「裏切り」 第7章:第8の段階? Betrayed Chapter 7: The Eighth Level? by AngelCherysse Source 123456
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これまでのあらすじ

ランスは、妻のスーザンとジェフの浮気を知りショックを受ける。ジェフがシーメール・クラブの常連だったのを突き止めた彼はそこでダイアナというシーメールと知り合い、彼女に犯されてしまう。だが、それは彼の隠れた本性に開眼させる経験でもあった。1週間後、ランスは再びダイアナと会い女装の手ほどきを受ける。翌日、ふたりはスーザンとジェフに鉢合わせし険悪な雰囲気になる。ダイアナはランスをクラブへ連れて行き、本格的な女装を施した。リサと名前を変えたランスは行きずりの男に身体を任せる。それを知りダイアナは嫉妬を感じたが、それにより一層二人のセックスは燃えあがった。ランスはダイアナが奔放に男遊びを繰り返すことに馴染めずにいた。そんなある日、会社の美人秘書アンジーに正体を見透かされる。

*****

アンジーは、僕の腕に両腕でしがみついたまま。逃れようとしても逃れられない。ふたりでタクシーを拾い、僕の住処に戻った。ダイアナも僕のマンションに驚いたけれど、アンジーはそれ以上だった。

「まあ! まるで女王様のような暮らしじゃない!」

アンジーは自分の言ったことに気づき、くすくす笑った。

「あら、いけない! でも、言おうとしたこと分かるでしょ?」

彼女は一直線に主寝室に入っていった。彼女の訓練された目は、宝石箱や化粧台を見逃すことはなかった。ドレッサーの引き出しをひとつひとつ開けてチェックしては、ランジェリーやダイアナのコルセットを見て、うんうんと頷いていた。化粧台に移ると、MAC製品を見て、またうんうんと頷き、微笑み衣装箱を調べる。ダイヤとルビーのジュエリーを見て、目を飛び出さんばかりにした。

「お願いしようとも思わないけど…」 とアンジーはゆっくり言い出した。

僕には彼女が何を意味しているか分かり、頭を縦に振った。アンジーは大きな音を出して息を吐き、それからクローゼットへと移動した。彼女は黙って立っていた。スウェードのスーツ、赤いシークインのガウン、そして、あのコートをじっと見ていた。それから静かにドアを閉じ、くるりと僕の方を向いた。

「何と言うか…想像したほどたくさんあったわけじゃないけど、でも、すごい……」 彼女の最後の単語は、ほとんど囁き声になっていた。

「僕は、こういうのにはまだ新しいから…。だから、衣装類がこんなに限られているんだ」

「『新しい』とは? もっとはっきりと言うと?」

「う…この前の週末?」

「たった二日間? …わーお! まだ、処女みたいなものじゃない」

「い、いや…正確には、違うけど…」

アンジーの瞳が大きくなった。チシャ猫のような笑みを浮かべている。

「本当に時間を無駄にしない人なのね」 と彼女は笑った。「あなたについての私の見解は、やっぱり正しかったわ、リサ。あなたは、その時が来た時には時間の使い方をちゃんと知っている人。私たち、とても、とても親密な友だちになれそう……」

「でも、アンジー、僕には……」

「…それに、オフィスの誰も私たちの秘密を知る人はいないー私が教えようとしなければ。さあ、リサ! 私のために着替えて見せて。あの赤いシークインを着たあなたも見たいけど、今はやっぱりあのスエードのがいいと思うわ」

僕は男性用の衣類を脱いだ。それからピンクのパンティから、洗いたてのラベンダー色のふらジャーとパンティのセットに着替えた。そのブラの中に偽乳房を滑り込ませる。アンジーは、コルセットのレース紐を締め直すのを手伝ってくれた。最大限まで締めつけ、僕の身体から呼気を絞り取った。彼女は、ストッキングを濃い肌色のから漆黒のものに変えるよう指示した。

僕は、お化粧の技術はそれほど会得してないことを正直に告白した。すると、僕のことを捉えて離さないアンジーは、私がすると言い張り、すぐさま、まつ毛とネイルを僕につける作業に取り掛かった。

このお化粧時間の間、アンジーは、僕の取ってつけたような男性的眉毛の秘密を発見し、大喜びした。そして、一瞬のうちにそれを剥ぎ取り、その代わりに鉛筆で、劇的なほど高く、細い眉を描いた。その形は、僕がこの週末、ずっと愛着を感じていた眉の形だった。さらに、アンジーは耳のピアスをカモフラージュしていたことも発見し、またも大喜びし、唇をすぼめて、大げさに頭を振って見せた。

「リサ、あなたって、本当に驚きの宝庫!」と浮かれた調子で彼女は言った。「ただ単に仕事をしに来るためだけに、これ全部を隠さなくちゃいけないなんて、本当に死にそうな思いだったんじゃない? こんなに綺麗になるあなたを見ただけで、そして、あなたが息のつまりそうな男性人格で、ものすごく冴えない状態に甘んじてたを知っただけで、私、死にそうよ」

アンジーの仕事が完了した。その出来栄えはと言うと、クラブの女の子たちが土曜の夜に僕にしてくれたような、全面開花したドラッグ的ステージ・ガールのルックスではない。しかし、劇的でエキゾチックなラテン娘のような印象が現れていた。特に唇。濃い赤ワインの色の輪郭を描き、中は鮮やかな赤で染め、全体にキラキラ光るグロスを塗っている。この週末ずっとつけていた爪と、今のえんじ色の長い爪。どっちも見栄えや雰囲気の良さは変わらず、優劣がつかなかった。

アンジーの指示に従って、アクセサリー類をつけ直し、仕上げに香水をスプレーした。

「素敵よ、リサ! じゃあ、今度はヘアに移りましょうね。ちょっと待ってね。つける前に作業させて」

ダイアナとカツラを買う時、僕たちはプロ用のカツラ、プロ用のスタイリング用ブラシ、それに、もちろん、プロ用のヘアスプレーを選んだ(「ヘアスプレーというのは、ショーガールの一番の親友なのよ」とダイアナが言っていた)。

