの人に振り向かれることになるはず。

寝室から出ると、すでに、トレーシーとマークは準備を終えて、私を待っていた。マークはスーツを着ていたが、ボタン・ダウンのシャツとネクタイの替わりに、スーツの中は黒のTシャツを着ていた。どこから見ても、やはり彼はとてもハンサムに見える。

トレーシーの方はタイト・スカートの青いドレスだった。とてもタイトなので、急いで腰をかけたりしたら、縫い目から破れてしまいそう。実際、ドレス全体が体の曲線に密着したようなタイトなもので、服を着た上から見ても、どのような体つきかを想像するのに、たいして想像力は要らないと思う。とてもセクシーできれい。レストランに行ったら、私よりも多くの人に振り向かれるだろうなと思った。

レストランに着いたのは、7時15分前だった。

案内されたテーブルは壁際のところだったけれど、他のテーブルが見渡せるところにあった。マークとトレーシーはアルコール飲料を注文した。私も飲みたい気分だったけれども、今の格好だと21歳としては通らないのは知っていたし、実際、まだ、その年齢になっていないので、ウェイターに年齢を吹っかけるのはやめにした。もっと言えば、そんな時間はなかったのが事実。ウェイターが注文を取って立ち去るとすぐに、父が入ってきたから。

心臓をどきどきさせながら、ボーイ長の後についてテーブルに向かう父を見ていた。父は、上質な仕立て服と思われるグレーのスーツを着ていて、ブリーフ・ケースを持っていた。と言うことは、仕事から直接ここに来たのだろう。どうしてか分からなかったけれど、父は40歳には思えないほど若々しく見えたし、客観的に見て、とても魅力的な男性だったのだと、あらためて気がついた。

ウエストラインも細く、少しも太っている印象はない。父がエクササイズをしているところを見たことがなかったけれど、胸板も、いつもバーベルを上げているかのように立派だった。背丈も、私より15センチ以上は高く、肩幅も広い。正直言って、自分の父でなかったら、その魅力に惹かれていたかもしれない。

トレーシーは、私がどこを見ているのか見ていたに違いない。彼女は私の脇を肘でつつきながら訊いてきた。

「あの人?」

私は、どうしても父から目を離せず、無言のまま。ただ、頭を縦に振るだけ。

「なかなか素敵な人じゃない? どうして、お父様がハンサムだって言ってくれなかったの?」

父から目を離さぬまま、できるだけ小さな声で返事をした。

「今まで、そのことに気がつかなかったんです」

トレーシーはビデオカメラをテーブルに置いて、父へと焦点を合わせた。準備を整え、録画ボタンを押すとすぐに彼女は言った。

「オーケー。そろそろ、あなたのお父様が、新しくできた娘に会う時間が来たようね」

トレーシーが言うことも分かっていたけれど、どうしても足を動かすことができなかった。足を動かすだけでも、とてつもない勇気が必要だった。

私が立ち上がるとすぐに、父が私に視線を向けたように感じた。私は父が座っている方に顔を向けた。やっぱり、本当に、父は私を見ている!

父が私を見ていると知った後は、もう、どんなことになっても、最後まで乗り切らなければならないと悟った。父の顔を見つめながら、彼の座るテーブルへと歩いていった。父の顔からどんどん血の気がうせていくのが見えた。まるでショックを受けたかのように、口をあんぐりと開けている。

ようやく、父のテーブルまでの12メートルほどを進みきり、父の前に立った。

「座っても構いませんか? それとも、消えた方が良いですか?」

父は紳士的に立ち上がり、答えた。

「私は息子が来るのを待っているんですよ・・でも、・・・」

父の声は次第に小さくなり、その後、認識したらしい表情が顔に浮かんだ。

「まさか、スティービー?」

このときになって初めて、私は、父が私のことを認識していなかったのだと気がついた。でも、父が青ざめた顔になったのはどうしてなのだろう? なぜショックを受けたような顔になったのだろう? でも、その時点で私が考えていたことは、そのことではなかった。

「ええ、お父さん。私です。でも、今はステファニという名前で通っています」

「ああ、そうか。それなら訳が分かるね。あ、そうだな。座った方がいいな。このままだと、みんなの注目を浴びることになりそうだから」

父はたどたどしい口調で言った。

いまだに父は自分がしたことを分かっているとは思えないのだけれども、この時、父は、私のために椅子を引いて、私が腰を降ろすのを待っててくれたのだった。私は、腰を降ろしながら、どうしてもにっこりと微笑んでしまった。

父が腰を降ろすと、ウェイターが来て、メニューを出し、飲み物の注文を聞いた。バーボンのダブルをオンザロックで、と父が言い、私はダイエット・コーラを頼んだ。

ウェイターが去ると、父はメニューを眺め始めた。私は、しばらく黙っていたが、持ちきれなくなって、話しを切り出した。

「お父さん、食事を始める前に、話し合っておいた方が良いかと思うんだけど・・・」

「いや、まずは食事を済ませてしまおう。その後、どこか静かなところに行って、話そう。お前には、話したいことがかなりありそうなのは分かっているよ。私もお前に話さなくちゃいけないことが2、3あるし。会話を他人に聞かれたくないんだ。お前にも分かると思うが」 父はメニューを見ながら、そう言った。

二人とも何を食べるか決め、注文をした。その間、父が私の挙動を逐一見ていることに、どうしても気づかずにはいられなかった。私がコーラを啜るところをじっくり見ているし、食事が届いた後も、私が食べ物を一口サイズに切り、口に運ぶところを、しっかり見つめていた。だんだんと、自分が何かの科学的な実験対象になっているような気持ちになっていた。

食事が済み、私は満腹になっていたので、デザートは断った。すると父はレストランのバーの方の客席に移動して、話しをしようと提案した。私は、その提案に乗り、立ち上がった。すると父は素早く私の後ろに来て、私の椅子を引いてくれた。

レストランを出るとき、振り返ってトレーシーとマークを探した。二人とも立ち上がるのが見えた。それに、私たちがバーの方へ入っていくと、二人もついてくるのが見えた。

父と私は、一番奥のブースに腰を降ろした。そこだと、他のお客さんから離れてふたりっきりになれるところだった。父は、お酒のお代わりをし、私は、ダイエット・コーラのお代わりをした。

