「ジャッキー」 第8章 Jackie Ch.8 by Scribler 出所 第1章第2章第3章第4章 1/2 2/2第5章第6章第7章
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これまでのあらすじ
ジャックは妻のアンジーの浮気現場を見てショックを受け、彼女と知り合った頃を回想する。彼は法律事務所のバイト。アンジーはそこの上司だった。仕事を通じ親密になった二人はデートを繰り返し、やがて二人は週末を一緒に過ごすステディな関係になった。その過程でジャックはアンジーのランジェリを着、陰毛を剃られ、自分が出した精液をアンジーの陰部から舐め取る経験をする。そしてジャックはアンジーにランジェリをプレゼントされる。ある週末、いつものようにアンジーの家にいくと、彼女はどこか様子が変だった。だがやがてそれも忘れ、その週末の間にジャックは、女装と化粧の手ほどきを受け、ジャッキーという呼び名をもらい、アナル愛撫の快感も体験するのだった。

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翌朝、寝る前にシャワーを浴びればよかったと気がついた。目が覚めたとき、顔面が糊で覆われ、そのまま放っておいて乾いてしまったように感じた。それに部屋中に、セックスをした匂いがこもっている。

ベッドから出ようとしたら、ベッドの振動でアンジーも目が覚めたようだった。彼女は目を覚ますなり、僕を抱き寄せ、キスをした。

「ほんと、ふたりともシャワーを浴びた方がよさそうね」

僕は笑って言った。「アハハ。僕はシャワーを浴びに行こうとしていたところだったんだよ」

「いい考えね。私も一緒に浴びるわ。…あと、それから、今の言葉使いは何? 私といる時はジャッキーは女の子なのよ!」

「…私、シャワーを浴びに行こうとしてたところなの」と、僕は女の子のような声で言い直した。

「そう。その方がいいわ」

そのすぐ後、ふたりは洗面台の前に並んで立って歯を磨いていた。それを終えると、シャワールームに飛び込み、一緒に身体を洗い合った。時々、官能的なプレーも交えながら…。

僕が体毛を剃り、髪を乾かす間、アンジーは寝室に着替えをしに行った。僕が寝室に入った時は、彼女は化粧台の前に座って、髪にブラッシングをしていた。彼女はまだ着替えはしてないが、化粧は終わりに差し掛かっているようだった。

「もうちょっとだけ待っててね」 と彼女は肩越しに僕を振り返って言った。「もうすぐ終わるから。その後は化粧台は自由に使っていいわ。待っている間、着るものを選んでいたら?」

服を選べと言われても、どうしてよいか分からなかった。アンジーが僕に女物の服を着せたがっているのは分かるけれども、どんなものを着たらよいのだろう? 昨日の夜のように、僕にドレスアップしてほしいのだろうか? それとも、先週末のようにランジェリーだけの格好になってほしいのだろうか?

アンジーは僕が迷っているのを見て言った。「着るものはいいわ。あなたはまだ初心者だし。私が見つくろってあげる。じゃあ、待っている間、足の爪を塗っていて」

そう言って彼女は僕にネイル・ポリッシュを手渡した。昨日の夜、彼女が僕の指の爪を塗るのに使ったポリッシュだった。

ネイルについては、昨日の夜にアンジーが僕の爪に塗るのを見ていたので、簡単にできると思っていた。だが、すぐにそれは見たほど簡単ではないと分かったのである。足の親指にたっぷりとつけすぎてしまったし、他の指もまだら模様になってしまったからだ。失敗したのを一度、拭いとって、やり直してみた。ようやく、すべての足指に一層目を塗り終えたころには、多分50本分のネイル塗りをしていたと思う。

その頃にはアンジーは化粧を終え、着替えに差し掛かっていた。彼女は白いレースとサテンのパンティとそれにマッチしたブラジャーをつけ、白いスポーツ・ソックスを履いた。それからカーキのズボンを履き、Vネックのカシミア・セーターを着た。