いま、アンジーはブラシとヘアスプレーで僕の光沢のあるカツラに攻撃をしている。そして、あり得ないとほどの短時間で、彼女はそのカツラのボリュームを、比ゆ的にも文字通りにも、大きくかさ上げし、僕のお化粧の劇的な印象を補う形に変えたのだった。

「ほら、これこそ、私がさっき言っていたこと」 と彼女は嬉しそうな声をあげ、いったん手を休め、ウインクしてみせた。「私はあなたの有能な秘書だということ。さてこれをあなたにつけさせて。出来栄えを見るのが待ちきれないわ」

最初に伸縮性のあるメッシュが頭に被せられた。これを使って、やや長めの地毛を固定する。その後、彼女は、ちょうどミミがしてくれたように、カツラを注意深く装着した。後頭部についてるヘア止めをパチンと止めて押さえる。

その後、僕自身がアンジーのやり方を真似て、カツラを地毛にボビーピンで固定した。化粧台の鏡の中、視線を向け会うアンジェリナの笑顔と僕の笑顔が並んでいた。

「すごくいいわ…」と彼女が呟いた。「今度は靴よ。気取って歩く姿が見たいわ」

心臓がドキドキしていた。でも、これはもはや不安感からの動悸ではない。今はすっかり、これに嵌まっているということ。僕はミュールに足をするりと入れた。摩天楼級のスティレットのおかげで、脚が形良く伸び、胸とお尻を突き出す形になる。自分が無敵の美女になったような気持ち。

ダイアナが造作もなく流れるように部屋を歩く姿を頭に浮かべた。そして、意識的に自分の身体に彼女の真似をするよう命じた。

「ああっ…すごーい!」 愛らしいラテン娘が叫び声を上げた。「ああん、これって、歩くポエムよ! たった二日間で? あなたって、これのために生れてきたんじゃない? 私も負けないように頑張らなくっちゃ!」

興奮がーあるいはシャンパンがー効果を出してきたようだ。「アンジー? ……この相互倒錯の会を中断するのは嫌なんだけど、ちょっとトイレに行きたくなってしまったので…」

アンジーはアハハと笑い、頷いた。そして化粧台の前に座った。

「いってらっしゃい。私は、ここにある素晴らしいお化粧品のコレクションを使わせてもらって、お顔を直してるから」

用を足している間、今日の午後のこと感じた絡みあった感情を整理していた。アンジーにばれてしまったというショック、それに彼女が見せたちょっと脅迫とすら思える強引さに、最初は驚いたが、それから立ち直ると、後はとても興奮することばかりだったと思えた。

元々、僕は僕の美人秘書にずっと前から惹かれていたというのは否定できないだろう。そして、今は、以前にまして惹かれている。アンジーは、前から、同じ気持ちでいることをいろんな機会に僕にほのめかしてきていた。彼女は、これからどこに向かっていくつもりなのだろう? 本能的に、これは単なる気軽なお付合い以上のものになるのではないかと感じた。

これはダイアナに対して不実を働いていることになるのだろうか? いや、そうではない。ダイアナは、男とセックスするかもしれないと前もって僕に伝えることができない場合があると言っていた。そして、そういうことが起きた場合、彼女は、後から、僕にそのことを教えてくれるのが常だった。いまは、僕も同じことができるはずだし、それでまったく問題はないはずだ。

ダイアナは、僕がダニエルと「デート」したとき嫉妬したが、もし僕が秘書とセックスしたら、ダイアナはあの時と同じように嫉妬するだろうか? アンジーはダイアナがしたように、僕に挿入したいと思うだろうか? この場合はディルドを使ってだが? 僕はその場合に備えて準備をしておきたかった…

うちのバスルームは完全装備になっている。ジェットバスのバスタブでシャワーは個室。洗面台は二つ。そしてトイレにビデも。購入にあたってこのマンションを見学した時、ビデを見て、バスルームの隅に見放されたように佇んでいる装置を変なものだなと思った。決して使うことはないだろうと…。だがいまは…。強力なジェット水で完全に洗浄される時の感覚は、刺激的ではあるけど、同時にちょっと落ちつかなる感じにもなる。洗浄しながら、その刺激で身体の中が疼き始めていた。洗浄行為だけでなく、これから起きることへの期待も疼く原因になっていた。

バスルームにいる間、アンジーが話す声が聞こえたと思う…誰かと話す声が…

それはともかく、僕がいない間に、アンジーは顔と髪の毛に「ちょっと手を入れ」たのだが、その結果は僕と同じくらい劇的なものだった。僕がバスルームから出ると、眩いばかりの笑みを見せ、手を差し伸べた。

「準備いい?」

デジャブ?

「何のための?…」

「お祝いよ!」 とアンジーは大きな声を出した。「2分くらいでタクシーが来るわ。私たちみたいな美人が二人、こんな格好になっているのに家にいるなんて、あり得ないわ。今夜はシカゴ中の人に私たちを見てもらいたいの。自分がこんなにイキイキしているの、いままでなかったわ!」

告白すると、僕も同じ気持ちだった。スエードのハンドバッグを取り、現金を足し、運転免許証(これは見せなければならなくなったら、恥ずかしいけど、法律だから仕方ない)、香水、コンパクト、それにKYゼリーをもう1本入れた。アンジーは、僕がすでにバッグに入っていたコンドームに加え、KYゼリーを入れるのに気づくと顔をパッと明るくさせた。

「あら? 何かいいことあるかもって期待しているの?」 とアンジーは女友だちに話すような声で訊いた。

「ちょっと頭に浮かんだだけ…」 と僕は恥ずかしそうに女の声で答えた。

アンジーはウインクをした。

「その通りになるかもね。私、いまとても興奮しているもの。それにあなたも素敵! セクシーよ。もうどんどん楽しくなってくる」

タクシーに乗ってる時間は短かった。ディアボーン通りのルース・クリス・ステーキハウスの前で降りた。まあ、ここでいいか。バーはちょっとナイスだし、もう少し時間が経ったら、小さなフィレ肉を食べられるくらいはお腹がすくだろう。でも…

アンジーは、両腕で僕の片腕にすがりつき、凍てつくような夜の寒気から逃れようと店の中へと急かした。食事テーブルではなく、バーへと向かった。僕はそこでフローズン・ストロベリー・マルガリータ(参考)を飲んだ。このように本当に美味しいフローズン・ストロベリー・マルガリータを飲んだのは一体、何年前になるだろう。僕が初めてこのマルガリータを飲んだのは、スーザンととだった。キーウェストのファット・チューズデイ(参考)でである。人は誰でも、人生で初めて経験したことを覚えているものだ。初めてのキス、初めてのデート、初めてのセックス…。

それに、初めての圧倒的な心臓発作も! バーカウンターにいる男を見て僕は息を飲んだのである。そこにはロブ・ネルソンとジム・グラントがいたのだった!