「どうやら、お酒はやらないようだね」

注文を受けたウェイトレスが、トレーシーたちの方へと注文を取りに去った後、父が言った。

「まだ、その年になっていないから」

「アハハ・・・だけど、以前は、そんなことお構いなしだったじゃないか?」

私もつられて笑っていた。と言うのも、私は、自分が16歳になってからは、いつものようにアルコールに手を出していたことを思い出したから。

「お父さんが前に言ってたよね。『歳とともに思慮深くなるものだ』って。・・・それに、私は、もう、ああいう子供っぽいことはやめちゃったんです」

父は、急に真顔に戻って言った。

「さっき食事をしていたときに、お前の態度の変化については気づいたよ。前は、お前のテーブル・マナーに、私はいつも恥ずかしい思いをしたものだ。でも、今夜、それがまるで変わったことに気がついたよ。変わったといえば、いつから、お前は、こういうふうに変わったのだい?」

「トレーシーとマークのところに住むようになってから。トレーシーに言われたのだけど、彼女、私が食堂で働いていた時に、私の中にそういう兆候があるのに気づいたらしいの。生まれて初めて、こういう服装をした時、私は、まさに女の子の服装になっているのが本来の自分にふさわしいような感じがしたんです・・・」

父によく分かってもらおうと、こう言った後、少し沈黙して間を置いた。

「・・・でも、変わったことと言えば、お父さんも、私の格好にあまり驚いていないように思うわ。もっとも、それは、それで当たり前だとは思うけど・・・」

それを言った途端、父の顔が急に変わった。まるで私が父の頬をひっぱたいてしまったような表情をしている。父は、どもるような口調で言った。

「それはそれで当たり前だって、それは、ど、どういう意味なんだ?」

「あ、ごめんなさい。そんなことを言うべきじゃなかった。とても仲良くできていたのに。私、いつも、こうやって、お父さんとの関係を台無しにしてしまう」

「謝ることはないよ。ただ、どうして、そう言ったかを話して欲しい。ああいうふうに言った理由があるはずだから」

今夜は、父と私が一緒に過ごした時間の中でも、最高に友好的な時になりそうな夜だったし、私は、本心から、このひと時を台無しにしたくなかった。だけど、どうして父は私を愛してくれなかったのか、そのわけも知りたかった。

父になだめられて、それに促されるように、私は話し始めた。

「何と言うか・・・お父さんは、いつも、とてもよそよそしくて、私のことを好きじゃないように見えたわ。子供の頃も私を抱きしめてくれたことが一度もなかったし、お母さんが死んでからは、ただ握手するとか、背中を軽く叩くとか、それだけ。私のことに、まったく無関心だった。だから、私がこんなふうに変わっても、気にしないんだろうなって。でも、私、お父さんがどうして私を嫌っているのか分からなかった」

「お父さんは、お前のお母さんの言いつけを聞くべきじゃなかったね。分かっていたんだが・・・」

父は、そう言い始めた。何のことを言っているのか、私が訊く前に、父は続きを語っていた。

「・・・少しずつ話そうと思っていたけど、お前も、訊いてくれたことだし、一度に全部、話してしまわなければならないようだ・・・」

「・・・お父さんが、お前のことを愛していないなんて、絶対にそう思わないで欲しい。お父さんはお前のことをとっても愛しているんだよ。だが、お母さんは、お父さんにお前への愛情を示さないようにして欲しいと思っていたんだ。お父さんが、お前に多大に愛情を注ぎ込むと、お前がゲイになるのではないかと心配してね・・・」 

父は私の手を握りながら語った。

「・・・お父さんとお母さんが高校時代からデートしていたのは知ってるよね? お父さんとお母さんは、同じ教会に通っていて、そこで恋に落ちたんだ。高校時代は、一度もセックスをしなかった。確かに、ちょっとはヘビーなペッティングとかはしたけど、それ以上は決してしなかった。それはお父さんたちが信じていた信仰に反することだったから、禁欲を守っていたんだよ・・・」

「・・・お父さんが、大学に上がり、別の町に出て行くことになった前の夜、お父さんもお母さんも、本当に悲しくなってしまった。そして、いろんなことが連鎖して、気がついたら、お父さんとお母さんは愛し合っていたんだよ。でも、そのことに二人とも罪悪感を感じてしまって、今後は、結婚するまで待つことにしようと、お母さんと二人で誓い合ったんだ・・・」

「・・・3ヵ月後、お母さんから電話が来て、子供ができたと告げられた。何も考えずに、直ちに故郷に戻って、お前のお母さんと結婚したよ。勘違いしないで欲しいが、お父さんは、決してそれを後悔していない。お前のお母さんのことを本当に愛していたし、いずれ、結婚することになると思っていたから。・・・少なくとも、あの時は、そう思っていたから・・・」

「・・・結婚式の後、お父さんは大学に戻って、勉強を続けた。本当は、故郷に留まって、お母さんやお前の世話を見ていたかったんだが、お母さんの両親にも、お父さんの両親にも、学校に戻るべきだと強く言われてね。ともかく、最善のことは、お父さんが、家族を養えるように学位を取るべきだと言われたんだ。お父さんが大学に行っている間、お父さんやお母さんの両親がお母さんやお前の面倒を見るからと・・・」

「・・・今から思うと、大学に戻ったことは、多分、悪いことだったと思う。だけど、いまは分かっても、あの時は分からなかったわけだからね。それに、大学に戻らなくても、いずれいつかは、ああいうことが起きただろうなって、思っているんだ・・・」

私は、何が起きたか想像できたけれど、ともかく、父に話しをさせることにした。

「・・・大学1年になって半年位した頃だったと思う。その時、お父さんはルームメイトと一緒におしゃべりをしていた。大学についての不満とか、セックスについての欲求不満とかを喋っていた。二人ともかなりお酒を飲んでいてね・・・まあ、その後、どんなことになったか、お前にも想像できると思う・・・」

「・・・お父さんは、その時は知らなかったんだが、お父さんのルームメイトはゲイだったんだよ。そして、その人としたセックスは夢のようだったんだ。お母さんとのセックスよりもずっと良かった。・・・なんだか、いま大変なことを話しているね・・・それは、お父さんも分かっているよ。でも、それが事実だったんだ。休みになるたび、お父さんはお母さんのところに戻って、何も変わっていないように振舞っていた。でも、お父さんの心の中では、早くルームメイトのところに戻りたいって思っていたんだよ・・・」

私には、このことが父を心から苦しめていたことが理解できていた。父の目には苦悩の表情が見て取れた。この後、父が何を言うのか、私にははっきり分かっていた。だから、最後まで話してもらう必要はなくなっていた。私は父の手を握った。