彼女が着替え終わる頃には、僕は足の爪に2層目分のネイルを塗り終わっていた。アンジーは、それで十分と言い、今度はお化粧に取りかかりなさいと言った。そして僕用のドレッサーを漁って、僕が着る服を取りだした。

化粧に関して、昨夜のように見栄え良いと思える状態になるまで、かなり手こずり、時間がかかってしまった。髪の毛の方はもっと時間がかかった。ようやく化粧が終わったが、その頃には、アンジーは、コーヒーを作ってるわねと言ってすでに寝室を出てしまっていた。彼女が僕のために用意した衣装を見たら、彼女の服装はカジュアルだったのに対し、僕の方は、ずいぶんカジュアルとはかけ離れた服装となっていた。

ズボンとセーターの代わりに、僕にはスカートとタートルネックのセーターだった。それにランジェリーもあった。パンティとビスチェとストッキングである。ビスチェを着たら両脇が引き締まって、砂時計の体型になることができた。それにそのビスチェにはガーター・ストラップも付いており、それでもってストッキングを吊り下げた。

スカートを履いてみたら、前夜に着たドレスほどは裾丈が短くないのに気づいた。とは言っても、膝の上、5センチくらいの丈だった。セーターは僕の胴体をぴっちり包む感じで、偽の胸とはいえ、かなり魅力的に胸が盛り上がって見える。ただ、失敗したと思ったことがあって、それはセーターを着た後、髪の毛と化粧の一部をもう一度やり直さなければならなかったことだった。

靴はヒール高5センチほどで、ヒール底が幅広になっているものだった。それを履いた時、アンジーが寝室に戻ってきた。

「まあ素敵、ちゃんと着替えができたわね。ちょっとお願いだけど、朝食の前にベッドメーキングをするのを手伝ってくれる?」

ベッドのシーツを剥がしながら、僕はかなり冗談っぽい口調で訊いてみた。

「どうしてあなたはズボンなのに、私はスカートなの?」

アンジーはくすくす笑った。

「一つには、私はこれまでの人生、ずっと女の子でいたのに対して、あなたの場合は、まだ一日しか女の子になっていないから。できるだけスカートを履くようにした方がいいと思うわよ。そうすれば、女の子の服装をしている間、あなたは女性面が強化されて、男性面が抑制されることになるから。もう一つの理由は、私がそうしなさいと言ったから。同意したのを覚えているわね? 私がリードして、あなたは私に従う。私の言うこと分かったわね?」

僕は、アンジーに陰毛を握られ(参考)、思うがままに支配されているのを実感した。もっとも陰毛自体、すでに剃ってなくなっているのだが。もっとも、僕はあまり気にしていたわけではない。そもそも、女物の服を身につけるのが好きになり始めていたのである。一週間ランジェリを着ていたが、とても着心地が良いと思っていた。そしてドレスとスカートを着れば、どこか、これで完璧になったような気がしていた。

ベッドメイキングを終え、脱ぎ散らかしてあった衣類を拾い、片づけると、アンジーは僕の手を取って一緒に階下に降りた。階段を降りながら、彼女が訊いた。

「ねえ、昨日の夜、私のお尻に舌を使ってくれたでしょう? あの時、どうだった? 良かった? 私の方はとても感じたわ」

「ええ、私も」 と僕は素早くこたえた。

アンジーはくすくす笑って、囁き声で続けた。「じゃあ、私のお尻にも、あなたの持ってる可愛いクリトリスを入れられたらいいのにって思ったんじゃない?」

この質問には混乱してしまった。確かに昨夜、彼女は僕のペニスのことをクリトリスと呼んだが、その時は変な感覚にはならなかった。でも、いまは違う。昨夜のあの時、僕はとても興奮していたし、それは彼女も同じだったからだ。あの時、アンジーが僕のアレを吹き出物と呼んだとしても、僕は気にしなかっただろう。でも今は、昼のさなかであるし、別に性的に興奮しているわけでもない。そうなると気になってしまうのだった。