僕はアンジーに小声でつぶやいた。「今すぐ回れ右して、来た道を戻れば、気づかれないかもしれないよ」

だがアンジーは唇を尖らせた。

「どうして? 面白そうじゃない?」

「でも、オフィスの誰にも知られてはいけないって言ったのは君じゃないか」 僕は泣きそうになっていた。

「知られたくなかったら、おとなしくニコニコしてること。そうすれば大丈夫だから。私、彼らに、今夜は特別の夜だから、外に出てこないかと誘われたの。私たちのボスだもの、ノーと言うつもりはないわ。彼らには、4人組になれるよう、誰か友だちを連れて来てくれと頼まれたの。私としては、今夜、私と一緒に来てほしい女友だちは考えられなかった。というか、あなたより完璧な人は考えられなかった。だから、行きましょう! ミーハ(参考)」

アンジーは僕の腕をぎゅっと握り、前へと進んだ。

「やあ、アンジー!」 とロブが明るい声で呼びかけた。「ここまで来る時間、新記録じゃないか? 渋滞がなかったのかい?」

アンジーは頭を横に振り、光り輝くような笑みを浮かべた。

「渋滞は関係ないの。私たち、ちょうどノース・ピア(参考)にいたところだったのよ。実際、ここまで来る時間より、タクシーを待ってる時間の方が長かったわ。ロブ? ジム? 私のお友達を紹介させてね。こちらはリサ…」

ふと、その時になって、アンジーには私の女性名での苗字を教えていなかったことに気がついた。

「…レ、レインです」 どもってしまったが、おかげで適切な声を出すことができた。「お、お二人に会えて、嬉しいわ」

震えながら、手を二人にさし出した。二人とも、直ちに座っていたスツールから降りて、立った。ジムは優しいタッチで私と握手をした。男性が女性と握手する時と同じようだった。ロブは私の手を返し、手の甲にキスをした。彼は、私の瞳を見つめながら、まるで石に変わってしまったかのように釘づけになって突っ立っていた。そのロブの様子をジムはニヤニヤして見ていた。ロブはしばらく茫然としていたが、ようやく何かを払いのけるように頭を振り、元に戻った。

「す、すまない…」 とロブは恥ずかしそうに言った。「僕はどうしてしまったんだろう。僕は普段はマナーがいい人間なんだけど。見つめてしまって、失礼した。というか、どうしても目を離せなくって…。ああ、アンジー、君の言ったことは正しかったよ。彼女、本当に魅惑的な人だ」

良かった。これで少しは落ち着ける。それでも、私は北東風の第5クラスの強風にあおられる木の葉のように身体を震わせていた。

「寒いのかい? 可哀想に!」 とロブが同情して声をかけた。「どうして君たちコートを着てないんだ? そのドレスは素敵だよ。でも、たとえ暖かいタクシーに乗るにしても、出入りするときに凍えたら、風邪をひいてしまうよ」

「どこかの素敵なオジサマが私に毛皮のコートを買ってくれたら、7月でも着てるのになあ」 とアンジーがほのめかした。

「それなら決まりと考えていいよ」 とジムが軽く請け合った。「君が新しい地位についた手当てと考えていい」

「アンジーが…昇進?」 と私はためらいがちに言った。

「ああ、そうなんだ」 とロブがにやりと笑った。「彼女の働きのおかげでね。アンジーから聞いていないかい? 明日、会社全員に公式的にアナウンスするんだけどね、アンジーは特別個人アシスタントに昇進する。職場も一階上になるんだ。今日のお祝いの理由の一つがこれだよ」

「うーん、おめでとう…」

「ありがとう!」 とアンジーは陽気に答えた。「あなたがいなかったら、こうはならなかったわ」

できれば、アンジーには、こんなふうにほのめかすのを止めてほしかった。これまでのところは、ロブもジムも私の正体を知らない様子。ロブは我が社の社長で、ジムは会長だ。二人に私の正体が知れたら…。だけど二人が知らない限り、私は明日の朝も仕事をすることができる。私は勇気を振り絞って言った。

「えーと、この集まりがお祝いなら、何かお酒を飲むべきね。よかったら、私にフローズン・ストロベリー・マルガリータを注文してくれないかしら。大きなサイズにして。何だか、とても飲みたいの」

10分後、私はすでに、48オンスのフロスティ・カクテルの半分を飲んでいた。すごく飲みやすい! なんだかんだ言っても、これはただの、半分ほどクエルボ(参考)が入った大きなスラーピー(参考)みたいなものかもしれない。

私以外のみんなは、それぞれのカクテルをゆったりとしたペースで飲んでいた。私に関して、イヤな発言や言及は一切なかった。ふたりの重役たち、特にロブは、魅力的な女性に対して好意を寄せるのと同じように私に好意を寄せている様子だった。お酒のおかげで気が強くなったのかもしれないけれど、私も同じように彼らに好意を寄せた反応をし始めていた。

「それで、その…、ネルソンさん…?」 と私は話しかけた。

「リサ、お願いだ。ロブと呼んでくれ」と彼は遮った。「いまは勤務時間じゃないし、ネルソンさんという言い方は、この場では、堅苦しすぎるから…特に、今ここにいる間柄ではね?」

「ええ、いいわ…、ロブ。…何を言いたかったかというと、私のお友達のアンジーを昇進させたというあなたの決断を、個人的にとても嬉しいと思ってることを伝えたかったの。彼女は確かに昇進に値すると私は分かっていたし、これから、あなたとミスター…、あ、いやジムにとってとても貴重な存在になると思うわ」