「お父さん、話しを続けなくても良いんだよ。お父さんがどんな気持ちでいたか、理解したから」

父は手で涙を拭った。

「多分、分かってくれるとは思う。だけど、お父さんに、ちゃんと説明させておくれ。どうしてお前が、お父さんがお前のことを愛していないように感じてしまったか。そのわけを・・・」

「・・・お前も分かってる通り、お父さんは、大学を出た後、ここロサンジェルスで仕事を得た。そして、お前とお母さんをこっちに呼び、本当の家族のように、一緒に生活を始めた。お父さんは、男の人に近づくようなことさえしなければ、多分、大丈夫だと思ったんだ・・・」

「だいたい1年くらいは、それで完全にうまくいっていた。だけど、以前の衝動が、時々、戻って来ることも続いていたんだ。それから、間もなくして、やっぱりお父さんは他の男の人と会い始めてしまったんだ。このような状態がばれてしまうんじゃないかと、お父さんはいつも不安に悩まされることになってしまった。そして、とうとう、お母さんに、本当のことを告白したんだ・・・」

「・・・お母さんはかんかんに怒ると思っていたし、お父さんと離婚したがるだろうなと思っていた。でも、お母さんは、離婚は望んでいなかったよ。お前が、父親のいない子供として成長するのを望んでいなかったから。お母さんは、秘密の状態にしておく限り、お父さんが、誰と何をしようと構わないと言ってくれた。ただ、条件が3つあると言った。一つは、決して、外の交際を家の中に持ち込まないこと。2つ目は、お金を全部、外の交際相手に使ったりしないこと。そして3つ目は、お前をお父さんのようなホモにしないこと・・・」

「・・・お母さんは、同性愛嗜好というのは遺伝すると考えていたんだ。お母さんが、どうしてそう考えたのか、お父さんには分からない。でも、お母さんは、そう信じていた。そして、お母さんは、お父さんがお前に過剰に愛情を注ぎ込むと、お前も私のようなゲイになってしまうと考えたんだ・・・」

「・・・だから、お父さんは、お母さんの願いを聞き入れて、お前と距離を保った。確かに、お母さんが事故で死んでしまった後、お前にもっと愛情を示してあげることもできたけれど、お父さんは、そうしないよう、自分に条件を課してしまった。いま思うと、そんなことをしなかった良かったと思っているよ。そうしたら、多分、お前との間にあんなに問題は起きなかったと思う」

父は、話しの間ずっと、私の両手を握り続けていたし、私も父の手を握っていた。

「お父さん、私、あんな生意気で、聞き分けのない子供でいて、ごめんなさい。お父さんが怒るのを知っていて、わざとああいうことばかりしていた。そうすれば、少なくともお父さんが私のことを振り向いてくれると思って」

私の目から涙が溢れ出すのを見て、父は私の横に席を替わった。そして、まったく躊躇することなく、私を両腕で抱きしめてくれた。この時こそ、私のそれまでの人生で一番の瞬間だった。そして私の涙は、すぐに、嬉し涙に変わっていた。

しばし、そうやって父と抱き合っていると、トレーシーの声が聞こえた。

「どうやら、何もかも、大丈夫のようね?」

私は顔を上げた。

「ええ、すべて、嬉しいことばかりなの」 それから父に向かって、「お父さん、こちらのお二人は、マーク・モーガンとトレーシー。私の友達で、雇い主でもあるの」と二人を紹介した。

父は立ち上がり、マークと握手をし、私たちと同席するように誘った。私たちは、それから飲み物を飲みながらおしゃべりをした。しばらく経ち、父は、そろそろ、おいとまする時間が来たと言った。トレーシーは父の手を取り、言った。

「明日、私たち、ステフィーのためにパーティを開く予定なんですよ。ぜひ、あなたにも来て欲しいわ」

「ぜひ、そうしたいです」

父はそう言ったけれど、私は、父は、多分、その言葉に続けて、来れない理由を話すだろうと思った。

だけど、トレーシーは、すぐに父に名刺を渡し、断る隙を与えなかった。

「それは良かったわ。これが私たちの住所です。パーティは7時から。道が分からなかったら、ご遠慮なさらずに電話をくださいね」

「7時ちょうどに窺えるかは分かりませんが、必ず、出ることにしましょう」

父はそう言って立ち上がった。

トレーシーとマーク、それに私も立ち上がった。父はマークともう一度、握手をし、トレーシーとも握手をした。トレーシーは、ただの握手だけでは満足できなかったようで、父に近づき、頬にキスをした。

その後、父は私の方を向いた。最初、父は私とも握手をしようとしてるのだろうと思ったけれど、次の瞬間、私は父の両腕に包まれ、きつく抱きしめられていた。それから、私たちは、互いの頬にキスをしあい、二人とも相手を愛していることを伝え合った。ハグを解く前に、またも私の目から涙が溢れ出ていた。

3人で父を見送った後、トレーシーが言った。「結局、良い思いつきだったみたいね。あなたがお父様に会うことは」

「素晴らしいことだったわ。否応なく父と会うようにさせられて、今となっては、とてもよかったと思ってるの」

トレーシーは腕を回して私を抱き寄せた。

「それで、お父様には、誰か決まった人がいらっしゃるのかしら? もしいなかったら、お父様がここに滞在している間に、ちょっとしたお楽しみを味わえると良いんだけど」

私はくすくす笑った。「多分ね。父とマークは仲良くなるかしら?」

「バカね。私は、あなたのお父様と私のことを話しているのよ」 トレーシーは、そう言ってから、ふと気がついたように、続けて言った。「あら! ひょっとして、それって、驚くようなことなの?」

車へと向かいながら私はトレーシーに答えた。

「そうかも。それに、父は、いまも、その点は変わらないみたいだったから」

家へ戻る車の中、私は、マークとトレーシーに、父からの話しを語った。すべてを語ったわけではなかったけれど、二人とも事情が分かったようだった。

家に着くとすぐ、私はマリアに、今日起きたことをすべて話した。マリアは、私と同じくらい興奮して喜んでくれた。その夜、私とマリアは、トレーシーとマークのベッドに呼ばれ、4人で素晴らしいセックスをした。私が中心となって、3人に喜ばされていたのが大半だったけれど、私以外の人もそれぞれ楽しんだのは間違いない。