「どうして私のペニスのことをクリトリスと呼ぶの?」

アンジーは僕の手を握って言った。「ジャッキー? あなたは私の女友達なの。だったらどうしておちんちんがあるのよ? おちんちんを持ってるのは男だけ。私たち女にはクリトリスがあるの。そうじゃない?」

「まあそうだけど…」 と答えたが、納得していたとは言い難い。

アンジーはにっこり微笑み、甘い声で言った。「ねえ、私の質問に答えてくれる?」

「もちろん、あなたのお尻にしてみたいわ…。というか、そう思わない人なんかいないんじゃないかと…」

階段を降り切ると彼女は僕の方を向いた。「ということは、あなたは私のお尻にあなたのクリトリスでしてみたいと言ってるのね? そう?」

彼女は僕の口からクリトリスと言うのを聞きたがっているのを知った。これも僕の女性面を強化する方法の一つなんだろうなと思った。

「ええ、私のクリトリスであなたのお尻にしてみたいわ」

その言葉を発したとたん、アンジーが喜んで跳ねそうになってるのを見た。

「私もよ、ジャッキー。クリトリスでもおちんちんでもちんぽでもお尻にされるのが好き。でも、一つ訊いておきたいんだけど、あなたこれまで誰かのお尻にクリトリスを入れたことがあるの?」

もちろんと言いかけたが、そう言ったらウソになる。それにアンジーなら僕が嘘をついてるのを見破るだろうとも思った。どうしてかは分からないけど、アンジーには嘘をついたらすぐに見破られてしまうと思っていた。

「いいえ、ないの。でも、約束するわ、とても優しくするって」

アンジーは指先で僕の顔を愛撫しながら言った。

「一度試してみてね。…でも、そういう愛し方の経験がないとすると、私に痛い思いをさせても、それに気づかないことになるかもしれないわね。気づいた時には遅すぎたということになるかも。それはいけないわ。あなたに運転席についてもらう前に、一度、あなたに受け手側になってもらって、どんな感じなのか教えてあげた方が良さそうね」

僕はとてつもない喜びから、突如、悲しみのどん底に突き落とされたような感覚を味わった。アンジーにアナルセックスすることになると喜んだのに、気がついたら、彼女が僕にそれをするという話になってしまったのだ。でも、よくよく考えたら、アンジーにはそれはできるはずがないことに気がついた。つまり、彼女にはペニスがあるわけでも、巨大なクリトリスがあるわけでもないのだ。だから、そのような形で僕を犯すことなどできるわけがない、と。

多分、アンジーは冗談を言っていたのに違いないと分かり、僕はすぐに笑顔になって言った。

「どうしたら、それができるか分からないわ」

アンジーは、あの眩しい素敵な笑みを浮かべた。

「あら、どんなことだって可能よ。でも、セックスの話はもう十分。朝食を食べることにしましょう」

彼女の言い方に何か意味深な雰囲気があったので、僕は彼女がどんなふうにするのだろうと気になり始めた。

とはいえ、すぐに二人で朝食を作り始めたので、実際はそれについて考えてる時間はあまりなかった。食べている間も、自分の行動に注意を払わなければならなかった。つまり、女の子ならどのようにするか、あらゆる点で注意し続けなければならなかったのである。ようやく朝食を済ませたが、その間、一度もアンジーに間違いを指摘されなかったので、とても誇らしく感じた。彼女の嬉しそうな笑顔も、僕に満足していることを伝えてくれていた。

「どうやら、私の彼女はとても上手になってきているようね。お化粧もとても上手。たった一日しかお化粧をしてないことを考えたら、大変素晴らしいできだと言いたいわ。それにお作法も大変よくできました。そろそろ本格的なトレーニングに入っても良さそうね。ちょっとだけ露出させてあげようかなと思ってるの」