「ありがとう、リサ。アンジーは充分に昇進に値する。メジャー・トレード・グループの男性陣が、彼女の働きぶりについて非常に高評価を出しているんだ。特に、ランス・レイトンが熱心だったなあ。アンジーから彼のことを聞いている? アンジーは彼のことをとても重視しているよ」

私は、もう一人の自分のことを言われて、頷きつつも、身を強張らせた。気づかれなければいいけど。

「今夜のお祝いの本当の理由は、むしろランスのことなんだ」 とロブは続けた。「今日、彼のおかげで我々はこの業界内で著名な存在になれた。まさに、ベストの中のベストだよ、彼は。それに、体の芯まで社のことを考えている。彼が一度、仲間をぜんぶ引き連れて会社を辞めると言いだした時のことを知っているかい? 従業員担当のどこかの堅物が、アンジーの素晴らしい服装について文句を言ったらしく、それに抗議しての行動だったんだ。自分の秘書の名誉のために、6ケタ、つまり数百万ドルの収入とストック・オプションを蹴ってもいいと思ったんだよ、ランスは。僕の部下たちも全員、彼のレベルの人格的統一性があったらありがたいなと思ったよ。今日はね、午後ずっと、ジムと一緒に、彼に対してどんな褒美をあげたら適切と言えるか頭を悩ませたんだ。アンジーにも一つか二つ提案をしてもらった。そうだよね、アンジー?」

アンジーは口をすぼめて微笑んだ。瞳をキラキラ輝かせている。

「話しを聞くと、アンジーはあなたのような親友がいてずいぶん幸運のようだ。あなたがアンジーの昇任を自分のことのように喜び、支持していることからも、それが分かるよ。本当のことを言うとね、アンジーは僕たちの部下になるわけじゃないんだ」

「え? そうなの…? …とすると、誰のところに?」

「うちの副社長のところだよ」 とジムが答えた。

「ほんとに?」 と私は完全にわけが分からなくなって聞き返した。「アンジーからは、そちらの会社に副社長がいるとは聞いていなかったけど。誰なのですか?」

二人の男は互いに顔を見合わせ、そしてにやりと笑った。

「何で? もちろん、あなたですよ」 とロブは当然のような口ぶりで言った。「今朝のあなたの仕事ぶり。あんな大仕事をされたら、ラサール通りのどこに行ってもご自分で会社を立てることができるでしょう。そんなあなたを我が社に留めておくためなら、僕はどんなことでもするつもりです」

ロブはじっと私を見つめた。単なる仕事上の感心を超えた熱い気持ちで私を見つめた。

「…どんなことでも。午前中に157万ドルの利益を会社にもたらし、その同じ日の夜に、スーパーモデルのような美人に変身し、僕とデートしてくれるとは。そんな素晴らしい人なら、当然、重役のポストに値するというものです」

私の体内時計は、ストレスとアルコールの影響で少し狂っていたに違いない。脳内でできるだけ正確に計測できたとして、ロブがこの発言をした時間と、私が最初に喉奥に吐き気を感じた時間の間に一秒半しか時間がなかった。イチゴ味の吐き気はキュートな味とは言えない。

「ごめんなさい」 と言い、トイレに走った。

走り去る背中で、ロブが「何か変なこと言ったかな?」と言うのが聞こえた気がした。

モーゼの十戒の第1戒律では「汝、私以外の神を崇拝してはならない」とある。

よかった。

神が陶器製の玉座に座っているのであるなら、私は煉獄で焼かれることはない。

***

便器の前にひざまずく私のすぐ後ろで彼女の声がした。

「大丈夫?」

「これ以上ないほど」と苦しみながら答えた。「最近、人狩りスキャンダルが流行っているから。適切にリークしたら、来週のピープル誌の表紙を飾れるわ」

咳きこむ私のお腹を彼女の右腕が優しく包んだ。左手は私の額に当てている。母にしてもらった他、この単純で慈愛に満ちた行為を私にしてくれた人はいなかった。この時、私はアンジーのことをありがたく感じた。もっとも、それと同時に、彼女の存在の隅から隅まで軽蔑していたのではあるけれど。

「わ、私が何をしたのよ…あなたがこんなに私を怨むようなこと、何をしたというのよ?」

「ええ?」

私の胃は、ようやく、もう充分だと諦めてくれたようだった。呼吸も普段の状態に戻ってきた。私は立ち上がり、便器の座席板を降ろし、そこにがっくりと腰を降ろした。

「私を罠に嵌めたでしょ! 私のことをバラした! 会社の人に! ここシカゴでは私はもうお終い。バッファローで野球のトレードカードの仕事にありつけたら幸運と思わなきゃいけないわね。どうしてなの? どうして、アンジー?!」

アンジーはただ私を睨んでいた。まるで私の額の真中に第3の眼が現れたみたいに。

「ちょっといい?」 とアンジーは怒って言った。「私があなたを罠にはめた? もちろん、その通りよ! こんな状況で、他にどうやったらあなたをここに連れてこられたか、こっちが知りたいわ。その他のことに関してだけど、私たちついちょっと前まで同じテーブルに座っていたのよ? ロブ・ネルソンがあなたに副社長職を提示したのをちゃんと聞いたはずよ。それがどうして、『シカゴでは、私はもうお終い』ということになるのよ?」

「明日の今頃には、会社の誰もが私のことを一種の変態だったと納得するでしょう」

黒髪のラテン娘はまだ私を睨みつけていた。口元がちょっと歪み、その後、上向きに変わった。邪悪そうな笑顔になる。

「ほう、それだけ?」 といかにも当然と言ったふうに言う。

アンジーは私のスカートに手を伸ばし、腰まで捲り上げた。そして私のパンティも引き下ろした。私のおバカなクリトリスは、私の仲間がしたことにどれだけ私が怒っているかも知らず、跳ねるように勃起し、痛いくらいに直立した。

アンジーは自分のタイトスカートのチャックを下げ、腰をくねらせながら、脱いだ。彼女はパンティを履いていなかった。そうして私の太ももにまたがり、ゆっくりと私の股間へと腰を降ろした。自分自身を私の勃起で貫く。一瞬、アンジーの瞳が輝いた。私のクリトリスが彼女の濡れた女陰にすっかり収まると、アンジーは身体を震わせ、満足そうな溜息を吐いた。