翌、土曜日の朝、私たちは10時ごろベッドから這い出て、朝食を食べた。お昼すぎからパーティの準備に取りかかった。料理はすべて配達されてくる予定だった。2時ごろ花が届けられた。その結果、あまり急ぐことがないことになったので、みんな、午後は大半、日光浴をして過ごしていた。

マリアと二人でシャワーを浴び、パーティのための服に着替えていると、トレーシーとマークが私の部屋にギフト用にラッピングされた箱を持ってやってきた。トレーシーは、その箱を私に差し出しながら言った。

「お客さんたちが来る前に、マークと二人で、これをあなたにあげたいと思ったの。みんながプレゼントを持ってくるか分からなかったから、もし、持ってこない人がいても気まずい思いをして欲しくないので、今のうちに渡しておくわね」

「こんなことをしていただかなくても良かったのに。お二人には、この3ヶ月、とてもよくしていただいたから」

私はそう言って感謝し、プレゼントを開いた。

箱の中には、何か水のようなものが詰まった、2つの半球状のものがあった。直径が13センチくらいで、高さは5センチくらいのもの。これが何で、何のために使われるのか、私にはさっぱり分からなかった。

トレーシーが笑っていたところを見ると、私は本当に困った顔をしていたに違いない。

「おばかさんね。これは豊胸用のインプラントよ。マークと二人で、あなたの豊胸手術のお金を払うことに決めたの。そのためにあなたの口座を空っぽにして欲しくないと思ったから」

「とても高いんですよ、知っているんですか?」 多分、二人とも知ってて買ってくれたのだと知りつつ、そう尋ねた。

「もちろん、知ってるさ。それに、俺たちも、君の胸を楽しませてもらうわけだしね」 とマークは微笑みながら言った。

私はどう言って感謝してよいか分からなかった。ただ、ありがとうと言い、二人それぞれに心を込めてキスをした。

パーティは7時開始だったけれど、8時近くなって、ようやく人が集まり始めた。集まった人の大半は、ポルノ産業の業界人だった。男性が多かったけれど、セットで私と一緒に働いた女の子たちやシーメールたちも何人か来ていた。

驚いたことに、エイカー先生も来てくれた。先生は、私が父に私がトランスジェンダーであることを話したばかりでなく、二人の関係についていろいろ話し合ったというのを聞いて、とても喜んでくれていた。

9時ごろ、父もやってきた。父は来ないだろうと思っていたので、この時は本当に驚いてしまった。父は私にラッピングされた大きな箱を渡して、言った。

「お前がこれを開ける時には、私もその場にいたいと思っているんだ。この贈り物の背後にある意味をちゃんと理解してくれるか確かめたいのでね」

私は、父と二人になって、話し合いができるときまで開けないと約束した。

私の部屋にそのプレゼントを置きに行った後、父をエイカー先生のところに連れて行った。二人が仲良く談笑を始めたのを確かめた後、私は、父たちのところから離れ、パーティの他のところを巡回し始めた。一通りみんなのところを回った後、戻ってみると、すでにエイカー先生は姿を消していて、父はマリアと話しをしていた。

10時になる頃には、服を脱ぎ始める人が出てきた。最初は、トップだけだったけれど、11時を回る頃には、かなりの人が素っ裸で家の中を走り回っていた。12時ごろになると、2人組や3人組でセックスをしている人を見かけても普通になっていた。1時には、乱交パーティ真っ盛りの状態になっていた。

ヘレンもすっかり開放的になっていて、彼女の才能を試したいと思う人なら、誰にでも存分に才能を発揮していて、引っ込み思案になる様子はなかった。トレーシーも、次から次へと、彼女の穴を埋めようと集まった裸の男たちに覆いかぶさられていた。

午前2時になる頃、いつの間にかマリアの姿が見えなくなっていた。それに父もいなくなっていた。多分、父は帰ったのだろうと思ったが、挨拶もせずに帰ってしまったのが悲しかった。

でも、いつまでも悲しんでいたわけではない。そんな暇もなく、私も裸の男女の集団に引きずり込まれ、あっという間に、お尻に埋め込まれていたし、口にも入れられていたから。口を犯すペニスがないときは、とてもクリーミーな女陰が現れて、私の舌使いを楽しんだ。

夜明けになり、私はヘレンと二人でなんとか寝室に入った。この頃までには、ほとんどすべての人が、満足して帰って行ったか、失神して床やソファに寝ころがっていた。ヘレンも私もベッドに入ると、ただおやすみのキスをするだけで、すぐに疲れきって眠ってしまった。

目を覚ました時には、すでに午後2時近くになっていた。まるで二日酔いのような頭痛がしたけれど、昨夜は、こんなになるまで飲んだわけではなかったのは覚えている。熱いシャワーを浴び、体じゅうをしっかり洗いきると、少し気分が爽快になってきた。

11月の中旬なので、外はそれほど暑くはないだろうと思ったけれど、今年の秋は暑さが続いていて、この日も例外ではなかった。そこで、軽くお化粧をした後、上は、クロップ・トップ(参考)のTシャツにし、下着にはサテンのパンティを履き、その上にAラインのスカート(参考)を履いた。

着替えの後、飲みたくて堪らなくなっていたコーヒーを求めてキッチンへ入った。コーヒーを入れたポットがないところを見ると、最初に起きてきたのは私なのだろう。私は、大きなポットを使ってコーヒーを用意した。コーヒーの香りが家全体に広まればすぐに、みんなが集まってくるだろうから。

最初にキッチンに来たのはマリアだった。頼まれるまでもなく、私は彼女に大きなカップでコーヒーを注いであげた。マリアのすぐ後にヘレンも来て、入れたてのコーヒーを啜った。とたんに、生き返った表情になる。

最初は、誰も口を利かず、ただコーヒーを啜るだけだったけれど、何分かして、私はマリアに話しかけた。

「マリア? お父さんが何時ごろ帰って行ったか、知ってる? 最後に父に声をかけたとき、あなたとお話しをしていたようだったけど」

マリアは、テーブルを見つめたまま、急に顔を明るいピンク色に染めた。そして、ちょっと意味ありげにクスクスと笑い出した。

「本当のところ、彼はまだ帰っていないの」

それを聞いて、私は、瞬間的に、父とマリアが一緒に寝たのだと分かった。最初は、嫉妬の気持ちに胸が苦しくなったけれど、その痛みもすぐに消え、むしろ、父の幸せを喜ぶ気持ちに変わった。マリアが、愛し合う相手としてこの上なく素晴らしい人だというのは、私自身、身をもって知っているから。