それを聞いて急に誇らしい気持がしぼんでしまった。

「露出って、どういうこと?」

恐る恐る訊いた。僕の声におののきの気持ちが入っているのを彼女は察知したと思う。

「たいていの女の友だち同士がするようなことをするの。一緒にショッピングに出かけたらいいと思うわ」と、アンジーは立ちあがり、食器洗いに自分の食器を持っていった。

「ちょっと待って。この恰好で私を外に連れ出そうとしてるの? 他の人に見られる場所に?」 唖然とした気持ちをなんとか乗り越えながら訊き返した。

「うふふ。もちろんよ。女友だちはそういうことを一緒にするものなの。お買い物に行ったり、映画を見たり、ダンスをしにクラブに行ったり。ジャッキー? あなたのことは大好きよ。でも、毎週、毎週、仕事がない週末をあなたと家の中でずっと過ごすのはイヤだわ。さあ、あなたの食器を食器洗いに入れて。その後でコートを着て、一緒に出かけましょう」

ノーと言おうと思った。本当にそう思ったが、どこか、この時点でそれを言うのは悪いことだと思った。アンジーが僕をどこまでこの方向で推し進められるか、その限界を切り開こうとしているのは確信していた。それに、ここで反対して、アンジーに、僕は彼女が探し求めている恋人ではないと判断されるのも嫌だった。もうすでにアンジーのことがとても好きになっていたし、恋に落ちていたと言ってもいい。自分自身、彼女との今の関係を悪化させたいとは考えていなかった。僕はあいまいな笑みを浮かべながら、言われたとおりに食器洗いに食器を入れた。

ふたりで二階に上がると、彼女は僕に皮のコートと持ち物を入れるハンドバッグを渡した。僕は、自分の財布からお金と免許証とクレジットカードを出し、女物の財布に入れ替え、その財布をハンドバッグに入れた。それにコンパクトと口紅もバッグに入れた。ふたりとも出かける準備が整い、一緒に下に降り、玄関を出て、彼女の車へと向かった。

本心では、アンジーが「今のはからかっただけ、私の言うことに従ってくれるか、確かめたかったのよ」と言ってくれるのをずっと待っていた。だが、車に乗りこんだ後、やっぱり、ぜんぜんジョークではなかったのだと知った。本気で僕を店に連れて行こうとしている。

アンジーが運転する車で街を進みながら、自分が次第にパニック状態になっていくのを感じた。トンネル視になったような感じで、自分の真正面にあるものしか見えない。アンジーはお店でどんなものを買おうかしゃべり続けていたが、僕は耳がガンガンなっていて、何も頭に入らなかった。

モールに着くまでどのくらいの時間だったか、分からない。ずいぶん長くかかったようにも思えるし、すぐに着いたようにも思える。実際、車が止まったことすら気づかなかった。ドアが開いて、アンジーが「さあジャッキー! 一日中、車にいることはできないわよ」と言うのを聞いて初めて気がついた。

車から足を出し手はみたものの、膝ががくがくしていて、アンジーが手助けしてくれなかったら、倒れていたと思う。アンジーは僕の腕に腕を絡め、モールの入口へと導いた。僕たちの周りにいるのは子供たちだけで、女の子たちの笑い声が聞こえたが、僕を見てではなかった。もっと言えば、誰も僕に視線を向けてる人はいなかったようだ。

本当のところ、誰かに「あそこに女の格好をした男がいるぞ!」と大声で言われるだろうと予想していた。いつ言われるかとビクビクしていたけど、一向にそういうことはなかった。モールに入って奥に進んで行った時も、僕たちに目を向ける人はほとんどいなかった。

モール内の通路を進み、左右に並ぶすべての店について、店内に入ることはせず、ウィンドショッピングをしながら歩いた。アンジーは、どれが素敵だとか、どれとどれが似合いそうだとか、ずっとしゃべりっぱなしだった。多分、僕がうわの空になっているのを見ていたのだろう。僕を落ち着かせようとしているようだった。しばらく歩いているうちにようやく僕も彼女のしゃべっていることに耳を傾けられるようになり、同時に、心臓の鼓動も安定してくるのを感じた。