アンジーが落ち着いた声で私に話し始めた。

「ミーハ? よく聞いて。あなたは現実をちゃんと認識しなくちゃいけないわ。あなたは異常な変態なのよ。他のトレーダーたちが推測を当てたり、間違ったりする一方で、あなたの本能は一貫して会社に利益をもたらし、あなた自身の評価も高めてきたわ。そこがあなたが異常な変態であるところ…

「…今日、あなたの本能は商品取引市場をしっかりと捉えて、会社に多額のお金をもたらして、うちの会社を、アメリカ全体とまでは言えずとも、このシカゴにおける最有力の商品取引会社に位置付けることに役だったわ。だからこそ、あなたは変態なの。それにもかかわらず、あなたは、この威張りくさったバカばっかりの業界で、私が知っている中で最も知的で、心暖かで、忠誠心があって、ユーモアがあって、しかも気取るところがない人なの。だからあなたは変態なの。それでも足りないなら、あなたはこのシカゴの街で、最も目を奪われそうな、ゴージャスに女性的な人なの。それが変態であるのは言うまでもないわね…

「…私は、やろうと思えば、この街のどんな男も落とせるわ。それを疑う? 疑わないで! 丸みを帯びたキュートなお尻をちょっと振ってみせれば、どんな男も私のものになる! 私、ゲームの仕方をしってるもの。それに、私はトップに登るためにセックスをするのも気にしない。すでにジム・グラントとはやってるわ。何度もね。彼を愛しているわけじゃないけど、セックス相手には最高なの。それに、自分のキャリアアップに役立つ男たちと良い関係になっても困ることなんかないし。今夜もジムとエッチするつもり。…それに、あなたもロブ・ネルソンとするのよ…

「…ちょっと秘密を漏らしてあげるわね。ジムがピロートークで私に漏らしたことなんだけど。ロブが結婚しない理由は、仕事が忙しいことと何の関係もないの。彼はゲイなのよ。というか、綺麗なTガールが大好きで、そういう人が欲しくてたまらないの。私、こういう姿になったあなたを見た瞬間、どうしてもあなたとロブを引き会わせたくなって、いてもたってもいられなくなったわ…

「…私があなたを『罠にはめた』って? もちろん、その通りよ。でもちゃんと理由があってのこと! 数分前にあったこと見逃してしまってるかもしれないから言うけど、ロブは、あなたを見た瞬間、すごい勃起をしていたわ。彼、あなたのこと欲しくてたまらなくなってるはず。その雰囲気がぷんぷんしている。彼の言葉、聞いたわよね? あなたを会社に留めておくためなら、どんなことでもするって。その本当の意味は、あなたとヤルためならどんなことでもすると、そういう意味だったのよ…

「…あなたは、本当に自分自身の能力でこの副社長の地位に値するのかと疑うかもしれない。当然、あなた自身の能力からすれば値するわ。もちろんよ! 間違いない。それで充分でしょう? そういう業界なんだから。ねえ、何もかも偶然に任してはいけないわ。これからあなたと私がすることは次のこと。二人ともちゃんと服の乱れを直して、お化粧もヘアも元に戻すこと。それから外に出て、ジムとロブに愛想よくすること。ディナーを楽しんで、彼らのジョークに笑い、いちゃつくこと。その後は自然の成り行きとホルモンが導くのに任せればいいの…

「…明日、私たちは荷物をまとめ、上の階に行き、あなたは副社長職としての新人生を始めるわけだし、私はあなたの隣についてサポートする。これまでの2年間と同じように。この2年間、あなたがどんなに一生懸命私のために戦ってきたか知ってるわ。これから私もあなたのために同じくらい一生懸命戦うつもり。そんなことないなんて、絶対、思わないで」

私は当惑して、ただ頭を横に振るだけだった。

「何とか、お腹のムカムカした感じは収まりそう」 と私はためらいがちに言った。「それに、何とか勇気をかき集めて、ここを出て、あのテーブルに戻れるかもしれない。幸運を感謝すべきね。服もブラウスも汚さなかったから。ああ、あんなにアルコールを飲ませるもんだから…」

私は脚の間の便器に目を落とした。

「…ごめんなさい。何とか中に戻っていったわ。まあ、何とかこの場を楽しむことはできるかもしれない。でも、でもよ。明日、スーツとネクタイ姿で、上の階にいくなんて、どこからそんな勇気を集められるかしら? 今夜、何もなかったかのように、ロブとジムに挨拶して、新しいデスクに座るなんて、できっこない」

今度はアンジーが頭を横に振った。

「本当に注意を払っていなかったのね?」 とアンジーは叱るような口調で言った。「ロブは、今日あなたがしたようなことができる人なら誰でも、重役席に座るに値すると、そう言ったのよ。この場に招かれたのはランスじゃないの、リサなのよ。あなたがスターなの。そして私はあなたにお伴して駆け上がる。ふたり一緒に、このチャンスに乗って頂上に駆けあがるのよ」

「アンジー」 私は自分の姿を改めて見てから、真顔で聞いた。「真面目に訊くけど、こんなこと、あなたの迷惑にならない? つまり、こんな格好の私のことだけど? 誰かもっと…分からないけど、もっと男性的な人の元で働きたいんじゃない? 本当に私と一緒に行きたいの?」

アンジーはちょっとの間、表情を変えずに私を見つめた。それから私の股間に目を落とした。私の「クリトリス」が根元まで彼女のあそこの中に収まっている、その部分に。そこは、本当に濡れ切っていた。それからアンジーは私の瞳を覗きこみ、口元を吊り上げ、笑顔になった。そして私にキスをした。

「あなたと一緒にイキたいのって? あなた、また見逃していたみたいね? これで2度目よ。でも、その前にあなたのお口の中をどうかしなくちゃいけないわ。バッグに口腔洗浄剤みたいなのがあったはず」

***

私たちは何とか身だしなみを整えた(ほんとに、よくできたと思う!)。そして、アンジーとふたり腕を組んで、腰を振りながらトイレから歩き出た。共に、それぞれの彼氏に会うために。