「よかった。お父さんがさよならも言わずに帰ってしまったのかと思っていたのよ」 そう言って私はコーヒーをひと啜りした。

私の言葉にマリアが驚いたのかは分からない。けれど、彼女は、父と一緒に寝たことについて、私が怒っていないことをすぐに理解してくれたようだった。それから後は、私たちの会話は、誰がパーティに来て、どんなことが起きたのかという話題に変わった。

20分ほどしたら、今度は父がコーヒーを求めてキッチンにやってきた。私は、父を私とマリアの間に座らせ、コーヒーを出してあげた。父は、愛しあった相手と自分の娘の間に座らされて、ちょっと気恥ずかしい気持ちになっている様子だった。

父の緊張感を和らげようと、私は声をかけた。「お父さん? 今、プレゼントを開けてもいいかしら?」

「ああ、それがいい。ここに持ってきて、お友達に見せてあげるといいよ」

そのように言う父の声の調子から、何かしゃべったことで、気持ちが落ち着いたらしい様子が感じ取れた。

プレゼントの箱は、長さ45センチ、幅25センチくらいの大きさだった。中身がダンボールの箱ではないのが分かる。とても重い、木製の箱みたい。

箱を前に置いて、父の隣に座った。「開けてごらん」という父の声に促されて、包み紙を縛ってあるリボンを解き、そして包み紙を開けた。そして私は、すぐに、何をプレゼントされたのかが分かった。母が持っていた古い宝石入れのボックスだった。

子供の頃、私は、そのボックスを触ってはいけないし、その中にあるものを使って遊んでもいけないと言われていた。母が、何か装飾するものが欲しいとき、そのボックスの中を探していたところを何度も見たことがあった。母が死んだ後は、この時まで、私はこのボックスのことをすっかり忘れていた。

顔を上げ、父を見た。 「これを覚えているよね?」

「ええ・・・お母さんの・・・」

父は私の肩に手を置き、優しく抱き寄せた。

「ただの、お母さんのジュエリー・ボックス、ってわけじゃないんだよ。このボックスは、5世代に渡って、代々、母から娘へと譲り渡されてきたものなんだ。お母さんが死んだ後、お父さんは、お前が結婚した時、お前の奥さんになる人に渡せるように、これを保管庫にしまっておいたんだ。お母さんはお前のことをとても愛していたから、お母さんも、お前がこれを譲り受けるのを望んでいると思うよ」

私は胸が詰まって、どう返事してよいか分からなかった。ただ、目に涙を溢れさせながら、両腕で父を抱きしめることしかできなかった。

ようやく気持ちが落ち着いた後、私はボックスの中をいろいろと調べ始めた。そしてすぐに、この目の前の宝石箱の中に、ちょっとしたひと財産が入っていることに気がついた。古いアンティークの宝飾品で、かなり貴重なものなのではないかと思った。後に、トレーシーに促されて、保険をかけるために査定してもらったけれど、そうする前に、直感的に貴重なものだと分かった。適切なコレクターにとっては、ここにあるものは100万ドルをゆうに超える額になるだろう。

父は、ボックスにあるいろいろなものについて説明をしてくれた。誰が誰に買ってあげたものか、どんなことを記念して買われたものか、など。父が母のために買ったものも紹介してもらった。

宝飾品について話しをしてもらい、その後、マリアとヘレンがテーブルを離れた後で、私は父に訊いてみた。

「お母さんが、こんな私でも構わないと思うかしら?」

「いいかい、お前のお母さんは、心からお前のことを愛していたんだよ。お父さんは、お母さんがどれだけお前のことを愛していたか知ってるから、大丈夫、お前が何をしようとしても、100%賛成して守ってくれたはずだ。そうお父さんは思っている。もっと言えば、男の子だったときよりも女の子として、もっと愛したことだろうと思ってるんだ」

「もう一つ訊いてもいい?」

「ああ」

「この前、レストランで私が立ちあがったとき、お父さんは、すぐに私のことを分かったと思うんだけど。顔の表情から、そう思ったの。とても怖いものを見たような顔をしていた。でも、お父さんのテーブルの前に行ったら、お父さんは、私が誰だか分からないような顔をしていたわ。どうして、あの時、お父さんは、あんなに何か怖がっていたのか、気になっていて」

父は笑い出した。「ああ、あの時は、幽霊でも見たのかと思ったんだよ。お前は、お母さんの顔を忘れてしまったのかい?」

正直、母の顔ははっきりと覚えていなかった。思い出そうとしても、いつも、曖昧なイメージしか頭に浮かんでこなかった。何かモヤがかかったようなイメージだけだった。

そのことを父に言うと、父は財布から写真を取り出した。

「そうだろうと思ってね。その写真を見れば、お前がとてもお母さんに似ていることが分かると思うよ。お父さんは、レストランで向こうから歩いてくるお前を見て、お母さんが歩いてきたと思ったんだよ」

写真を見て、すぐに、とてもよく似てることが分かった。同じ鼻の形、同じ目をしている。耳とあごは、少しだけ私の方が大きかったけれど、それを除くと、私と母はまるで姉妹のように見えた。

4時ごろになり、父はボルチモアに戻る飛行機に乗るため、もう行かなければならないと言った。父は、着替えをするため、マリアと一緒に、マリアの寝室に行った。ただの着替えをするのに、30分以上もかかることはないのは分かっていたけど、もちろん、そのことには触れずに置いた。

玄関先で、私は父にお別れのキスをし、これからも連絡を取り合っていこうと約束しあった。父と私が別れの挨拶を済ませるとすぐに、マリアが父の首に両腕を絡めて抱きつき、2人は熱のこもったディープキスをした。マリアは、父に、次にこちらに来る時は、必ず電話をし、デートに誘うよう約束させた。実際、この後の2年間、父はロサンジェルスに来るたびにマリアとデートをしている。

20歳の誕生日を迎えた10日後、私は豊胸手術を受けた。どれだけ痛みを味わうことになるのか、前もって知っていたり、誰かに教わっていたら、多分、手術は受けなかったと思う。

鎮痛剤と麻酔をかなり与えられていて、意識を失っていたので、手術中は何も感じなかった。手術室に入っていくところと、外科医を見たところまでは覚えていたけれど、その後は、あまり覚えていない。

目を覚ますと、胸の上に大きな重石を乗せられているような気がした。胸が、予定より5倍近く大きすぎるように思った。実際は、その大半は私を包んでいた包帯やガーゼだった。