アンジーは、僕が問いかけに返事し始めるのに気づき、こう言った。

「もう、大丈夫? あなた、過度呼吸になるんじゃないかと心配したわよ」

「しばらくうわの空になっていたみたいでごめんなさい」

「というより、パニック発作になったみたいだったわ。さあ、何か間違ったことをしたみたいに、あたりをきょろきょろ見るのはやめてね。あなた、まるで私たちが万引きしているように見えるもの。生まれてからずっとそういう格好をしてきてるように振舞って。そうすれば、誰も振りかえったりしないから。まあ、私たちがここにきてからずっと私たちを見てきてる男たちは別だけど」

僕は素早くあたりを見回した。「どの男たち?」

「うふふ…。私たちとすれ違った生身の男たち全員よ。だから、もう、そうやってあたりを見回すのはやめて」

それを聞いて僕は急速に落ち着きを取り戻した。アンジーは一緒に店に入っても大丈夫だと思ったようだ。

アンジーは、入る店として、このモールの中核となっている有名デパートにすることに決めた。そこに入りながら彼女は買い物かごを取り、僕に一つ手渡した。そしてランジェリー売り場へと直行した。

男としては、トランクス3枚組に10ドル取られたら、高いカネをふんだくられたと感じただろう。しかしパンティとなると、少なくともアンジーが見ていたのは1着20ドルだったが、そんなに理不尽とも思えなかった。それをブラジャーとガーターベルトのセットで買うとしたら、その3倍の値段になる。アンジーは次から次へとそういうセットを僕や彼女の買い物かごに放り込んでいたが、彼女が本当に値札を見ていたのか分からなかった。

アンジーは一通りランジェリーを買いそろえると、今度は婦人服売り場に向かった。僕はいつもの通り彼女の後ろをついていった。彼女は素早く服があるラックを調べ、さまざまな服を取り集め、それから僕にどう思うか訊いた。僕の体の前にかざして、どんなふうに見えるかチェックすらしていた。10着以上それを繰り返した後、アンジーは自分用に5着、僕のために7着選び、試着室に向かった。

それまで僕は試着するなんて面倒だと思っていたが、実際にしてみると楽しいものだと思った。もっと言えば、試着するドレスが亡くなってしまった時、ちょっと残念だなと思ったほどだった。

その中から2着、アンジーは僕のために選んだが、それはかなりタイトすぎるように思った。それを着たら、女の子にはないはずのところに盛り上がりがあるのが分かってしまうと。

「心配しなくて大丈夫よ。ちゃんとした下着を着たら、あるべきじゃないものを簡単に隠せるから」

アンジーはそう言って5着ドレスを持って試着室から出て、レジに向かった。そのうち2着は彼女の服で、3着は僕のための服だった。

僕は、ショッピングはそれで終わりかなと思っていたが、アンジーはさらに靴と化粧品を買わなくちゃと言った。加えて、他にも寄る店があると言う。

ようやく買い物をすべて済ませてモールから出たころには、5時間も経っていた。僕は新しいドレス5着、ハイヒール6足を抱えて歩いていた。ヒールはいずれもヒール高8センチ以上だった。加えて化粧品が入った袋も抱えていた。重さが1キロはあったと思う。他にもイヤリングが数個、婦人用時計が1つ、ブレスレットが2つ、1オンス当たり45ドルはする香水の瓶も持っていた。