私の笑顔が、アンジーの笑顔と同じくらいまぶしいほどの笑顔だと嬉しい。そう思いながら、明るい顔で歩いた。前には感じなかった元気良さを発散していた。トイレに入る前とは違って、今回はちゃんと飲み方をわきまえた。前のように飲みっぱなしではなく、アペタイザーを食べながらカクテルを飲み、ディナーを楽しみながらシャンパンを飲んだ。ロブともちゃんとできた。円形のブースの奥に座ったけれど、奥に私とアンジーが並んで座り、私の外側にはロブが座り、アンジーの外側にはジムが座った。

私の血液中のアルコールレベルが上がるにつれて、私も自信を持って振舞えるようになり、会話は前より自然に流れ出した。アンジーはジムに身体を密着させて座っていたけど、私もロブに同じように身体を擦り寄せていた。

ディナーが終わったころには、私はロブの腕に腕を絡ませていた。おしゃべりをしながら、要点を言うところで彼の手の甲に優しく触れることにしていた。アンジーも私も、彼らがジョークを言ったら、大きな声で笑い、はしゃいだ。でも、別に演技で笑ったわけではなく、ジムとロブのジョークは、重役クラスの男が言うジョークにしては、驚くほど面白く、話しも上手だったから。お偉いさんたちは話しが下手って誰が言ったの?

食事の後、4人でレストランを出た。私はまだロブの腕に腕を絡めたまま。頭を軽く彼の肩に乗せて歩いた。

彼にキスされた。その時、私は驚いたかしら? いいえ、正直言って、驚かなかったと思う。でも、私の口に彼の舌が入ってきて、それを私自身が掃除機のように吸いつけて、そのまま感触を楽しんだ時は? 私は驚いたかしら? ええ、まあ…この時は、我ながら驚いたのは事実。でも、いちばん恐ろしく思ったことは、それがとても気持ち良かったこと。

私はダイアナのことを思ったかしら? ええ、すぐに思った! 

これから私とロブがどういうことになるか、はっきり知っていた。この時点では、そうなることは避けられないことだった。そうなることは、私とダイアナの関係において、彼女がいまだ不愉快に思うことであるのも知っていた。

だから、この時点で私がすべき高貴なことは何か、というのも知っていた。ロブとジムに素敵な夜をありがとうと丁寧にお礼を言い、家に帰ること。タクシーを呼んで。…こんな夜遅くであるだけに職場のひと気のない駐車場に止めてある私のベンツに向かうのは、リサという女になっている身としては、どれだけ大変なことになるか分からなかったから。そして、家に帰ってからダイアナに電話をし、彼女がどこで何をしていようが、彼女を探し出し、会って、彼女を心から、深く、気が狂いそうなほど愛すること。

ではあるけど、今夜はそういうことにはならないとも思っていた。アンジーと私は、エスコートしてくれるふたりの男性と一緒に帰路についてるけど、それは「自然の成り行きとホルモンの導きに身を委ねるため」。なんなら、これをするのは私自身の昇任のため、あるいはアンジーの昇任のためと、自分に言い聞かせてもいい。何回もそう自分に言い聞かせていたら、いつの間にか本当にそうだと信じるようになるかもしれない。

ロブのマンションはジョン・ハンコック・センター(参考)にあった。素晴らしい眺めで、東にはミシガン湖、北にはレイク・ショア・ドライブ(参考)が一望できる。前にはドレイク・ホテル(参考)が立ち、オーク・ストリート・ビーチ(参考)がその先に見えた。

私たち4人がドアを入ったのとほとんど同時に、ロブは私を壁に押しつけ、スカートの中に手を入れた。多分、彼は私が「正真正銘」なのか確かめずにいられなかったのだと思う。ロブは私の「正真正銘」の部分を気に入ってくれたようだった。ズボンの中、彼のその部分も固く反りかえっていたから。

スカートの中をまさぐられながら、私はとても献身的なデート相手を演じることにして、ロブのベルトを緩め、ズボンのチャックを降ろし、そしてゆっくりと腰を沈め、彼の前に座った。もちろん腰を沈めるのにあわせて、ズボンとトランクスも一緒に降ろし、トランクスの中に閉じ込められていた可哀想な分身を自由にしてあげた。ああ、それにしても、すごい! 彼の分身はここぞとばかり元気よく跳ねて飛び出て来た。

ロブのは巨大なわけではなかった。ダニエルのような大きさでないのは確か。それでも、大きさは充分だし、太くて、肉づきがよい感じだった。なにより私の顔の真ん前でまっすぐに立っていることが嬉しかった。それはとても興奮させる姿であるだったばかりか、私をこんなにも求めているのだと姿で表しているわけで、過大な褒め言葉をかけられているような、予想外の嬉しさだった。

それに対する感謝の気持ちを表そうと、すぐにその先端のところにキスをした。ロブはまたピクリと反応した。私は上目遣いで彼の瞳を覗きこんだ。その瞳の中には、例の表情が浮かんでいた。

あの表情、何度も見てきたわけではない。昔、スーザンの瞳に浮かんでいるのを見たことがあった。それにダイアナの瞳にも見たことがある。それを見たことがある人なら、胸のあたりで何かドキドキしてきて、普段なら考えもしないことをしたくなる気持ちが分かると思う。時には意識的に、またある時には自動運転のように……

ロブの前に正座したまま、顔を前に出して、両手をロブの太ももに軽く当てた。目の前には真剣な顔をしたロリ—ポップがそびえていて、私の目を見つめている。

舌先を伸ばして、底辺部の敏感な小道をたどった。根元の袋のところから先端までずっと。それから頭の部分の周縁部を舌で何度も小刻みに弾いた。それをされて、可哀想なロブの分身全体が何度もビクンビクンと跳ねていた。

それをしてから、また同じ小道をたどって、根元に戻った。根元に到着した後は、その先の二つの球体を舌で丁寧に磨きをかけてあげた。そして、ひとつずつ口の中に吸い込んだ。手を逞しいお尻の頬に添えて、長い爪で軽く引っ掻きながら。