当日、家に戻り、それから3日間は、何をすることも許されなかった。お医者さんは、すぐに仕事に戻っても構わないと言っていたけれども、トレーシーは、それを許さなかった。胸がいつも痛んでいたことは、ある意味では、嬉しいことだった。というのも、その痛みが、まるで誰に胸を強く揉まれたり、乳首をつねられていて、それがずっと続けられているような感覚だったから。

マリアとトレーシーから受けた世話には、決して、苦情を言えない。2人は交替で、私の身体をスポンジで洗ってくれたり、一緒にいて、映画を見るのに付き合ったり、おしゃべりをしてくれた。2人の心のこもったお世話と鎮痛剤のおかげで、私は何とか最悪の時期を乗り越えた。

次の月曜日、包帯を外す時が来た。そして私は初めて自分の乳房を見たのだった。

固く、こんもりと高く盛り上がった胸だった。誰かに2つの丸いボールを皮膚の下に入れられたように見えた。お医者さんは、1ヶ月ほどで、新しい乳房の周りの皮膚が馴染んできて、ずっと自然な形に見えるようになると仰ってた。

手術を受けてから、セラピーのグループ・ミーティングを2回欠席した。術後、初めて出席した日は、まったく痛みを感じなかった初めての日でもあった。ミーティングに行くのに着ていく服装を慎重に選んだ。

下着には、ブラジャー機能も備えたコルセットを選んだ。そのコルセットのおかげで、私のCカップの胸がきゅっと引き寄せられ、押し上げられる形になる。実際、少しカップから白肌が盛り上がって見えた。脚には、濃い目の色のストッキングを履いた。ストッキングの生地には花が刺繍縫いされている。ハイヒールには、持っているうちで一番かかとが高いものを選んだ。13センチのスティレット・ヒールのサンダルで、ドレスに完璧にマッチするもの。

ドレスは、前に買っておいたものだったけど、胸ができるまでは着ないつもりでいたものだった。ラベンダー色のドレスで、首のラインが深々と切れ込んでいる。コルセットが私の新しい胸を盛り上げているので、このドレスを着ると、胸の盛り上がりが強調されて見えることになる。

ジュエリーには、ダイヤのネックレスを選んだ。首からかけると、ちょうどダイアモンドが胸の谷間に落ち着く。それに、ネックレスに完璧にマッチしたダイアのイヤリングもつけた。

ミーティングの部屋に入ると、他の女の子たち全員が、即座に、新しく変身した私に気づいた。むしろ、自分から見せびらかす服装をしてきたのだから、私の新しい胸に気づかないはずがないと言った方が良いかもしれない。今はどんな気持ちかとか、手術はどうだったかと、みんなが、山ほど質問をしてきた。どういうわけか、その時点では、手術後に味わった苦痛は、そんなにひどいものだったとは感じなくなっていた。もっと言えば、痛みのことはほとんど忘れていた。ミーティングを終え、ホルモンを注射してもらった後、家に戻った。

家に帰ると、トレーシーもマリアも、そしてマークも、ミーティングではどうだったかと訊いてきた。私は、みんなから注目を浴びたことを、嬉しさに夢中になって喋った。そして、それから、あまり時間も経たずに、私たち4人は一緒にベッドに入っていた。

最初は、トレーシーとマリアと私がベッドに上がった。私のドレスは床に脱ぎ捨てられたまま。コルセットは着ていたけれど、中から乳房を引っぱり出されていた。マリアとトレーシーが左右から私の胸にしゃぶりついている。クリトリスもパンティの中から出されていて、二人に代わる代わる擦られていた。

マークはムービー・カメラを持っていた。それを見て、一瞬、身体が強張った。もしかすると、私の知らない誰かが、私のセックスを見ることになるかも知れないと思ったから。でも、その緊張感はすぐに消えた。むしろ、知らない誰かが私の姿を見て興奮してくれるかも知れないと思い、そのことで私自身が興奮してくるのを感じた。

カメラに撮られていたので興奮したのか、誰か知らない人が私たちのしていることを見るかもしれないと思ったので興奮したのか、どちらなのか分からなかったけれど、どういうわけか、私はものすごく興奮していた。マリアが私のクリトリスを吸おうと体の向きを変えたとき、私も、すぐに向きを変え、彼女のクリトリスにむしゃぶりついていた。

マークがカメラを寄せてきたのに気づくと、私は、いっそう激しくマリアのクリトリスを舐めしゃぶった。マリアは、低い唸り声を上げ始め、腰をうねらせていた。そして、それから1分も経たずに、私の口に射精し始めた。

そのまま、飲み下してしまうこともできたけれど、それは何かもったいない気がして、マリアのクリトリスを口から出して、手でしごき、私の乳房に降りかかるようにさせた。

カメラが回っているときはトレーシーも仲間はずれになるわけにはいかない。素早く、私の乳房にかけられたマリアの精液を舐め始め、その後、口を私の口の上に持ってきて、口の中に溜め込んだ体液を、たらりたらりと流し、私に飲ませた。

それからトレーシーは私の顔の上にまたがった。私にあそこを舐めさせるため。そこは、すっかり濡れて、びちゃびちゃになっていて、トレーシーがどれほど興奮しているのか分かった。口を開けたままでいると、文字通り、ぽたぽたと滴が口に落ちてくる。でも、それは私には嬉しいこと。私は、彼女の美味しいジュースをすぐに全部舐め取ってしまった。

舐め取るとすぐにトレーシーは私の顔にあそこを押し付けて、腰を動かして擦りつけ始めた。顔は見えなかったけれど、声からすると、今にも頂点に達しかかっているのが分かる。彼女がお腹に力を入れて、いきむのを感じた。すると、そのすぐ後に、クリームのように濃厚な蜜が穴の中から注ぎ出て、私の顔に勢いよく降りかかった。

ここでトレーシーは、私を少し休ませてくれるのじゃないかと思ったけれど、それは私の間違いだった。オルガスムに達したトレーシーが私の顔から降りるとすぐに、マリアが来て、私をうつぶせにさせた。パンティが引っ張られて、膝のところまで降ろされるのを感じた。まるで強姦されるような荒々しい扱い。パンティの脱がし方も、少し怖くなるような乱暴な脱がし方。

パンティを剥ぎ取られるとすぐに、マリアの指がアヌスに侵入してくるのを感じた。マリアは前もって指に潤滑剤を塗っていたようで、あっという間に、3本指でドリルで穴を開けるように私のアヌスをほじっていた。その荒々しい扱いに、私は、ただ、ああん、ああんと弱々しい泣き声を上げることしかできない。でも、これは、次に始まることの序奏にすぎなかった。