車に戻るとアンジーが訊いてきた。「それで、どうだった? 女の子になってショッピングするのは? 誰もあなたが本当の女の子じゃないって気づかなかったでしょう?」

「すごく面白くて、本当に楽しんだわ。でも、ちょっとお金を使いすぎたんじゃないかと思うけど」 と駐車場から車を出す彼女に言った。

「うふふ、ちょっと使ったわね。でも、このくらいの出費、私にはぜんぜん大丈夫。それに、私のガールフレンドは新しい服が必要だったし、私がその人に女の子になるよう言いくるめたわけだから、私が払うのは当然だわ。前に言った約束を忘れないでね。気にしないこと。もうあなたにこんなにお金を使うことは多分ないから。少なくとも、一回でこんなに使うことはしないわ。さて、家に戻る前に、もう二軒、立ち寄らなくちゃいけないところがあるのよ」

しばらく車を走らせた後、アンジーは、とある連なった建物の裏手の駐車場へ車を入れた。彼女だけ車から降り、建物に入って行った。その入り口の上に名前があったが、僕が座っている位置からは見えなかった。彼女は店に入ってからほんの数分で、小さな茶色の紙袋を持って出てきた。その後、彼女は中華料理店に立ち寄り、テイクアウトをした。

アンジーの家に戻り、一緒にテイクアウトの料理を食べ、その後、一緒に寝室に入った。寝室に入るとすぐに、二人とも買ったばかりの衣服を放り投げた。

そしてアンジーは僕を抱き寄せ、ディープなキスをした。

「今日のあなた、とても素敵だったわ。あなたのこと、とても誇りに思ってるの。だって、誰にもあなたの本当の姿が分からなかったんですもの。あなたを見ながら、私と一緒にクラブに遊びに行くのはどうかしらと思っていたのよ」

「どんなクラブ?」 そうは訊いたけど、自分でも答えは知っていたと思う。

「ダンスをするようなところ。女の子というのは、そういうところに遊びに行って、一緒にダンスをするものなのよ」

と言いながら彼女は服を脱ぎ始めた。僕も、何と言ったって彼女にリードされていくのだろうと分かっていたので、その件について話す理由はなかった。

二人とも裸になった後、一緒にバスルームに入った。アンジーは新しい使い捨てのビデを取った。

「あのね、女の子ならば、定期的にあそこをきれいにしておかなくちゃいけないの。細菌に感染したら困るから。あなたも女の子なんだから、私と同じことをしなくちゃいけないわ」

僕はくすくす笑って、返事した。「アンジー? どれだけ女の子っぽく見えるからって、私にはないものはないわ。そのビデをどこに使うっていうの?」

だが、アンジーが僕の尻頬を触れた瞬間、彼女が次に言う言葉が分かった。

「そう? ある意味、あなたにはもう女の子のあそこがあるはずよ。そこをきれいにしておかなくちゃダメと言ってるの。私がお口であなたのそこをしてあげる時、きれいになっていてほしいと。昨日、あなたにそれをしてあげたときに、ちゃんと分かってるのよ。あなたがそれがとても喜んでいたって」

彼女の言うとおりで、僕は確かに喜んでいたし、またしてほしいと思っていた。

「それじゃあ、お尻にビデを使ってほしいということ?」

アンジーは僕を納得させたのが分かったようだ。クスクス笑って言った。「うふふ。確かに、その場合はビデじゃなくって浣腸と言うわね。でも、そうよ。そこに使ってほしいの」

僕が返事をする間もなく、アンジーはプ長いチューブがついたラスチック製の袋を取り出した。それを見た瞬間、それが何であるか分かった。彼女はその袋にぬるま湯を入れ、その後、液体石鹸を数滴たらした。そして僕にカウンターに手をついて前のめりになるよう指示した。

僕は多分、必要以上に怖がっていたと思う。彼女がチューブのノズルを僕に押し込んだ時、かなり痛いだろうと思っていた。だが、驚いたことに、まったくと言っていいほど痛みはなかった。実際、お湯が直腸の中に入ってくると、妙な幸福感が体内から湧いてくるのを感じ、圧倒された。こんなに気持ちがいいものなら、大丈夫そうだと思った。

でも、その幸福感はあまり長続きせず、2分もしないうちにお腹のあたりがキリキリと痛み始めた。その痛みについて訴えると、アンジーは、「生理痛だったらもっとひどいし、もっと長く続くんだから、それよりましなのを喜ぶべきよ」 と言った。