それから顔の向きを変えて、舌を上面の皮膚に這わせ、また先端部へと戻った。上面ばかりでなく左右の側面も優しく舐めながら。最初はこちら側をお世話し、次にこちら側もお世話し、そうやって出発点へと戻る。

二回目のキスは、前よりちょっと長めになった。今度は唇をほんのわずかだけ開いてキスをした。

それから、また舌を出し、先端部をちろちろ舐めた。そこには、かなり先走りが出てきていて、それを舌で王冠全体に塗り広げた。

そして唇をもうちょっと開いて、頭の部分だけを口に含んだ。ふざけて遊んでいるように、舌でぐるぐるこねたり、最初はこっち側に押しつけ、次に反対側に押しつけたりした。

そうしながら、片手で彼の肉棒を軽く握った。もう一方の手は睾丸に添えた。最初の手は優しく前後に動かし、もう一方の手では握ってるものを優しく揉んだ。慎重に爪の先で敏感な肌を引っ掻きながら。

さらにもっと口の中に吸い込んだ。それと同時に握った手の動きも速くした。ロブが身体を震わせるのを感じた。私の頭に両手をあて、押さえるのを感じた。私を引きつけてくる。もっと多くを入れて、もっと奥へ、奥へと促しているのが分かった。

私は睾丸から手を離し、また後ろへ回して、尻頬を擦り始めた。中指を、じれったいほどゆっくりと彼のお尻の割れ目に沿って這わせた。尾てい骨のすぐ下、割れ目ができるところから始めて、陰のうに至るまで、優しく指でたどった。それから、彼の小さくすぼまった穴に指を添え、マッサージを始めた。そこに爪の先が触れた時、ロブの身体がビクンと跳ねた。

その頃には、私は、根元を握った自分の手に唇がつくまで飲みこんでいた。その握った手を離し、彼のお尻の頬に添えた。両手で彼のお尻を自分に引きつけ、深く吸い込んだ。私の鼻先が彼の陰毛に触れるまで。

すでにロブはいつも先走りが出ている状態になっている。私は再び手を彼のペニスに添え、口に咥えた肉棒の横から中指を口に入れた。そして自分の唾液とロブの先走りを使って、指を充分に湿らせた。

それから、その指を彼のお尻の穴へと近づけた。そして、爪でデリケートな組織を傷つけないよう、苦しいくらい慎重に注意しながら、指をそこに入れていった。

その途端、ロブは爆発的に射精を始めた。私の口の奥、喉の先へと、熱い体液を噴射した。

男性は射精した後、とても敏感になるのを私は知っている。私は再び亀頭の底辺を舌先で軽く弾いて愛撫を続けた。逃げられないように両手でお尻を抱き寄せたまま。

正直、ロブはこれで終わりになるかもしれないと思った。だけど、実際は、彼の勃起は1センチも衰えなかった。

寝室の方から、うめき声や悲鳴が聞こえた。向こうでは、かなり激しい行為が繰り広げられていると思った。でも、そっちはそっちで構わない。私は私でいっぱいに頬張っていたから。

何分間だったか、何十分だったか、それとも1時間以上だったか? すでに時間と場所の感覚がなくなっていた。私の全宇宙は、喉奥まで頬張っているモノ、それだけになっていた。この不思議な代物の何から何までを探索し続けた。

やがて、その私の全宇宙の持ち主は私の身体を抱き上げ、近くのソファに運んでいった。肘掛の部分を枕にさせ、背中には柔らかいクッションが置かれた。そして腰を持ち上げられた。KYゼリー(参考)を出すと、彼は快く受けてくれた。

彼はすんなりと私の中に入ってきた。まるで私はこれまでの人生でずっとペニスを受け入れてきて、慣れきっているかのようだった。事実は、たった11日間だというのに。

私は両脚で彼の腰を包み、彼の動きにあわせて自分からも腰を動かした。目を閉じて、背中を反らせ、意識のすべてをそのことだけに集中させていた。

そんな私の手に何かが触れた。温かいものを擦りつけられている。目を開けると、そこには、もうひとつ、猛り狂った男性の肉棒があった。

そのとき納得したことがある。それはつまり、情熱が高まっている時には、「ゲイ」とか「ストレート」とかいった、ぬるぬるしてつかみどころのない概念は、濡れた唇とかびちゃびちゃの肉穴といったヌルヌルしたものの前では、意味を失うということ。

私は、こんなに明白なヒントにも気づかずに、商品取引市場で数百万ドルのトレードをする立場に達したわけではない。すぐに口を開き、ジム・グラントの分身を根元まで受け入れた。

私は上と下の両方から激しく突きまくられていた。頭の中が真っ白になっていく。

自然と、激しくよがり狂わされている女性のような声を上げていた。そういう声を上げることがとても自然に感じていた。だけど、私の叫び声はどうしてもくぐもった声にしかならない。ジムの太いペニスで喉を塞がれていたから。一方の愛の蕾は、ロブの怒涛の攻撃で極限まで広げられ、火がついたよう。

そして私自身のクリトリスはというと、パンティとスカートの裾の間の隙間を見つけ、抜け目なく、そこからそそり立っていた。

喉奥を突かれる感覚とアヌスを突かれる感覚。その二つに揉まれ、嬉しい翻弄に浸っていたら、急に優しく頬を撫でられ、意識がそちらに向いた。

目を開くと、頭の上の方にアンジーの顔がきていた。逆さまになった彼女の顔。ソファの端に寄りかかって私を見ている。嬉しそうに笑っていた。その笑顔は、彼女の名前にふさわしく、まるでエンジェルのような笑顔だった。

「このくらいの荒々しさで充分なの? もっと荒くされたいんじゃないの? もう、イキそうになっているのよね? でも、スエードのスカートにエッチな染みを作るなんて、イケナイ女の子がすることよ?…」

彼女の顔が視界から消えた。でも、次の瞬間、スカートをさらに捲り上げられるのを感じた。おへそのあたりまで捲り上げられた。そして、私のクリトリスを柔らかく吸われるのを感じた。ぬるりとした唇で先のところを包まれ、その後、濡れた口が茎を下っていく…。