振り向くと、トレーシーがストラップオン(参考)のダブルエンダ型ディルド(参考)を取り付けているのが見えた。

マークが手伝って彼女の腰にしっかりと装着させ、トレーシー自身は、ダブルエンダの小さい方のディルドを自分で陰部に押し込んでいた。装着し終えるとトレーシーは私の顔のところにやってきて、ディルドを私の口に向けて突き出した。

何も言われなかったけれど、私はすぐにディルドを咥え込み、舐め吸いを始めた。頭を上下に動かしてしゃぶる。だけど、それではトレーシーは満足しないようで、私の頭をがっちりと掴み、腰を前後に動かし始めた。やがて、その動きは激しくなり、私の口をぐいぐい犯すような雰囲気になっていった。

これが、だいだい5分くらい続いたと思う。その後、トレーシーはようやく口からディルドを引き出し、彼女自身もベッドの上にあがり、私の背後に回った。私の足の間に位置取ると、ぴしゃりと私のお尻を叩いて、言った。

「四つんばいになって、エッチなお尻を突き出しな。淫乱なお前にふさわしく、お前をめちゃくちゃに犯してやるから」

私は、肩越しに振り返って返事をした。

「はい、トレーシー様。やってください。お願いです、私を犯してください!」

マークが、私の顔をカメラに収めているのが見えた。

マークは、ディルドの先端が私のアヌスを突き刺すところに間に合うよう、素早く後ろに回った。強烈な挿入を、ああーんと甘くよがり泣きしながら、受け止め、それから、自分からお尻を突き返し、ディルドを根元まで受け入れた。

トレーシーは、一定したリズムの力強い突きでピストン運動を始めた。私も彼女の突きに合わせて押し返す。すでに、私はお尻を荒々しく犯される感覚に圧倒されていて、私は目を閉じ、その感覚に浸った。

目を閉じると、自分が本当に魅力的な娘になって、欲望に取りつかれた男に襲われ、激しく犯されているような気分になった。突き入れに合わせて、重みのある乳房が揺れ、そこからこれまで知らなかった快感が沸いてくるのも新鮮だった。

その快感に没頭しかかった時、何か濡れたものが唇に触れるのを感じた。すぐに目を開けると、目の前には、マークの素敵なペニスがそそり立っていて、私の顔を狙っていた。頭のところはプレカムで濡れててきらきら輝いていたし、まるでダイヤですら叩き壊せるほど固くなっている。

また、トレーシーにぴしゃりとお尻を叩かれた。

「私の男に口で奉仕してさしあげるんだ。その淫らで可愛い唇で優しく包んで、ちゅうちゅう吸うんだよ」

指示されるまでもなく、私はすぐに彼の亀頭を舐め、ぬめりをすべて舐め取った後、口に咥えた。唇で肉竿を包みこむ。マークはまだカメラを持っていたが、そのレンズをまっすぐに見つめて、ウインクをした後、肉棒の根元へ向けて、するすると飲み込んだ。

私の口が小さく上下に動きながら、どんどん肉棒を口に入れていくところを、マークはカメラで追っていた。私は飲み込み続けつつも、何度も顔を上げてカメラに視線を向けた。そうすることで、誰がこのビデオを見るにしても、その人の目も私は見つめることになる。

どのくらい、これが続いたか、私は分からないし、正直、時間は気にしていなかった。でも、あまりしないうちに、二人とも中止してしまった。トレーシーは私のお尻からディルドを引き抜き、同時に、マークも口から抜け出た。

何が始まるかと振り返った。するとマリアも手持ちカメラを持っているのが見えた。トレーシーはマークからカメラを受け取り、ベッド・サイドに降りた。代わりにマークがベッドに上がり、私の後ろについた。マリアはカメラを持ったまま、私の顔のそば、マークがいた位置についた。

言われるまでもなく、マリアの固いクリトリスを口に吸いいれ、喉の奥まで深く飲み込んだ。それと同時に、マークが私のあそこの入り口にペニスを添えるのを感じた。

彼が挿入を始める前に、私はマリアのクリトリスを口から抜いて、後ろを振り返りながら言った。

「お願い、マーク。すごく欲しいの。入れてちょうだい。私のあそこを犯して! 乱暴でもいいの、犯して! お願い!」

マークは唸り声を上げながら、ペニスを一気に私に突き入れてきた。思わず、悲鳴を上げてしまう。

「あぁぁぁ! いい! すごくいい! マーク、ずんずん突いて!」

マークは、鼻息を荒くして、本格的に突きを繰り出し始めた。それを受けながら、私はマリアのクリトリスをもう一度、口の中に飲み込んだ。唇に力を入れて、ぎゅうと締め付ける。一方で、括約筋を使って、マークが打ち込むときは緩め、抜け出る時にはきつく絞るようにした。

マークが私の尻頬を左右に広げているのを感じた。だから、多分、トレーシーは、私の肛門がマークのペニスを咥えこみ、いっぱいに広がっているところをしっかり写しているはずと思った。その様子を振り返って見ても良かったけれど、どうしてもマリアのクリトリスを口から出したくなかったから、しなかった。

3人で、この状態でしばらく続けていたら、マリアが唸るような声で、いきそうと言い、私の口から引き抜いて、射精を始めた。私の顔をめがけて撃ち出してくる。私は必死になって口で受け止めようとした。だけど、大半は、顔面と髪の毛に降りかかった。

マリアが射精を終えると、マークも私から抜け出て、素早く私を抱きかかえ、私の体を反転させた。私が仰向けになると、すぐに私の両脚を肩に抱え上げ、再び、私にずぶりと挿入してきた。入れ直されるときの感覚に、嬉しい悲鳴を上げる。

「ああぁぁ! いいぃぃ! もっと、強くやって! もっと、もっと!」

マークは、サカリのついた雄牛のように変わり、続く10分間、激しく私に打ちこみを続けた。やがて、私を見る彼の目に特徴的な表情が浮かび、彼が頂点に近づいていることが分かった。私は自分でクリトリスを握り、しごき始めた。マークは、自分がいく前に私にいって欲しがっているのは分かっていた。私がしていることを見たマークは、打ち込みながらも笑顔を見せ、ちゃんと状況を読んでるんだねと言った。