仕方なく僕は黙って耐えた。やがてすべて注入され、プラスチック袋が空になった。すると、アンジーは僕を助けて便器のところへと導き、ノズルを外し、浣腸液を出すのを許された。ようやく終わったと安心したのもつかの間、「もう一度おなじことを繰り返して」と言われがっかりした。浣腸を3回した後、やっと、きれいになったと言われた。

その後、彼女と二人でシャワーを浴び、互いに身体を洗い合った。そしてアンジーは、以前と同じく、清潔になった僕のアヌスを舐めてくれた。この快感こそ浣腸をする十分に良い理由だと言わなかったら、他にどんな理由があると言うのだろう。

二人とも爆発的なオーガズムを味わった後、一緒にバスルームから出て、互いの体を拭きあった。それからベビーパウダーを使って、肌をさらさらにしあった後、アンジーはバスルームから出て行った。僕は留まり、傷をつけないようできるだけ注意しながら顔や体の毛を剃った。

それが終わりバスルームから出たら、ちょうどアンジーはお化粧を終えたところで、髪の毛に取り掛かろうとしていた。彼女は振り向いて、「あなたのためにあるものを用意してあるの。それを使うとあなたのクリトリスをうまく隠せて、今日買った黒いニット・ドレスも着れるようになると思うのよ」と言った。

そう言ってアンジーは僕に紙袋を手渡した。僕が車の中で待っていた間に彼女が入って行った店で買ったものだった。中を見ると、ラテックスでできたソング・パンティのようなものが入っていた。ほとんど透明に近い生地だが、完全に透明と言うわけではない。

「これは?」

「それ、ギャフ(参考)というものなの。陰部を身体に密着させるためのもので、男性だという事実がばれないようにするもの。お店の女の子が言っていたけど、ラスベガスの女装コーラスラインのダンサーたちは、みんなそれをつけるらしいわ。あの人たちすごくちっちゃなパンティを履いてるのに、アレが見えないのは知ってるでしょう?」

「こういうのを買うとき、よく、お店の人に言い出す勇気があったわね。信じられない」 と僕はギャフを見ながら言った。

「正直、私、探してるものの名前を知らなかったのよ。でも、店員の女の子に、私の友だちが盛り上がりがあって、どうしてもそれを隠したいと思っているの、と言ったら、すぐに察してくれたわ。あの店、女性化に関係した商品を扱っているのよ」

そのギャフを履いてみるとすぐに、かなりキツイことに気がついた。自分の男性部分を足の間に挟んで履くと盛り上がりがうまく隠せるのだったが、それに気づくまで一、二分、時間がかかってしまった。だが、いったん装着し、位置を調整すると、股間が驚くほど滑らかで、平らになり、自分の姿に驚いた。何も知らずに自分の股間を見たら、ペニスも睾丸もあるようには決して見えない。

僕がギャフをつけ、その位置を調整している間、アンジーは僕のドレッサーのところに行き、今夜、僕が着るランジェリーを取り出していた。彼女が選んだのは、黒いレースのパンティと、黒いストッキング、それに黒のレースとサテンのコルセットだった。今夜、僕は初めてコルセットを身につけることになるだろう。そして、コルセットを着るのは今夜だけではなく、これから何回も着ることになるのは確実だと思った。

お化粧にとりかかろうとしたら、アンジーはランジェリーを着てからにしてと言った。まずはストッキングから履くように注意された。コルセットを着た後だと、腰を屈めるのが難しくなるからと。

ストッキングを履き終えると、彼女は僕の胴周りにコルセットを巻きつけた。お腹周りが緩まないように、僕はすぐに胴体の前の20個ほどのホックを留めた。アンジーは背中側のレース紐を締めつけ始めた。