どのくらい我慢できたか分からない。それに、私のどこに、そんなに我慢できる力が残っていたかも分からない。私の上の口と下の口を攻撃していたペニスが、それぞれ矢継ぎ早に噴射を始めた。どちらも爆発的な激しい射精だった。私は口の筋肉と括約筋を使って、どちらからも一滴残さずミルクを絞り取った。

長い射精だったけれど、ようやく二本ともすべてを出し切り、柔らかくなっていった。私は、その後この集まりの中の最後に残ったメンバーに意識を集中させた。

何かテレパシーと言ってもよいようなことがあった。あるいは、ただ視線が会っただけと言えることなのかもしれない。男たちの手が伸びてきて、魅惑的なラテン娘の身体を抱えあげ、私のクリトリスの上に乗せたのだった。彼女はソファの横の床から抱え上げられたと気づく間もなく、私のクリトリスで貫かれていたと言える。

アンジーのそこは口を広げ、びちゃびちゃだった。とは言え、痛いほど勃起していた私のクリトリスから快感を得られないほど広がり、濡れていたわけではない。

快感をむさぼる。アンジーはまさに私から快感をむさぼった。死人も目が覚めるほど大きな声をあげてむさぼっていた。男の一人に乳首を吸われ、もう一人に口を吸われていたが、そのことも彼女の興奮状態に大きく関係していたと言える。

アンジーは、絶頂に達し、身体をぶるぶると震わせた。発作になったように激しく震わせた。彼女の目を見ることはできなかったけれど、あの様子から、アンジーは失神寸前のように眼球が上にあがり、白目になっていただろうし、キスで口を塞がれていなかったら、彼女の声は隣の街にも聞こえていたことだろう。

私はロブとジム、そしてアンジーに、いろんな点でありがとうと感謝を言い、おやすみなさいと告げた。ロブとジムは泊っていくように懇願していたけれど、私は明日は忙しくなりそうだからと、丁寧に断った。

二人は、私が「職務上の義務」を超えて努力したことを考えて、明日の仕事開始を普通より遅らせてくれたし、仕事を始める前にアンジーと連絡をとれるようにしてくれた。

そのアンジーに横に引っぱられ、この上なくディープなキスをされた。まるで頭の中身が外に出そうなほど、舌を強く吸われた。

「大丈夫?」 と心配そうな声でアンジーは私のことを気づかった。

私は頭を横に傾け、おどけた表情をして見せた。

「『大丈夫』の定義によるけど…。ある意味ではもう二度と『大丈夫』には戻れないと思う。回復すると思うけど。これからは、一回につき丸一日は見越しておかないといけないと思わない?」

アンジーはまた私にキスをした。彼女の笑顔は夜の闇も明るく照らす。

「上手な返事ね。この10分の間にあなたに言っていなかったとしたら、念のために言っておくけど、あなた最高だったわ。電話をくれる?」

私は思わず笑ってしまった。

「いいえ」 と真面目な声を出して答えた。「このことがあった後だから、私は全部投げ出し、長距離トラックの運転手にでもなって、孤独な人生を送らなければいけないと思う」

彼女のこぶしが私の肩に当たる前に、それを受けとめ、手の甲にキスをした。

「ちゃんと電話するから。電話しなくちゃいけないもの。そうしなかったら、どうやって仕事を片付けられるの?」

「その通りよ!」 とアンジーは大きな声で言った。

片づけなくてはいけない仕事…。この会話で、私はとても重要な仕事が残っているのを思い出した。

深夜のこの時間にタクシーを捕まえるのは、運の面もあるけど、どこからタクシーを呼ぶかによる面が大きい。ビッグ・ジョン(参考)の玄関前にいる客を乗せるのをためらう運転手はいない。運転手はレイクビューという行き先を聞いて乗り気ではなかったが、ユリシーズ・グラント(参考)はどんな場合でも強力な説得力を持っている。高級マンションからレイクビュー行きと聞いて、運転手は、私のことをエッチなデートをしてきた売春婦に思ったかもしれない。まあ、そう言っても、完全に不正確というわけでもない。

ともかく、ダイアナに話さないなどという可能性は考えてもいなかった。たとえ結果がどうなろうとも、すべてを話すつもりでいた。私自身に降りかかった過ちと同じ過ちを犯すつもりはなかった。ジェフ・ゴールドブラムと失われた過去の世界のことが、ほぼ自動的にフラッシュバックした。

「いや、あなたは、まったく新しい過ちを犯そうとしているのよ」

タクシーが角を曲がったとき、ダイアナの住処の建物から背の高い人が降りてきて、反対の方向へ進むのが見えた。その人物の流れるような歩き方に、どこか記憶を呼び寄せるところがあった。でも、私はそれを無視し、運転手におかねを払い、階段へと急いだ。

運がいい。ダイアナの建物は古い。玄関のドアは空圧式ではなく、水圧式だった。2月の寒気では、中の液体が固形油ほどの粘着性を持っていたに違いない。ドアのかんぬきが降りる前に、ドアを掴むことができた。よかった! 呼び鈴を鳴らさなくてすむ。

階段を駆け上がり、ダイアナのマンションのドアを叩いた。ドアが開いたが、ダイアナは泣いていた。その泣き顔が、すぐに恐怖の顔に変わった。まるで幽霊を見たような顔になった。

ベッドが乱れていたし、彼女のナイトガウンも乱れていた。あの立ち去った人物が偶然ではなかったと思った。まあ、私自身もそんなに清廉潔白なわけではなかったけれど、それでも、あの男がダイアナを傷つけたことを思い、私も傷つき、そして怒りを感じた。でも、詳細をしつこく聞きだして間違った足で踏み出すことはしたくなかった。ダイアナとあの男の詳細など私には関係ないことなのだから。

「あ、あなた、まずは呼び鈴を鳴らすべきよ」とダイアナは鼻をすすりながら言った。

「何時間も前に電話すべきだったね」と言い、彼女をベッドに押し倒し、キスをした。「これから、できる限りのことをして君に償いをしなければいけないの。今回は、私が話す番」

私は深みに嵌まっているとすでに言っただろうか? 誰かシカゴ市の道路管理局に電話してくれる? 今回は、たくさん掻きださないといけないみたいだから…


つづく
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