私がいってしまうまで、時間はかからなかった。いくぅーと叫び、その直後に噴射を始めた。クリトリスから何発も白い愛液が打ちあがり、黒のコルセットの上に降りかかった。そのすぐ後にマークも私に続いて、アヌスからペニスを引き抜き、私の顔をめがけて、びゅっびゅっと射精を始めた。この時も口で受けようとしたけれど、全部、顔面や乳房に振りかけられた。

最後は、私はスペルマまみれになっていた。髪の毛にも顔面にも、そして胸にも。可愛らしい黒のレース・コルセットには、何本も白い線がついていて、両手にも太腿にも、べっとりついていた。

射精を終えたマークが転がるようにして私から離れた後、私はシャワーを浴びるため起き上がろうとした。顔や体に射精されるのは気にならなかったけれど、それが乾いた時に、嫌な感じになるのを経験で知っていたから。トレーシーとマリアは、私の気持ちを察し、素早く私を立たせてくれて、コルセットを脱がし、シャワーを浴びるのを手伝ってくれた。

シャワーを浴び終え、ベッドに戻った後、私とトレーシーとマリアの3人は、互いに抱き合って横になった。トレーシーは優しく私に話しかけた。

「ステフィー? 今夜のあなた、すごく燃えていたわね。セックスしている時、カメラで写されてるのが好きなんじゃない?」

顔が熱くなるのを感じたので、きっと真っ赤な顔をしていたと思う。トレーシーは、そんな私を見て、くすくす笑った。

「何も恥ずかしがることじゃないわよ。私もマリアもマークも、みんな、カメラの前でするのが大好きなんだから」

何を言って良いか分からなかったので、私は無言のままでいた。実際、カメラが回り始めたら、すごく興奮したのは本当だった。もっと言えば、誰か知らない人が、私たちがしているのを見てると思うと、体の底から興奮してくるのを感じたのだった。そういう感覚は、どこか自分では認めることができない感覚だったのだけど。

その週の土曜日、マークは、その時に撮ったビデオを作品化したものを見せてくれた。とても興奮する作品になっていた。撮影した人は、マークだったり、トレーシーだったり、マリアだったりしていたのだけど、作品では誰が撮っているか分からないほど滑らかな編集がなされていた。編集の人は素晴らしい仕事をしたと思った。ビデオの最後には、映画のようにエンド・クレジットが流れた。私たち全員の名前が出ていたし、編集としてビル・グラフトという名前も出ていた。

すぐに、ビル・グラフトという人が誰か、私には分かった。2週間ほど前、セットで彼に紹介されていたから。このような素晴らしい編集をしたのが彼で、彼は編集時に私たちの行為を見たのだと分かって、私はとても興奮してしまった。次の瞬間には、隣に座るマークのところに上半身を傾け、彼のペニスを口に咥えていた。

ビデオを見ている時から、ずっと、マークの股間を触り続けていたのだけど、急に、おしゃぶりしたい衝動が込み上げてきて、我慢ができなくなってしまったのだった。もちろん、マークは拒否しなかったし、実際、5分ほどで、私の口を美味しいスペルマでいっぱいにしてくれたのだった。

私は、それでも、もう一度マークに出してもらいたいと舐め続けていたのだけど、マークは私の口からペニスを抜いて、言った。

「ありがとう、ステフィー。でも、今はここまでにしよう。でも、ステフィーは、このビデオにすいぶん興奮したみたいだね?」

私は顔が赤くなるのを感じた。「ええ、とっても」

「確かにいい作品だな。とすると、これを他の人が見られないなんて残念だね。君がセックスされているとき、どれだけセクシーかを、誰にも見てもらえないなんて」

マークはそう言って、私にキスをした。マークが何か考えたことがあってこう言ったのかどうかは、私には定かでない。けれど、この夜、彼の言葉が私の頭の中にある考えの種を播いたのは事実だった。

続く3か月は、あっという間に過ぎてしまった。私は、次々と映画撮影での仕事を依頼されるようになっていた。マークが、Tガールの映画を作るのが間に合わなくなってきたからだった。Tガールの映画は最近、ますます売れ筋になってきているらしい。

父は、定期的にロスの地域に来るようになった。そしてロスに来るたび、私を夕食に誘ってくれた。それに加えて、私とディナーを食べる夜でない夜は、マリアをディナーに連れて行った。父が私をディナーに連れていく時は、ホテルに帰る前に私を家に送ってくれるのが常だけど、マリアを連れていく時は、マリアは次の日の午前中に帰ってくるのが普通だった。

マリアは父と夜を過ごして帰ってくるときはいつも、私に対してとてもびくびくしている感じだった。なので、クリスマスが近づいたある日、私はマリアに伝えた。

「マリア? 私がマリアを愛していることも、父を愛していることも、マリアは分かってくれていると思うわ。だから、あなたと父が楽しんでいることは、とても嬉しいの。これからもずっと関係を続けてくれるといいなと思っているの。だから、父とあった翌日、私の顔を見ても罪悪感を感じてほしくないなって思っているのよ」

マリアは笑いながら答えた。「確かに、お父様と一緒に過ごしたあとは後ろめたい感じに振舞ってしまってるわね。でも、お父様もあなたも私の好きな人だということは、ちゃんと分って欲しいわ。でも、何というか、お父様と寝るたび、近親相姦のタブーを犯しているような気持ちになっちゃうのよ」

私も笑い出してしまった。「マリアは私ともお父さんとも親族関係じゃないんだから、どうして、そんなふうに考えるのか分からないわ。マリアがお父さんと結婚したとか言うなら、話しは別になるけど」

そう言うと、途端にマリアは狼狽して、そんなことはないと言おうとしていた。けれど、実際には言葉にできないらしくて、わけの分からないことしか言えていない。私は、ますます大きな声で笑い出した。それを見て、マリアも、私がからかっていたのだと分かった様子だった。彼女は、大きな木製のスプーンを持って、家の中、私を追い掛け回した。

あちこち逃げ回ったけれど、最後には、マリアに捕まってしまった。彼女は私のお尻をスプーンで何回か叩いた後、二人とも笑いながら、床に転がっていた。

そのことがあってから、マリアは、父と夜を過ごした後も、私に対して引け目を感じているような素振りは一切しなくなった。もっと言えば、父がロスに来た日の夜はいつも父と過ごして泊まってくるようになった。私と父がディナーを食べる夜でも、そうするようになった。父は、私とディナーを食べた後、私をトレーシーの家まで車で送ってくれるけれど、その後、ホテルの部屋で父のことを待っているマリアのところに行くのである。


つづく
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