すでにウエスト・シンチャー(参考)を着ていて、それもかなりきついと思っていたが、コルセットを着ると、そのウエスト・シンチャーですら何でもないように感じられた。アンジーはコルセットのレース紐をかなりきつく締めつけ、僕は、その締めつけに対応するために、体内の呼気をすべて吐き出さなければならなかった。ようやく締めつけが終わった時には、呼吸するのもやっとで、少しめまいを感じたほどだった。

ようやくなんとか普通に呼吸できるようになった後、ストッキングをガーターに留め、その後、パンティを履いた。

そしてその後、初めて鏡で自分の姿を見たのだが、その自分の姿を見て驚いた。コルセットのおかげで、僕の体は完璧なほど砂時計のプロポーションになっていたのである。確かに呼吸するのも大変だが、それだけの価値があると思った。お腹は平らに引き締まり、左右の脇腹が内側に引き寄せられ、本当に女性の腰のような幻想を与えてくれている。コルセットには胸のカップもついていて、僕の偽乳房を包んだ。このためブラジャーは必要ない。

茫然として鏡を見ていたが、アンジーにちょっと急かされ、お化粧に取り掛かった。僕がお化粧をしている間、アンジーは僕の髪のセットをしていた。最初、彼女は何か泡のようなものを僕の髪につけた。後で知ったのだが、それはムースだったらしい。そのムースで髪をぬらした後、カール用のブラシを使い、僕の髪にカールをつけ始めた。やがて、僕の髪はまったく新しいヘア・スタイルになっていたのである。

彼女が僕のために選んだドレスは、非常にタイトなものだった。まるでもう一つの皮膚をまとったように僕の体をぴったりと包むドレスだった。色は真っ黒で、丈がとても短い。太もものかなりの部分が露出していた。裾は膝から15センチは上。襟周りの方は首元まで来ていたが、首を隠すまでにはなっていない。本当にセクシーなドレスで、ギャフのおかげで、みっともない盛り上がりを見せることなく、着こなせていた。

このドレスには、しかし、二つ、心配なことがあった。一つはとても丈が短くタイトなため、いつも注意していないと、スカートが捲りあがり、ストッキングの付け根が露わになってしまうことだった。もう一つは首の問題だった。首が隠れていないので、喉仏があるのが見えてしまうのである。でも、この問題についてはアンジーは首に黒いチョーカーを巻くことで解決してくれた。

アンジー自身も新しい黒いドレスを着た。このドレスも僕のと同じくタイトでショートなものだったが、一つだけ違いがあって、胸元が大きく開いていて、胸の谷間がかなり見えていたところである。それにアンジーは僕と異なりコルセットはつけなかった。つけなくても、最初から砂時計のプロポーションになっているので、その必要がない。

彼女の靴は、10センチのスティレット・ヒールの黒いパンプスだった。僕には黒いサンダルを渡させた。それにはストラップがついていて、足の甲のところで交差し、足首に巻きつけてバックルで留めるデザインになっていた。ヒールは7センチほどだけど、アンジーの靴ほど細いヒールではなかった。とはいえ、これまでに履いたハイヒールよりは、ヒール部分が細い。

持ち物をハンドバックに移し替え、身体に香水を吹きつけ、とうとう準備が整った。ふたりともふくらはぎまでの丈の皮コートを羽織り、階段を下り、そして玄関を出た。

僕は、その時はまだ普通の感情だったが、車に乗り込むと、次第に不安になってきた。それまでは身支度に夢中で忘れていたのだが、僕はまた人の目につく場所に行こうとしているのである。昼間に外出した時ほどの不安感ではなかったが、両手が震えていたし、どうしてもソワソワしてしまい、落ち着くことができなかった。

アンジーは僕の手を握って落ち着かせてくれた。

「大丈夫よ。昼間のモールですらバレなかったんだから、夜の薄暗いクラブなら、もっとバレないわ。ただリラックスして、その場の流れを楽しめばいいの」

もちろん彼女の言うとおりなのだけど、それでも不安は消えなかった。


つづく
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